◯本ブログ記事はAIでリライトしたものです。
第1 上告審の全体像
1 上告審は法律審であること
上告とは,控訴審の終局判決に対する不服申立て(上訴)であり,上告審は,第一審及び控訴審が事実審であるのと異なり,法律審です。
すなわち,上告審は,事実認定をやり直す審級ではなく,原判決に法令の違反があるかどうかという観点から審査する審級です。
上告審は,事実審が適法に確定した事実に拘束され(民事訴訟法321条1項),その事実を前提として,法の解釈適用について最終的な判断を示します。
2 上告審となる裁判所——二つの三審構造
世間で「上告」「上告審」といえば,多くの場合は最高裁判所が思い浮かべられますが,民事訴訟には,最高裁判所が上告審となる流れと並んで,高等裁判所が上告審となるもう一つの上告制度があります。
どの裁判所が上告審となるかは,第一審がどの裁判所であったかによって決まります。
(1) 地方裁判所を第一審とする事件(最高裁判所が上告審)
地方裁判所を第一審とする事件では,控訴審が高等裁判所,上告審が最高裁判所となります。
本記事が主として扱うのは,この最高裁判所が上告審となる場合です。
(2) 簡易裁判所を第一審とする事件(高等裁判所が上告審)
これに対し,簡易裁判所を第一審とする事件では,控訴審が地方裁判所,上告審が高等裁判所となります(民事訴訟法311条1項)。
すなわち,地方裁判所が第二審(控訴審)としてした終局判決に対しては,高等裁判所に上告することができます。
各審級の記録符号は,簡易裁判所が「ハ」,控訴審である地方裁判所が「レ」,上告審である高等裁判所が「ツ」です。
3 上告制度の目的
上告制度の目的は,第一次的には,原判決の誤りを是正して当事者に救済を与えることにあり,第二次的には,法令解釈の統一を図ることにあります。
もっとも,法令解釈の統一という機能が前面に出るのは,唯一の最上級裁判所である最高裁判所が上告審となる場合です。
第2 「上告」と「上告受理申立て」の区別
1 最高裁判所に対する不服申立ては二本立てであること
平成8年の民事訴訟法改正により,最高裁判所に対する不服申立ては,上告と上告受理申立ての二本立てとなりました。
両者は併せてすることができ,実務上も併用されることが多いものの,同一の書面で兼ねる場合には,その旨を書面上明らかにする必要があります。
上告と上告受理申立てとでは,主張することができる理由が異なりますので,どの理由をどちらで主張するのかを意識することが重要です。
2 上告の理由(民事訴訟法312条1項・2項)
最高裁判所に対する上告の理由は,次の二つの類型に限られます。
(1) 憲法違反(312条1項)
判決に憲法の解釈の誤りがあること,その他憲法の違反があることです(民事訴訟法312条1項)。
これには,原審の判断に憲法違反がある場合のほか,原審の手続に憲法違反がある場合も含まれます。
(2) 絶対的上告理由(312条2項)
判決の結論に影響するかどうかを問わず上告の理由となる,重大な手続違反です(民事訴訟法312条2項)。
具体的には,判決裁判所の構成の違法,判決に関与することができない裁判官の判決への関与,専属管轄の規定違反,法定代理権・訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権の欠缺,口頭弁論の公開規定の違反,判決の理由の不備又は理由の食違いです。
(3) 単なる法令違反は上告の理由とならないこと
旧法と異なり,現行法では,単なる法令違反を理由として最高裁判所に上告することは許されません。
単なる法令違反は,次に述べる上告受理申立てによって主張することになります。
3 上告受理申立ての理由(民事訴訟法318条1項)
(1) 「法令の解釈に関する重要な事項」を含むこと
上告受理申立てをするには,当該事件が法令の解釈に関する重要な事項を含むものであることを主張する必要があります(民事訴訟法318条1項)。
その具体的な意義及び判断要素については,第7で詳しく取り上げます。
(2) 憲法違反・絶対的上告理由は受理申立ての理由とならないこと
民事訴訟法312条1項及び2項に規定する事由(憲法違反及び絶対的上告理由)を,上告受理申立ての理由とすることはできません(民事訴訟法318条2項)。
4 高等裁判所に対する上告との違い
