村田龍平裁判官(40期)の経歴


生年月日 S32.5.6
出身大学 東大
退官時の年齢 63 歳
R2.5.17 依願退官
H29.4.1 ~ R2.5.16 大阪家地裁岸和田支部判事
H26.8.18 ~ H29.3.31 大阪高裁7民判事
H26.4.1 ~ H26.8.17 大阪高裁14民判事
H23.4.1 ~ H26.3.31 神戸家裁家事部判事
H19.4.1 ~ H23.3.31 鳥取地家裁米子支部長
H16.4.1 ~ H19.3.31 大阪高裁10民判事
H11.4.1 ~ H16.3.31 札幌地家裁判事
H10.4.12 ~ H11.3.31 大阪地裁判事
H8.4.1 ~ H10.4.11 大阪地裁判事補
H5.4.1 ~ H8.3.31 福岡地家裁小倉支部判事補
H2.4.1 ~ H5.3.31 松江地家裁判事補
S63.4.12 ~ H2.3.31 大阪地裁判事補

*0 令和2年6月17日,和歌山地方法務局所属の和歌山公証人合同役場の公証人になりました。
*1の1 私が代理人として関与した大阪地裁平成27年4月23日判決(判例体系に掲載。担当裁判官は43期の谷口安史)は,下記の事案において,消滅時効の援用を認めずに300万円の貸金返還請求を認めました。

(1) 私の依頼者である被告は,昭和54年頃,中国残留婦人であった従兄弟であるB(亡Aの母親)及びその子供3人(亡A他2名)を日本に呼び寄せ,自身が代表取締役をしていた会社Tの一室を改造して4人を住まわせるとともに,亡A及びその兄を日本人と同等の賃金で雇い入れた。(2) 会社Tの経営が苦しくなったため,被告は,亡Aから,平成9年2月28日,平成14年までに返す約束で300万円を現金で借りた(以下「本件借金」といいます。)。(3) 被告は,亡Aに対し,平成10年から平成14年にかけて,分割払いにより,合計300万円の現金で本件借金を返済した(領収書等の書類がなく,借用書の回収もなかった。)。    また,家族に内緒の借金であったから,被告の家族は平成25年3月以前に本件借金を知ることはなかった。(4) 被告は,平成18年頃に3回目の脳梗塞で倒れて話すことがほとんどできなくなった。(5)ア 亡Aは,平成25年3月,労災認定された墜落事故により死亡した。
イ 被告から引き継いで会社Tの代表取締役をしていた被告の息子(墜落事故については不起訴処分となりました。)は,墜落事故の日も含めて亡Aと毎日のように顔を合わせていたものの,本件借金の返済を催促されたことはなかった。
(6) 翌月以降,原告ら(亡Aの妻及びその子)が,被告及びその家族に対し,本件借金の返済を求めるようになった。(7) 平成25年7月21日,亡Aの子は,本件借金が未払いとなっていると誤信した被告の娘に対し,毎月1万円ずつ返済するという債務承認の書面を作成させた。    その際,被告は身振り手振りで必死に嫌がる素振りを見せたものの,話すことができないため,被告の子は被告の言いたいことを理解できなかった。(8) 平成25年7月下旬,被告の娘が亡Aの子に電話をしたところ,既に弁護士に頼んだということで,すぐに電話を切ってきた。(9) 原告らの代理人弁護士は,平成25年8月1日付の内容証明郵便により,300万円及びこれに対する平成9年2月28日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した。(10) 原告らの代理人弁護士は,平成26年1月7日,300万円及びこれに対する平成9年2月28日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める訴訟を提起した。(11) 私が,平成26年2月16日に被告の自宅で面談した際,質問事項をペーパーに記載し,指で指し示す方法で事情を確認したところ,被告は,平成14年までに本件借金を現金で返済したものの,借用証書は返却してもらっていないし,領収書はもらっていないという趣旨の回答をした。
(12) 被告は,平成26年2月27日の本件第1回口頭弁論期日において,原告らに対し,本件借金について,貸付けから10年が経過していることを理由に,消滅時効を援用する旨の意思表示をした。

