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民事裁判で公開されない手続と公開停止―弁論準備手続の傍聴,裁判所外の尋問,当事者尋問等の公開停止及び記録の閲覧制限(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 本記事の対象と基準日

本記事は,民事裁判のうち,公開の法廷で行われない手続と,公開の法廷で行う審理を例外的に公開しない制度(公開停止)を整理する。
依頼者から「裁判は誰でも傍聴できるのか」「家族や会社の担当者は期日に同席できるのか」「私生活上の秘密や営業秘密を公開の法廷で話さなければならないのか」と尋ねられたときに確認すべき条文と判例をまとめている。
法令は,令和8年9月27日現在の条文をe-Gov法令検索で確認し,最高裁判所規則は裁判所ウェブサイトに掲載された条文で確認した。
裁判例は,裁判所ウェブサイト又は判例秘書で判決・決定の全文を確認したものに限って紹介している。

2 結論

①憲法82条1項は,裁判の対審及び判決を公開法廷で行うと定め,民事訴訟法は,訴訟について裁判所で口頭弁論をしなければならないとし(87条1項本文),口頭弁論の公開の規定に違反したことを上告の理由としている(312条2項5号)。
②最高裁判所の大法廷は,憲法82条にいう裁判は,当事者の主張する実体的権利義務の存否を終局的に確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判のみを指すとしている。
③口頭弁論の対審は,裁判官の全員一致で公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には公開しないで行うことができるが,判決を言い渡すときは再び公衆を入廷させなければならない。
ウェブ会議による口頭弁論についても,裁判官が所在する法廷を公開して行うとの国会答弁がある。
④人事訴訟,特許権・実用新案権・育成者権の侵害に係る訴訟並びに不正競争防止法及び家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律の不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟には,私生活上の重大な秘密又は営業秘密に係る事項の尋問を公開しないで行う制度(当事者尋問等の公開停止)がある。
法務大臣は,人事訴訟法案の審議で,人事訴訟において裁判の公開を困難とする真にやむを得ない事情があるなどの例外的な場合には,「公の秩序を害する虞がある」ものとして憲法上も公開停止が許容されると答弁している。
⑤弁論準備手続は,当事者双方が立ち会うことができる期日で行われ,第三者の傍聴は裁判所が許した場合に限られるが,当事者が申し出た者は,手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認められる場合を除いて傍聴を許される。
⑥書面による準備手続は当事者の出頭なしに書面の提出等で争点等を整理する手続であり,進行協議期日(民事訴訟規則95条)も口頭弁論の期日外に行われ,裁判所外の証拠調べや受命裁判官等による尋問は裁判所外で行われ,文書提出命令のインカメラ手続で提示された文書は何人も開示を求めることができない。
最高裁判所は,情報公開訴訟において本案の判断のための証拠調べとしてインカメラ審理を行うことは,明文の規定がない限り許されないとしている。
⑦決定で完結すべき事件では,口頭弁論をするか否かを裁判所が定め,家事事件と非訟事件の手続は法律上公開しないとされている。
⑧期日を公開しないことと訴訟記録の閲覧を制限することは別の制度であり,公開の法廷で審理された事件でも,秘密保護のための閲覧等の制限により,秘密が記載された部分の閲覧等を請求できる者が当事者に限られることがある。

初めて裁判所へ行く場合は,次の区別を出発点として,本記事の各条文と例外を確認されたい。予定の調べ方や傍聴券等の実際の準備は,裁判所の傍聴方法で説明している。以下の整理に関係する民事訴訟法169条2項及び家事事件手続法33条は,令和8年10月11日に現行条文を確認した。

手続一般傍聴の基本的な扱い
民事の口頭弁論・判決公開が原則。公開停止や期日の種類を確認する。
弁論準備手続一般に自由傍聴できる手続ではない。裁判所の許可と当事者が申し出た者の取扱いを確認する。
家事調停・審判非公開。裁判所が相当と認める者に傍聴を許す制度は別にある。
事件記録の閲覧・謄写期日の傍聴とは別の制度。記録の種類,申請者及び閲覧制限を確認する。

