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高等裁判所支部の設置・廃止の歴史―函館支部・那覇支部と臨時司法制度調査会(AI作成)

第1 高裁支部の歴史を読むための基本

1 現在の6支部と,かつて存在した函館支部

高等裁判所支部の歴史は,戦後の設置,昭和39年の原則廃止の提言,函館支部の廃止,沖縄復帰に伴う那覇支部の設置を分けて読む必要がある。
廃止の提言があったからといって,全国の高裁支部が一斉に廃止されたわけではない。

令和8年10月9日現在,高等裁判所支部設置規則の別表には,金沢,岡山,松江,宮崎,那覇及び秋田の6支部が掲げられている。
札幌高裁函館支部は昭和46年8月1日施行の規則改正により廃止され,その翌年の沖縄復帰に際して福岡高裁那覇支部が設けられた。
現在の一覧,担当区域及び取扱事件は,高等裁判所支部を参照されたい。

2 規則の日付,施行日及び開庁日を区別する

高裁支部の設置根拠は,裁判所法22条及び高等裁判所支部設置規則である。
規則の制定・改正の日付と,その効力が生じる施行日は一致するとは限らない。
また,庁舎の完成や実際の開庁についての沿革資料は,法令上の設置とは別の出来事を記載する場合がある。

本記事では,高等裁判所支部設置規則の掲載PDFの本文・附則・別表と,国会答弁により経過を整理する。
昭和63年・平成2年の地家裁支部,簡易裁判所及び家裁出張所の再編は,別の記事で扱う。

第2 戦後の支部設置と取扱事務の変更

1 遠方の当事者の不便を緩和するための制度

平成11年3月23日の衆議院法務委員会答弁(発言20)は,戦後の高裁支部の設置を,当事者の利便との関係で説明している。
裁判所法の下で,簡易裁判所の刑事事件の控訴や,地方裁判所の執行・破産関係の判断に対する抗告などが高裁に向かうようになり,従前は県単位の地方裁判所で完結していた不服申立てについて,遠方の高裁本庁に出向く負担が生じたという説明である。

同答弁は,当時の交通事情・経済事情を考慮し,昭和23年から昭和24年にかけて金沢,岡山,松江,宮崎,秋田及び函館に支部を設けたと述べている。
これは制度成立の理由についての裁判所側の説明であり,各支部の現在の存置の必要性をそのまま評価したものではない。

2 主要な規則改正の施行日

規則の日付施行日主な経過
昭和23年2月20日・規則第1号昭和23年3月1日支部設置規則の制定。松江支部・函館支部の設置
昭和23年5月10日・規則第5号昭和23年5月15日金沢支部の設置
昭和23年8月31日・規則第18号昭和23年9月1日宮崎支部の設置
昭和23年9月18日・規則第19号昭和23年10月1日岡山支部の設置
昭和24年3月5日・規則第4号昭和24年3月10日秋田支部の設置
昭和26年5月15日・規則第5号昭和26年6月1日支部の取扱事務を定める規定の改正
昭和46年6月28日・規則第10号昭和46年8月1日函館支部の廃止
昭和47年5月2日・規則第2号昭和47年5月15日沖縄復帰に伴う那覇支部の設置
平成17年2月14日・規則第7号平成17年4月1日知財高裁に対応し,本則を第1条とし,第2条を追加

施行日は,前記規則PDFの附則による。
例えば金沢支部に関する規則の日付は昭和23年5月10日であるが,附則が定める施行日は同月15日である。
日付を引用するときは,何の日付かも併記する必要がある。

3 昭和26年改正と第一審事件

現在の同規則1条2項は,裁判所法16条3号及び4号に掲げる事項を除く事務を支部で取り扱うと定めている。
同項には昭和26年規則第5号による全部改正の注記があり,同改正の附則には,施行時に本庁で取り扱っていた事項を引き続き本庁で取り扱う経過措置がある。

したがって,高裁支部を単に「控訴だけを扱う裁判所」と理解するのは適切ではない。
現在の取扱事件の説明では,控訴・抗告,法律が高裁に第一審の裁判権を与える事件,本庁に留保される事項を分けて確認する必要がある。

第3 臨時司法制度調査会の廃止提言

1 昭和39年の決議要目

司法制度改革審議会第2回配布資料「臨時司法制度調査会について」によれば,調査会は昭和37年9月1日から2年間設置され,昭和39年8月28日に意見書を決定した。
同資料の別添3「決議要目」第八「裁判所の配置等」は,高裁支部を原則として廃止することを掲げている。

同じ決議要目には,地家裁支部の整理統合,簡裁の名称変更,簡裁の整理統合や事務移転も掲げられている。
これらはそれぞれ別の制度に関する提言であり,一つの提言があったことを理由に,後年のあらゆる裁判所再編をその直接の実施とみなすことはできない。

