第1 日弁連理事の定数,任期及び職務
1 理事は75人で任期は1年
日本弁護士連合会会則第56条第1項は,日弁連に会長1人,副会長15人,理事75人及び監事5人を置くと定めている。理事の任期は1年であり,通常は4月1日に始まる(会則第64条第1項及び第2項)。
日弁連理事75人は,従来の地域別構成を基礎とする通常枠71人と,男女共同参画推進特別措置による女性理事4人から成る。理事の人数だけを確認するときも,通常枠と特別枠を区別しなければ,地域別人数や兼務状況を正確に説明できない。
2 理事会及び常務理事会
理事会は,会長,副会長及び理事で構成され,総会及び代議員会に付する議案,規則の制定又は変更その他日弁連の運営に関する重要事項を審議する(会則第58条及び第59条)。理事は,理事会を通じて日弁連の会務運営に加わる役員である。
常務理事は理事の中から互選される。日弁連の機構・財政によれば,現在の常務理事は39人であり,常務理事会は,会長,副会長及び常務理事によって構成される。理事会と常務理事会は構成員及び審議事項が異なるため,両者を同じ会議体として扱うことはできない。
第2 日弁連理事の選任方法
1 選任機関は代議員会
役員選任規程は,副会長,理事及び監事を代議員会で選任し,各役員を別々に選任するものとしている。弁護士会又は弁護士会連合会による候補者の推薦は候補者を出す過程であり,推薦を受けただけで日弁連理事に就任するものではない。
役員の選任は選挙によることが原則である。ただし,役員選任規程第5条第1項により,出席代議員の3分の2以上の同意があるときは,代議員会が選挙以外の方法を採ることができる。
2 令和8年度の選任
令和8年度代議員会では,令和8年3月13日,選挙によらない方法を採る動議が可決された後,各弁護士会連合会から推薦された通常枠71人及び特別枠の女性4人の候補者が一括して採決され,過半数の賛成により理事75人が選任された。この選任経過は,日弁連会員用ページの「令和8年度代議員会議事概要」で確認できる。
この議事概要によれば,代議員総数は648人,本人出席は312人,代理議決権は307個であり,採決に用いられた議決権総数は619個であった。年度ごとの具体的な選任方法及び地域別人数は,役員選任規程だけでなく,当該年度の代議員会資料を確認する必要がある。
第3 通常枠71人の地域別構成
1 令和8年度の弁護士会連合会別人数
令和8年度の通常枠71人は,関東25人,近畿10人,中部7人,中国地方5人,九州9人,東北6人,北海道5人及び四国4人である。この地域別人数は会則に定数表として固定されているものではなく,各弁護士会から少なくとも1人の理事を選出するため,代議員会が従来の例を踏襲して採用したものである。
令和8年7月1日現在の弁護士会員数と令和8年度の理事数との関係は,次のとおりである。弁護士会員数は,日弁連の会員及び弁護士会別会員数を8弁護士会連合会別に集計した。
| 弁護士会連合会 | 弁護士会員数 | 通常枠 | 会員数÷通常枠 | 特別枠を含む令和8年度実数 |
|---|---|---|---|---|
| 関東 | 30,304人 | 25人 | 1,212.16人 | 26人 |
| 近畿 | 7,741人 | 10人 | 774.10人 | 10人 |
| 中部 | 3,079人 | 7人 | 439.86人 | 7人 |
| 中国地方 | 1,366人 | 5人 | 273.20人 | 5人 |
| 九州 | 2,904人 | 9人 | 322.67人 | 9人 |
| 東北 | 1,081人 | 6人 | 180.17人 | 7人 |
| 北海道 | 1,101人 | 5人 | 220.20人 | 6人 |
| 四国 | 548人 | 4人 | 137.00人 | 5人 |
| 合計 | 48,124人 | 71人 | ― | 75人 |
通常枠についての「会員数÷通常枠」は,最大の関東と最小の四国との間で約8.85倍となる。もっとも,日弁連理事は会員が地域別選挙区から直接選挙する議員ではなく,代議員会が選任する法人の役員である。この数値は地域別の会員数と理事数の関係を示す記述統計であり,国政選挙における「一票の較差」と同じ法的問題を示すものではない。