第2 公開が求められる範囲

1 憲法82条と民事訴訟法

憲法82条1項は,「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」と定める。
民事訴訟法は,当事者は訴訟について裁判所において口頭弁論をしなければならないとし(87条1項本文),口頭弁論の公開の規定に違反したことを上告の理由の一つとしている(312条2項5号)。
このため,公開が問題となる中心は口頭弁論と判決の言渡しである。

最高裁判所大法廷平成元年3月8日判決(レペタ事件)は,憲法82条1項の趣旨を「裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにある」とした。
同判決は,同項が「各人が裁判所に対して傍聴することを権利として要求できることまでを認めたものでないことはもとより」,傍聴人がメモを取ることを権利として保障するものでもないとしている。
同判決は,裁判の公開を,傍聴人の個別の権利としてではなく,制度として保障されるものと位置付けている。

2 公開が求められるのは純然たる訴訟事件の裁判

最高裁判所大法廷昭和35年7月6日決定は,憲法は「純然たる訴訟事件の裁判については、前記のごとき公開の原則の下における対審及び判決によるべき旨を定めたのであつて」と述べ,純然たる訴訟事件についてされた調停に代わる裁判を憲法82条及び32条に照らし違憲とした。

最高裁判所大法廷昭和40年6月30日決定は,「法律上の実体的権利義務自体につき争があり、これを確定するには、公開の法廷における対審及び判決によるべきものと解する」とした上で,夫婦の同居に関する審判は「本質的に非訟事件の裁判であつて、公開の法廷における対審及び判決によつて為すことを要しない」とした。
同決定は,審判の前提となる同居義務等自体については,公開の法廷における対審及び判決を求める途が閉ざされているわけではないことも理由に挙げている。

最高裁判所大法廷昭和41年3月2日決定は,遺産の分割に関する処分の審判について同じ判断をした上で,前提となる相続権,相続財産等の権利関係は,「その存否を終局的に確定するには、訴訟事項として対審公開の判決手続によらなければならない」とした。

最高裁判所大法廷昭和45年6月24日決定は,破産宣告決定及びこれに対する抗告事件についての抗告棄却決定は,口頭弁論を経ないでされても憲法82条に違反しないとした。
同決定は,憲法82条にいう裁判について,「裁判所が当事者の意思いかんにかかわらず終局的に事実を確定し当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判のみを指す」ことは先行する大法廷の各決定で明らかにされているとしている。

第3 口頭弁論の公開停止

1 憲法82条2項と裁判所法70条

憲法82条2項本文は,「裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。」と定める。
同項ただし書は,政治犯罪,出版に関する犯罪又は憲法第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は,常に公開しなければならないとしている。

公開しないことができるのは対審であり,判決は含まれない。
裁判所法70条は,対審を公開しないで行うには,公衆を退廷させる前にその旨を理由とともに言い渡さなければならず,判決を言い渡すときは再び公衆を入廷させなければならないと定める。
口頭弁論に係る電子調書には,弁論を公開したこと,又は公開しなかったときはその旨及びその理由を記録しなければならない(民事訴訟規則66条1項6号)。

2 公開を禁止した口頭弁論の記録

訴訟記録は,何人も閲覧を請求することができるのが原則である(民事訴訟法91条1項,91条の2第1項)。
もっとも,公開を禁止した口頭弁論に係る非電磁的訴訟記録については,閲覧を請求できるのは当事者及び利害関係を疎明した第三者に限られる(同法91条2項前段)。
電磁的訴訟記録の閲覧及び複写の請求にも,同条2項が準用される(同法91条の2第4項)。

3 ウェブ会議による口頭弁論と公開

裁判所は,相当と認めるときは,当事者の意見を聴いて,映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって,口頭弁論の期日における手続を行うことができる(民事訴訟法87条の2第1項)。
この規定を設けた令和4年の民事訴訟法改正の審議で,法務省民事局長は,「現行法の下では、口頭弁論の公開の要請は現実の法廷を公開することによって確保されております。改正法案におきましてもこの点についての見直しはしておりません。」と答弁した(令和4年4月13日衆議院法務委員会)。
同じ答弁は,続けて,ウェブ会議により口頭弁論が行われる場合でも,口頭弁論の公開は裁判官が所在する法廷を公開して行われ,傍聴人は現実の法廷で傍聴することができることに変わりはないとしている。
法務大臣も,「憲法上、裁判の公開が要請されている趣旨は、訴訟手続を傍聴人の観察の下で行うことを通じて、裁判の公正等を担保する点にございます。」と答弁している(令和4年4月15日衆議院法務委員会)。

