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企業法務・民事実務

完全子会社の取締役・監査役が親会社に対抗する方法―解任・報酬・監査権限(AI作成)

第1 親会社への対抗手段を考える前提
1 親会社への請求と子会社への請求
2 親会社の支配と子会社役員の職務

第2 解任・報酬・辞任をめぐる請求
1 解任の効力と損害賠償
2 報酬の減額と解任による損害
3 決議取消しは3か月の期限を分けて考える
4 辞任・任期満了・代表取締役の解職

第3 在任中の取締役・監査役の権限
1 取締役による異議・報告・取締役会の利用
2 監査役による調査・報告・差止め
3 会計限定監査役には使えない権限がある

第4 親会社への直接請求と会社財産の回復
1 契約・不法行為の根拠を特定する
2 法人格否認と強制執行の限界
3 子会社の損害は子会社の権利として扱う

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個人情報保護法の安全管理措置は機密性に偏っているか――情報セキュリティ3要素のバランスと報告義務の構造(AI作成)

目次

第1 情報セキュリティ3要素と個人情報保護法上の安全管理措置

1 機密性・完全性・可用性という3要素
2 個人情報保護法23条が定める安全管理措置

第2 個人情報保護委員会ガイドラインが示す具体的な措置の内容

1 安全管理措置の5類型
2 技術的安全管理措置として必須とされる4項目

第3 漏えい等報告義務における3要素の扱い

1 報告対象事態の4類型と漏えい・滅失・毀損
2 ランサムウェア事案の位置づけと共通様式の新設

第4 医療分野における先行的な対応

1 医療情報システムの安全管理に関するガイドラインが示す3要素
2 可用性・完全性に踏み込んだ対策

第5 実務上の留意点

1 安全管理措置を点検する際の視点

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弁護士国民年金基金の給付請求―老齢年金・未支給年金・遺族一時金の必要書類,電子申請及び給付ごとの時効(AI作成)

第1 給付請求の全体像

1 結論

2 最初に区別する四つの手続

第2 老齢年金の請求

1 基金から届く請求書

2 基本となる添付書類

3 電子申請の準備と利用できない場合

4 年金の支払月と支払日

第3 受給者又は加入員が死亡した場合

1 まず死亡連絡をする

2 未支給年金

3 遺族一時金

4 未支給年金と遺族一時金を同時に確認する

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特別永住者とは――対象者・子孫の要件,出生後60日以内の申請及び永住者との違い

第1 特別永住者の意味
第2 対象者

1 平和条約国籍離脱者
2 平和条約国籍離脱者の子孫

第3 特別永住者となる主な経路

1 法律上当然に特別永住者となった人
2 出生その他の事由による申請
3 一定の在留資格からの申請

第4 「永住者」との主な違い
第5 確認すべき資料
第6 出典

第1 特別永住者の意味

特別永住者とは、日本の植民地統治の終了と平和条約の発効に伴って日本国籍を離脱した人及びその子孫のうち、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」により日本で永住することができる人をいう。

本記事の基準日は令和8年8月29日であり,対象者の定義及び協定永住からの制度移行の説明を同年10月11日に補正した。
同年10月12日には,現行の特例法22条に基づき退去強制の要件を補足した。

特別永住者は、出入国管理及び難民認定法上の在留資格「永住者」と名称が似ているものの、制度の根拠、対象者及び手続が異なる。

第2 対象者

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弁護士国民年金基金の資格喪失と再加入―弁護士法人・企業内弁護士・海外転居時の手続(AI作成)

第1 資格喪失と再加入を判断する基準

1 弁護士であることだけでは加入資格は決まらない

2 主な場面ごとの資格喪失日と次の手続

3 資格喪失届は原則として14日以内である

第2 弁護士法人及び企業内弁護士になった場合

1 基金資格を失う起点は厚生年金の資格取得日である

2 資格喪失届に添付する資料

3 後に独立して第1号被保険者へ戻る場合

第3 海外へ転出する場合と帰国する場合

1 在外加入を続けるには三つの手続を組み合わせる

2 在外加入中の掛金と弁護士業務

3 帰国時にも在外加入をいったん喪失して国内加入を申し出る

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特別永住者の再入国許可――みなし再入国の2年,通常許可の6年及び地位喪失の注意点

第1 結論
第2 みなし再入国許可

1 利用の要件
2 2年以内の再入国

第3 通常の再入国許可
第4 期限を超えた場合の注意点
第5 出国前の確認事項
第6 出典

第1 結論
特別永住者が一時的に出国して従前の地位のまま再入国する方法には、みなし再入国許可と通常の再入国許可がある。

本記事の基準日は令和8年8月29日である。

みなし再入国許可の有効期間は原則として出国の日から2年であり、通常の再入国許可は許可される期間が最長6年である。

いずれも、旅券や特別永住者証明書を持って出国すれば無期限に帰国できる制度ではない。
第2 みなし再入国許可
1 利用の要件
有効な旅券及び特別永住者証明書を所持する特別永住者は、出国時に再入国の意思を表明することにより、原則として事前の再入国許可を受けずに出国できる。

実務上は、出国審査の際に再入国出国記録の所定欄を確認し、みなし再入国許可による出国であることを明確にする必要がある。

旅券を取得できない事情がある場合は、通常の再入国許可及び再入国許可書の取扱いを地方出入国在留管理局に確認する必要がある。

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「朝鮮籍」とは何か――「韓国」「朝鮮」の国籍・地域表示と実体国籍の違い

