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日弁連の事務総長及び事務次長(AIリライト)

第1 事務総長及び事務次長の位置付け

1 会則上の地位

日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)には,事務総長1人及び事務次長若干人が置かれている(日弁連会則82条の2第1項)。

事務総長及び事務次長の任免は,理事会の議を経て,会長が行う(同条5項)。会則は両職の任期を定めていないため,実際の在任期間と会則上の「任期」は区別する必要がある。

両職は,会長の下で日弁連の会務執行を実務面から支える中枢であり,実務上は「総次長」と総称される。ただし,事務総長と事務次長では,会則上の権限及び事務局職員との関係が異なる。

2 2026年4月1日現在の公開名簿

日弁連の「会長・副会長・事務総長・事務次長一覧表」によれば,2026年4月1日現在の事務総長及び事務次長は,次のとおりである。

役職氏名所属
事務総長芳野直子神奈川県弁護士会
事務次長妹尾孝之神奈川県弁護士会
事務次長小林剛第二東京弁護士会
事務次長安田伸一東京弁護士会
事務次長三浦繁樹第一東京弁護士会
事務次長河本智子第二東京弁護士会
事務次長榎木純一東京弁護士会
事務次長笹沼波日弁連

したがって,同日現在,事務次長は,弁護士事務次長6人及び日弁連事務局職員である事務次長1人の合計7人である。

3 2026年6月以後の異動

公開名簿の基準日後,2026年4月の理事会で事務次長の任命が承認され,同年5月の理事会で妹尾孝之事務次長の同月末日付け退任が承認された。同年7月の理事会報告には「千歳事務次長」の発言が記録されている。

千歳・大石法律事務所の公開プロフィールは,千歳博信弁護士の現職を日弁連事務次長と記載している。これらを合わせると,2026年6月以後,妹尾孝之に代わって千歳博信(神奈川県弁護士会)が事務次長に就任したものと考えられる。2026年8月9日までの理事会報告で,他の事務次長の退任又は任命は確認できなかった。

なお,日弁連が一般公開している一覧表は,2026年8月9日現在も同年4月1日基準のものである。本記事では,一般公開名簿と,その後の会員用理事会報告で確認できる異動を区別している。

4 事務局との関係

日弁連の会務を補助するため,事務総長の下に事務局が置かれている(日弁連会則82条の3)。事務局職員の任免は,会長が行う(事務局職制4条)。

事務総長が指揮監督する対象について,会則82条の2第2項は「事務局の職員」と定めている。他方,事務次長は,同条4項により事務総長を補佐し,事務局職制2条により事務総長の指示を受けて所定の事務を処理する。このため,「事務総長が事務次長以下の職員を指揮監督する」と一括して説明するのは,会則の文言としては正確でない。

第2 事務総長の職務

1 会則上の職務及び会議での意見申述

事務総長は,会長の命を受けて日弁連の事務を掌理し,事務局の職員を指揮監督する(日弁連会則82条の2第2項)。「会長の旨」ではなく,「会長の命」が現行会則の文言である。

また,事務総長は,日弁連の会議に出席し,意見を述べることができる(同条3項)。この出席・意見申述権は事務総長について明記されたものであり,事務次長について同じ規定はない。

2 会長の補佐及び組織内外の調整

事務総長の実務は,事務局の管理にとどまらない。日弁連の公刊資料及び事務総長経験者の説明によれば,会長及び副会長を補佐し,各委員会,総次長室,事務局その他の関係部署の間を調整するとともに,重要案件では最高裁判所,法務省その他の官庁等との折衝に当たる。

二弁フロンティア2018年10月号の事務総長経験者インタビューでは,事務総長は「事務方のトップ」と位置付けられ,会長及び副会長の支援,内部調整並びに対外的折衝が主要な職務として説明されている。

3 予算執行に関する会計事務

日弁連会計規則11条は,予算執行に関する会計事務の責任者を事務総長と定めている。また,事務総長は,毎月末に各会計別の収入及び支出の状況を示す計算書を作成し,財務委員会に提出しなければならない(同規則12条)。

