この記事は,弁護士の懲戒事由の全体像(弁護士法56条1項の4類型と,その判断のしかた)をまとめた総論であり,個別の論点はそれぞれの記事に分けて詳しく扱います(2026年7月時点の法令・会規に基づきます。)。
目次
第1 弁護士の懲戒事由(弁護士法56条1項)
第2 「品位を失うべき非行」と実質的な判断(弁護士職務基本規程82条)
第3 日弁連が挙げる懲戒事由の例
第4 職務の公正と利益相反(弁護士職務基本規程81条)
第5 テーマ別の詳しい記事
第6 参考記事・外部資料
出典
第1 弁護士の懲戒事由(弁護士法56条1項)
弁護士及び弁護士法人は,弁護士法56条1項により,次のいずれかに当たるときに懲戒を受けます。
弁護士及び弁護士法人は、この法律…又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。
整理すると,懲戒事由は次の4類型です。
弁護士法に違反したとき
所属弁護士会又は日弁連の会則に違反したとき
所属弁護士会の秩序又は信用を害したとき
その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があったとき
弁護士は,所属弁護士会及び日弁連の会則・会規・規則を守らなければならず(日弁連会則29条1項),これらの会則違反も懲戒事由になります。
第2 「品位を失うべき非行」と実質的な判断(弁護士職務基本規程82条)
弁護士職務基本規程は,弁護士の職務の多様性と個別性にかんがみ,その自由と独立を不当に侵すことのないよう,実質的に解釈し適用しなければならないとされています(同規程82条1項前段)。
そのため,規程の条項に形式的に違反する行為のすべてが直ちに懲戒事由と判断されるのではなく,「品位を失うべき非行」(弁護士法56条1項)と同等の評価を受けるかという視点から,事案に即した実質的な判断がされます。
ここでいう「自由と独立」には,①権力からの自由と独立,②依頼者からの自由と独立,③他の弁護士との関係における自由と独立の三つの要素が含まれます(弁護士職務基本規程2条参照)。
もっとも,規程には倫理規定・努力義務の規定と,行為規範・義務規定とが混在しており,その区別が必ずしも判然としません。そこで,倫理規定・努力目標に当たる条文は規程82条2項で個別に列挙されています。列挙されていない条文(義務規定)に違反した場合は,直ちに懲戒事由となり得ます。