第1 「朝鮮籍」の意味
第2 「韓国」と「朝鮮」の違い

1 「韓国」の表示
2 「朝鮮」の表示

第3 表示と実体国籍を分けて考える必要性
第4 実体国籍を確認するための資料
第5 相続その他の法律実務への影響
第6 出典

第1 「朝鮮籍」の意味
一般に「朝鮮籍」と呼ばれるものは、日本の在留管理上の国籍・地域欄に「朝鮮」と表示されている状態を指す。

本記事の基準日は令和8年8月29日である。

「朝鮮」は朝鮮半島の出身地・地域を示す表示であり、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の国籍を示す表示ではない。

参議院に対する平成20年の政府答弁書も、「韓国」は国籍を表示するものとしつつ、「朝鮮」は朝鮮半島出身者及びその子孫についての地域表示であって、何らかの国籍を表示するものとして用いているものではないと説明している。
第2 「韓国」と「朝鮮」の違い
1 「韓国」の表示
在留管理上の「韓国」は、大韓民国の国籍を表示するものである。

したがって、「朝鮮」から「韓国」へ表示を変更する手続では、大韓民国の旅券、家族関係登録事項別証明書その他の国籍を示す資料が問題となる。
2 「朝鮮」の表示
「朝鮮」は、現在の国家の国籍名ではなく、歴史的に用いられてきた地域表示である。

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台湾人の国籍・地域表示――在留カード・住民票・戸籍,台湾旅券及び中華民国国籍の違い

第1 国籍と地域表示は同じものではない
第2 在留カード及び住民票の「台湾」
第3 戸籍の「台湾」
第4 台湾旅券の意味
第5 中華民国国籍及び台湾の戸籍
第6 歴史的な台湾関係者と現在の台湾出身者
第7 出典

第1 国籍と地域表示は同じものではない
台湾関係者については、①日本の在留管理上の国籍・地域表示、②住民票の記載、③戸籍の国籍・地域欄、④台湾旅券、⑤中華民国国籍及び台湾の戸籍を区別する必要がある。

本記事の基準日は令和8年8月29日である。

日本の行政書類に「台湾」と記載されていることは、その書類における地域表示を意味するのであって、それだけで日本政府による国家承認又は本人の実体国籍に関する全ての問題が決まるわけではない。
第2 在留カード及び住民票の「台湾」
在留カード及び特別永住者証明書の国籍・地域欄では、台湾の権限ある機関が発行した旅券等を所持する人について「台湾」と表示される取扱いがある。

住民票の国籍・地域欄も、在留カード等の記載を基礎として「台湾」と記載される場合がある。

これらは、日本の在留管理・住民記録における「国籍・地域」の表示であり、中華民国国籍の取得又は喪失そのものを決める制度ではない。

令和8年10月5日からの不動産登記の検索用情報における「国籍等」には,国籍の属する国に加え,法令上の地域である台湾も含まれる。国籍・地域が記載された住民票や旅券等の写しと申出内容を照合して手続を行う。
この地域表示を,実体国籍の取得・喪失や日本の国家承認に関する判断と混同してはならない。申出の対象と必要書類は不動産登記の国籍申出―日本人も対象・必要書類と相続登記の注意点を参照されたい。

第3 戸籍の「台湾」
法務省は、戸籍の国籍・地域欄における地域名表記の取扱いを改め、令和7年5月26日以後、台湾出身者について「台湾」と記載できるようにした。

従前の戸籍で「中国」と記載されている場合も、一定の資料を添えて「台湾」への訂正を申し出る取扱いが示されている。

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朝鮮人・台湾人はいつ日本国籍を失ったのか――外国人登録令,平和条約,昭和27年通達及び最高裁判例(AI作成)

第1 結論
第2 戦前の戸籍と日本国籍
第3 外国人登録令は国籍喪失を定めたものではない
第4 朝鮮関係者の日本国籍喪失
第5 台湾関係者の日本国籍喪失
第6 昭和27年通達の位置付け
第7 個別事案で確認すべき事項
第8 出典

第1 結論
朝鮮関係者と台湾関係者の日本国籍喪失日は同じではない。

本記事の基準日は令和8年8月29日である。

朝鮮関係者については日本国との平和条約が発効した昭和27年4月28日、台湾関係者については日本国と中華民国との間の平和条約が発効した同年8月5日が、それぞれ日本国籍喪失の基準日とされている。

もっとも、実際の個人については、戦前の戸籍上の帰属、終戦後の在留状況、婚姻・認知・養子縁組、国籍取得・喪失及び日本への帰化を確認する必要がある。
第2 戦前の戸籍と日本国籍
台湾の割譲時の住民の扱いについては,下関条約の内容と賠償金の第5条の解説を参照されたい。
同条の2年間の退去猶予と臣民に関する留保は,戦後の日本国籍喪失の基準日とは別の問題である。

日本の統治下にあった朝鮮・台湾に関係する人の国籍を検討する際は、出生地や出自と、当時の日本国内法上の法的地位を区別する必要がある。
「朝鮮出身」「台湾出身」という事情だけで、条約発効に伴う日本国籍喪失の対象となったかを判断することはできない。

同じ日本国籍を有していた時期でも、内地と朝鮮・台湾では、身分関係に適用される法や登録制度が一様ではなかった。
法律上どの身分に属していたかと、現実の登載・除籍・送籍が済んでいたかも、分けて確認する必要がある。

