出産・育児を理由とする弁護士会費の免除

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目次
第1 日弁連会費の場合
1 平成20年1月1日施行の,出産を理由とする日弁連会費の免除(出産後,1年以内の申請が必要です。)
2 平成27年4月1日施行の,育児を理由とする日弁連会費の免除(子の出生から2年以内の申請が必要です。)
第2 大阪弁護士会費の場合(令和4年9月30日以前に子が生まれた場合)
1 出産を理由とする大弁会費の免除(出産後,1年以内の申請が必要です。)
2 育児を理由とする大弁会費の猶予・免除
3 両者の根拠条文
第3 大阪弁護士会費の場合(令和4年10月1日以降に子が生まれた場合)
1 出産を理由とする大弁会費の免除
2 育児を理由とする大弁会費の免除
第4 国民年金保険料及び国民年金基金の取扱い
第5 児童扶養手当の支給対象の拡大
第6 仕事と育児を両立している女性官僚に関するnote記事の記載
第7 最高裁大法廷平成25年9月4日決定の記載内容
第8 関連記事その他


第1 日弁連会費の場合
1 平成20年1月1日施行の,出産を理由とする日弁連会費の免除(出産後,1年以内の申請が必要です。)
(1)ア   女性弁護士が出産した場合,所属弁護士会を通じて日弁連に対し,会費等免除申請書に,母子手帳の表紙と予定日が分かるページの写しを添付して提出すれば,出産月の前月から4か月間,日弁連の会費及び特別会費を免除してもらえます。
イ 多胎妊娠の場合,出産の前々月から6か月間,日弁連の会費及び特別会費を免除してもらえます。
(2) 根拠条文は以下のとおりです。
① 日弁連会則95条の4第2項
② 出産時の会費免除に関する規程(平成19年12月6日会規第84号)


2 平成27年4月1日施行の,育児を理由とする日弁連会費の免除(子の出生から2年以内の申請が必要です。)
(1)ア 弁護士が子の育児をする場合,所属弁護士会を通じて日弁連に対し,会費等免除申請書に,①誓約書兼育児予定書及び②戸籍謄本又は子との関係が明らかになる住民票を添付して提出すれば,子が2歳になるまでの任意の6か月間(令和元年9月30日までに出生した子である場合)又は12ヶ月間(令和元年10月1日以降に出生した子である場合),日弁連の会費及び特別会費を免除してもらえます。
イ 令和元年10月1日以降に出生した子について出産時における会費の免除を受けていた場合,育児期間中の会費免除は10ヶ月間となります(多胎妊娠の場合は15ヶ月間です。)。
(2)ア 令和元年9月30日までに出生した子である場合,日弁連会費等の免除期間中,育児の実績を記載した書類(書式の定めなし,テンプレートあり)を毎月作成し,翌月末までに提出する必要がありますものの, 休業要件はありません。
イ 令和元年10月1日以降に出生した子である場合,日弁連会費等の免除期間中,育児実績書(書式の定めあり)を4ヶ月に1回,提出する必要がありますものの, 休業要件はありません。
(3) 根拠条文は以下のとおりです。
① 日弁連会則95条の4第3項
② 育児期間中の会費免除に関する規程(平成25年12月6日会期第98号)


第2 大阪弁護士会費の場合(令和4年9月30日までに子が生まれた場合)
1 出産を理由とする大弁会費の免除(出産後,1年以内の申請が必要です。)
(1) 女性弁護士が出産した場合,大弁企画部会員企画課に対し,会費免除申請書(出産)に,母子手帳の表紙と予定日が分かるページの写しを添付して提出すれば,出産月の前月から4か月間,大弁の一般会費及び会館特別会費を免除してもらえます。
(2) 多胎妊娠の場合,出産の前々月から6か月間,大弁の一般会費及び会館特別会費を免除してもらえます。