2 人口比例ではない地域別構成
地域別構成には,会員数の多寡だけでなく,全国52弁護士会のそれぞれから少なくとも1人の理事を出し,日弁連と各弁護士会との連絡を確保するという制度沿革が反映されている。そのため,会員数だけを用いて比例配分した人数を,現行制度上の正しい定数として扱うことはできない。
旧記事には,平成30年の弁護士会員数を71人へ比例配分した試算が掲載されていたが,掲げられた地域別人数の合計は72人であった。個別の商を四捨五入すると全体の定数が維持されないため,本記事では,日弁連が採用していない特定の比例配分方式による試算を掲載しない。
3 通常枠における非兼務理事24人等の意味
従来の役職指定による候補者推薦を前提とすると,東京三弁護士会,大阪弁護士会及び愛知県弁護士会の各会長は日弁連副会長を兼務し,残る47弁護士会の会長は通常枠の日弁連理事となる。この前提では,通常枠71人から47人を控除した24人が単位弁護士会会長を兼ねない理事となる。
さらに,この24人のうち5人を特定の弁護士会の副会長,3人を特定の弁護士会連合会の理事長とする従来の推薦運用を前提にすると,これらの役職を基礎としない人数は16人となる。ただし,24人及び16人は通常枠71人を分類するための数字であり,別枠の女性理事4人の各年度の兼務状況を確認せずに,理事75人全体へ機械的に拡張することはできない。
第4 女性理事4人の特別枠
1 候補者推薦の仕組み
会則第56条第3項は,理事に占める女性割合が30%以上となるよう環境を整備するものとし,同条第4項は,会規で定める人数の理事について女性を選任しなければならないとしている。役員選任規程第4条の3は,女性理事4人を選任することを定めている。
男女共同参画推進特別措置実施のための理事候補者推薦に関する協議会規則に基づき,協議会が候補者を推薦する4弁護士会連合会を決定し,対象となった各弁護士会連合会が女性1人を推薦する。もっとも,最終的に理事を選任する機関は代議員会である。女性理事の年度別名簿及び制度の詳細は,日弁連の女性理事にも整理している。
2 第四次男女共同参画推進基本計画
第四次日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画は,令和5年度から令和9年度までを計画期間とし,副会長及び理事に占める女性割合をそれぞれ30%以上とする目標を掲げている。女性理事4人の特別枠は令和3年度から始まり,女性理事は令和3年度20人(26.7%),令和4年度16人(21.3%)であった。
杉井静子『ジェンダー平等社会の実現へ――「おかしい」から「あたりまえ」に』230頁~231頁は,女性役員が少数であった時期の女性弁護士による会務参画を,当事者による回顧として記録している。この文献は制度の背景を知るための資料であり,現行の定数及び選任方法は会則,役員選任規程及び第四次計画によって確認する必要がある。
令和8年7月1日現在,弁護士会員4万8124人のうち女性は1万81人であり,女性割合は20.9%である。もっとも,会員に占める女性割合と役員に占める女性割合の目標は性質が異なる。第四次計画は,女性会員への加重負担に配慮した参画環境の整備とともに,クオータ制を検証し,実情に応じて見直すことも具体的施策としている。
第5 日弁連理事数の沿革
1 設立時の40人から70人への増員
日弁連の設立当初,理事の定数は40人であった。日本弁護士連合会編『日弁連二十年』62頁(PDF実頁73)は,昭和26年2月の会則改正によって理事が70人に増員されたことを記録している。
同書によれば,増員の理由は,日弁連と各弁護士会との連絡を緊密にし,各弁護士会の所属会員から少なくとも1人の理事を選任できる定数を確保することにあった。現在の地域別構成を理解する際にも,この沿革上の目的を外すことはできない。
2 沖縄弁護士会加入後の71人