第4 当事者尋問等の公開停止

1 人事訴訟法22条

人事訴訟法22条1項は,人事訴訟で当事者本人,法定代理人又は証人が尋問を受ける場合について,次の全部を満たすときは,裁判所は,決定で,その事項の尋問を公開しないで行うことができるとしている。
①尋問の対象が,身分関係の形成又は存否の確認の基礎となる事項であって,自己の私生活上の重大な秘密に係るものであること。
②裁判官の全員一致によること。
③公開の法廷でその事項について陳述をすることにより社会生活を営むのに著しい支障を生ずることが明らかであることから,その事項について十分な陳述をすることができないこと。
④その陳述を欠くことにより,他の証拠のみによっては身分関係の形成又は存否の確認のための適正な裁判をすることができないこと。

裁判所は,この決定をするに当たっては,あらかじめ当事者等及び証人の意見を聴かなければならない(同条2項)。
公開しないで尋問を行うときは,公衆を退廷させる前にその旨を理由とともに言い渡し,その事項の尋問が終了したときは再び公衆を入廷させなければならない(同条3項)。
公開しないのは要件を満たす事項の尋問に限られ,尋問全体や口頭弁論全体が非公開になるわけではない。

人事訴訟法案の審議で,法務大臣は,「人事訴訟において裁判の公開を困難とする真にやむを得ない事情があり、かつ、裁判を公開することによって、かえって適正な裁判が行われなくなり、誤った身分関係の形成または存否の確認が行われるおそれがあるという例外的な場合には、『公の秩序を害する虞がある』ものとして憲法上も公開停止が許容されるものと考えております。」と答弁した(平成15年4月15日衆議院本会議)。
同じ答弁は,裁判の公開停止の可否は,訴訟の類型を問わず,憲法82条2項の規定により判断されるべきものであるとした上で,人事訴訟法案22条1項は,公開によりかえって適正な裁判が行われなくなるという人事訴訟に特有の場面に限って,憲法の認める範囲内で公開停止を規定するものであると説明している。

2 特許法105条の7等

特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟では,当事者等が,侵害の有無についての判断の基礎となる事項であって当事者の保有する営業秘密に該当するものについて尋問を受ける場合に,人事訴訟法22条と同じ構造の要件で,その事項の尋問を公開しないで行うことができる(特許法105条の7第1項)。
要件は,裁判官の全員一致により,公開の法廷で陳述をすることにより営業秘密に基づく当事者の事業活動に著しい支障を生ずることが明らかであるため十分な陳述をすることができず,かつ,その陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては侵害の有無についての適正な裁判をすることができないと認めることである。

裁判所は,あらかじめ当事者等の意見を聴かなければならず(同条2項),必要があると認めるときは,当事者等に陳述すべき事項の要領を記載した書面等を提示させることができる(同条3項)。
この場合,何人も,提示された書面等の開示を求めることができない(同項後段)。
ただし,裁判所は,その書面等を開示して意見を聴くことが必要であると認めるときは,当事者等,訴訟代理人又は補佐人に開示することができる(同条4項)。

実用新案法30条は,特許法105条の7を含む規定を実用新案権又は専用実施権の侵害に準用している。
不正競争防止法13条は,不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟について,特許法105条の7と同じ内容の規定を置いている。
種苗法43条は育成者権又は専用利用権の侵害に係る訴訟について,家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律14条は同法の不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟について,それぞれ特許法105条の7と同じ内容の規定を置いている。
これに対し,意匠法41条と商標法39条が準用する特許法の規定の範囲(105条の2の12から105条の6まで等)には,105条の7は含まれていない。

3 最高裁判所の補足意見と文献

第5の6で紹介する最高裁判所第一小法廷平成21年1月15日決定では,宮川光治裁判官の補足意見が,「適正な裁判を実施するために対審を公開しないで行うということは,既に人事訴訟法22条,不正競争防止法13条,特許法105条の7等にある。」と述べている。
これは補足意見であり,法廷意見の判断ではない。

松本博之『人事訴訟法 第4版』は,裁判所が誤って当事者尋問や証人尋問の公開を停止した場合(人事訴訟法22条,特許法105条の7参照)も,絶対的上告理由になるとしている。
口頭弁論の公開の規定に違反したことは上告の理由とされている(民事訴訟法312条2項5号)。