2 育児を理由とする大弁会費の猶予・免除
(1) 大弁会費の支払の猶予
ア 弁護士が1歳に満たない子の育児をするために休業する場合,大弁企画部会員企画課に対し,会費の納入猶予申請書に,母子手帳の表紙と予定日が分かるページの写しを添付して提出すれば,子が1歳になるまでの間,大弁の一般会費及び会館特別会費の支払を猶予してもらえます。
イ 育児期間終了後の常議員会決議により,猶予されていた一般会費及び会館特別会費の免除が確定します。
(2) 大弁会費の免除(子の出生から1年6月以内の申請が必要です。)
ア 弁護士が子の育児をするために全く執務をしなかった場合,大弁企画部会員企画課に対し,全部休業を理由として,会費の免除申請書(育児休業)に,休業証明書を添付して提出すれば,猶予期間中の大弁の一般会費及び会館特別会費の全部を免除してもらえます。
イ 弁護士が子の育児をするために100時間を下回る時間しか執務をしなかった場合,大弁企画部会員企画課に対し,一部休業を理由として,会費の免除申請書(育児休業)に,休業証明書を添付して提出すれば,猶予期間中の大弁の一般会費及び会館特別会費の半分を免除してもらえます。
ウ 月刊大阪弁護士会2020年3月号11頁には以下の記載があるものの,いつから実施される改正であるかは不明です。
   従前の当会育児免除は、全部/一部休業した場合のみ会費減免が受けられる制度でしたが、日弁連の育児期間中の会費免除と同様、休業要件をなくし、育児をする会員(保育施設やベビーシッター等、経済的負担のかかる代替手段を利用する等して、職場復帰した会員を含む。)が広く利用できる制度とします。育児実態の確認を育児報告書(500字以上)で確認すると共に、育児報告書を月報等に掲載することにより、会内のワーク・ライフ・バランスを推進します。


3 両者の根拠条文
(1) ①大阪弁護士会会則161条,及び②会則第161条の運営準則(昭和52年2月7日常議員会承認)でした。
(2) 会費の免除及び猶予の基準は会規に書いてありませんでした。


第3 大阪弁護士会費の場合(令和4年10月1日以降に子が生まれた場合)
1 出産を理由とする大弁会費の免除
(1) 月刊大阪弁護士会2022年9月号78頁によれば,主な改正ポイントは以下のとおりです。
① 申請があれば常議員会決議なく免除
② 免除対象期間を日弁連に合わせて基準月による
③ 出産の定義を日弁連に合わせて「妊娠4ヶ月(85日)以上の分娩,同時期以降の流産及び死産の場合を含む」
④ 外国特別会員も対象
(2) 書類の提出先は大阪弁護士会事務局企画一課です。


2 育児を理由とする大弁会費の免除
(1) 月刊大阪弁護士会2022年9月号78頁によれば,主な改正ポイントは以下のとおりです。
① 休業要件廃止
② 全部免除のみで減額なし
③ 免除対象は一般会費のみに限定(旧制度は「一般会費・会館特別会費」が免除対象)
④ 申請があれば常議員会決議なく申請により免除
⑤ 多胎の子の免除期間,新たな出産・育児の免除期間・申請期間を日弁連に合わせる
⑥ 育児実績レポートの提出,会報誌等での公開と不提出の場合の取消
⑦ 外国特別会員も対象
(2) 書類の提出先は大阪弁護士会事務局人権課です。


第4 国民年金保険料及び国民年金基金の取扱い
1 平成31年4月以降,市区町村に届出をすることにより,出産予定日又は出産日が属する月の前月から4か月間の国民年金保険料が免除されるようになりました(国民年金法88条の2,並びに厚生労働省HPの「国民年金の産前産後期間の保険料免除制度」,及び日本年金機構HPの「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」参照)。
2 日本年金機構の産前産後の国民年金保険料を免除する「産前産後休業保険料免除制度」により国民年金保険料の納付を一定期間免除された場合,日本弁護士国民年金基金の加入員資格喪失にはなりません。
   この場合,国民年金保険料の免除期間中も日本弁護士国民年金基金の掛金は変わらず納付対象となります。日本弁護士国民年金基金の掛金納付を希望しない場合,日本弁護士国民年金基金に連絡することで掛金の引落しを停止することができます(日本弁護士国民年金基金の「令和2年度予算及び代議員会・理事会の審議結果のご報告」(令和2年5月)13頁参照)。


