上告審に関するメモ書き


目次
1 持ち回り審議事件及び審議事件
2 持ち回り審議の問題点
3 最高裁判所調査官の,審議への出席
4 上告等をした場合に出てくる定型文の決定
5 「最高裁はなぜ上告を滅多に受理しないのか」と題するマンガ
6 不受理決定の効力
7 経験則違反で原判決を破棄した最高裁判決
8 上告理由に関する判例
9 上告理由書等に対する最高裁判事経験者のコメント
10 関連記事その他

1 持ち回り審議事件及び審議事件
(1)ア 持ち回り審議とは,小法廷の裁判官全員が集まって合議するまでもなく,書類の持ち回りと押印による決済のみで決定処理出来ると考えられる,比較的簡単な事件について行われる審議方法をいい,法定の上告理由や上告受理申立て理由を充たしていないと判断される,いわゆる門前払いのケースの他,実体判断であっても,判例・学説等に照らして明らかに採用することができないと考えられるケースにおいて用いられます(最高裁回想録42頁)。
イ 持ち回り審議事件は,最高裁に係属する事件のおよそ95%を占めていて,残りの約5%が,重要案件として,評議室における審議の対象となる事件(審議事件)となります(最高裁回想録42頁)。
(2)ア 持ち回り審議事件と審議事件との振り分けは,まずは担当の最高裁判所調査官が行うものの,調査官報告書において当初「持ち回り相当」とされていても,主任裁判官(裁判長)の検討の結果,あるいは,持ち回りの過程でいずれかの裁判官から「審議相当」との意見が出された場合,改めて「審議事件」として,調査官が報告書を作り直すことになります(最高裁回想録45頁及び46頁)。
イ 「ジェンダー平等と司法~法曹界における202030を考える~対談 元最高裁判事に聞く~最高裁の男女共同参画」には以下の記載があります(自由と正義2021年7月号26頁)。
櫻井 私は8年4か月(山中注:最高裁判所判事を)経験しましたけれど、持ち回りを審議事件に変えたのは、年に1件あるかないかという感じで、性差別に関係する問題は、セクハラの事件だけでした。
(3) 愛知県弁護士会HPの「『女性法曹に聞く法曹の魅力』~綿引万里子名古屋高等裁判所長官・赤根智子国際刑事裁判所裁判官・鬼丸かおる元最高裁判所裁判官~」には,鬼丸かおる 元最高裁判所判事の発言として以下の記載があります。
  私の具体的な1日は、だいたい9時30分にはスタートします。朝登庁すると、いわゆる持ち回り事件の記録が机にどんと積んであって、効率よくこなせるような順に並んでおり、1日だいたい平均13~20件くらいの事件を処理します。多くはそのまま持ち回りで処理(棄却・不受理・却下)することになります。
 記録の回る順番は主任、つまり裁判長になる人が最初に見て、あとは部屋の順に見るようになっています。持ち回りになる事件のほかに期日審議になる事件がありますが、調査官が先に主任裁判官と相談して期日審議事件として小法廷の裁判官全員に一斉に通知して資料を配付します。
 持ち回り事件でも、1人の裁判官でも反対の結論の可能性を考えれば、期日審議に回すことができます。ただ、審議は頻繁にあるわけではなく、週に1回もないくらいの割合ですが、1回の審議で2、3件の期日審議をすることも少なくありません。

2 持ち回り審議の問題点
(1)ア 平成18年5月1日の会社法施行以前については,書面決議に関する会社法370条に相当する条文がありませんでしたから,持ち回りの方式でなされた株式会社の取締役会決議は違法無効でした(最高裁昭和44年11月27日判決参照)。
 そして,「合議体でする裁判の評議は、これを公行しない。」と定める裁判所法75条1項本文は,最高裁判所の裁判についても適用されるはずですが,最高裁判所の持ち回り審議方式は適法であることになっています。
イ 最高裁判所の小法廷の評議室は,裁判官棟各階の裁判官室の並びにあり、各小法廷毎に同じ構造のものが用意されていて,ここでは,毎週の審議日に,小法廷の全裁判官が集まって重要案件の「審議」やその他の会議を行います(最高裁回想録39頁)から,最高裁判所の「評議」は口頭でなされることを前提としていると思います。
(2) 「最高裁の持ち廻り合議と例文判決について」(5期の武藤春光弁護士(元広島高裁長官))には以下の記載があります(自由と正義1997年1月号83頁)。
 合議の要件は、各構成員が一同に会すること、口頭で意見を述べること、意見の交換による相互説得の機会があること、ということになる。持ち廻り合議は、意見を記載した書面を構成員の間に持って廻るだけであるから、合議の要件のすべてを欠いており、合議の名に値しない。