(1) 判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反(312条3項)
高等裁判所に対する上告は,憲法違反及び絶対的上告理由に加えて,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由としてすることができます(民事訴訟法312条3項)。
これが最高裁判所に対する上告との大きな違いであり,経験則違反や採証法則違反,審理不尽も,ここでいう法令の違反に含まれます。
(2) 上告受理の制度がないこと
高等裁判所に対する上告については,最高裁判所に対する上告受理の制度はありません。
そのため,高等裁判所が上告審となる場合には,上記の一般的な法令違反が,いわば包括的な上告の理由として機能します。
第3 上告審の手続の流れ
1 上告状の提出先と上告期間
上告状は,上告裁判所ではなく,原裁判所(控訴審をした裁判所)に提出します(民事訴訟法314条1項)。
上告期間は,判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間です(民事訴訟法313条・285条)。
この期間は伸長することができず,各当事者ごとに別個に進行します。
2 上告理由書・上告受理申立て理由書の提出
実務上,上告状に上告の理由が記載されていないことがほとんどであり,その場合には,上告提起通知書の送達を受けた日から50日以内に,上告理由書を原裁判所に提出する必要があります(民事訴訟法315条1項,民事訴訟規則194条)。
この期間内に理由を記載した書面が提出されないときは,原裁判所は,補正を命ずることなく,決定で上告を却下しなければなりません(民事訴訟法316条1項2号)。
第4 持ち回り審議事件及び審議事件
1 持ち回り審議の意義と割合
イ 持ち回り審議事件は,最高裁に係属する事件のおよそ95%を占めていて,残りの約5%が,重要案件として,評議室における審議の対象となる事件(審議事件)となります(最高裁回想録42頁)。
2 持ち回り審議事件と審議事件の振り分け
イ 「ジェンダー平等と司法~法曹界における202030を考える~対談 元最高裁判事に聞く~最高裁の男女共同参画」には以下の記載があります(自由と正義2021年7月号26頁)。
櫻井 私は8年4か月(山中注:最高裁判所判事を)経験しましたけれど、持ち回りを審議事件に変えたのは、年に1件あるかないかという感じで、性差別に関係する問題は、セクハラの事件だけでした。
3 元最高裁判所判事による説明
私の具体的な1日は、だいたい9時30分にはスタートします。朝登庁すると、いわゆる持ち回り事件の記録が机にどんと積んであって、効率よくこなせるような順に並んでおり、1日だいたい平均13~20件くらいの事件を処理します。多くはそのまま持ち回りで処理(棄却・不受理・却下)することになります。
記録の回る順番は主任、つまり裁判長になる人が最初に見て、あとは部屋の順に見るようになっています。持ち回りになる事件のほかに期日審議になる事件がありますが、調査官が先に主任裁判官と相談して期日審議事件として小法廷の裁判官全員に一斉に通知して資料を配付します。
持ち回り事件でも、1人の裁判官でも反対の結論の可能性を考えれば、期日審議に回すことができます。ただ、審議は頻繁にあるわけではなく、週に1回もないくらいの割合ですが、1回の審議で2、3件の期日審議をすることも少なくありません。
第5 持ち回り審議の問題点
1 評議の非公開と持ち回り審議方式
そして,「合議体でする裁判の評議は、これを公行しない。」と定める裁判所法75条1項本文は,最高裁判所の裁判についても適用されるはずですが,最高裁判所の持ち回り審議方式は適法であることになっています。
イ 最高裁判所の小法廷の評議室は,裁判官棟各階の裁判官室の並びにあり、各小法廷毎に同じ構造のものが用意されていて,ここでは,毎週の審議日に,小法廷の全裁判官が集まって重要案件の「審議」やその他の会議を行います(最高裁回想録39頁)から,最高裁判所の「評議」は口頭でなされることを前提としていると思います。
2 武藤春光弁護士による指摘
合議の要件は、各構成員が一同に会すること、口頭で意見を述べること、意見の交換による相互説得の機会があること、ということになる。持ち廻り合議は、意見を記載した書面を構成員の間に持って廻るだけであるから、合議の要件のすべてを欠いており、合議の名に値しない。
