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日弁連会長の直接選挙制と任期2年制-導入経緯・推薦状廃止・補欠選挙(AIリライト)

第1 制度の変遷とこの記事の対象

日弁連会長の直接選挙制は昭和50年度から適用され,現在につながる任期2年制は昭和55年4月1日から実施された。
両制度は昭和44年の機構改革案に盛り込まれたが,実現した時期は異なる。

この記事は,直接選挙制と任期2年制の導入経緯を中心に,推薦状制度の廃止及び補欠会長の任期を整理するものである。
沿革は日弁連等の機関史の該当頁に基づき,現行制度は令和8年10月4日現在で確認した会則及び会長選挙規程に基づく。

時期制度上の出来事決議と適用の区別
設立当初代議員会による会長選出,役員任期2年直接選挙制の導入前
昭和25年4月9日役員任期を1年に短縮当初の2年制を変更
昭和49年2月23日直接選挙制の会則改正案を臨時総会で可決昭和50年度から適用
昭和54年6月推薦状制度の廃止を総会で決定廃止決議の時期
昭和54年6月23日会長任期2年制への会則改正を決議昭和55年4月1日から実施

第2 間接選挙と当初の任期2年制

1 代議員会による会長選出

日弁連設立当初から昭和49年度まで,会長は代議員会で選出されていた。
昭和50年度からの直接選挙制は,この選任方法を弁護士である会員による選挙へ改めたものである(『日本弁護士沿革史』351頁,『日弁連三十年』49頁~50頁)。

2 昭和25年の任期短縮

(1) 設立当初の2年制から1年制へ

設立当初の役員任期は2年であったが,昭和25年4月9日の会則改正で1年に短縮された(『日本弁護士沿革史』351頁)。
この改正は,同月10日から施行された(日本弁護士連合会会則附則(昭和25年4月9日改正))。
したがって,昭和55年からの会長任期2年制は,日弁連に初めて2年の任期を設けたものではない。

(2) 機関史が説明する短縮の理由

『日弁連二十年』は,任期短縮の理由として,会長職の負担と,任期1年の単位弁護士会会長との任期の不一致を説明している(62頁)。
後の任期延長を理解する際にも,会務の継続性だけでなく,会長の負担及び他の役員との任期の関係が検討されていたことが分かる。

同書62頁の該当部分は,次のとおりである。
「右変更の理由は、役員、特に会長の職務が激務であり、二年間の任期では犠牲が大き過ぎることがあげられ、また、単位弁護士会の会長の任期は一年であり、日弁連副会長、理事に単位弁護士会会長が多く選任されていた関係上、その任期が異ることが不便である等が実質的理由とされたのである。」
なお,同書は短縮の時期を「昭和二五年二月の会則改正」と記しているが,日本弁護士連合会会則の附則は,この改正を昭和25年4月9日改正,同月10日施行としている。

第3 直接選挙制の検討と昭和50年度からの適用

1 機構改革委員会の検討

(1) 委員会の設置と審議の規模

昭和40年4月に日弁連機構改革委員会が設置された。
『日弁連三十年』は,臨時司法制度調査会の意見に対する反対運動を,機構改革に取り組む契機として説明している(46頁)。

検討は昭和45年7月まで続き,全体委員会18回,部会102回,全国会員へのアンケート2回及び11か所での公聴会が行われた(『日弁連三十年』46頁~47頁)。
これらは審議の規模を示す数字であり,直接選挙制への会員の賛成率を示す数字ではない。

(2) 直接選挙案と任期2年案の提起

昭和44年2月の建議には,会長の直接選挙制と任期2年制が含まれていた。
同月の理事会は改革大綱を承認して会則改正委員会を設置し,会則改正案は同年12月,選挙規程案は昭和45年9月に答申された(『日弁連三十年』47頁)。

