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日弁連の女性副会長―平成15年度から令和8年度の一覧とクオータ制(AIリライト)

第1 日弁連の歴代女性副会長

1 一覧の対象及び読み方

日弁連で初めて女性が副会長に就任したのは平成15年度であり,令和8年度までの女性副会長は延べ42人である。以下の表は,日弁連の定期総会・代議員会の年度別議事概要,役員一覧及び弁護士白書等に基づき,就任年度順に整理したものである。

氏名の後の括弧内は,就任当時の所属弁護士会及び司法修習期であり,「特別措置」は男女共同参画推進特別措置によって推薦された候補者であることを示す。平成30年度以降に特別措置の表示がない女性副会長は,通常の地域別候補者として選任された者である。

2 平成15年度から令和8年度までの一覧

年度女性副会長人数
平成15年度大国和江(広島・20期)1人
平成16年度なし0人
平成17年度高木佳子(第二東京・24期)1人
平成18年度~平成23年度なし各年度0人
平成24年度小川恭子(滋賀・34期)/宇都宮眞由美(愛媛・35期)2人
平成25年度海老原夕美(埼玉・34期)/松田幸子(宮崎県・38期)2人
平成26年度水地啓子(横浜・35期)/石田法子(大阪・28期)/浅岡美恵(京都・24期)3人
平成27年度なし0人
平成28年度早稲田祐美子(第二東京・37期)1人
平成29年度渕上玲子(東京・35期)/池田桂子(愛知県・35期)2人
平成30年度竹森裕子(神奈川県・40期)/正木靖子(兵庫県・34期,特別措置)/岡崎由美子(島根県・29期,特別措置)3人
平成31年度平沢郁子(東京・41期,特別措置)/原田直子(福岡県・34期,特別措置)2人
令和2年度西村依子(金沢・37期,特別措置)/狩野節子(秋田・44期,特別措置)2人
令和3年度相原佳子(第一東京・43期,特別措置)/横山幸子(栃木県・40期,特別措置)2人
令和4年度松村眞理子(第一東京・40期)/菅沼友子(第二東京・42期)/芳野直子(神奈川県・43期)/矢倉昌子(大阪・39期,特別措置)/下中奈美(広島・41期)/秀嶋ゆかり(札幌・41期,特別措置)6人
令和5年度戸田綾美(第二東京・43期,特別措置)/大脇美保(京都・52期)/宇加治恭子(福岡県・51期,特別措置)3人
令和6年度三浦亜紀(千葉県・49期,特別措置)/田下佳代(長野県・42期)/飯岡久美(広島・40期,特別措置)3人
令和7年度寺町東子(東京・46期,特別措置)/武本夕香子(兵庫県・48期)/水田美由紀(岡山・43期)/笹川理子(鹿児島県・48期,特別措置)/藤田祐子(仙台・54期)/西森やよい(高知・53期)6人
令和8年度中井洋恵(大阪・40期)/熊田登与子(愛知県・37期,特別措置)/中橋紅美(高知・53期,特別措置)3人

平成26年度まで「横浜弁護士会」であった会は,平成28年4月1日に「神奈川県弁護士会」へ名称を変更したため,表では就任当時の名称を用いた。特別措置の対象者は赤字等の色だけで区別せず,文字でも選任経路が分かるようにした。

第2 女性副会長制度の沿革

1 最初の女性副会長と平成27年度の空白

日弁連の英語版弁護士白書2018は,平成15年度に初の女性副会長が就任したこと,平成27年度には女性副会長が一人もいなかったことを記録している。女性副会長は平成24年度に2人,平成26年度に3人となった一方,翌年度には再び0人となっており,通常の地域別候補者の選任だけでは人数が年度ごとに大きく変動していた。

2 平成29年の会則改正と制度開始

平成29年12月8日の臨時総会は,女性副会長候補者に関する特別措置を実施するため,会則第56条等を改正する議案を可決した。この改正により,副会長の定数は13人から15人となり,平成30年4月1日から女性副会長を少なくとも2人確保する制度が始まった。