第6 最高裁判所調査官の審議への出席
1 調査官の審議への出席(刑事上告事件における説明)
調査官は、自分が報告書を提出した事件の「審議」には全部出る。審議は、小法廷の裁判官が全員集まって正式に合議をすることである。判例になりそうな事案、弁論を開く必要のある事案、破棄される可能性のある事案については審議が行われる。調査官報告に「是非ともご審議あいなりたい」と書いてあれば審議になる。しかし、調査官が「審議不要、持ち回りでやってほしい」というつもりで「×」印にしたものが引っかかることも、たまにはあった。
審議は、ラウンドテーブルを囲む審議室で行う。担当調査官は、裁判官の囲むテーブルとは別に調査官用の机と椅子があってそこにつく。あくまでも調査官はオブザーバーであり、審議では説明は最初から主任裁判官がする。調査官の意見や細かい事実関係を裁判長から聞かれることはあるが、調査官は聞かれたことに答えるだけである。裁判長が説明をするための資料などについては、調査官報告書と1審・2審の判決、上告趣意書は必ず配布される。また、審議の時間あるいは回数は事件による。まとめて何件かをやる場合もあるし、簡単に済む事件もあるし、何回も続行する事件もある。
大法廷回付の判断に調杳官室の関与はない。大法廷回付の判断は、裁判官の判断である。大法廷回付相当かどうかは、小法廷ごとの審議の席で決める。調査官が「これは大法廷に回した方がいいのではないか」という意見を言うこともある。
第7 「法令の解釈に関する重要な事項」(上告受理の基準)
1 判例タイムズ1399号による説明
「法令の解釈に関する重要な事項」とは,最高裁判所として法令解釈を示す必要があるような事項をいう。①最高裁判所の判断により法令解釈の統一を図る必要がある法律問題を含むと認められる場合(一般的重要性)を含むことは明らかであるが,これに加えて,②原判決の法令の解釈に誤りがあり,そのために原判決の結論に看過し難い誤りがあると認められる場合(個別的重要性)も含まれるか否かについては争いがあるが,現時点では,②も含まれると解して実務は運用されているように思われる。
重要事項を含むか否か,すなわち最高裁判所が当該事件を受理するか否かは,①当該法律問題についての最高裁判所の判例の有無及び下級審裁判例の累積状況,②当該法律問題についての議論の成熟性ないし学説の分布状況,③当該法律問題が個別事件を超えた一般的な意義を有するものか否か,④法令解釈の誤りが原判決の結論に影響を与えるか否か(傍論部分や複数の独立した理由中の一つの理由など,当該法律問題が原判決の結論を導く上で不可欠とはいえない部分のみに関わるものであるか否か),⑤法令解釈の誤りが原判決の結論に影響を与える場合,それがどの程度のものか(看過し難い程度のものか,請求のごく一部ないし僅少な金額に影響するにすぎない程度のものか),⑥当該事件が上告審として判断を示すのにふさわしい内容の事案であるか否か等を考慮して判断されているものと考えられる。したがって,法令違反に名を借りて単に原判決の事実認定を非難する場合や,法律の解釈に関する事項を主張していても独自の見解を述べるにとどまる場合には,重要事項を含むものとは認められず,受理はされないことになろう。
2 許可抗告事件の実情からの補足
法令の解釈自体は既に明確になっている場合に、個別事件における事実認定や要件ないし法理への単純な当てはめの判断は、通常は、法令解釈に関する重要な事項とはいえない。
また、最高裁判所の判例により示された法令解釈の基準の具体的適用に関わる事項は、当該実務を担当する下級裁における事例集積にこそ意味がある場合が多い。このような場合、下級裁での事例集積、要件の類型化に関する実務的検討が十分にされていない段階で、個別事案に関する要件該当性の争いを法律審である最高裁判所に求めることは、相当ではないことが多い。
第8 上告等をした場合に出てくる定型文の決定
1 定型文の決定の例
① 上告について
民事事件について最高裁判所に上告することが許されるのは,民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ,本件上告理由は,違憲及び理由の不備・食違いをいうが,その実質は事実誤認若しくは単なる法令違反をいうもの又はその前提を欠くものであって,明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