判例秘書で,人事訴訟法22条又は特許法105条の7を参照条文とする裁判例と,「公開停止」「当事者尋問等の公開停止」「人事訴訟法22条」等の語を含む裁判例を検索し,本文を開いた範囲では,これらの規定による公開停止の決定の当否を判断した裁判例は見当たらなかった(検索の範囲と本文を開いた裁判例は第10の5のとおり)。

4 秘密保持命令との違い

特許法105条の4の秘密保持命令は,準備書面や証拠に含まれる営業秘密について,当事者等,訴訟代理人又は補佐人に対し,訴訟追行の目的以外の目的での使用や,命令を受けた者以外の者への開示を禁ずるものである。
秘密保持命令は,訴訟の関係者による営業秘密の使用と開示を制限する制度であり,尋問を公開しないで行う当事者尋問等の公開停止とは対象と効果が異なる。

第5 口頭弁論以外の手続

1 弁論準備手続

弁論準備手続は,当事者双方が立ち会うことができる期日において行う(民事訴訟法169条1項)。
裁判所は,相当と認める者の傍聴を許すことができ,当事者が申し出た者については,手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認める場合を除き,その傍聴を許さなければならない(同条2項)。
依頼者の家族や会社の担当者の同席を希望するときは,当事者が傍聴を申し出る方法(同項ただし書)がある。
秋山幹男ほか『コンメンタール民事訴訟法Ⅲ[第2版]』は,弁論準備手続で傍聴を許さない場合として,傍聴されると当事者が萎縮して争点整理の実を挙げることができない場合や,当事者が対外的に秘密にしておきたい事柄を話す必要がある場合などを挙げている。
同書は,申し出た当事者は,傍聴を許さない決定に対して通常抗告(民事訴訟法328条1項)をすることができると解している。

裁判所は,弁論準備手続の期日において,文書の証拠調べ,電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べ等をすることができる(同法170条2項)。
当事者は,口頭弁論において,弁論準備手続の結果を陳述しなければならない(同法173条)。
裁判所は,相当と認めるときは,当事者の意見を聴いて,音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって弁論準備手続の期日における手続を行うことができる(同法170条3項)。

2 書面による準備手続

書面による準備手続は,当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点及び証拠の整理をする手続である(民事訴訟法175条)。
裁判所は,必要があると認めるときは,音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって,当事者双方と協議をすることができる(同法176条2項)。
書面による準備手続の終結後の口頭弁論の期日において,裁判所は,その後の証拠調べによって証明すべき事実を当事者との間で確認するものとされている(同法177条)。

3 進行協議期日

裁判所は,口頭弁論の期日外において,その審理を充実させることを目的として,当事者双方が立ち会うことができる進行協議期日を指定することができる(民事訴訟規則95条1項前段)。
この期日では,裁判所と当事者が,口頭弁論における証拠調べと争点との関係の確認その他訴訟の進行に関し必要な事項について協議を行う(同項後段)。
前記のコンメンタールは,進行協議期日は公開を要しない手続であり,傍聴に関する規定はないとしている。

4 和解

裁判所は,訴訟がいかなる程度にあるかを問わず,和解を試みることができる(民事訴訟法89条1項)。
訴訟記録のうち,和解条項案に係る部分,裁判所等が定める和解条項に係る部分及び口頭弁論の期日以外で成立した和解に係る部分は,公開を禁止した口頭弁論に係る記録と同じく,閲覧を請求できる者が当事者及び利害関係を疎明した第三者に限られる(同法91条2項後段)。

5 裁判所外の証拠調べと受命裁判官等による尋問

裁判所は,相当と認めるときは,裁判所外において証拠調べをすることができ,合議体の構成員に命じ,又は地方裁判所若しくは簡易裁判所に嘱託して証拠調べをさせることができる(民事訴訟法185条1項)。
証人の尋問を受命裁判官又は受託裁判官に裁判所外でさせることができるのは,証人に受訴裁判所に出頭する義務がないとき又は正当な理由により出頭することができないとき,出頭に不相当な費用又は時間を要するとき,現場で尋問することが事実を発見するために必要であるとき,当事者に異議がないときに限られる(同法195条)。
この規定は,当事者本人の尋問に準用される(同法210条)。

