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裁判上の和解での発言は判決の資料になるか―交互面接・裁判上の自白・協議用書面の区別(AI作成)

裁判上の和解で解決条件を提案したことと,訴訟上の事実を認めたことは,分けて確認する必要がある。交互面接で裁判官が聞いた発言を,そのまま争いのある事実の認定に使うことはできない。他方,協議用の書面が後に書証として提出された場合は,提出・証拠調べの手続と記載内容の意味を別に検討することになる。

第1 最初に確認する三つの場面

場面判断の出発点確認する記録
裁判上の和解での交互面接協議中の発言を直接,判決の事実認定に用いない期日の目的,発言の文脈,誰が立ち会ったか
口頭弁論・弁論準備手続での事実主張裁判上の自白・擬制自白の成立要件を確認する準備書面,認否,調書,弁論準備手続の結果陳述
協議用書面の書証提出証拠調べの対象となるかと,内容が何を示すかを分ける提出書面の全文,立証趣旨,作成目的・条件

確認すべき点は,裁判官がその情報を知っているかだけではない。どの手続で,どの資料に基づいて,どの事実を判断しようとしているかである。同じ日に和解協議と争点整理が行われた場合も,協議中の譲歩と訴訟上の陳述を区別する。

第2 自由心証主義にも資料の範囲がある

1 民事訴訟法247条の出発点

民事訴訟法247条は,判決の事実認定について,口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果をしん酌する構造を定めている。自由心証主義は,これらの資料をどう評価するかに関わる。裁判官が訴訟に関連して知った情報を,すべて無条件に判決の資料へ取り込めるという意味ではない。

2 和解の試みと事実認定の手続を分ける

民事訴訟法89条は裁判所による和解の試みを認めている。しかし,和解協議での発言が,当然に口頭弁論の陳述や当事者尋問の供述になるわけではない。

法務省の令和2年司法試験の出題の趣旨13頁・民事系第3問設問2は,交互面接による和解手続中の発言が,247条の定める資料に当たらないことを説明するよう求めている。採点実感19~20頁も,同じ資料の区別を重視している。これは当該問題についての公式説明であり,個別の裁判例の判示を引用したものではない。

第3 交互面接の発言を直接使えない理由

1 解決のための提案と事実の承認は違う

和解協議では,争いを早く終えるために,訴訟上は争っている前提を仮に受け入れたり,条件を組み合わせて譲歩したりする。提案の一部分だけを事実の承認として扱えば,当事者は不利益な認定を恐れて自由に提案しにくくなる。法務省の前記公式説明も,この発言萎縮の問題を指摘する。

2 他方の当事者に反論の機会がない

交互面接では,一方の当事者が他方の発言を直接聞いていないことがある。その発言を争いのある事実の認定に用いれば,発言の趣旨や前提を確かめ,信用性を争う機会が確保されないまま判断されるおそれがある。自由な発言の確保と,情報共有・反論機会の確保は,別々に点検すべき理由である。

第4 自白と書証の問題へ移る場合

1 訴訟上の陳述が別に行われたか

民事訴訟法179条は,裁判所において当事者が自白した事実について証明を不要とする。159条は,口頭弁論で相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合の擬制自白を定め,170条5項は159条等を弁論準備手続に準用する。173条は弁論準備手続の結果の陳述を定めている。

したがって,和解協議で仮定を示しただけか,事実主張として正式に陳述したかを,書面と手続の経過から確認する必要がある。「自白として扱わない」と書き添えたことだけで,実際に行った訴訟上の陳述の効果を必ず消せるわけではない。成立した自白の撤回の問題は,協議中の発言を直接心証資料にできるかという問題と分けて検討する。

2 協議用書面が書証として提出されたか

協議に使った試算書や説明書が後に書証として提出された場合には,民事訴訟法219条等に基づく提出・証拠調べの手続,立証対象及び内容の評価を確認する。和解で示した資料であるという理由だけで,後の書証提出について証拠排除が必ず認められると決めることはできない。

他方,書証として扱われたことから,書面中の仮定や提示額がそのまま真実になるわけでもない。228条4項の署名・押印による推定は文書の成立の真正に関するものであり,記載内容の真実性を推定する規定ではない。協議用という作成目的,条件,前後の記載及び他の証拠との整合性を検討する。具体的な書面の証拠排除の可否は,提出目的と手続の経過に応じて判断する必要がある。

第5 代理人が確認しておく事項

①期日前に,訴訟上の主張,認める事実,和解のために仮定する条件を分ける。協議用の書面には,目的と前提を明示し,主張額と提示条件を区別する。これは誤読を避ける運用上の工夫であり,一律の証拠排除を生む方式ではない。

②期日では,和解協議と訴訟上の主張・証拠調べの場面を確認する。争点整理へ移る場合には,正式な認否と協議上の仮定が混同されていないかを確認する。

③期日後は,提出した書面,調書及び弁論準備手続の結果の整理を照合する。協議のための提案が訴訟上の事実承認として整理されている疑いがあれば,どの発言のどの前提が異なるかを具体的に説明する。既に自白が成立したかと,単なる記録の誤読かを区別する。

④相手方が協議資料を提出したときは,資料の全文,配布先,作成時点,仮定した条件,立証趣旨を確認する。裁判官が個別面接で聞いただけの発言と,正式に提出され証拠調べの対象となった資料を混同しない。

第6 関連記事

和解のために出した試算書は後の訴訟で不利に使われるか――裁判上の自白との違いと,自分の書面を書証にするときの注意では,書面中の上限・仮定・提示額の読み方と提出時の注意を説明している。

令和2年度司法試験民事系第3問の模範解答と評価項目の設問2では,和解発言の心証資料性を公式資料に沿って整理している。

第7 出典と対象範囲

法令:民事訴訟法89条,159条,170条5項,173条,179条,219条,228条4項,247条。令和8年10月9日に,e-Govが現行施行版として提供する条文を確認した。

公式説明:令和2年司法試験論文式試験出題の趣旨13頁・民事系第3問設問2,令和2年司法試験の採点実感(民事系科目)19~20頁・同設問2。頁はPDFの物理頁である。試験の公式説明を,判決原文又は個々の事件の事実認定と同一視していない。

対象は,裁判上の和解の交互面接での発言と,訴訟上の陳述・書証提出との区別である。裁判外の交渉,民事調停,裁判外紛争解決手続,秘密保持の合意に基づく資料の取扱いには,それぞれ別の根拠と条件の確認が必要である。