② 上告受理申立てについて
本件申立ての理由によれば,本件は,民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。
2 調書決定の根拠(民事訴訟規則50条の2)
第9 「最高裁はなぜ上告を滅多に受理しないのか」と題するマンガ
1 マンガの紹介
① 最高裁はなぜ上告を滅多に受理しないのか (平成26年5月28日付)
② 続最高裁はなぜ上告を滅多に受理しないのか(平成26年6月6日付)
2 翻案に関する判例
第10 不受理決定の効力
1 不受理決定は判例としての意義・効力を有しないこと
不受理決定は,上告受理の申立ての理由中に法令の解釈に関する重要な事項が含まれているとは認められないという判断であり,その判断は,前記のように総合的なものであるから,最高裁として当該事件の法律問題に判断を示したものではなく,何ら判例としての意義,効力を有するものではない。例えば,貸金業者の債務者に対する取引履歴の開示義務を認めた最三小判平成17年7月19日(民集59巻6号1783頁)の前に,貸金業者の取引履歴の不開示について不法行為の成立を否定した原判決に対する上告受理申立てが不受理とされたことがあり,この不受理決定について,最高裁は貸金業者について一般的な取引履歴の開示義務を認めなかったとの理解があったが,不受理決定は最高裁として当該事件の法律問題に判断を示したものではないのであるから,そのような理解ができないことは明らかである(詳しくは,上記最三小判平成17 年7 月19 日の判例解説〔福田剛久・法曹時報58 巻11号274 頁〕参照)。
2 元最高裁判所判事 木澤克之氏の説明
あくまで一般論として申し上げると,上告不受理ということは,最高裁は,中身に入らないということです。つまり,最高裁が,中身に入る必要がない,中身に入らない方がよい,という意思表示であり,高裁判決に対して最高裁はいかなる判断もしていません。
これは何を意味するかというと,高裁判決の「結論」を是として,その「結論」を確定させるだけです。つまり,必ずしも,最高裁が高裁判決の「理由」を「是」としているとは限りません。実際,中には,高裁判決の理由よりも地裁判決の理由の方が妥当だと思う案件もありますが,いずれにせよ,高裁判決の「結論」が是であるならば,最高裁は内容に踏み込みません。結論が「是」であるならば,早く判決を確定させて,なるべく早く権利救済をする必要があるという思いもあります。
第11 経験則違反で原判決を破棄した最高裁判決
1 最高裁平成16年2月26日判決(遺言公正証書の事例)
現時点においては公証人の署名押印がある遺言公正証書原本について,当該原本を利用して作成された謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等の内容に食違いがあることなどを理由として,上記謄本作成の時点において公証人の署名押印がなかったとした原審の認定判断には,上記謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等は,その細部に食違いがあるものの主要な部分で一致していること,原本の各葉上部欄外には公証人の印による契印がされているのに公証人の署名欄に署名押印がされていないとするのは不自然であること,公証人が原本作成と同じ日に作成して遺言者に交付した正本及び謄本には公証人の署名押印がされていることなど判示の事情の下では,特段の事情の存しない限り,経験則違反又は採証法則違反の違法がある。
イ 上告受理申立代理人は7人いましたが,そのうちの1人は,平成14年6月11日に最高裁判所判事に就任した滝井繁男弁護士でした。
2 経験則違反・採証法則違反による破棄差戻し判例
(医療訴訟関係)
・ 最高裁昭和60年12月13日判決
・ 最高裁平成 9年 2月25日判決
・ 最高裁平成11年 3月23日判決
・ 最高裁平成18年 1月27日判決
・ 最高裁平成18年11月14日判決
・ 最高裁平成19年 4月 3日判決
(その他の訴訟関係)
・ 最高裁平成16年 2月26日判決(前述したものです。)
・ 最高裁平成22年 7月16日判決
・ 最高裁令和 3年 5月17日判決