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破産直前の賃金支払は否認されるか――通常の給料日・支払不能後・期限前払の違い(AI作成)

第1 結論と本記事の対象

第2 破産法162条による否認の要件

1 支払不能後又は破産申立て後の賃金支払

2 支払不能前30日以内の期限前払

3 一般従業員と内部者の違い

第3 賃金債権の順位が否認に与える影響

1 破産手続開始前3か月間の給料等

2 財団債権とならない賃金

3 財団の充足状況と有害性

第4 賃金支払に関係する裁判例

1 支払停止後に未払給料等を受領した事例

2 賃金支払資金の借入れのために担保を設定した事例

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債権者による法人破産申立て―要件・予納金・回収リスク(AI作成)

第1 債権者申立てを検討する場面

1 債権者も法人破産を申し立てることができる

2 申立ての目的を先に定める

第2 申立ての要件と管轄裁判所

1 債権と開始原因の二重の疎明が必要である

2 支払不能と支払停止

3 法人の債務超過

4 管轄は主たる営業所所在地の地方裁判所が原則である

第3 債権者側で準備する資料

1 自己の債権を示す資料

2 開始原因を示す資料

3 債権者が債務者の内部資料を入手できない場合

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支払不能と債務超過の違い―破産法上の意味と判断方法(AI作成)

第1 支払不能と債務超過の違い

第2 支払不能の意味と判断方法

1 破産法2条11項の定義

2 支払能力に含まれる要素

3 確認資料

第3 債務超過の意味と判断方法

1 破産法16条1項の定義

2 帳簿上の債務超過と破産法上の債務超過

3 個人と法人の違い

第4 一方だけが認められる場合

1 債務超過であるが支払不能ではない場合

2 支払不能であるが債務超過ではない場合

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電子記録債権(でんさい)の決済金は銀行の相殺・商事留置権で回収できるか(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論

1 対象とする場面
2 結論
3 直接の射程外となる場面

第2 でんさい決済で二つの回収根拠が問題となる理由

1 でんさいの発生と口座間送金決済
2 商事留置権と相殺は別の法律構成であること

第3 大分地裁決定から福岡高裁判決までの経過
第4 通常のでんさいに商事留置権が成立しないとされた理由

1 商法521条と破産法66条
2 紙の取立委任手形に関する最高裁判例
3 でんさいには取立委任裏書に相当する制度がないこと
4 学説が示していた制度上の分岐

第5 決済金返還債務と貸金債権を相殺できないとされた理由

1 破産手続開始時に双方の債務が存在する必要があること
2 現実の送金前に預金債務は成立しないこと
3 債権者記録だけでは「前に生じた原因」にならないこと

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障害者手帳・障害年金の認定と労務提供能力は同じか―雇用紛争で区別すべき四つの判断層(AI作成)

第1 結論と本記事の射程

1 障害等級と労務提供能力は同じ判断ではない

2 個別判決の当否とは分けて検討する

第2 障害者手帳と障害年金が判定しているもの

1 精神障害者保健福祉手帳

2 障害年金

3 二つの認定が接続する場面

第3 雇用紛争で区別すべき四つの判断層

1 第1層―行政上の認定

2 第2層―診断・症状・治療

3 第3層―日常生活・社会生活上の機能

4 第4層―具体的職務についての労務提供能力

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動産売買先取特権に基づく転売代金債権の差押え―要件・証拠・申立て・回収手順(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と最初に確認する五つの条件

1 債務名義がなくても申立てができる
2 申立てを急ぐべき理由
3 この手続を進めるかを判断する五つの条件

第2 動産売買先取特権と物上代位の仕組み

1 売買代金を担保する法定の先取特権
2 転売代金債権を差し押さえる物上代位
3 請負代金債権は原則として別に扱われる

第3 申立てで証明すべき四つの事実

1 売主と買主との売買及び未払代金
2 買主と転売先との売買及び転売代金債権
3 二つの取引における商品の同一性

(1) 型番や製造番号がない商品の立証
(2) 転売先への直接納品
(3) 名称,数量及び金額が一致しない場合

4 担保権の存在を証する文書又は電磁的記録

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マレリのチャプター11は現在どうなっているか―再建手続・取引先への影響(AI作成)

第1 マレリのチャプター11は現在どの段階か

1 事業再建の手続と対象会社
2 通知済みの期日と計画案上の日程

第2 再建計画案が示す債権と株式の扱い

1 一般無担保債権の100%回収見込み
2 資金調達と既存株式
3 債権者委員会の申立てと期間延長命令

第3 取引先が確認する売掛金・支払許可・債権届出

1 契約相手と申立前後の債権
2 支払許可と個別支払
3 債権届出と個別の通知

第4 2022年の再建及び日本の手続との関係
第5 マレリのチャプター11についてよくある質問

1 マレリのチャプター11は,その後どうなったか
2 米国のチャプター11とは何か
3 マレリは,なぜチャプター11を申し立てたのか
4 マレリは潰れるのか,取引先は全額回収できるのか
5 マレリのチャプター11はいつまで続くのか

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コーポレートガバナンス・コードとは-2026年版の4つの基本原則・適用対象・法的拘束力(AI作成)