3 最高裁判所調査官の,審議への出席
・ 「最高裁判所調査官制度の内容-オーラル・ヒストリーを手がかりに」には,刑事の上告事件に関して,「審議への出席」として以下の記載があります(法学セミナー2017年5月号62頁)。
 調査官は、自分が報告書を提出した事件の「審議」には全部出る。審議は、小法廷の裁判官が全員集まって正式に合議をすることである。判例になりそうな事案、弁論を開く必要のある事案、破棄される可能性のある事案については審議が行われる。調査官報告に「是非ともご審議あいなりたい」と書いてあれば審議になる。しかし、調査官が「審議不要、持ち回りでやってほしい」というつもりで「×」印にしたものが引っかかることも、たまにはあった。
 審議は、ラウンドテーブルを囲む審議室で行う。担当調査官は、裁判官の囲むテーブルとは別に調査官用の机と椅子があってそこにつく。あくまでも調査官はオブザーバーであり、審議では説明は最初から主任裁判官がする。調査官の意見や細かい事実関係を裁判長から聞かれることはあるが、調査官は聞かれたことに答えるだけである。裁判長が説明をするための資料などについては、調査官報告書と1審・2審の判決、上告趣意書は必ず配布される。また、審議の時間あるいは回数は事件による。まとめて何件かをやる場合もあるし、簡単に済む事件もあるし、何回も続行する事件もある。
 大法廷回付の判断に調杳官室の関与はない。大法廷回付の判断は、裁判官の判断である。大法廷回付相当かどうかは、小法廷ごとの審議の席で決める。調査官が「これは大法廷に回した方がいいのではないか」という意見を言うこともある。


4 上告等をした場合に出てくる定型文の決定
(1) 上告及び上告受理申立てをした場合,以下のような定型文の決定が出ることがほとんどです(弁護士 阿部泰隆HP「☆『最高裁不受理事件の諸相Ⅱ』(信山社、2011年)」参照。1と2を①と②に変えています。)。
① 上告について
 民事事件について最高裁判所に上告することが許されるのは,民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ,本件上告理由は,違憲及び理由の不備・食違いをいうが,その実質は事実誤認若しくは単なる法令違反をいうもの又はその前提を欠くものであって,明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
② 上告受理申立てについて
 本件申立ての理由によれば,本件は,民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。
(2) 上告棄却決定又は不受理決定に関する調書決定は,「最高裁判所が決定をする場合において、相当と認めるときは、決定書の作成に代えて、決定の内容を調書に記載させることができる。」と定める民事訴訟規則50条の2に基づくものです。

5 「最高裁はなぜ上告を滅多に受理しないのか」と題するマンガ
(1) ツンデレブログに「最高裁はなぜ上告を滅多に受理しないのか」と題するマンガが載っています。
① 最高裁はなぜ上告を滅多に受理しないのか   (平成26年5月28日付)
② 続最高裁はなぜ上告を滅多に受理しないのか(平成26年6月6日付)
(2) 言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいいます(最高裁平成13年6月28日判決)ところ,リンク先のマンガにつき,著作権との関係で大丈夫かどうかはよく分かりません。


6 不受理決定の効力
(1) 「最高裁判所に対する民事上訴制度の運用」には以下の記載があります(判例タイムズ1520号9頁)。
  不受理決定は,上告受理の申立ての理由中に法令の解釈に関する重要な事項が含まれているとは認められないという判断であり,その判断は,前記のように総合的なものであるから,最高裁として当該事件の法律問題に判断を示したものではなく,何ら判例としての意義,効力を有するものではない。例えば,貸金業者の債務者に対する取引履歴の開示義務を認めた最三小判平成17年7月19日(民集59巻6号1783頁)の前に,貸金業者の取引履歴の不開示について不法行為の成立を否定した原判決に対する上告受理申立てが不受理とされたことがあり,この不受理決定について,最高裁は貸金業者について一般的な取引履歴の開示義務を認めなかったとの理解があったが,不受理決定は最高裁として当該事件の法律問題に判断を示したものではないのであるから,そのような理解ができないことは明らかである(詳しくは,上記最三小判平成17 年7 月19 日の判例解説〔福田剛久・法曹時報58 巻11号274 頁〕参照)。
(2) 東弁リブラ2022年1月・2月合併号「元最高裁判所判事 木澤克之」には以下の記載があります。
  あくまで一般論として申し上げると,上告不受理ということは,最高裁は,中身に入らないということです。つまり,最高裁が,中身に入る必要がない,中身に入らない方がよい,という意思表示であり,高裁判決に対して最高裁はいかなる判断もしていません。
  これは何を意味するかというと,高裁判決の「結論」を是として,その「結論」を確定させるだけです。つまり,必ずしも,最高裁が高裁判決の「理由」を「是」としているとは限りません。実際,中には,高裁判決の理由よりも地裁判決の理由の方が妥当だと思う案件もありますが,いずれにせよ,高裁判決の「結論」が是であるならば,最高裁は内容に踏み込みません。結論が「是」であるならば,早く判決を確定させて,なるべく早く権利救済をする必要があるという思いもあります。

