高等裁判所支部


目次
1 高等裁判所支部の設置根拠及び権限
2 高裁支部の設置及び廃止の年月日
3 かつて存在した札幌高裁函館支部
4    高裁支部の一覧と管轄区域
5 高裁の司法行政ポストの格付け
6 鹿児島県弁護士会の申入書
7 高等検察庁支部(高検支部)
8 臨時司法制度調査会意見書(昭和39年8月28日付)の記載
9 高等裁判所支部に関する国会答弁
10 関連記事その他

1   高等裁判所支部の設置根拠及び権限
(1)   通常の高等裁判所支部(高裁支部)は,昭和23年3月1日施行の高等裁判所支部設置規則(昭和23年2月20日最高裁判所規則第1号)に基づいて設置されています。
    高裁支部は,地方裁判所が控訴審として下した民事事件の判決(レ号事件の判決)に対する上告事件を取り扱うことはできません(高等裁判所支部設置規則1条2項)。
(2) 知的財産高等裁判所(知財高裁)は,東京高裁の特別の支部として設置されています(知的財産高等裁判所設置法2条柱書)。
(3) 裁判所構成法に基づく控訴院には支部がありませんでした。

2 高裁支部の設置及び廃止の年月日
(1) 高裁支部の設置年月日
ア   昭和23年3月1日,広島高裁松江支部及び札幌高裁函館支部が設置されました。
イ   昭和23年5月15日,名古屋高裁金沢支部が設置されました。
ウ   昭和23年9月1日,福岡高裁宮崎支部が設置されました。
エ   昭和23年10月1日,広島高裁岡山支部が設置されました。
オ   昭和24年3月10日,仙台高裁秋田支部が設置されました。
カ   昭和47年5月15日,福岡高裁那覇支部が設置されました。
キ 平成17年4月1日,知財高裁が設置されました。
(2) 高裁支部の廃止年月日
    昭和46年7月31日,札幌高裁函館支部が廃止されました。

3 かつて存在した札幌高裁函館支部
(1)   明治14年10月6日,函館控訴裁判所が設置され,明治19年5月4日に函館控訴院となったものの,大正10年12月,控訴院が函館から札幌に移転した結果,札幌控訴院となりました。
    つまり,大正10年12月までの函館には,現在の高等裁判所に相当する控訴院が設置されていました(函館控訴院ノ移転ニ関スル法律(大正10年4月8日法律第51号)及び大正10年12月6日勅令第453号参照)。
(2) 昭和23年3月1日から昭和46年7月31日までの間,札幌高等裁判所函館支部が設置されていました(昭和46年6月28日最高裁判所規則第10号参照)。


4 高裁支部の一覧と管轄区域
(1) 知財高裁
    ①全国の技術型の知財事件(民訴法6条3項・知財高裁設置法2条1号)及び②東京高裁管内の非技術型の知財事件(知財高裁設置法2条1号)については,知財高裁が担当しています。
(2)   名古屋高裁金沢支部
    石川県,富山県,福井県
(3)   広島高裁岡山支部
    岡山県
(4) 広島高裁松江支部
    島根県(地裁・家裁浜田,益田支部,家裁川本出張所地域を除く),鳥取県
(5)   福岡高裁宮崎支部
    宮崎県,鹿児島県,大分県(地裁・家裁佐伯支部地域)
(6)   福岡高裁那覇支部
    沖縄県
(7)   仙台高裁秋田支部
    秋田県,山形県(地家裁の鶴岡支部及び酒田支部地域),青森県(地家裁の弘前支部及び五所川原支部地域)


5 高裁の司法行政ポストの格付け
    高裁の司法行政ポストの格付けは,高裁長官>知財高裁所長>知財高裁部総括>高裁本庁部総括>部が設置されている高裁支部の支部長>高裁支部部総括>部が設置されていない高裁支部の部総括です(外部HPの「高裁支部長就任者のキャリアパス分析」参照)。

6 鹿児島県弁護士会の申入書
(1)   鹿児島県弁護士会は,最高裁判所に対し,平成18年3月2日,「鹿児島地方裁判所での出張開廷等に関する申入書」を提出しました。
(2) 申入書における申入の趣旨は「福岡高等裁判所宮崎支部管轄の鹿児島地方裁判所管内の民事控訴事件について、鹿児島地方裁判所において出張開廷等なんらかの対策を実施されたい。」となっています(誤字と思われるものを補正しました。)。

7 高等検察庁支部(高検支部)
    昭和23年3月1日施行の検察庁法第二条第四項の規定による各高等裁判所支部に対応して各高等検察庁支部を設置する庁令(昭和23年2月21日法務庁令第1号)に基づき,6つの高裁支部に対応して6つの高検支部が設置されています。