目次

第1 コーポレートガバナンス・コードとは1 コードが対象とするコーポレートガバナンス2 会社法とは異なる上場制度上の原則第2 プリンシプルベースとコンプライ・オア・エクスプレイン1 細則ではなく原則を示すプリンシプルベース2 実施又は説明を求める仕組み第3 2026年版コードの構造1 4つの基本原則と26の原則2 解釈指針の役割第4 2026年版の4つの基本原則1 4つの基本原則の一覧2 基本原則1―株主の権利・平等性の確保,株主との対話3 基本原則2―株主以外のステークホルダーとの適切な協働4 基本原則3―適切な情報開示と透明性の確保5 基本原則4―取締役会等の責務第5 コードの適用対象1 市場区分ごとに異なる説明対象2 未上場会社と上場外国会社第6 コードの法的拘束力1 各原則自体には法的拘束力がない2 説明は上場規程上の義務である第7 制定・改訂の経緯と2026年版への移行1 2015年の施行から2026年改訂まで2 コーポレート・ガバナンス報告書の更新第8 出典・参考資料1 法令・取引所規則・コード2 金融庁・東京証券取引所の公表・運用資料

第1 コーポレートガバナンス・コードとは

1 コードが対象とするコーポレートガバナンス

東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)は,「コーポレートガバナンス」を,上場会社が株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で,透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みと説明している。
コードは,この仕組みを実効的なものとする主要な原則を示し,各社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を促すものである。

コードは,不祥事の防止や経営者の監視だけを目的とするものではない。
意思決定の透明性・公正性を確保しながら,経営陣による迅速・果断な意思決定と適切なリスクテイクを支える「攻めのガバナンス」も目的としている。

2 会社法とは異なる上場制度上の原則

コーポレートガバナンス・コードは,会社法の条文ではなく,東京証券取引所が定める上場制度上の原則である。
会社法が株式会社の機関,取締役の権限・義務,株主総会その他の法的な仕組みを定めるのに対し,コードは,上場会社がそれぞれの状況に応じて実効的なガバナンスを実現するための考え方を示す。

したがって,会社法上の義務とコード上の原則は,同じものとして扱うことができない。
会社法の制定後の改正については,会社法(平成17年法律第86号)の改正経緯参照。

第2 プリンシプルベースとコンプライ・オア・エクスプレイン

1 細則ではなく原則を示すプリンシプルベース

コードは,会社が取るべき行動を細部まで一律に定めるルールベースではなく,大づかみな原則の趣旨・精神に照らして各社が自らの対応を判断するプリンシプルベース・アプローチを採用している。
同じ原則でも,業種,規模,事業特性,機関設計及び会社を取り巻く環境によって,適切な実施方法は異なり得る。

このため,コードを読むときは,文言を形式的に満たしているかだけでなく,その会社の具体的な取組みが原則の目的に適合しているかを見る必要がある。
コードは,各社に同じ組織図や手続を採用させるための仕様書ではない。

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旧借地権から現行法上の借地権へ切り替えるメリット・デメリット(AI作成)

目次

第1 切替えを検討する前に借地権の種類を分ける

1 旧借地権は更新後も旧法のままである
2 普通借地権と定期借地権を区別する

第2 切替えは旧契約の合意終了と新契約の設定である

1 一方的に借地権の種類を変更することはできない
2 「更新」又は「覚書」という名称だけで判断しない
3 将来の合意解約を扱った最高裁判決

第3 普通借地権へ切り替えるメリット

1 朽廃に関する旧法の規定を外せる
2 再築に関する現行法の枠組みを使える
3 建物構造によらない期間設計ができる

第4 普通借地権へ切り替えるデメリット

1 将来の更新期間が短くなる場合がある
2 旧借地権と契約履歴をいったん終わらせる
3 貸主にとって法定更新の問題は残る

第5 定期借地権への切替えで変わること

1 一般定期借地権は50年以上で設定する
2 事業用定期借地権は公正証書で設定する

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2026年改訂コーポレートガバナンス・コード-変更点・適用日・2027年7月末までの報告書対応(AI作成)

目次

第1 改訂日と報告書の更新期限1 2026年7月21日と2027年7月31日は別の期限である2 コードと上場規程上の説明義務を区別する第2 2026年版コードの構造1 補充原則を廃止し,4基本原則・26原則へ再編した2 解釈指針は説明義務の対象外である第3 2026年改訂の主な変更点1 成長の道筋と経営資源の配分2 独立社外取締役の質・数と取締役会の支援体制3 サイバーセキュリティ等を含む全社的リスク管理4 有価証券報告書の株主総会前開示第4 2027年7月末までの報告書対応1 2021年版による定期更新も一時的に認められる2 二つの記載欄を別々に点検する3 旧コードの開示内容を新しい原則へ対応させる第5 報告書更新の実務手順1 現在の記載を2026年版へ対応付ける2 エクスプレインは提出日時点の状況に合わせる3 他の開示資料との不一致を確認する4 2027年7月30日以前を社内提出目標とする5 取締役会実効性評価を翌年度の改善につなげる第6 改訂内容を読む際の注意点第7 出典・参考資料1 上場制度上の原則及び規則改正資料2 金融庁・東京証券取引所の解説及び運用資料3 パブリックコメント

第1 改訂日と報告書の更新期限

1 2026年7月21日と2027年7月31日は別の期限である

2026年改訂コーポレートガバナンス・コードは,2026年7月21日に確定・公表されたものであり,改訂案の段階ではない。
東京証券取引所は,同日,改訂に伴う有価証券上場規程の一部改正を施行した。