7 経験則違反で原判決を破棄した最高裁判決
(1)ア 最高裁平成16年2月26日判決の裁判要旨は以下のとおりです。
  現時点においては公証人の署名押印がある遺言公正証書原本について,当該原本を利用して作成された謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等の内容に食違いがあることなどを理由として,上記謄本作成の時点において公証人の署名押印がなかったとした原審の認定判断には,上記謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等は,その細部に食違いがあるものの主要な部分で一致していること,原本の各葉上部欄外には公証人の印による契印がされているのに公証人の署名欄に署名押印がされていないとするのは不自然であること,公証人が原本作成と同じ日に作成して遺言者に交付した正本及び謄本には公証人の署名押印がされていることなど判示の事情の下では,特段の事情の存しない限り,経験則違反又は採証法則違反の違法がある。
イ 上告受理申立代理人は7人いましたが,そのうちの1人は,平成14年6月11日に最高裁判所判事に就任した滝井繁男弁護士でした。
(2)ア 原審の認定に経験則又は採証法則に反する違法があるとして破棄差戻しの判断をした最高裁判例としては以下のものがあります。
(医療訴訟関係)
 最高裁昭和60年12月13日判決
 最高裁平成 9年 2月25日判決

・ 最高裁平成11年 3月23日判決
 最高裁平成18年 1月27日判決
 最高裁平成18年11月14日判決

・ 最高裁平成19年 4月 3日判決
(その他の訴訟関係)

・ 最高裁平成16年 2月26日判決(前述したものです。)
 最高裁平成22年 7月16日判決
 最高裁令和 3年 5月17日判決
イ 最高裁平成19年 4月 3日判決の原審である仙台高裁平成18年6月15日判決(本人訴訟の患者側勝訴。裁判長は25期の大橋弘裁判官)につき,君の瞳に恋してる眼科ブログ「大橋弘裁判長トンデモ訴訟指揮事件」には,「遺族側が提出した証拠は、戸籍謄本、死亡診断書、遺族自筆の書面2通が全てであり、その書面2通にしても、素人の目に映った事実経過と、病院をなじる文言程度のもので、およそ医学的に筋道を立てて何かを主張したという書面ではありませんでした。」と書いてあります。
(3)ア  名古屋大学学術機関リポジトリに載ってある「民事訴訟における事実認定の違法」(筆者は27期の加藤新太郎裁判官)には以下の記載があります(リンク先の14頁)。
    裁判官は、論理法則・経験則に従わなければならない。したがって、論理法則・経験則に反する事実認定、合理的理由に基づかない事実認定は、違法と評価される。
    経験則違背ないし採証法則違背があるとする最高裁判決は、少なくない。
    最高裁は、平成民事訴訟法下において、経験則の認定や適用の誤りは法令違反であり、「法令の解釈に関する重要な事項」に該当する場合があるとの判断を示している。
イ きっかわ法律事務所HPに載ってある「事実認定と裁判官の心証形成」(筆者は21期の中田昭孝裁判官)17頁には「第9 元最高裁判事の感想」として「*経験則違反を理由とする上告受理事件は多いが、最高裁では、著しい経験則違反の事案でないと取り上げられない。」と書いてあります。
ウ 最高裁令和2年11月27日判決は,公認会計士協会から上場会社監査事務所名簿への登録を認めない旨の決定を受けた公認会計士らにつき,その実施した監査手続が当該監査において識別すべきリスクに個別に対応したものであったか否か等の点を十分に検討することなく当該決定の前提となる監査の基準不適合の事実はないとして当該決定の開示の差止めを認めた原審の判断に違法があるとされた事例です。
(4) 「大阪高等裁判所第7民事部における上告事件の処理の実情」には以下の記載があります(判例タイムズ1409号45頁)。
    最高裁判所の民事・行政事件の破棄判決については,毎年,当時在籍していた最高裁判所調査官が判例時報に破棄判決等の実情紹介をしており(平成25年度については,伊藤正晴=上村考由「最高裁民事破棄判決等の実情(上)-平成25年度-」判時2224号3頁,同「最高裁民事破棄判決等の実情(下)-平成25年度-」判時2225号3頁),民集及び裁判集に登載されない破棄判決(経験則違反ないし採証法則違反,釈明権の不行使,審理不尽等を理由に破棄した判決は,民集ないし裁判集に登載されないことがほとんどである。)については,判決理由の全文が掲載されており,執務の参考になる(事実認定ないし訴訟指揮の在り方を学ぶ上でも参考にな る。)。
(5) 月刊大阪弁護士会2020年1月号の「元最高裁判所判事・元弁護士 鬼丸かおるさん」に以下の記載があります。
  (山中注:上告受理申立理由として)経験則違反という主張も非常に多いのですが、残念ながら今まで経験則違反を正面から最高裁判所が認めたことは1回もありません。