機構改革委員会は昭和45年7月に機構改革大綱を最終答申した。
任期2年案もこの段階から検討されていたが,直接選挙制と同時には実施されなかった。

2 地域の支持を当選要件に組み込むまで

(1) 昭和47年案と否決

審議では,単位弁護士会ごとに30票~50票を与える案も出された(『日弁連三十年』48頁)。
これは検討過程の案であり,そのまま採用された制度ではない。

昭和47年2月19日の理事会がまとめた案は,全国の最多得票に加え,全単位弁護士会の4分の1を超える会で最多得票を得ることを当選要件とした。
しかし,同年3月18日の代議員会では,可決に必要な3分の2の多数に13票不足して否決された(『日弁連三十年』48頁)。

(2) 昭和49年の可決

昭和48年11月22日の理事会案では,単位弁護士会での最多得票の要件が,全単位弁護士会の3分の1を超える数へ変更された。
この案は,昭和49年1月19日の代議員会で賛成289票・反対49票,同年2月23日の臨時総会で賛成3903票・反対221票により可決された(『日弁連三十年』49頁)。

『関東十県会三十年の歩み』は,地域の支持に関する要件の変更を,同会の活動による成果として振り返っている(248頁~249頁)。
これは関東十県会自身の評価であり,改革全体を同会だけの働きかけで説明するものではない。

3 制度の適用と最初の投票の違い

直接選挙制は昭和50年度から適用されたが,昭和50年と昭和51年の選挙はいずれも候補者が1人であり,無投票となった。
複数候補者による最初の投票は昭和52年3月11日に行われ,宮田光秀が当選した(『日弁連三十年』50頁~51頁)。

各年度の選挙結果は,日弁連設立時から平成18年度までの日弁連会長選挙の結果にまとめている。
制度が適用された年度と,投票が実際に行われた年を区別して読む必要がある。

第4 昭和55年からの会長任期2年制

1 第2次機構改革委員会の答申

(1) 他の役員の任期と分けた検討

昭和52年12月に第2次機構改革委員会が設置され,昭和53年3月から9月までに全体委員会が5回開かれた。
『日弁連三十年』によれば,同委員会は,会長の任期2年制を,他の役員の任期とは切り離して実施する方向で答申した(56頁)。
同書は,直接選挙で選ばれた会長による会務の継続性と執行の統一を,2年制の利点としている。

(2) 会長の負担軽減

同答申は,会長の負担を軽減するための有給制の採用にも言及している(『日弁連三十年』56頁)。
任期延長の検討は,会長に長く職務を担わせることだけでなく,その負担に対応する制度の検討を伴っていた。

2 改正決議と実施日

(1) 昭和54年の決議と昭和55年の実施

昭和53年11月の理事会での承認・発議と,昭和54年3月の代議員会での審議を経て,同年5月の定期総会の継続会(同年6月23日)で,会長任期2年制への会則改正が決議された。
実施日は昭和55年4月1日であり,決議日から直ちに2年制となったわけではない(『日弁連三十年』56頁,『日弁連四十年』31頁)。

(2) 現行会則の通常任期

現行会則62条では,会長の任期は2年,その他の役員の任期は1年である。
通常の任期は,選任された年の4月1日から始まる。

第5 昭和54年の推薦状制度廃止

1 50人~70人の推薦署名と運用上の問題

(1) 推薦状制度の趣旨

直接選挙制の発足時には,立候補届出に50人以上70人以下の署名を集めた推薦状が必要であった。
『日弁連三十年』は,下限を候補者の乱立防止,上限を推薦状集めが事前運動になることの防止に結び付けて説明している(54頁)。

(2) 早期の推薦状集めと廃止

同書は,早い時期から多数の推薦状を集め,提出する署名を70人以内に絞る運用が生じ,選挙運動の開始時期が曖昧になる弊害を記している(54頁~55頁)。
こうした問題を背景に,推薦状制度の廃止は昭和54年6月の総会で決定された(55頁)。

2 推薦依頼と選挙運動の関係

(1) 現行の日弁連規程

現行会長選挙規程53条は,選挙運動期間を,立候補の届出が受理された時から投票日の前日までとしている。
投票日が延期された場合の終期は,同規程27条の2第2項に規定する公示の日であり,同規程58条1項1号は期間外の選挙運動を禁止している。