これに対し,上場会社が2026年版コードに基づくコーポレート・ガバナンス報告書を提出する期限は,2027年7月31日である。
したがって,2026年7月21日はコード及び関連上場規程の施行日であり,2027年7月31日は改訂後のコードに基づく報告書の移行期限である。

時点上場会社との関係

2026年7月21日2026年版コードの確定・公表及び関連上場規程の改正施行
2027年3月を目途TDnetの入力欄を「コードの各原則に関する取組み」へ切り替える予定
2027年7月31日2026年版コードに基づくコーポレート・ガバナンス報告書の提出期限

2 コードと上場規程上の説明義務を区別する

コードの各原則は,それ自体が法的拘束力を有する規範ではない。
他方,東証の有価証券上場規程436条の3により,上場内国会社には,市場区分に応じて各原則を実施するか,実施しない場合にはその理由をコーポレート・ガバナンス報告書で説明することが求められる。

このコンプライ・オア・エクスプレインは,全原則の実施を一律に義務付ける仕組みではない。
会社の業種,規模,事業特性,機関設計その他の個別事情に照らして実施しない原則がある場合,その理由を具体的に説明することも予定されている。

市場区分ごとの対象範囲は,次のとおりである。

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貸主から定期借家契約への切替えを打診された借家人の注意事項(AI作成)

目次

第1 結論――合意解約書だけを先に提出しない

第2 最初に現在の契約・締結日・用途を確定する

1 普通借家からの切替えか,定期借家の再契約か

2 平成12年3月1日前の居住用契約には切替制限がある

3 居住用・事業用・店舗併用住宅を区別する

第3 切替えにより変わる更新・終了のルール

1 普通建物賃貸借では貸主の更新拒絶等に正当事由を要する

2 定期建物賃貸借は更新されず,期間満了で終了する

第4 新契約案で確認すべき条項

1 契約期間と終了通知

2 借主の中途解約権

3 再契約の手続と条件

4 賃料改定条項

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貸主から定期借地契約への切替えを求められた借地人の注意事項(AI作成)

目次

第1 打診を受けても直ちに現契約は変わらない

1 承諾しない限り切替えは成立しない
2 最初に集める資料

第2 「切替え」は合意解約と新契約設定の組合せである

1 単なる契約名称の変更ではない
2 合意の有効性は形式だけでは決まらない
3 平成4年8月1日より前の借地権

第3 提案された定期借地権の種類を特定する

1 一般定期借地権と事業用定期借地権
2 建物用途と期間の実態を契約案に合わせる

第4 借地人が失う保護と得る対価を比較する

1 更新,再築及び建物買取請求の三点
2 補償額は一律の割合では決まらない
3 従前契約の金銭を精算する

第5 契約案で優先して修正する条項

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生成AIの学習データ契約とクリエイターへの対価還元――著作権法30条の4との関係(AI作成)

第1 著作権法30条の4と有償契約は両立すること

1 30条の4は「許諾が必要か」を定める規定であること
2 有償契約は「何を取引するか」を定めること
3 データ提供者への支払とクリエイターへの分配は別であること

第2 事前学習,追加学習及びRAGで30条の4の判断が異なること

1 事前学習でもただし書の検討が残ること
2 追加学習は出力目的を確認すること
3 RAGはデータベース構築と回答表示を分けること
4 裁判例は目的を利用実態から判断していること

第3 学習データ契約に独立した価値がある理由

1 権利処理済みデータと利用可能なデータは同じではないこと
2 判決本文と民間の判例要旨・分類体系を分けること
3 データの量より品質が価値になる場面があること
4 学習以外の利用を束ねないこと

第4 クリエイターへの対価還元を契約で設計する方法

1 対価モデルには異なる長所と限界があること
2 分配条項は支払条項から独立させること
3 企業公表例は分配方法の違いを示すこと

(続きを読む...)生成AIの学習データ契約とクリエイターへの対価還元――著作権法30条の4との関係(AI作成)

robots.txtで生成AI学習・AI要約を拒否できるか――技術的効果と著作権法上の限界(AI作成)

第1 robots.txtだけでは生成AIによる利用を全面的に拒否できない
第2 robots.txtの技術的な効力

1 Robots Exclusion Protocolが定めるもの
2 拒否の対象は取得であり,利用目的は事業者ごとに異なる
3 過去の取得や別経路のデータには遡及しない

第3 主要事業者では学習用と検索・要約用の設定が異なる
第4 AI要約を拒否するときは検索表示への影響を分けて考える

1 Google-Extendedを拒否してもAI Overviewsは止まらない
2 クロール拒否とインデックス・表示拒否は同じではない

第5 日本の著作権法30条の4とrobots.txt

1 AI学習は情報解析として同条の対象になり得る
2 robots.txtの拒否だけで同条の適用は外れない
3 解析用データベースの市場と結び付く場合は評価が変わり得る
4 文化庁資料は重要な行政資料であるが判決ではない
5 47条の5の所在検索では政省令の基準も確認する

第6 EU法の機械可読な権利留保との違い
第7 個人情報保護法は著作権法とは別に検討する
第8 サイト運営者が目的別に行うべき対応

(続きを読む...)robots.txtで生成AI学習・AI要約を拒否できるか――技術的効果と著作権法上の限界(AI作成)

公益通報の外部窓口を顧問弁護士が担当する場合の問題点と制度設計(AI作成)