したがって,事務総長は,会務全般の調整だけでなく,予算執行に関する会計事務についても明文上の責任を負う。

第3 事務次長の職務

1 会則及び事務局職制上の職務

事務次長は,事務総長を補佐し,会規又は規則で定める事務を掌る(日弁連会則82条の2第4項)。この根拠条項は同条5項ではなく,同条4項である。

事務局職制2条は,事務次長の職務を,①各種委員会,調査室,広報室及び国際室の事務の連絡調整,②事務局の監督,③事務総長の指示を受けた対外的事務の処理と定めている。

2 委員会担当及び議案調整

弁護士事務次長は,多数の委員会,ワーキンググループ及び調査室等を分担する。2025年に退任した事務次長の記録では,弁護士事務次長6人が日弁連の委員会等を分担し,筆者自身は委員会27,ワーキンググループ5及び調査室等2の合計34組織を担当したとされている。

同記録によれば,委員会等から提出される案件は,担当事務次長による内容及び手続の確認,議案打合せ,正副会長会,理事会という経路をたどり,必要な案件はさらに総会へ進むのが典型である。もっとも,これは実務上の典型例であり,全ての案件が常に同じ経路をたどるという意味ではない。

事務次長は,委員会の意図を執行部へ伝える一方,執行部の方針や理事会提出上の問題点を委員会へ伝える。そのため,単なる書類の取次ぎではなく,日弁連内部の意思形成を円滑にする調整機能を担っている。

3 会議及び対外的事務

2025年に退任した事務次長の記録では,総長室会議が原則として毎月,総次長会議が原則として毎週開かれていたとされている。また,事務次長は,国会,最高裁判所,法務省その他の関係機関との調整や説明,報道対応等にも従事する。

会議の曜日,担当替えの周期その他の運用は年度によって変わり得る。例えば,2020年の事務次長経験者の寄稿には,弁護士事務次長の担当を4か月ごとに交代させていたとの記載があるが,これを現在も変わらない固定ルールとして扱うことはできない。

4 在任期間

会則及び事務局職制には,事務総長又は事務次長の任期の定めがない。近年の実務では,事務総長は会長の在任期間に合わせ,弁護士事務次長はおおむね2年間在任する例が多いが,交代時期をずらして組織運営の継続性を確保する運用がされてきた。

司法制度改革推進本部の法曹制度検討会における2003年の日弁連説明も,事務次長が2年ごとに全員一斉交代するのではなく,交代時期をずらして継続性を確保する実務を紹介している。したがって,「任期2年」は会則上の任期ではなく,実務上の在任期間を簡略に述べた表現である。

第4 制度及び人数の沿革

1 事務総長が会則上の機関となった時期

事務総長は,昭和35年5月28日の定期総会における会則改正により,会則上の機関となった。

2 事務次長の始期に関する資料の違い

『日弁連五十年史』495頁の一覧では,岸永博が昭和41年7月1日に事務次長へ就任し,昭和47年6月30日まで在任したことが確認できる。他方,2025年に退任した事務次長の手許記録は,現在につながる弁護士事務次長の人事記録を昭和47年7月1日から掲げている。

両資料は起点が一致しない。『日弁連五十年史』は昭和41年から事務次長の存在を確認できる一次的な沿革資料であるのに対し,後者は手許記録に基づく特定の人事系列である。そのため,本記事では,昭和47年7月1日を役職の創設日とは扱わない。

3 昭和63年改正と現行制度

『日弁連四十年』36頁~37頁によれば,昭和63年5月28日の定期総会で会則及び事務局職制が改正され,事務次長は事務総長と同じく会則上の機関とされ,人数は従来の弁護士2人から「若干人」に改められた。

同改正を受けた事務局職制の細目は,平成元年3月の理事会で定められ,平成元年4月1日から施行された。したがって,現在の会則82条の2を基礎とする事務次長制度の重要な画期は,昭和63年5月28日の会則改正と平成元年4月1日の施行である。

4 事務次長の人数の推移

公刊資料から確認できる主な節目は,次のとおりである。なお,古い時期には,弁護士事務次長と事務局職員の「事務次長」とで資料上の扱いが異なるため,単純に一つの連続した人数表として数えない方が正確である。