2 昭和42年の裁判所側の説明

昭和42年4月18日の衆議院法務委員会答弁(発言5)は,交通の便が改善した地域では支部存置の必要性を見直す議論があったと説明している。
小規模支部では少数の裁判官が民事・刑事双方を担当しなければならず,高裁段階の専門性や裁判官の負担をどう確保するかという問題も挙げられた。

一方,同答弁は,廃止の影響を検討し,規則制定諮問委員会への諮問や日弁連との協議を経て慎重に進めたいと述べている。
廃止を検討する議論の説明と,特定支部の廃止が既に決定したという事実は区別しなければならない。

3 日弁連の反対

昭和42年5月27日の「司法制度の確立に関する宣言」の提案理由は,日弁連が高裁支部の廃止などに反対する決議と運動を行ってきたと述べている。
同資料は日弁連側の立場を示すものであり,裁判所側の説明と並べることによって,当時の意見の対立を理解できる。

第4 札幌高裁函館支部の廃止

1 函館控訴院と戦後の函館支部は別の組織である

札幌高等検察庁の沿革及び函館地方検察庁の沿革は,大正10年12月に函館控訴院が札幌に移転し,札幌控訴院となった経過を説明している。
戦後に設置された札幌高裁函館支部は,この控訴院と同一の組織ではない。

なお,函館控訴裁判所の明治期の設置について,両沿革には明治14年と明治15年1月という異なる記載がある。
この違いだけから,制定・施行・開庁の違いによるものと断定することはできないため,本記事では設置日を一つに確定しない。

2 昭和46年8月1日施行の廃止

函館支部は昭和23年3月1日に設置され,昭和46年8月1日施行の規則改正により廃止された。
同年7月31日限りの廃止という表現は,この施行日との関係を示すものである。

昭和46年7月24日の参議院法務委員会(発言39・40)では,官報に掲載された規則改正と施行日が質疑の対象になった。
委員は,地元の存置対策協議会や日弁連・単位弁護士会から反対意見が出ていることを指摘し,住民の意見聴取や法曹三者との協議について質問している。
これは委員の質疑として記録された内容であり,反対文書の全件や地元関係者の見解を網羅した記録ではない。

3 廃止理由の説明とその評価

前記平成11年の答弁は,函館支部の廃止について交通事情の好転と事件数の減少を理由として説明している。
しかし,交通や事件数についての裁判所側の説明だけから,住民の移動負担が解消したことや廃止が適切であったことまで証明されるわけではない。
地域への影響を評価するには,当時の交通,事件数,費用,利用者の事情を別に確認する必要がある。

第5 那覇支部の設置と,その後の配置見直し

1 沖縄復帰に伴う那覇支部の設置

昭和47年5月15日の沖縄復帰に伴い,福岡高裁那覇支部が設けられた。
高裁支部設置規則の昭和47年改正の附則には,福岡高裁が承継した所定の事件を那覇支部で取り扱う経過措置も定められている。

前記平成11年の答弁は,沖縄の地理的な特殊事情による高裁設置の要望を受け,支部設置規則を改正して那覇支部を設けたと説明している。
高裁本庁そのものの設置と,福岡高裁の支部を那覇に置くこととは,法的な位置付けが異なる。

2 昭和50年の答弁

昭和50年6月4日の衆議院法務委員会答弁(発言207)は,高裁支部について過去に整理できたのは函館だけであったと説明した。
同時に,裁判所の配置は国民の権利・利便に密接に関係するため,地元や関係機関との十分な話合いなしに容易に実現するものではないと述べている。
この答弁の「過去」は昭和50年当時を指し,その後の全期間の再編状況を説明したものではない。

3 昭和59年の答弁は臨司提言の直接実施を否定した

昭和59年3月9日の答弁(発言192)は,当時の配置見直しの問題提起について,臨司の提言をそのまま具体化しようとしているわけではないと説明した。
高裁支部の廃止,乙号支部の原則的廃止,簡裁の名称変更などは考えていないとも述べている。

昭和39年の提言,昭和46年の函館支部廃止,昭和59年以降の配置見直しは,時期と対象,実施の有無を分けて読む必要がある。
地家裁支部などの後年の再編を知るには,昭和63年・平成2年の統廃合史を参照されたい。

第6 関連記事及び出典

① 高等裁判所支部
② 裁判所支部の機能拡充と地域司法アクセス
③ 臨時司法制度調査会の弁護士制度改革

① 裁判所法22条,高等裁判所支部設置規則の本文・附則・別表(前掲PDFの通し1頁~2頁)
② 司法制度改革審議会第2回配布資料「臨時司法制度調査会について」別添3・決議要目第八(首相官邸公開資料の保存ページ)
③ 昭和42年4月18日,昭和46年7月24日,昭和50年6月4日,昭和59年3月9日及び平成11年3月23日の各国会会議録(本文の発言別リンク参照)
④ 日弁連「司法制度の確立に関する宣言」(昭和42年5月27日)及び提案理由
⑤ 札幌高等検察庁及び函館地方検察庁の沿革