第1 顧問弁護士を外部窓口とすることの結論

1 顧問弁護士への委託は一律に禁止されていない

2 顧問弁護士だけを唯一の窓口とすることは望ましくない

3 法定要件を満たす社外法律事務所への通報は1号通報となる

第2 社外窓口を担当する弁護士の役割

1 依頼者は通常,通報者ではなく会社である

2 受付と調査・法的評価・会社代理を区別する必要がある

3 匿名性と調査可能性には緊張関係がある

第3 公益通報者保護法が求める窓口の体制

1 従事者指定と通報者特定情報の秘密保持

2 経営幹部からの独立性と事案関係者の排除

3 令和8年12月1日施行の指針が利益相反対応を明確にする

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能力不足・協調性不足による普通解雇―改善指導・配置転換・解雇回避措置と裁判例(AI作成)

第1 能力不足・協調性不足による普通解雇の判断枠組み

1 本記事の対象

2 労働契約法16条と就業規則

3 回数・期間による安全基準はない

第2 雇用契約上の能力・職務・評価基準を確定する

1 一般職と職務限定・高度専門職

2 採用時資料と変更範囲の明示

3 相対評価だけでは足りない

第3 能力不足を具体的な事実と業務影響で示す

1 評価語を事実へ置き換える

2 業務への影響を確認する

3 使用者側の原因を切り分ける

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問題社員対応の基本手順―事実確認・注意指導・改善機会・記録化から処分まで(AI作成)

目次

第1 問題社員対応の出発点

1 「問題社員」は法律上の類型ではないこと

2 最初に問題の種類と保護される事情を分けること

第2 事実確認は結論を決める前に行うこと

1 調査対象を具体的な事実に置き換えること

2 原資料を保全してから関係者を聴取すること

3 本人の説明と反証の機会を確保すること

第3 注意指導は事実・基準・改善方法を示して行うこと

1 業務上の指導と懲戒処分を区別すること

2 指導書に含める内容

3 指導の方法がハラスメントにならないようにすること

4 申出や診断書が提出された後も注意指導できるか

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外国人による日本の不動産購入―手続・規制・税金とOECD38国比較(AI作成)

第1 日本の不動産を外国人が購入する場合の結論

1 通常の住宅・宅地には外国人だけを対象とする一般的な取得禁止がないこと

2 国籍,居住地,法人支配及び物件区分を分けて判断すること

3 この記事の比較範囲

第2 日本で不動産を購入する手続

1 契約前に確認する取得主体,物件及び売主

2 売買契約,決済及び登記

3 取得後の外為法報告と登記後の管理

第3 土地の所在地・用途によって適用される規制

1 外国人土地法と重要土地等調査法

2 大規模土地,農地及び森林

3 本人確認と実質的支配者の把握

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労災保険の未収債権200億円超と民間委託―第三者行為災害の求償・費用徴収・返納金はどう回収されるか(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と「200億円超」の意味

1 対象資料と記事の射程
2 200億円超は4種類を含む収納未済額である
3 令和8年度からの契約

第2 回収対象となる4種類の債権

1 第三者行為災害の求償債権
2 費用徴収債権
3 返納金債権と利得償還金債権
4 労働保険料の滞納とは別である

第3 民間委託による回収の流れ

1 4種類に共通する納入督励
2 弁護士が行う債権回収
3 費用徴収債権を弁護士折衝の対象から外す理由
4 第三者行為災害に関する法務相談
5 訴訟提起は契約の対象外である

第4 接触率40%・回収率10%の読み方

1 接触率40%
2 回収率10%

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税務・労働法・社会保険・フリーランス法における労働者性の判定(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 同じ人でも制度ごとに結論が異なる
2 調査の基準時と用語

第2 制度横断の判定地図

1 各制度が問うもの
2 判定を一つのチェック数で決めない

第3 労働基準法・労働契約法・労災保険法

1 条文と使用従属性
2 昭和60年報告の判断要素
3 最高裁判例が示す事実評価
4 令和8年の見直しは未確定である

第4 労働組合法

1 労働基準法より広い概念である
2 個人事業者の外観があっても肯定される

第5 所得税上の給与所得・事業所得・雑所得

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「永住者」と「定住者」の在留資格――許可要件,在留期間の更新及び相互の関係(AI作成)

第1 この記事の対象と別表第二における位置づけ

1 この記事が扱う範囲
2 活動系(別表第一)と身分系(別表第二)の区別
3 別表第二4類型の比較

第2 「永住者」の在留資格

1 永住許可(入管法22条)の法的性質
2 永住許可の要件とガイドラインによる具体化
3 在留期間の定めがないことの意味
4 永住者の在留資格が取り消される場合(令和6年改正)

第3 「定住者」の在留資格

1 定住者告示(平成2年法務省告示第132号)による類型
2 告示に定めのない類型(告示外定住)
3 在留期間の更新

第4 両者の関係――定住者から永住者へ,永住者から定住者へ

1 「定住者の在留資格で5年以上」という特則
2 永住許可取消し後の受け皿としての定住者

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「企業内転勤」の在留資格――グループ会社間異動の該当範囲と「企業内転勤2号」の新設(AI作成)

第1 この記事が扱う対象1 検討の対象と時点2 この記事の位置付け第2 「企業内転勤」とは何か1 入管法上の定義2 平成元年改正による新設の経緯3 他の在留資格との関係第3 上陸許可基準1 転勤直前の継続勤務要件(第1号)2 報酬要件(第2号)第4 「転勤」に該当するグループ会社間異動の範囲1 本店・支店間の異動2 親会社・子会社間の異動3 子会社間・関連会社への異動とその限界第5 本邦内で勤務先が変わる場合の取扱い第6 出向発生時の届出義務第7 在留期間の運用とその変遷第8 令和9年4月施行予定の「企業内転勤2号」第9 資格外活動・在留資格取消しのリスク第10 裁判例の状況出典・参考資料1 法令2 公的資料3 国会会議録