8 臨時司法制度調査会意見書(昭和39年8月28日付)の記載
(1) 臨時司法制度調査会意見書(昭和39年8月28日付)の決議要目には以下の記載があります。
第八 裁判所の配置等
 一 高等裁判所支部の廃止
   高等裁判所の支部を原則として廃止すること。
 二 地方裁判所・家庭裁判所支部の整理統合
   地方裁判所及び家庭裁判所の支部を整理統合して、甲号、乙号の別を廃し、現在の乙号支部を原則として廃止すること。
 三 簡易裁判所の名称の変更
   簡易裁判所の名称を「区裁判所」(仮称)に改めること。
 四 簡易裁判所の整理統合
   人口、交通事情等の社会事情の著しい変動に伴い、簡易裁判所を整理統合することを考慮すること。
 五 簡易裁判所の事務移転
   最高裁判所は、簡易裁判所の調停を除く事務の全部又は一部を他の簡易裁判所に取り扱わせることができるものとすること。
(2) 臨時司法制度調査会意見書本文には以下の記載があります。
(156頁及び157頁の記載)
(高等裁判所支部の廃止、地方裁判所・家庭裁判所支部の整理統合)
高等裁判所の支部は、戦後の交通の不便、当時の経済事情等を考慮し、昭和二三年から昭和二四年にかげて設けられたものであるが、現在(山中注:昭和39年8月時点)においては、すでに社会事情も著しい変化を遂げ、交通事情も好転しているので、なおこれらを存置する必要があるかどうかが問題となる。

    また、地方裁判所の支部は、裁判所法施行の際、経過的に裁判所法施行令によってその当時設置されていた各区裁判所の所在地に設けたものとされ、地方裁判所及び家庭裁判所支部設置規則においても、原則として、この状態を引き継ぎ、家庭裁判所の支部も同一の地に設けられることとなったものであるが、現在、これらの支部のうち、特に権限乙号のものについては、事件数が少なく、限られた裁判官数をもつてしては、これにあまねく裁判官を配置することが必ずしも合理的でないため、裁判官が配置されていない庁が相当の数にのぼり、また、合議体を構成するに足りる員数の裁判官が配置されていない権限甲号の支部も相当数ある。その結果、これらの裁判官が配置されていない庁等における事件処理のために、他の庁(本庁又は他の支部)から出張する裁判官の時間的な損失も無視することができず、これらは訴訟を遅延させる原因ともなつている。
    そこで、裁判所全体の配置を適正化し、事務処理の能率、適正化を図る見地から(イ)高等裁判所の支部を廃止すること及び(ロ)地方裁判所及び家庭裁刺所の支部については、権限による区別を廃し、かつ、現在の権限乙号の支部は、一部事件数の多いものを除いて廃止するとともに、権限甲号の支部のうち事件数の少ないものを廃止して、整理統合を図ることが適当ではないかという問題があるが、この問題については、他面、国民の利便を十分考慮して慎重に決定されるべきであるという要請も忘れてはならない。
(160頁の記載)
(高等裁判所支部の廃止)
審議の過程においては、(イ)本頂を含め、裁判所の配置の問題は、関係事務当局において検討すべき問題であって、当調査会で取り上げるべき問題ではないとする意見、(ロ)高等裁判所の支部を廃止することを可とするが、これに代え、高等裁判所の裁判官が管内の各地方裁判所の所在地に巡回して裁判をする制度を採用すべきであるとの意見があったほかは、前記問題の所在に摘記した趣旨により高等裁判所の支部を廃止することに賛成する意見が多数を占めた。(ハ)支部において事件処理に十分な裁判官の数を得られないまま裁判を受けている現状よりも、本庁においてより適正な裁判を受けることの方が国民にとっても利益であるとの意見も述べられた。なお、(ニ)原則として支部の廃止に賛成するが、すべての支部を一律に廃止することには問題かあるので、個々に具体的事備を検討した上、必要欠くべからざる支部は存置すべきであるとする意見があった。
以上のような検討の結果、当調査会は、この問題については一致した結論を得ることができなかったので、採決の結果、三分の二以上の多数の意見により、前記結論の一のとおり決定した。


9 高等裁判所支部に関する国会答弁
(1) 昭和42年4月18日の国会答弁

・ 寺田治郎最高裁判所総務局長は,昭和42年4月18日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① 高等裁判所の支部につきましては、先ほどの臨司の意見書(山中注:臨時司法制度調査会意見書(昭和39年8月28日付)のこと。)にも指摘されておるわけでございます。
    そのときに出ましたいろいろの議論の中の一番有力と申しますか考え方の中心は、最近、高等裁判所の支部についてもかなり交通の便利になったところがあるので、必ずしも支部を存置する必要がないのではないか。
    特に高等裁判所の支部の中の非常に小さなものにつきましては、実際上定員を三人くらいしか配置できないわけでございます。
そうなりますと自然民事事件と刑事事件の双方を担当されるということになるわけでございます。