6 文書提出命令のインカメラ手続

裁判所は,文書提出命令の申立てに係る文書が除外事由(民事訴訟法220条4号イからニまで)に該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは,文書の所持者にその提示をさせることができる(同法223条6項前段)。
この場合においては,「何人も、その提示された文書の開示を求めることができない。」(同項後段)。

最高裁判所第一小法廷平成21年1月15日決定は,情報公開訴訟で,不開示とされた文書を目的とする検証を被告に受忍義務を負わせて行うことは許されないとした。
同決定は,「訴訟で用いられる証拠は当事者の吟味,弾劾の機会を経たものに限られるということは,民事訴訟の基本原則であるところ」と述べ,「情報公開訴訟において証拠調べとしてのインカメラ審理を行うことは,民事訴訟の基本原則に反するから,明文の規定がない限り,許されないものといわざるを得ない。」とした。
同決定は,文書提出義務又は検証物提示義務の存否を判断するためのインカメラ手続については民事訴訟法に規定が設けられていることにも触れており,証拠調べとしてのインカメラ審理と,提出義務の存否を判断するためのインカメラ手続とを区別している。

7 決定で完結すべき事件

決定で完結すべき事件については,裁判所が,口頭弁論をすべきか否かを定める(民事訴訟法87条1項ただし書)。
口頭弁論をしない場合には,裁判所は,当事者を審尋することができる(同条2項)。
第2の2の最高裁判所大法廷昭和45年6月24日決定は,旧破産法の下での破産宣告決定等が口頭弁論を経ないでされても憲法82条に違反しないとしている。

第6 家事事件と非訟事件

家事事件の手続は,公開しない(家事事件手続法33条本文)。
非訟事件の手続も,公開しない(非訟事件手続法30条本文)。
いずれも,裁判所は,相当と認める者の傍聴を許すことができる(各条ただし書)。

第2の2のとおり,最高裁判所の大法廷は,旧家事審判法の下での夫婦の同居に関する審判や遺産の分割に関する処分の審判は本質的に非訟事件であり,公開の法廷における対審及び判決によることを要しないとした。
他方で,審判の前提となる同居義務や相続権等の権利関係そのものは,訴訟で争うことができるとしている。

第7 公開の法廷で行う尋問での保護の措置

公開の法廷で行う尋問でも,裁判長は,事案の性質,証人が犯罪により害を被った者であること,証人の年齢,心身の状態又は名誉に対する影響その他の事情を考慮し,相当と認めるときは,傍聴人と証人との間で,相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置(遮へいの措置)をとることができる(民事訴訟法203条の3第2項)。
また,裁判所は,証人が裁判長及び当事者が在席する場所で陳述すると圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合等であって相当と認めるときは,映像と音声の送受信による方法で証人の尋問をすることができる(同法204条)。
これらの規定は,当事者本人の尋問に準用される(同法210条)。
さらに,裁判長は,証人が特定の傍聴人の面前においては威圧され十分な陳述をすることができないと認めるときは,当事者の意見を聴いて,その証人が陳述する間,その傍聴人を退廷させることができる(民事訴訟規則121条)。

これらの規定は,尋問を公開しないで行うことを定めたものではなく,第4の当事者尋問等の公開停止とは別の制度である。

第8 記録の閲覧制限との違い

期日を公開しないかどうかと,訴訟記録を誰が閲覧できるかは,別の制度である。
訴訟記録中に当事者の私生活についての重大な秘密が記載され,かつ,第三者がその部分の閲覧等を行うことにより当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがある場合や,当事者が保有する営業秘密が記載されている場合には,その事由について疎明があれば,裁判所は,当事者の申立てにより,決定で,その部分の閲覧等を請求できる者を当事者に限ることができる(民事訴訟法92条1項)。
この閲覧等の制限は,口頭弁論が公開されていた事件でも使うことができる。

閲覧等の制限の手続と実務は民事事件記録の閲覧・謄写手続―誰が閲覧・謄写できるか,費用,窓口,閲覧制限で,当事者の住所・氏名を秘匿する手続は訴訟提起で原告の住所・氏名を秘匿する方法で整理している。