第1 この記事が扱う対象

1 検討の対象と時点

「企業内転勤」は,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)別表第一の二に定める在留資格の一つであり,外国にある事業所から本邦にある事業所へ期間を定めて転勤する外国人を対象とする。

外資系企業やグループ会社が,海外の親会社・子会社・関連会社の職員を日本法人へ出向・転勤させる場面で用いられることが多い在留資格である。

本記事は,令和8年8月22日現在で確認できる入管法及び上陸基準省令の条文,出入国在留管理庁が公表する運用資料,国会審議の内容,並びに令和9年4月1日に施行が予定されている改正内容に基づき,この在留資格の該当範囲及び上陸許可基準を整理するものである。

出入国在留管理庁が作成した内部の審査基準である「入国・在留審査要領」(令和8年4月開示文書)第12編第2章第16節は,本記事が扱う在留資格の審査実務を最も詳細に記載した一次資料である。

当該文書は,出入国在留管理庁作成の「入国・在留審査要領」(令和8年4月の開示文書)で全編を掲載しているので,個別の条文や運用の詳細を原文で確認したい場合はそちらを参照されたい。

2 この記事の位置付け

以下では,まず在留資格の定義と平成元年改正による新設の経緯を確認し(第2),上陸許可基準の内容を条文に即して整理する(第3)。

次に,グループ会社間の出向・転籍を計画する法務担当者が最も判断に迷う,「転勤」に該当する会社間関係の範囲を審査要領に即して具体的に整理し(第4),本邦内で勤務先が変わる場合の取扱い(第5)を確認する。

さらに,出向発生時に必要となる届出義務(第6),在留期間の運用とその変遷(第7),令和9年4月1日に施行が予定されている「企業内転勤2号」の新設(第8),資格外活動・在留資格取消しのリスク(第9)を扱った上で,この在留資格に関する裁判例の状況(第10)を紹介する。

第2 「企業内転勤」とは何か

1 入管法上の定義

入管法別表第一の二の「企業内転勤」の項の下欄は,本邦において行うことができる活動を次のとおり定めている。

「本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動」。

すなわち,企業内転勤の在留資格で行うことができる活動そのものは,「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に係る活動と同一であり,両者の違いは,同一企業等の内部で海外の事業所から転勤してきた者として,本邦において期間を定めて(一定期間に限られて)勤務する点にある。

出入国在留管理庁の審査要領は,この在留資格を「企業活動の国際化に対応し,人事異動により外国の事業所から本邦の事業所に転勤する外国人を受け入れるために設けられたもの」と説明している。

2 平成元年改正による新設の経緯

「企業内転勤」は,出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律(平成元年法律第79号,同年12月15日公布,平成2年6月1日施行)により新設された在留資格である。

国会審議において,法務省入国管理局長であった股野景親政府委員は,「まず,『企業内転勤』という新しい在留資格を設けておりますが,これは必ずしも従来の四—一—一六—三というカテゴリーの中で考えられたものではなくて,新しくこういう発想法をもって,本邦とそれから外国との間の転勤ということについての在留資格というものを設けたという点が新しい着想でございます」と答弁しており,改正前の法4条1項16号(法務大臣が個別に在留を認める包括的カテゴリー)の単純な拡充ではなく,新たな発想に基づいて創設された資格であることが確認できる。

制度創設の当初,濫用(低賃金労働者の受入れの抜け道になるのではないか)への懸念が国会でたびたび示された。

これに対し股野局長は,「企業内転勤というものの在留資格は,その直前にございますところの技術,または人文知識・国際業務の項の活動ということと同じ内容のものとされております。そうしますと,これはすなわち,その人の技術ないし知識の程度というものがもう一定水準以上のものであるということが要件として求められているということがございますので,そこでただいま御指摘のような単純作業に属するような方たちというものはここには該当してこない」と答弁し,技術・人文知識・国際業務と同水準の要件を課すこと自体が濫用防止の歯止めになるとの説明を一貫して行った。

制度創設段階の想定では,法務省大臣官房審議官であった米澤慶治政府委員が「三年を超えない範囲内に限って日本に転勤してきて日本で活躍され」ることを前提とした基準を検討していると答弁しており,当初は3年以内の短期転勤が想定されていた点が注目される。

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「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」の違い――上陸許可基準の分岐点を条文で確認する(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 検討の対象と時点
2 この記事の位置付け

第2 二つの在留資格の位置付けの違い

1 「技術・人文知識・国際業務」の制度の骨格
2 「特定技能」の制度の骨格――特定産業分野への限定
3 特定技能1号と2号の違い

第3 学歴による証明か,試験による証明か
第4 対象分野が限定されているか否か
第5 在留期間の上限と通算の考え方
第6 家族帯同の可否
第7 受入れ機関に課される支援体制の違い
第8 技能実習・育成就労との接続関係
第9 特定技能から技術・人文知識・国際業務への移行が想定されていないこと
第10 制度改正の最新動向
出典・参考資料

1 法令・省令
2 裁判例
3 公的資料

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特定技能所属機関に対する報告徴収及び立入検査――入管法19条の20の要件と技能実習制度との違い(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 検討の対象と時点