*1の2 控訴審では,40期の村田龍平大阪高裁7民判事から控訴棄却の心証を示されたことから,分割払いによる訴訟上の和解を成立させました。

*1の3 最高裁平成7年5月30日判決(判例体系)は,「一般に、金員の授受に関する領収書等が存する場合には、実際にその授受があったものと事実上推定することができるが、その逆に、右領収書等が存しないからといって、直ちに金員の授受がなかったものということはできない。」と判示しています。
*1の4 ジュリスト増刊「判例から学ぶ」民事事実認定175頁には以下の記載があります(引用部分の執筆者は36期の白石史子裁判官です。)。
    金員を受領していないにもかかわらず, その旨の領収書を作成することは極めて稀であるのに対し,後藤・前記が指摘しているとおり,金員を受領しても領収書を作成しないことは稀とはいえない。伊藤・前記が指摘するような例外のほかにも,金額が少額である,親族間ではなくとも当事者間に信頼関係がある,相手に対する遠慮がある,金員を授受した場所などが領収書を作成しにくい状況にある,後で作成する予定であったがそのままになってしまった,あえて領収書を作成しなくても他に金員の授受を示す証拠があったなど,領収書が存在しないことが不自然,不合理とはいえない事情は広く存在しうる。したがって, 「領収書が存在しない場合には金員の授受はなかった」との経験則は, 「領収書が存在する場合にはその授受があった」との経験則に比し,適用の範囲は狭く, その推定力も低いといえよう。
*1の5 大阪地裁平成27年4月23日判決につき,「時効の中断の効力を生ずべき債務の承認とは、時効の利益を受けるべき当事者がその相手方の権利の存在の認識を表示することをいうのであって、債務者以外の者がした債務の承認により時効の中断の効力が生ずるためには、その者が債務者の財産を処分する権限を有することを要するものではないが、これを管理する権限を有することを要するものと解される(民法156条参照)」と判示した最高裁令和5年2月1日決定との整合性はよくわかりません。
*1の6 東京新聞HPの「返金放棄書面は「無効」が3件 旧統一教会巡る司法判断 」(2023年12月3日付)には「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の高額献金を巡り、教団側と信者の間で交わされた返金請求をしないとの合意書や念書を無効とする司法判断が、少なくとも3件あることが3日、全国霊感商法対策弁護士連絡会への取材で分かった。」と書いてあります。

*2の1 最初の残留孤児訪日調査団は昭和56年3月でした(旧中国帰国者定着支援センターHP「残留孤児訪日調査団の特徴(新聞記事)」参照)から,被告が自力でB及びその子供3人を引き取ったのはその前の話になります。
*2の2 本邦に永住帰国する身元未判明の中国残留日本人孤児に対する身元引受人制度は昭和60年3月29日に開始したものの,中国残留婦人がその対象になったのは平成3年6月20日でした(中国帰国者支援・交流センターHP「中国残留邦人等に関する略史」参照)。
*2の3 平成6年10月1日,中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(平成6年4月6日法律第30号)が施行されましたところ,「中国「残留孤児・婦人」2世の生活支援等を求める請願署名」には以下の記載があります。
    2001 年「残留婦人」の 4 名が国家賠償訴訟を起こし、また、2002 年を皮切りに「残留孤児」の約 9 割にあたる 2211 名が原告となって国家賠償訴訟を起こし、その結果、2007 年に、議員立法により、「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律」(新支援法)が成立し、国民年金の満額支給と支援給付金の支給などを内容とした新たな支援策が採られることとなりました。また、2013 年には、新支援法が改正され、「残留孤児・婦人」と共に苦難を分かち合い、中国の父母、兄弟と別れて日本に来た配偶者に対し、中国「残留孤児・婦人」が死亡した場合でも支援給付以外に国民年金の満額の 3 分の 2 相当額を支給する改善が図られました。
    しかし、新支援法では、中国「残留孤児・婦人」2世を生活保障の対象にしていないことから、帰国した 2 世の中には、30 歳~50 歳で帰国したため日本語も話せず、低賃金・過酷な労働を余儀なくされ、高齢化を迎えた今日、かつての 1 世と同様に、生活保護に頼らざるを得ない人も多くいます。
*2の4 東京高裁平成19年6月21日判決(裁判長は24期の宗宮英俊)は「いわゆる中国残留邦人に対する国の早期帰国実現義務及び自律支援義務は,政治的責務であり,国はその責務を果たすために種々の政策を立案・実行してきたものであって,国賠法上違法とはいえないとされた事例であり,最高裁平成21年2月12日決定によって上告不受理となりました。
    また,東京高裁平成20年1月31日判決(裁判長は23期の原田敏章)も同趣旨の裁判例であり,最高裁平成21年2月12日決定によって上告不受理となりました。
*2の5 ヒューライツ大阪HP「中国残留邦人支援法の改正」には以下の記載があります。
    戦争終結の際、帰国することができず、日中国交回復後ようやく帰国ができた中国残留邦人は高齢になってからの帰国となり、言葉や生活において困難に直面す る人も多く、全国15カ所で2000人以上の原告により国に対して残留邦人を早期帰国実現させる義務や帰国後の自立支援義務を怠ったと訴える裁判が起こさ れていました。そのうち、神戸地裁では、一部の原告を除いて、国の責任を認める判決が出されていましたが、そのほかでは、国の義務を認めない、あるいは認 めても国の作為・不作為が不合理ではないなど原告の訴えが退けられていました。
*3 以下の記事も参照してください。
・ 公証人の任命状況(2019年5月1日以降)→公証人への任命直前の,元裁判官,元検事等の経歴を記載したもの
・ 裁判官の早期退職
・ 50歳以上の裁判官の依願退官の情報
・ 地方裁判所支部及び家庭裁判所支部


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