8 上告理由に関する判例
(1) 第一審判決を取り消し,事件を第一審に差し戻す旨の控訴審判決があつた場合においては,控訴人は,取消の理由となつた右判決の判断の違法をいうときに限り,右判決に対して上告の利益を有します(最高裁昭和45年1月22日判決)。
(2)ア いわゆる上告理由としての理由不備とは,主文を導き出すための理由の全部又は一部が欠けていることをいうものですから, 抗弁をいれながらこれに対する再抗弁を摘示せずその判断を遺脱した原判決の違法は,上告理由としての理由不備に当たりません(最高裁平成11年6月29日判決)。
    そのため,「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと」は再審理由である(民訴法338条1項9号))ものの,民訴法312条2項6号の上告理由には該当しない(基本法コンメンタール(民事訴訟法3)88頁参照)ところ,破棄判決の実例としては,最高裁平成19年2月20日判決(判例時報2019号14頁)及び最高裁平成26年11月4日判決(判例時報2258号12頁)があります。
イ 上告裁判所は,判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が判決をした裁判官として署名押印していることを理由として原判決を破棄する場合には,必ずしも口頭弁論を経ることを要しません(最高裁平成19年1月16日判決)。
(3) 当事者の主張が法律構成において欠けるところがある場合においても,その主張事実を合理的に解釈するならば,正当な主張として構成することができ,当事者の提出した資料のうちにもこれを裏付けうるものがあるときは,当事者にその主張の趣旨を明らかにさせたうえ,これに対する当事者双方の主張立証を尽くさせるべきであり,これをすることなく,請求を排斥することは,釈明権の行使について違法があり,ひいては審理不尽の違法があります(最高裁昭和44年6月24日判決)。
(4) 上告棄却決定において,当事者の死亡に伴う訴訟終了宣言をした事例として,最高裁令和2年12月11日決定(判例秘書に掲載)があります。
(5) 54期の村田一広裁判官が執筆した「最高裁判所における口頭弁論の実情等について」(民事訴訟雑誌68巻(2022年3月20日付)68頁には,44番の注釈として以下の記載があります
 最高裁判所においては、従前、上告人等の上告理由に曖昧・不明確な部分があったとしても、あえて期日外釈明を実施すること等をしないで判断を示すことが少なくなかったと解される(論旨については、その趣旨を善解した上、「この趣旨をいうものとして理由がある」と言及している例も多い。)。

9 上告理由書等に対する最高裁判事経験者のコメント
(1) 古賀克重法律事務所ブログ「最高裁裁判官から見た弁護活動のポイントとは、大橋正春元最高裁判事講演会」には以下の記載があります。
 少なくとも現在提出されている書面は長すぎるという認識では最高裁裁判官は一致している。弁護士側としては、最高裁の裁判官は記録を読んでいないのでは・・という不安があるんだと思う。しかし調査官は全記録を読む。裁判官も原判決は読んで一定の印象を持ちながら、上告理由書ないし上告申立書を読む。
(2) 月刊大阪弁護士会2020年1月号の「元最高裁判所判事・元弁護士 鬼丸かおるさん」に以下の記載があります。
 刑事事件と同様に考えて(山中注:最高裁判所は)民事事件でも事実を見てくれるだろうと思って、理由不備、理由齟齬ということをおっしゃる方がものすごく多いのですが、民事事件では改めて事実は見ることはしません。理由不備、理由齟齬というのは、判決の中で整理された当事者の主張のところ、それから判決の理由のところを比べてみて、その判決書の主文が判決中の理由からは導かれない不備や齟齬があるというだけであって、当事者の言っていることと比べることはありません。