日弁連は昭和24年9月1日に51弁護士会によって設立され,昭和47年に沖縄弁護士会が加入して現在の52弁護士会となった。日弁連の機構・財政及び日本弁護士連合会編『日弁連三十年』63頁(PDF実頁84)により,沖縄加入後に理事が71人となり,昭和56年当時の常務理事が39人であったことを確認できる。
旧記事は増員に関する臨時総会の日付を日単位で掲げていたが,今回確認した『日弁連二十年』及び『日弁連三十年』の該当頁では,その日付まで確認できなかった。本記事では,確認できた月又は年の範囲で記載している。
3 令和3年度から75人
令和元年12月6日の臨時総会で女性理事の特別枠を設ける会則改正が決議され,令和3年度から従来の71人に女性4人が加わった。これにより,現在の理事定数は75人となった。
この増員は,地域別の通常枠を71人から75人へ広げたものではない。通常枠71人と女性理事特別枠4人という二層の構造で理解する必要がある。
第6 大阪弁護士会及び愛知県弁護士会出身の理事
1 大阪弁護士会出身の理事
平成16年度から令和8年度までの日弁連新聞に掲載された大阪弁護士会出身の理事は,次のとおりである。氏名及び所属は年度別の日弁連新聞で確認したが,弁護士会会長,副会長又は企画調査室長等の経歴は全員について同じ資料で再確認できないため,旧記事の色分けは引き継いでいない。
| 年度 | 大阪弁護士会出身の日弁連理事 |
|---|---|
| 令和8年度 | 髙橋司/平野惠稔/豊島ひろ江/深田愛子 |
| 令和7年度 | 福田健次/中井洋恵/鈴木秋夫/山本和人 |
| 令和6年度 | 西出智幸/岩井泉/林尚美 |
| 令和5年度 | 森本宏/島尾恵理/細田祥子/米倉裕樹 |
| 令和4年度 | 松本岳/大砂裕幸/山田敬子/黒田愛 |
| 令和3年度 | 今川忠/福田健次/宮本圭子 |
| 令和2年度 | 田中宏/三木秀夫/櫛田和代/澤田有紀 |
| 平成31年度 | 増市徹/小池康弘/飯島奈絵 |
| 平成30年度 | 石田法子/和田秀治/濱田雄久 |
| 平成29年度 | 川下清/満村和宏/谷英樹 |
| 平成28年度 | 辰野久夫/今川忠/小谷寛子/岩井泉 |
| 平成27年度 | 竹岡富美男/米田秀実/平野惠稔 |
| 平成26年度 | 藪野恒明/井上英昭/岩田研二郎/印藤弘二 |
| 平成25年度 | 辰野久夫/森信静治/矢倉昌子 |
| 平成24年度 | 松葉知幸/小原正敏/尾川雅清 |
| 平成23年度 | 畑守人/藪野恒明/吉岡一彦/木村圭二郎 |
| 平成22年度 | 中本和洋/山口孝司/石田法子/三木秀夫 |
| 平成21年度 | 金子武嗣/福原哲晃/福田健次 |
| 平成20年度 | 松森彬/夏住要一郎/宮崎裕二 |
| 平成19年度 | 益田哲生/小寺一矢/岩城本臣/今川忠 |
| 平成18年度 | 上野勝/阪井紘行/斎藤ともよ |
| 平成17年度 | 高階叙男/山田庸男/畑守人/井上英昭 |
| 平成16年度 | 高階貞男/益田哲生/辻公雄/森信静治 |
2 愛知県弁護士会出身の理事
愛知県弁護士会出身の理事は,通常枠では2人を基礎とする年度が多いが,女性理事の特別枠によって実数が変動する。実際に令和3年度は3人であり,「毎年2人」と断定することはできない。平成16年度当時の会名は名古屋弁護士会であった。
| 年度 | 愛知県弁護士会出身の日弁連理事 |
|---|---|
| 令和8年度 | 矢崎信也/檀浦康仁 |
| 令和7年度 | 長谷川龍伸/磯貝隆博 |
| 令和6年度 | 奧村哲司/川合伸子 |
| 令和5年度 | 伊藤倫文/竹内千賀子 |
| 令和4年度 | 小川淳/眞下寛之 |
| 令和3年度 | 蜂須賀太郎/村瀬桃子/中根浩二 |
| 令和2年度 | 井口浩治/竹内裕美 |
| 平成31年度 | 山下勇樹/服部千鶴 |
| 平成30年度 | 小関敏光/水野泰二 |
| 平成29年度 | 石原真二/鈴木典行 |
| 平成28年度 | 川上明彦/木下芳宣 |
| 平成27年度 | 花井増實/池田桂子 |
| 平成26年度 | 安井信久/石原真二 |
| 平成25年度 | 纐纈和義/川上明彦 |
| 平成24年度 | 中村正典/花井増實 |
| 平成23年度 | 齋藤勉/纐纈和義 |