イ 最高裁平成19年 4月 3日判決の原審である仙台高裁平成18年6月15日判決(本人訴訟の患者側勝訴。裁判長は25期の大橋弘裁判官)につき,君の瞳に恋してる眼科ブログの「大橋弘裁判長トンデモ訴訟指揮事件」には,「遺族側が提出した証拠は、戸籍謄本、死亡診断書、遺族自筆の書面2通が全てであり、その書面2通にしても、素人の目に映った事実経過と、病院をなじる文言程度のもので、およそ医学的に筋道を立てて何かを主張したという書面ではありませんでした。」と書いてあります。
3 学説・元裁判官による説明
裁判官は、論理法則・経験則に従わなければならない。したがって、論理法則・経験則に反する事実認定、合理的理由に基づかない事実認定は、違法と評価される。
経験則違背ないし採証法則違背があるとする最高裁判決は、少なくない。
最高裁は、平成民事訴訟法下において、経験則の認定や適用の誤りは法令違反であり、「法令の解釈に関する重要な事項」に該当する場合があるとの判断を示している。
イ きっかわ法律事務所HPに載ってある「事実認定と裁判官の心証形成」(筆者は21期の中田昭孝裁判官)17頁には「第9 元最高裁判事の感想」として「*経験則違反を理由とする上告受理事件は多いが、最高裁では、著しい経験則違反の事案でないと取り上げられない。」と書いてあります。
ウ 最高裁令和2年11月27日判決は,公認会計士協会から上場会社監査事務所名簿への登録を認めない旨の決定を受けた公認会計士らにつき,その実施した監査手続が当該監査において識別すべきリスクに個別に対応したものであったか否か等の点を十分に検討することなく当該決定の前提となる監査の基準不適合の事実はないとして当該決定の開示の差止めを認めた原審の判断に違法があるとされた事例です。
4 大阪高等裁判所第7民事部における処理の実情
最高裁判所の民事・行政事件の破棄判決については,毎年,当時在籍していた最高裁判所調査官が判例時報に破棄判決等の実情紹介をしており(平成25年度については,伊藤正晴=上村考由「最高裁民事破棄判決等の実情(上)-平成25年度-」判時2224号3頁,同「最高裁民事破棄判決等の実情(下)-平成25年度-」判時2225号3頁),民集及び裁判集に登載されない破棄判決(経験則違反ないし採証法則違反,釈明権の不行使,審理不尽等を理由に破棄した判決は,民集ないし裁判集に登載されないことがほとんどである。)については,判決理由の全文が掲載されており,執務の参考になる(事実認定ないし訴訟指揮の在り方を学ぶ上でも参考にな る。)。
5 元最高裁判所判事 鬼丸かおる氏の説明
(山中注:上告受理申立理由として)経験則違反という主張も非常に多いのですが、残念ながら今まで経験則違反を正面から最高裁判所が認めたことは1回もありません。
第12 上告理由に関する判例
1 差戻しを命ずる控訴審判決に対する上告の利益
2 理由不備と判断の遺脱
そのため,「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと」は再審理由である(民訴法338条1項9号))ものの,民訴法312条2項6号の上告理由には該当しません(基本法コンメンタール(民事訴訟法3)88頁参照)。
イ 「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱」とは,請求原因,抗弁,再抗弁等の主要事実(要件事実)についての判断が漏れている場合をいい,当事者が主張した法律解釈や証拠評価について原判決が逐一取り上げて判断を示していなくとも,このような判断遺脱に当たるものではないと解されています(「最高裁判所における民事上告審の手続について」判例タイムズ1399号(2014年6月号)56頁注65)。
ウ 判断の遺脱を理由とする破棄判決の実例としては,最高裁平成19年2月20日判決(判例時報2019号14頁)及び最高裁平成26年11月4日判決(判例時報2258号12頁)があります。
3 口頭弁論を経ない原判決の破棄
4 釈明義務違反・審理不尽
5 訴訟終了宣言をした事例
6 最高裁判所における口頭弁論の実情(村田一広裁判官)
最高裁判所においては、従前、上告人等の上告理由に曖昧・不明確な部分があったとしても、あえて期日外釈明を実施すること等をしないで判断を示すことが少なくなかったと解される(論旨については、その趣旨を善解した上、「この趣旨をいうものとして理由がある」と言及している例も多い。)。