犬伏由子・井上匡子・君塚正臣編『レクチャージェンダー法〔第2版〕』(法律文化社,令和3年)237頁も,平成29年の会則改正と平成30年度からの女性副会長クオータ制を制度沿革として説明している。ただし,現在の定数,選任方法及び支援額は,書籍の記述ではなく現行の会則・会規・規則で確認する必要がある。

3 積極的改善措置としての位置付け

男女共同参画社会基本法2条2号は,男女間の参画機会の格差を改善するため,必要な範囲で男女のいずれか一方に参画機会を積極的に提供する措置を「積極的改善措置」と定義している。日弁連の女性最低人数及び経済的支援は,意思決定過程への参画障壁を緩和する積極的改善措置という法政策上の文脈で理解することができる。

もっとも,日弁連の具体的な人数及び選任手続は,男女共同参画社会基本法が直接定めるものではなく,日弁連の会則等に基づく内部制度である。制度の法的根拠と,制度を評価する際の法政策上の考え方とは区別しなければならない。

第3 現行会則と選任手続

1 「女性2人」は上限ではなく最低人数である

日本弁護士連合会会則56条1項は,副会長を15人とし,同条2項は,そのうち少なくとも2人は女性でなければならないと定めている。したがって,現行制度は女性副会長を2人に固定する制度ではなく,最低2人を確保する制度である。

実際,制度開始年の平成30年度は女性副会長が3人,令和4年度及び令和7年度は各6人,令和8年度は3人であった。この人数の違いは,特別措置による2人のほかに,通常の地域別候補者として女性が選任されることがあるために生じる。

2 通常の候補者と特別措置による候補者

役員選任規程4条5項は,副会長のうち女性2人を,特別措置のための推薦委員会が推薦する者の中から,代議員会の決議によって選任すると定めている。実務上は,通常の地域別候補者13人と,特別措置によって推薦される女性候補者2人とが,同じ代議員会で副会長候補者として扱われる。

副会長候補者推薦委員会規則によれば,推薦委員会は複数の女性候補者から2人を推薦する。推薦委員会が副会長を最終的に任命するのではなく,候補者を推薦する機関である点が重要である。

3 最終的に選任するのは代議員会である

特別措置によって推薦された2人も,通常の候補者とともに代議員会へ諮られ,代議員会の決議によって副会長に選任される。令和8年3月の代議員会でも,特別措置による熊田登与子会員及び中橋紅美会員を含む15人について選任方法が決められ,各候補者が選任された。

したがって,「推薦委員会が女性副会長2人を選任する」という説明は正確ではない。推薦委員会による候補者推薦と,代議員会による役員選任とは,手続上の異なる段階である。

4 推薦委員会の守秘と公表される情報

副会長候補者推薦委員会規則は,委員及び事務局に対し,委員会の審議及び関連情報について秘密を保持することを求めている。このため,候補者間の比較評価,投票状況又は個別の不推薦理由は,公開資料から確認できない。

他方で,推薦された候補者の氏名,代議員会における選任方法及び選任結果は,年度別の議事概要等で確認できる。したがって,選任手続の全体が一般会員に永久に分からないという説明ではなく,内部審議の非公開部分と,公表される最終手続・結果とを分けて理解する必要がある。

第4 副会長報酬と特別措置による経済的支援

1 副会長の給与は月額50万円である

副会長報酬規則3条1項は,副会長に月額50万円の給与を支給すると定めている。この給与は,通常の地域別候補者であるか,特別措置による候補者であるかにかかわらず,副会長という役職について支給される。

2 月額20万円は別規則による経済的支援である

男女共同参画推進特別措置実施のための副会長に対する経済的支援に関する規則2条1項は,特別措置によって選任された副会長に対し,月額20万円の経済的支援を行うと定めている。支援期間は就任月から退任月までであり,副会長報酬規則上の給与とは別の制度である。

規則上の月額支給額を単純に合計すると,特別措置による副会長には50万円と20万円の合計70万円が支給される。もっとも,この単純合計は,50万円の給与と20万円の経済的支援とが同じ法的名目であることを意味しない。