| 平成22年度 | 細井土夫/安井信久 |
| 平成21年度 | 入谷正章/齋藤勉 |
| 平成20年度 | 村上文男/中村正典 |
| 平成19年度 | 山田靖典/細井土夫 |
| 平成18年度 | 青山学/村上文男 |
| 平成17年度 | 小川宏嗣/入谷正章 |
| 平成16年度 | 田中清隆/塩見渉 |
第7 年度別役員を掲載する日弁連新聞
1 平成16年度から令和8年度までの掲載号
日弁連新聞は,毎年度4月1日付の号に新年度役員を掲載している。平成16年度から令和8年度までの掲載号は,次のとおりである。
| 年度 | 日弁連新聞 |
|---|---|
| 令和8年度 | 第625号(令和8年4月1日付) |
| 令和7年度 | 第613号(令和7年4月1日付) |
| 令和6年度 | 第601号(令和6年4月1日付) |
| 令和5年度 | 第589号(令和5年4月1日付) |
| 令和4年度 | 第577号(令和4年4月1日付) |
| 令和3年度 | 第565号(令和3年4月1日付) |
| 令和2年度 | 第555号(令和2年4月1日付) |
| 平成31年度 | 第543号(平成31年4月1日付) |
| 平成30年度 | 第531号(平成30年4月1日付) |
| 平成29年度 | 第519号(平成29年4月1日付) |
| 平成28年度 | 第507号(平成28年4月1日付) |
| 平成27年度 | 第495号(平成27年4月1日付) |
| 平成26年度 | 第483号(平成26年4月1日付) |
| 平成25年度 | 第471号(平成25年4月1日付) |
| 平成24年度 | 第459号(平成24年4月1日付) |
| 平成23年度 | 第447号(平成23年4月1日付) |
| 平成22年度 | 第435号(平成22年4月1日付) |
| 平成21年度 | 第423号(平成21年4月1日付) |
| 平成20年度 | 第411号(平成20年4月1日付) |
| 平成19年度 | 第399号(平成19年4月1日付) |
| 平成18年度 | 第387号(平成18年4月1日付) |
| 平成17年度 | 第375号(平成17年4月1日付) |
| 平成16年度 | 第363号(平成16年4月1日付) |
2 リンク切れがある掲載号の扱い
令和2年度から平成28年度までについて,旧記事に設定されていた日弁連の旧URLはリンク切れとなっているため,本記事では号数及び発行日だけを記載した。平成27年度以前は,本文を確認できるWayback Machineの保存ページが見つかった号について,保存ページへのリンクを設定している。
年度別名簿を確認するときは,検索結果の断片ではなく,紙面の役員欄で氏名と所属弁護士会を照合する必要がある。特別枠の有無によって同一弁護士会から掲載される人数が変動するため,通常枠の人数だけから各年度の氏名を推測することはできない。
第8 出典・参考資料
1 法令,会則及び規程
① e-Gov法令検索「弁護士法(昭和24年法律第205号)」
② 日本弁護士連合会会則,26頁~28頁(PDF実頁13~14)
③ 役員選任規程,1頁~4頁(PDF実頁1~2)
④ 男女共同参画推進特別措置実施のための理事候補者推薦に関する協議会規則
2 日弁連の公表資料及び会務資料
② 日本弁護士連合会「日弁連の会員」及び「弁護士会別会員数(令和8年7月1日現在)」
③ 第四次日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画,1頁~3頁及び15頁~16頁
④ 日本弁護士連合会「令和8年度代議員会議事概要」(会員用資料,令和8年3月13日開催)
⑤ 日弁連新聞第363号から第625号までの各年度役員欄
3 制度史及び文献
① 日本弁護士連合会編『日弁連二十年』(日本弁護士連合会,昭和45年)62頁(PDF実頁73)
② 日本弁護士連合会編『日弁連三十年』(日本弁護士連合会,昭和56年)63頁(PDF実頁84)
③ 杉井静子『ジェンダー平等社会の実現へ――「おかしい」から「あたりまえ」に』(日本評論社,令和5年)230頁~231頁