第13 上告理由書等に対する最高裁判事経験者のコメント
1 大橋正春元最高裁判事の講演から
少なくとも現在提出されている書面は長すぎるという認識では最高裁裁判官は一致している。弁護士側としては、最高裁の裁判官は記録を読んでいないのでは・・という不安があるんだと思う。しかし調査官は全記録を読む。裁判官も原判決は読んで一定の印象を持ちながら、上告理由書ないし上告申立書を読む。
2 鬼丸かおる元最高裁判事の説明
刑事事件と同様に考えて(山中注:最高裁判所は)民事事件でも事実を見てくれるだろうと思って、理由不備、理由齟齬ということをおっしゃる方がものすごく多いのですが、民事事件では改めて事実は見ることはしません。理由不備、理由齟齬というのは、判決の中で整理された当事者の主張のところ、それから判決の理由のところを比べてみて、その判決書の主文が判決中の理由からは導かれない不備や齟齬があるというだけであって、当事者の言っていることと比べることはありません。
第14 関連記事その他
1 上告審判決の言渡しに関する説明(今井功元最高裁判事)
民事事件は,各小法廷で年間1,000件を超えているから,各事件につき,判決書を作成して署名押印し,いちいち法廷を開いて言渡しをすることは,大変な無駄である。旧法時代は,弁論が開かれない上告棄却判決の多くは,傍聴人のいない法廷で,言渡しがされており,当時多くの裁判官から何とかならないかといわれていたものである。
2 裁判書の表示ハンドブック
3 上告審における独立当事者参加・二重上告
イ 補助参加人が上告を提起した後に被参加人のした上告は,二重上告として不適法です(最高裁平成元年3月7日判決)。
4 一般法理の射程に関する説明(千葉勝美氏)
一般法理は、それ自体で一人歩きをし、下級裁判所や行政庁、個人や社会経済団体等がこれを踏まえた対応を積み上げることになるが、その後になって新しい紛争の出現により一般法理を修正・改変することがあると、射程の長い一般法理を掲げる処理は、結果的に法的安定性を欠くことになり、当該法理の寿命を逆に短くするということにもなって、このような事態は「判例」というものに対する信頼性を損なうことにもなりかねない。
5 武藤貴明裁判官による寄稿
6 簡易裁判所の事件で高等裁判所に上告する場合の留意点
そのため,「上告状兼上告受理申立書」という表題の書面を地方裁判所に提出した場合,形式的にいえば,適法な上告の提起とそもそも不適法な上告受理の申立てがなされたことになります(判例タイムズ1409号40頁参照)。
7 掲載資料及び参照記事
・ 調書決定事務処理要領(平成27年4月1日付)
・ 最高裁判所民事事件記録等閲覧等事務処理要領(平成27年4月1日付)
・ 人事訴訟事件における書記官事務処理要領(平成27年4月1日付)
・ 平成24年12月21日付の上告受理申立理由書
→ 仙台弁護士会出身の平成17年度日弁連副会長の必要経費に関する,東京高裁平成24年9月19日判決に対するものであり,最高裁平成26年1月17日決定により上告不受理となったものの,上告受理申立理由書の書き方自体は非常に参考になりますし,「結語」部分(PDF31頁)については法令の条文を置き換えることで,そのまま使い回しができると思います。
→ 国税庁HPの「最高裁不受理事件の意義とその影響」において,「弁護士会費懇親会事件」として紹介されています。
・ 事件記録の保管及び送付に関する事務の取扱いについて(平成7年3月24日付の最高裁判所総務局長通達)
・ 事件記録の保管及び送付に関する事務の取扱いについて(平成25年7月26日付の最高裁判所大法廷首席書記官の指示)
・ 民事上訴事件記録の送付について(平成30年6月29日付けの最高裁判所訟廷首席書記官補佐の事務連絡)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁の既済事件一覧表(民事)
・ 最高裁の破棄判決等一覧表(平成25年4月以降の分),及び最高裁民事破棄判決等の実情
・ 最高裁判所に係属した許可抗告事件一覧表(平成25年分以降),及び許可抗告事件の実情
・ 最高裁判所事件月表(令和元年5月以降)
・ 2000円の印紙を貼付するだけで上告受理申立てをする方法
・ 上告不受理決定等と一緒に送られてくる予納郵券に関する受領書
・ 控訴審に関するメモ書き
・ 最高裁判所調査官
・ 最高裁判所判例解説