3 経済的支援が設けられた背景

『男女共同参画をすすめる会ニュース』(令和3年12月17日)1頁~4頁に掲載された女性副会長経験者の説明によれば,就任前には事件の共同受任・引継ぎを進め,事務所経営及び家庭責任との調整をする必要があった。杉井静子『ジェンダー平等社会の実現へ―「おかしい」から「あたりまえ」に』(日本評論社,令和5年)222頁~225頁も,女性弁護士が家族責任及び子育てによって職務上の障壁を負い得ることを論じている。

これらは支援規則の条文そのものではないが,月額20万円の政策的背景を理解する資料となる。制度を評価するときは,受領総額の差だけでなく,給与と経済的支援の区別,支援対象及び就任障壁の実態を併せて検討する必要がある。

第5 女性役員比率と初の女性会長

1 最低2人と実際の女性人数は区別する

会則上の最低人数である2人は,副会長15人の13.3%に当たるのに対し,令和8年度の女性副会長3人は20%である。令和4年度及び令和7年度の6人は40%であり,通常の候補者の構成によって実際の女性比率は大きく変わる。

このため,年度ごとの状況を比較するときは,特別措置による2人と,女性副会長の総数とを別々に確認する必要がある。表中で選任経路を文字で表示したのは,この二つを混同しないためである。

2 女性弁護士比率と30%目標

令和7年版男女共同参画白書によれば,令和6年11月1日現在,弁護士に占める女性の割合は20.2%である。会則上の最低人数2人だけではこの会員比率を下回るが,最低人数と会員比率との比較だけで役員構成の適否が直ちに決まるわけではない。

近畿弁護士会連合会の令和6年度理事長挨拶は,日弁連の第四次男女共同参画推進基本計画が,副会長及び理事に占める女性割合30%を目標としていることを紹介している。副会長15人の30%以上を確保するには女性が少なくとも5人必要であるため,会則上の「少なくとも2人」は目標値そのものではなく,最低限の保障として機能する。

3 渕上玲子会員が初の女性会長となった

平成29年度に女性副会長を務めた渕上玲子会員は,令和6年4月1日に日弁連初の女性会長に就任し,令和6年度・令和7年度の会長を務めた。日本記者クラブの令和6年4月22日会見記録も,女性として初めて日弁連会長に就任したことを確認している。

したがって,令和4年以前の資料にある「女性の日弁連会長はいない」という記載は,現在の沿革説明としては更新が必要である。女性副会長制度の経過を見る際にも,副会長だけでなく,会長を含む意思決定過程全体の変化を確認することが重要である。

第6 関連記事

日弁連の会長及び副会長

日弁連会則

日弁連の女性理事

日弁連の機関及び役員

第7 出典

1 日弁連の会則・会規・規則及び公表資料

日弁連「弁護士法・会則・会規等」

日本弁護士連合会会則

役員選任規程

男女共同参画推進特別措置実施のための副会長候補者推薦委員会規則

副会長報酬規則

男女共同参画推進特別措置実施のための副会長に対する経済的支援に関する規則

平成29年12月8日臨時総会

日弁連の英語版弁護士白書2018

日弁連会長・副会長・事務総長・事務次長一覧表(令和8年6月1日更新)

2 年度別役員資料

① 日弁連「定期総会報告」第69回第70回第71回第72回第73回第74回第75回及び第76回

② 日本弁護士政治連盟「日本弁護士連合会副会長」平成24年度平成25年度平成26年度平成28年度及び平成29年度

③ 大国和江「弁護士大国和江・プロフィール」及び高木佳子「弁護士高木佳子・プロフィール」。

④ 日本弁護士連合会『日弁連七十年』(令和元年)PDF実頁31頁~32頁。

3 法令・統計及び書籍

e-Gov法令検索「男女共同参画社会基本法」

② 内閣府男女共同参画局『令和7年版男女共同参画白書』。

③ 犬伏由子・井上匡子・君塚正臣編『レクチャージェンダー法〔第2版〕』(法律文化社,令和3年)237頁。

④ 杉井静子『ジェンダー平等社会の実現へ―「おかしい」から「あたりまえ」に』(日本評論社,令和5年)222頁~225頁及び231頁。

⑤ 『男女共同参画をすすめる会ニュース』(令和3年12月17日)1頁~4頁。