時期公刊資料から確認できる体制
昭和41年7月弁護士事務次長1人を確認できる
昭和50年7月弁護士事務次長2人
昭和56年7月~昭和62年11月弁護士事務次長2人に職員事務次長1人を加えた3人体制
平成2年及び平成3年当時弁護士事務次長2人
平成5年7月3人体制
平成8年6月4人体制
平成14年度5人体制
平成15年度6人体制(弁護士5人及び職員1人)
令和2年8月7人体制(弁護士6人及び職員1人)
2026年4月7人体制(弁護士6人及び職員1人)

この推移から,委員会活動及び対外調整の拡大に応じて事務次長が増員されてきたことが分かる。ただし,4人から5人へ増員された正確な日付は,今回確認できた公刊資料からは特定できなかった。

5 職員事務次長

現在は,弁護士事務次長6人とは別に,日弁連事務局職員である事務次長1人が置かれている。2026年4月1日現在の職員事務次長は笹沼波である。

歴史的には,昭和56年7月から昭和62年11月まで職員事務次長が置かれた後に空白期間があり,平成5年7月以降,再び職員事務次長を含む体制が確認できる。他方,『日弁連五十年史』の会長・副会長・事務総長・事務次長一覧では,昭和40年度までの事務次長欄が空欄である。今回確認できた公刊資料だけでは,それ以前の事務局内の同名ポストと現在の会則上の事務次長との制度的な連続性を確定できないため,職員事務次長の歴代氏名を昭和24年から連続する一つの一覧としては掲げない。

第5 日弁連の意思決定における総次長の役割

1 会長,副会長及び委員会との関係

日弁連の政策は,会長及び副会長だけで形成されるものでも,各委員会だけで形成されるものでもない。事務総長及び事務次長は,会長・副会長と委員会・調査室・事務局との間に入り,内容,手続,日程及び対外的影響を調整する。

もっとも,総次長が最終的な意思決定機関となるわけではない。案件の性質に応じて,正副会長会での調整を経た上,理事会,常務理事会又は総会等の権限ある機関が意思決定する。

2 制度上の権限と実務上の影響力の区別

事務総長及び事務次長は,議案の形成及び調整に大きく関与するため,実務上の影響は大きい。他方,会則上,会議への出席及び意見申述を明文で認められているのは事務総長であり,事務次長の職務は事務総長の補佐及び会規・規則所定の事務である。

このように,日弁連の総次長を理解するには,①会則・会規・規則に定められた正式な権限,②各年度の実務運用,③個々の経験者が述べる実情を区別して読む必要がある。

第6 関連記事

① 日弁連の歴代会長及び事務総長

② 日弁連の組織

③ 日弁連事務局

④ 日弁連役員に関する記事の一覧

出典・参考資料

1 現行の会則,会規,規則及び名簿

① 日本弁護士連合会「日本弁護士連合会会則」82条の2及び82条の3

② 日本弁護士連合会「事務局職制」2条及び4条

③ 日本弁護士連合会「会計規則」11条及び12条

④ 日本弁護士連合会「会長・副会長・事務総長・事務次長一覧表(2026年4月1日現在)

⑤ 日本弁護士連合会会員専用サイト「2026年度理事会報告」第1回理事会議事概要(速報)10頁,第2回理事会議事概要(速報)15頁及び第4回理事会議事概要(速報)4頁(2026年8月9日確認)

⑥ 千歳・大石法律事務所「事務所案内・弁護士紹介」(2026年8月9日確認)

2 沿革及び組織運営

① 日本弁護士連合会『日弁連四十年』1989年,36頁~37頁

② 日本弁護士連合会『日弁連五十年史』1999年,493頁~507頁

③ 日本弁護士連合会『日弁連七十年』「日弁連の組織運営にかかわる諸問題への取組」25頁及び「旧会館時代の思い出」16頁

④ 佐藤岩夫「司法政策決定過程における日弁連のスタンスとその特徴」『法社会学』61号,2004年,132頁以下,134頁及び142頁

3 職務の実情に関する資料

① 第二東京弁護士会「出井先生,お疲れ様でした―出井直樹前日弁連事務総長にインタビュー」『二弁フロンティア』2018年10月号,38頁~41頁

② 神奈川県弁護士会「日弁連事務次長になって」『神奈川県弁護士会新聞』2020年8月号,1頁~2頁

③ 中村新造「日本弁護士連合会事務次長を終えて」全友会,2025年11月11日

④ 司法制度改革推進本部事務局「法曹制度検討会(第15回)議事録」2003年1月21日