(2) 公職選挙についての裁判例

大阪高裁令和5年7月19日判決は,公職選挙法違反の刑事事件で,推薦依頼の相手方や依頼内容等を踏まえて選挙運動該当性を判断し,被告人の控訴を棄却した。
推薦依頼という形式だけで選挙運動該当性が一律に決まるわけではなく,事情によっては選挙運動に当たることを示す裁判例である(判決本文3頁~5頁)。

この判決は,日弁連の会長選挙規程違反を判断したものではない。
日弁連選挙の運動規制は,公職選挙の刑事事件とは根拠を分けて確認する必要があり,現行の規制の詳細は,日弁連会長選挙の選挙運動規制で扱っている。

第6 補欠会長の選任と任期

1 昭和56年の会長交代

『日弁連四十年』は,谷川八郎が昭和56年5月6日に会長を辞任し,同年7月に宮田光秀が会長に就任したことを記録している(34頁~35頁)。
これは任期2年制の実施後に会長が任期途中で交代した事例である。

2 現行会則の補欠選任と任期計算

(1) 補欠選任を行わない場合

会則63条1項は,会長が欠けた場合には補欠の選任を行うことを原則とし,残任期間が6か月未満の場合には,補欠の選任を行わないものとしている。
同条の副会長・理事・監事に関する規定とは文言が異なり,会長については,6か月未満でも補欠選任を行うかどうかを選択できるという規定ではない。

会則63条の2は,補欠会長の選挙を,会長が欠けた日から3か月以内に行うとしている。
この選挙の実施期限と,補欠会長自身の任期の長さは別の事項である。

(2) 当選者氏名の公示日を起点とする任期

会則63条3項による補欠会長の任期は,当選者の氏名が公示された日から1年を経過した後の最初の3月31日までである。
起点は就任日ではなく当選者氏名の公示日であり,前任会長の残任期間だけを引き継ぐ方式でもない。

第7 現行の当選要件と国政選挙の判例

1 全国の得票と単位弁護士会での支持

(1) 二つの当選要件

会則61条1項は,弁護士である会員による直接選挙を定め,候補者が1人の場合には投票を行わないとしている。
投票を行う場合,同条2項は,全国で最多得票を得ることに加え,全弁護士会の3分の1を超える会で最多得票を得ることを当選要件としている。

日弁連の会員についての公式説明によれば,弁護士会は52会である。
52会の3分の1を超える数は18会となるが,単位弁護士会の最多得票者が同数となった場合,その会は算入しない(会則61条3項)。

(2) 再投票にも適用される両要件

当選者が決まらない場合の再投票についても,全国の最多得票と単位弁護士会での支持という両要件が適用される(会則61条の2)。
再投票になれば,全国の得票数だけで当選者が決まる制度ではない。

(3) 埼玉弁護士会の地域要件維持論

埼玉弁護士会の平成24年12月19日付け「日弁連会長選挙制度に関する意見書」は,日弁連が弁護士と弁護士会を構成員とすることを理由に,再投票でも地域要件を維持する立場を示している。
同意見書は,会長選出の長期化を避ける必要性にも言及しており,地域代表性と迅速な選出の両方を制度上の課題としている。

2 国政選挙の一票の格差との区別

(1) 昭和39年の参議院地方区判決

最高裁大法廷昭和39年2月5日判決は,参議院地方区の定数配分について,国会の裁量を認めつつ,選挙権の享有に極端な不平等を生じさせる場合を別としている。
人口比例でないという理由だけで直ちに違憲とした判決ではないが,昭和51年より前にも定数配分の合憲性は裁判で争われていた。

(2) 昭和51年の衆議院定数配分判決

最高裁大法廷昭和51年4月14日判決は,昭和47年12月10日の衆議院選挙に適用された議員定数配分規定を違憲と判断した。
他方,事情判決の法理により選挙自体は無効とせず,原判決を破棄して請求を棄却した上で,当該選挙が違法であることを宣言した。