10 関連記事その他
(1) 今井功弁護士(平成16年12月から平成21年12月までの間,最高裁判所判事)は,自由と正義2013年6月号13頁において以下のとおり書いています。
  民事事件は,各小法廷で年間1,000件を超えているから,各事件につき,判決書を作成して署名押印し,いちいち法廷を開いて言渡しをすることは,大変な無駄である。旧法時代は,弁論が開かれない上告棄却判決の多くは,傍聴人のいない法廷で,言渡しがされており,当時多くの裁判官から何とかならないかといわれていたものである。
(2) 最高裁判所の裁判書で用いられる具体的な表示の方法が記載されている文書として「裁判書の表示ハンドブック」が存在しますものの,当該文書は司法行政文書開示手続の対象ではありません(平成30年度(最情)答申第50号(平成30年11月16日答申))。
(3)ア 上告審は法律審ですから,上告審において独立当事者参加の申出をすることはできません(最高裁昭和44年7月15日判決)。
イ 補助参加人が上告を提起した後に被参加人のした上告は,二重上告として不適法です(最高裁平成元年3月7日判決)。
(4) 「違憲審査-その焦点の定め方」(2017年5月2日付)(筆者は24期の千葉勝美)62頁には以下の記載があります。
    一般法理は、それ自体で一人歩きをし、下級裁判所や行政庁、個人や社会経済団体等がこれを踏まえた対応を積み上げることになるが、その後になって新しい紛争の出現により一般法理を修正・改変することがあると、射程の長い一般法理を掲げる処理は、結果的に法的安定性を欠くことになり、当該法理の寿命を逆に短くするということにもなって、このような事態は「判例」というものに対する信頼性を損なうことにもなりかねない。
(5) 50期の武藤貴明裁判官は,判例タイムズ1399号(2014年6月発行)に「最高裁判所における民事上告審の手続について」を寄稿しています。
(6) 簡裁民事通常訴訟事件の控訴審判決に対して上告する場合,上告裁判所である「高等裁判所」宛の「上告状」を地方裁判所に提出する必要があります(民事訴訟法314条1項)ところ,高等裁判所に対する上告は判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときもすることができます(民事訴訟法312条3項)。
    そのため,「上告状兼上告受理申立書」という表題の書面を地方裁判所に提出した場合,形式的にいえば,適法な上告の提起とそもそも不適法な上告受理の申立てがなされたことになります(判例タイムズ1409号40頁参照)。
(7)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 調書決定事務処理要領(平成27年4月1日付)
・ 最高裁判所民事事件記録等閲覧等事務処理要領(平成27年4月1日付)
・ 人事訴訟事件における書記官事務処理要領(平成27年4月1日付)
・ 平成24年12月21日付の上告受理申立理由書
→ 仙台弁護士会出身の平成17年度日弁連副会長の必要経費に関する,東京高裁平成24年9月19日判決に対するものであり,最高裁平成26年1月17日決定により上告不受理となったものの,上告受理申立理由書の書き方自体は非常に参考になりますし,「結語」部分(PDF31頁)については法令の条文を置き換えることで,そのまま使い回しができると思います。
→ 国税庁HPの「最高裁不受理事件の意義とその影響」において,「弁護士会費懇親会事件」として紹介されています。
・ 事件記録の保管及び送付に関する事務の取扱いについて(平成7年3月24日付の最高裁判所総務局長通達)
・ 事件記録の保管及び送付に関する事務の取扱いについて(平成25年7月26日付の最高裁判所大法廷首席書記官の指示)
・ 民事上訴事件記録の送付について(平成30年6月29日付けの最高裁判所訟廷首席書記官補佐の事務連絡)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁の既済事件一覧表(民事)
・ 最高裁の破棄判決等一覧表(平成25年4月以降の分),及び最高裁民事破棄判決等の実情
・ 最高裁判所に係属した許可抗告事件一覧表(平成25年分以降),及び許可抗告事件の実情

・ 最高裁判所事件月表(令和元年5月以降)
・ 2000円の印紙を貼付するだけで上告受理申立てをする方法
・ 上告不受理決定等と一緒に送られてくる予納郵券に関する受領書
・ 控訴審に関するメモ書き
・ 最高裁判所調査官
・ 最高裁判所判例解説


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