第5 児童扶養手当の支給対象の拡大
1 平成22年8月1日から,父子家庭に対しても児童扶養手当が支給されるようになりました(厚生労働省の「平成22年8月1日から、父子家庭のみなさまにも児童扶養手当が支給されます!(平成22年8月~11月分の手当の支給は、同年12月となります。)」参照)。
2 令和3年2月分までの児童扶養手当につき,障害基礎年金等を受給している人は,障害基礎年金等の額が児童扶養手当の額を上回る場合,児童扶養手当を受給できませんでした(このような併給調整が憲法25条及び14条1項に違反しないことにつき,堀木訴訟に関する最高裁大法廷昭和57年7月7日判決参照)。
   しかし,令和3年3月分の児童扶養手当(令和3年5月支払)以降については,児童扶養手当の額が障害基礎年金等の子の加算部分の額を上回る場合、その差額を児童扶養手当として受給できるようになりました(厚生労働省の「障害基礎年金等を受給しているひとり親のご家庭の皆さま 「児童扶養手当」が変わります」参照)。
3 厚生労働省HPの「児童扶養手当」には,平成22年以降の児童扶養手当の改正内容に関する資料が掲載されています。


第6 仕事と育児を両立している女性官僚に関するnote記事の記載
・ 「働き方改革」と題するnote記事には以下の記載があります(改行を追加しています。)。
    これ(山中注:ワーカホリック)に対極的なのが、「なんとか逃れよう」パターンである。つまり、男女問わず、可能な限り産休・育休を申請し、家庭の事情をつぶさに人事に報告し、組織のことよりも自分の健康と家族を優先する。
    (当たり前のことをしているので決して表では言われないが)概して上からの評価は悪くなりがちである一方、人間味を失わないので、下からの評価はおおむね良い。もちろん、もう少し進んで、自分だけ早く帰りたいーと部下を置いていくようになると部下からも嫌われる。
    厄介なのが、「自分は仕事も家庭も両立してます」という女性官僚が、無意識なのか意識的なのか、ここに多くが分類されることである。配慮されたポストにいつつ、本当に泥臭い部分はお前全然やってねーじゃねーか、という状況でありながら、「激務でしんどい、でもやりがいがある、仕事はやり方次第、仕事も子供もちゃんと両立キラキラ」と目を輝かせる。能力は決して低くないので、激務ポスト等経験しなくても幹部としてやっていける。
    でも、自分が配慮されている間、同期が死にそうになっていたことに考えも及ばず、「自分は頑張った」と胸を張り、これみよがしに雑誌やら採用パンフやらで登場することになる。やり方で国会対応がなんとかなるなら、お前マジで一度やってみろボケ、と後輩たちからの怒りを買うことになる。
    近年の「働き方改革」に沿う考え方ではあり、その自覚さえあれば決して悪い生き方ではないが、どうしても周りに負担をかけるので、「周りを見ない」無神経さか、「嫌われても仕方ないと思う」勇気が必要な生き方である。


第7 最高裁大法廷平成25年9月4日決定の記載内容
・ 民法900条4号ただし書前段の規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していたと判示した最高裁大法廷平成25年9月4日決定には以下の記載があります(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
①    昭和22年民法改正以降,我が国においては,社会,経済状況の変動に伴い,婚姻や家族の実態が変化し,その在り方に対する国民の意識の変化も指摘されている。
    すなわち,地域や職業の種類によって差異のあるところであるが,要約すれば,戦後の経済の急速な発展の中で,職業生活を支える最小単位として,夫婦と一定年齢までの子どもを中心とする形態の家族が増加するとともに,高齢化の進展に伴って生存配偶者の生活の保障の必要性が高まり,子孫の生活手段としての意義が大きかった相続財産の持つ意味にも大きな変化が生じた。
    昭和55年法律第51号による民法の一部改正により配偶者の法定相続分が引き上げられるなどしたのは,このような変化を受けたものである。
    さらに,昭和50年代前半頃までは減少傾向にあった嫡出でない子の出生数は,その後現在に至るまで増加傾向が続いているほか,平成期に入った後においては,いわゆる晩婚化,非婚化,少子化が進み,これに伴って中高年の未婚の子どもがその親と同居する世帯や単独世帯が増加しているとともに,離婚件数,特に未成年の子を持つ夫婦の離婚件数及び再婚件数も増加するなどしている。
    これらのことから,婚姻,家族の形態が著しく多様化しており,これに伴い,婚姻,家族の在り方に対する国民の意識の多様化が大きく進んでいることが指摘されている。
② 住民票における世帯主との続柄の記載をめぐり,昭和63年に訴訟が提起され,その控訴審係属中である平成6年に,住民基本台帳事務処理要領の一部改正(平成6年12月15日自治振第233号)が行われ,世帯主の子は,嫡出子であるか嫡出でない子であるかを区別することなく,一律に「子」と記載することとされた。
    また,戸籍における嫡出でない子の父母との続柄欄の記載をめぐっても,平成11年に訴訟が提起され,その第1審判決言渡し後である平成16年に,戸籍法施行規則の一部改正(平成16年法務省令第76号)が行われ,嫡出子と同様に「長男(長女)」等と記載することとされ,既に戸籍に記載されている嫡出でない子の父母との続柄欄の記載も,通達(平成16年11月1日付け法務省民一第3008号民事局長通達)により,当該記載を申出により上記のとおり更正することとされた。
    さらに,最高裁平成18年(行ツ)第135号同20年6月4日大法廷判決・民集62巻6号1367頁は,嫡出でない子の日本国籍の取得につき嫡出子と異なる取扱いを定めた国籍法3条1項の規定(平成20年法律第88号による改正前のもの)が遅くとも平成15年当時において憲法14条1項に違反していた旨を判示し,同判決を契機とする国籍法の上記改正に際しては,同年以前に日本国籍取得の届出をした嫡出でない子も日本国籍を取得し得ることとされた。