(3) 日弁連選挙についての判断との違い

これらは国会議員の選挙区・定数配分に関する判決であり,日弁連の当選要件を判断したものではない。
国政選挙の判例の推移は,一票の格差に関する最高裁判例一覧で扱っている。

3 山本庸幸裁判官の反対意見

最高裁大法廷平成30年12月19日判決は,平成29年10月22日の衆議院小選挙区選挙の区割りについて,投票価値の平等の要求に反する状態にはなかったとして,上告を棄却した。
これに対し,山本庸幸裁判官は,区割りの決定において投票価値の平等を唯一かつ絶対の基準とする立場から反対意見を述べている(判決本文38頁)。

この考え方は同裁判官の反対意見であり,多数意見とは異なる。
また,日弁連の直接選挙制度や単位弁護士会数に関する当選要件の適法性を判定した意見ではない。

第8 関連記事

① 選挙制度の全体像は,日弁連会長選挙の仕組み・沿革・選挙運動
② 近年の得票数等は,過去の日弁連会長選挙の結果(平成20年度以降)
③ 会長・事務総長の一覧は,日弁連の歴代会長及び事務総長
④ 正副会長の一覧は,日弁連の歴代正副会長(昭和57年度以降)
⑤ 副会長の会務分担は,日弁連の歴代副会長の担当会務
⑥ 会派の構成と役割は,弁護士会の会派
⑦ 役員に関する記事の入口は,日弁連役員に関する記事の一覧

第9 出典

1 機関史・沿革資料

① 日本弁護士連合会編・発行『日本弁護士沿革史』(昭和34年3月20日)351頁(国立国会図書館の書誌)
② 日本弁護士連合会編・発行『日弁連二十年』(昭和45年6月10日)62頁
③ 日弁連創立三十周年記念行事実行委員会編,日本弁護士連合会発行『日弁連三十年』(昭和56年5月1日,第1版第1刷)46頁~56頁
④ 関東十県会三十年史編集委員会編,関東十県会発行『関東十県会三十年の歩み』(昭和63年3月31日)248頁~249頁
⑤ 日弁連創立四十周年記念行事実行委員会編,日本弁護士連合会発行『日弁連四十年』(平成4年3月1日,第1版第1刷)31頁,34頁~35頁

書籍の頁数は冊子に印刷された頁である。
機関史が述べる改革の契機,制度の趣旨及び活動の評価は,その資料の説明として示している。

2 会則・会規・正式意見書

① 日本弁護士連合会会則61条,61条の2,62条,63条及び63条の2並びに附則(昭和25年4月9日改正)(改正履歴末尾は令和6年12月6日。冊子29頁~32頁及び57頁,PDF実頁15頁~16頁及び29頁)
② 会長選挙規程(会規第19号)53条及び58条1項1号(令和7年6月13日改正,同月23日施行。冊子27頁~28頁,33頁~34頁,41頁。PDF実頁14頁,17頁,21頁)
③ 埼玉弁護士会「日弁連会長選挙制度に関する意見書」(平成24年12月19日)第1及び第2

3 団体の構成についての公式説明

日本弁護士連合会「日弁連の会員」「1.弁護士会」及び会員数表(令和8年9月1日現在)

4 裁判例

① 最高裁判所大法廷昭和39年2月5日判決(昭和38年(オ)第422号,民集18巻2号270頁。裁判所ウェブサイト。本文1頁~2頁)
② 最高裁判所大法廷昭和51年4月14日判決(昭和49年(行ツ)第75号,民集30巻3号223頁。裁判所ウェブサイト。主文及び理由)
③ 最高裁判所大法廷平成30年12月19日判決(平成30年(行ツ)第109号ほか12件,集民260号139頁。裁判所ウェブサイト。判決全文38頁の山本庸幸裁判官反対意見)
④ 大阪高等裁判所令和5年7月19日判決(令和5年(う)第139号。裁判所ウェブサイト。本文1頁,3頁~5頁)