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第10 出典・参考資料

1 法令

①日本国憲法(e-Gov法令検索)32条,82条
②裁判所法(e-Gov法令検索)70条
③民事訴訟法(e-Gov法令検索)87条,89条,91条,91条の2,92条,169条,170条,173条,175条,176条,177条,185条,195条,203条の3,204条,210条,220条,223条,312条
④人事訴訟法(e-Gov法令検索)22条
⑤特許法(e-Gov法令検索)105条の4,105条の7
⑥実用新案法(e-Gov法令検索)30条
⑦不正競争防止法(e-Gov法令検索)13条
⑧意匠法(e-Gov法令検索)41条
⑨商標法(e-Gov法令検索)39条
⑩家事事件手続法(e-Gov法令検索)33条
⑪非訟事件手続法(e-Gov法令検索)30条
⑫種苗法(e-Gov法令検索)43条
⑬家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律(e-Gov法令検索)14条
⑭民事訴訟規則(裁判所ウェブサイト)66条,95条,121条

2 裁判例

①最高裁判所大法廷昭和35年7月6日決定(昭和26年(ク)第109号,民集14巻9号1657頁,裁判所ウェブサイト)
②最高裁判所大法廷昭和40年6月30日決定(昭和36年(ク)第419号,民集19巻4号1089頁,裁判所ウェブサイト)
③最高裁判所大法廷昭和41年3月2日決定(昭和39年(ク)第114号,民集20巻3号360頁,裁判所ウェブサイト)
④最高裁判所大法廷昭和45年6月24日決定(昭和41年(ク)第402号,民集24巻6号610頁,裁判所ウェブサイト)
⑤最高裁判所大法廷平成元年3月8日判決(昭和63年(オ)第436号,民集43巻2号89頁,裁判所ウェブサイト)
⑥最高裁判所第一小法廷平成21年1月15日決定(平成20年(行フ)第5号,民集63巻1号46頁,裁判所ウェブサイト)

3 国会会議録

①第156回国会衆議院本会議第22号(平成15年4月15日)森山眞弓法務大臣の答弁(国会会議録検索システム)
②第208回国会衆議院法務委員会第8号(令和4年4月13日)金子修法務省民事局長の答弁(国会会議録検索システム)
③第208回国会衆議院法務委員会第9号(令和4年4月15日)古川禎久法務大臣の答弁(国会会議録検索システム)

4 参考文献

①秋山幹男・伊藤眞・垣内秀介・加藤新太郎・高田裕成・福田剛久・山本和彦『コンメンタール民事訴訟法Ⅲ[第2版]』(日本評論社,2018年)第169条の注釈ほか
②松本博之『人事訴訟法 第4版』(弘文堂,2021年)第1章第4節「公開主義と公開の停止」,上告と上告理由の節

5 調査範囲

最高裁判所の判決・決定は,令和8年9月27日に裁判所ウェブサイトで掲載誌の巻号頁により検索し,全文を確認したものである。
判例秘書では,同日,人事訴訟法22条を参照条文とする裁判例(0件),特許法105条の7を参照条文とする裁判例(0件),「公開停止」を含む裁判例(26件),「公開停止」及び「尋問」を含む裁判例(8件),「当事者尋問等の公開停止」を含む裁判例(0件),「人事訴訟法22条」を含む裁判例(1件)及び「公開を停止」及び「尋問」を含む裁判例(7件)を検索した。
このうち,民事の裁判例で「公開停止」の語を含むものとして開いた3件は,いずれもウェブサイト等の公開停止に関するもので,裁判の公開停止に関するものではなかった。
「公開を停止」及び「尋問」を含む7件のうち,知的財産高等裁判所令和6年3月28日判決及び東京地方裁判所平成24年9月19日判決は書誌のみを確認し,本文は確認していない。
「公開停止」を含む26件は,先頭10件の書誌を確認した。
特許法105条の7を参照条文とする検索が0件であったのは,枝番号の登録形式による可能性があり,裁判例が存在しないことを示すものではない。
国会会議録検索システムでは,当事者尋問等の公開停止が実際に行われた件数を示す答弁は見つからなかった。
第10の4の文献は,弁護士ドットコムライブラリーの本文検索の結果に表示された該当箇所の抜粋で内容を確認したものであり,頁は電子版の表示が印字頁と一致する保証がないため記載していない。