② しかしながら、これは私どもの裁判官としての経験から申しましても、簡易裁判所とかまた地方裁判所程度ならばともかくも、高等裁判所において民、刑双方を担当するということは、裁判官としても非常に負担が重く、また自信の持てない面があるわけでございますし、また国民なり当事者の側からも、専門的な裁判官の裁判を受けるという面で、いわゆる権利の保護という面からも、必ずしも近くにあるということが便利であるというばかりではないのではないかというような議論であったわけでございます。
    そういう関係で、いろいろ実態調査もし、またこれを廃止した場合の影響等も検討いたしたのでございますが、これを廃止しますということも非常に大きな問題でございますし、私どものほうには、規則については規則諮問委員会というものもございますので、さような委員会にはかりまして慎重な手続で進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
③ しかしながら、その諮問委員会に付するにつきましても、まずもって日弁連と十分にお話し合いをした上でというふうに考えておりまして、現在までのところ、まだ日弁連のほうでは、やはりかなり問題ではないかというような御意向が強いようでございますので、もう少しいろいろお話し合いをし、また現地の御納得が得られるような手順と申しますか、時期を見ました上でというふうに考えておる次第でございます。
(2) 昭和59年3月9日の国会答弁
・ 9期の山口繁最高裁判所総務局長は,昭和59年3月9日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① 臨時司法制度調査会が、公的な機関としまして二年にわたる慎重な御審議の結果公表された御意見の中に、神崎委員御指摘のような整理統合の問題、事務移転等の問題が含まれているわけでございます。これらの御意見は、委員の方々の英知の結集あるいは所産でございまして、いろいろな見方もあろうかとは存じますが、一つの客観的なすぐれた御意見でございまして、裁判所としても十分にこれを尊重すべきであると考えていたわけでございます。
 しかしながら、今回私どもがいたしております問題提起は、この臨司の御意見とは別個に、戦後の裁判所制度発足以来約四十年、臨司の意見書発表以来もう既に二十年近く経過しているわけでございまして、その間における人口動態あるいは交通事情の変化というものはまことに著しいものがございますのに、裁判所の配置自体は四十年前あるいは二十年前と全く変わっていない。そういうところから、事件の偏在現象であるとか、いろいろな問題が生じてきているわけでございまして、そのことによって裁判所を御利用いただく国民の方々に御迷惑をおかけしている事態が果たしてないであろうか。裁判所の配置を現在及び予想できる将来の社会事情にマッチするように見直しをして、司法全体の充実を図るのが国民の負託にこたえるゆえんではないと考えまして、問題提起をしたわけでございます。
② 臨司意見書が指摘をしております問題状況がますます拡大深刻化していることを背景にいたしましての問題提起でございますので、その意味では臨司の提言と全く無関係のものとは言い切れないかもしれませんけれども、我々といたしましては、臨司の提言をそのまま具体化しようと考えているわけではございません。基本的には、三者協議会あるいは法制審議会等の御審議を経て改めて方向づけがなされることを期待しているわけでございます。
 その結論と臨司の提言をどのように評価するかの問題はまた別にあろうかとは思いますけれども、私どもといたしましては、例えば、臨司の提言で御指摘のございましたような高裁支部の廃止あるいは乙号支部の原則的廃止あるいは簡裁の名称変更などは考えておりませんし、現在の簡易裁判所の性格あるいは理念というようなものを変えるつもりも全くないわけでございます。
 以上でございます。

10 関連記事その他
(1)ア 裁判所法22条2項は「最高裁判所は、高等裁判所の支部に勤務する裁判官を定める。」と定めています。
イ 支部勤務発令は最高裁判所裁判官会議の決議事項です(「裁判所の人事行政事務の実情について」第1.1(1)ウ)。
ウ 下級裁判所事務処理規則3条1項は「高等裁判所、地方裁判所又は家庭裁判所の各支部に勤務する裁判官が一人の
ときは、その裁判官を支部長とし、二人以上のときは、最高裁判所がそのうちの一人に支部長を命ずる。 」と定めています。
(2) 昭和42年5月27日の日弁連定期総会決議「司法制度の確立に関する宣言には以下の記載があります。
    われわれは、昭和39年12月19日臨時総会において、簡易裁判所判事及び副検事に対する法曹資格及び弁護士資格を付与すること、簡易裁判所の事物管轄の拡張をすることに反対を決議いたしまして、さらにその後においても、高等裁判所支部の廃止や司法試験法の改正等に反対の決議を行うのみならず、これらの施策の実施を阻止するために一大運動を展開してきたことは皆様ご承知の通りであります。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部
・ 検察庁の支部
・ 裁判統計報告
 最高裁判所が作成している事件数データ
・ 下級裁判所の裁判官の定員配置
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等
・ 最高裁判所事務総局総務局の事務分掌


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