第8 関連記事その他
1 社会保険に加入している場合,健康保険からは出産手当金(産前産後休暇で給与の支払がない場合の給付であり,標準表集月額の3分の2です。)び42万円の出産育児一時金を支給され,雇用保険からは育児休業給付を支給されます。
2(1) 東弁リブラ2021年3月号「育児従事の期間における会費免除について 制度紹介と利用者の声」が載っています。
(2)ア 第二東京弁護士会HPに「法律事務所の出産・育児支援のグッドプラクティス」が載っています。
イ 第二東京弁護士会HPの「二弁の育児等の支援」には,出産・育児に伴う会費免除制度,及び保育サービス費用補助制度に関する説明が載っています。
ウ 二弁フロンティア2021年11月号「私の育休報告」に,産褥(さんじょく)入院による育児支援サービスのことが書いてあります。
(3) 岩崎総合法律事務所HP「資産家夫婦の財産分与トラブルを防ぐ「夫婦財産契約」という選択」が載っています。
3(1) 内閣府男女共同参画局HP「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW)」に,女子差別撤廃条約の条文,一般勧告,政府報告,委員会最終見解とかが載っています。
(2) さくら共同法律事務所HP「弁護士の子育て事情」が載っています。
(3) 厚生労働省HPに「認可外保育施設に対する届出制の導入について」(平成14年7月12日付の厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課長通知)が載っています。
4(1) 憲法24条は,民主主義の基本原理である個人の尊厳と両性の本質的平等の原則を婚姻および家族の関係について定めたものであり,男女両性は本質的に平等であるから,夫と妻との間に,夫たり妻たるの故をもって権利の享有に不平等な扱いをすることを禁じたものであって,結局,継続的な夫婦関係を全体として観察した上で,婚姻関係における夫と妻とが実質上同等の権利を享有することを期待した趣旨の規定と解すべく,個々具体の法律関係において,常に必ず同一の権利を有すべきものであるというまでの要請を包含するものではありません(最高裁大法廷昭和36年9月6日判決)。
(2) 最高裁平成17年9月8日判決は,帝王切開術による分娩を強く希望していた夫婦に経膣分娩を勧めた医師の説明が同夫婦に対して経膣分娩の場合の危険性を理解した上で経膣分娩を受け入れるか否かについて判断する機会を与えるべき義務を尽くしたものとはいえないとされた事例です。
(3) 就労前の年少女子の得べかりし利益の喪失による損害賠償額をいわゆる賃金センサスの女子労働者の平均給与額を基準として算定する場合には,賃金センサスの平均給与額に男女間の格差があるからといって,家事労働分を加算すべきものではありません(最高裁昭和62年1月19日判決)。
5 以下の記事も参照してください。
・ 弁護士の職務上の氏名
・ 日弁連の会費及び特別会費
・ 大阪弁護士会の負担金会費
 日弁連の女性副会長
・ 日弁連の女性理事

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