第2 特定技能所属機関に対する報告徴収及び立入検査の法的根拠

1 入管法19条の20の条文
2 「報告徴収」と「立入検査」の区別
3 犯罪捜査のためのものと解してはならないという限定

第3 届出から欠格事由該当までの規律

1 特定技能所属機関の届出義務(19条の18)
2 指導及び助言(19条の19)
3 報告徴収及び立入検査を拒んだ場合の罰則(71条の4,76条の2)
4 改善命令(19条の21)
5 欠格事由への該当(特定技能基準省令2条1項4号リ)

第4 登録支援機関に対する規律との違い
第5 在留資格審査のための「実態調査」(入管法59条の2)との違い
第6 技能実習実施者に対する報告徴収及び実地検査――技能実習法に基づく別制度

1 技能実習法13条・14条の枠組み
2 罰則と両罰規定
3 特定技能の制度との対比

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「家族滞在」から「定住者」「特定活動」への在留資格変更――高等学校等卒業後の就労を目的とする運用(AI作成)

第1 「家族滞在」の子が高等学校等卒業後に働くために必要な手続
第2 在留資格「家族滞在」の内容と就労制限

1 該当する活動の範囲
2 資格外活動許可による週28時間の制限

第3 高等学校等卒業後の就労を目的とする在留資格変更

1 制度の法的な位置付け
2 「定住者」への変更の要件
3 「特定活動」への変更の要件
4 「定住者」と「特定活動」のいずれを選ぶか

第4 「特定活動」から「定住者」への在留資格変更
第5 この運用の沿革

1 平成27年の運用開始から令和6年の要件明文化まで

第6 令和8年の高等学校等就学支援金法改正との関係

1 支給対象を在留資格で区分する新要件
2 入管の在留資格変更とは別個の判断であること

第7 申請を検討する際の留意点

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申請取次者制度――「代理」と「取次ぎ」の違い及び依頼書と委任状の使い分け(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 対象とする文書と時点
2 「代理」と「取次ぎ」という二つの制度

第2 入管法が定める「代理」

1 在留資格認定証明書交付申請の代理人
2 住居地の届出及び在留カードに係る代理

第3 施行規則が定める「取次ぎ」

1 取次ぎは書類提出という事実行為にとどまる
2 弁護士及び行政書士以外の者による書類作成の制限

第4 弁護士・行政書士が申請等取次者になるための届出手続

1 承認制ではなく届出制であること
2 届出済証明書とその有効期間
3 取次ぎができる範囲と出頭が免除される範囲

第5 「依頼書」と「委任状」は別の書面である

1 審査要領が定める「依頼書」の内容

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永住許可の要件――素行・独立生計・国益(居住年数10年)の基準と令和8年8月公表の改定案(AI作成)

第1 この記事が扱う対象
第2 「永住者」と「特別永住者」の違い
第3 永住許可の法律上の要件――入管法22条2項

1 条文と3要件の全体像
2 素行要件
3 独立生計要件
4 国益要件と居住年数(原則10年在留)

第4 居住年数要件の特例
第5 永住許可に関するガイドラインの位置付けと改定履歴
第6 永住者の在留資格が取り消される場合

1 現行の取消事由
2 令和6年改正法による新設事由
3 取消しに代わる職権による在留資格の変更

第7 令和8年8月公表の改定案――何が変わろうとしているか

1 独立生計要件の見直し案
2 国益要件に追加される新要素
3 居住年数特例の厳格化
4 意見募集の期間と施行予定

第8 永住許可の判断が争われた裁判例

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「日本人の配偶者等」の在留資格――婚姻の実体という審査基準と偽装結婚のリスク(AI作成)

第1 この記事が扱う対象
第2 「日本人の配偶者等」の在留資格とは

1 入管法上の位置づけ
2 該当する3つの類型

第3 審査の中心にある「婚姻の実体」という要件

1 法律上の婚姻だけでは足りないとした最高裁判決
2 「婚姻の実体」の中身と民法752条
3 夫婦関係が冷え込んでも直ちに資格を失うわけではない

第4 審査で疑いを招きやすい事情と示すべき資料

1 年齢差・交際期間・共通言語に数値基準はない
2 SNS・マッチングアプリと国際結婚あっせんを分ける
3 離婚歴がある場合
4 提出書類の全体像

第5 偽装結婚と判断された場合の法的リスク

1 在留資格の取消し
2 退去強制と刑事責任
3 永住許可への影響

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「在留資格の取消し」制度――入管法22条の4の要件・手続と企業のリスク(AI作成)

第1 この記事が扱う対象
第2 在留資格の取消しとは何か――入管法22条の4の位置づけ
第3 取消事由10通りの内容(入管法22条の4第1項)

1 上陸許可等の取得過程における不正(第1号~第4号)
2 許可された活動を行っていないこと(第5号・第6号)
3 配偶者としての活動を行っていないこと(第7号)
4 住居地届出義務違反(第8号~第10号)

第4 公表統計からみる取消事由の実際の分布
第5 取消しの手続――意見聴取から通知まで
第6 取消し後の効果――出国準備期間と退去強制事由への接続
第7 企業(雇用主・受入れ機関)に生じ得るリスク

1 虚偽書類の提出が従業員本人の在留資格を失わせる構造(第3号)
2 不法就労助長罪(入管法73条の2)は過失でも成立する
3 営利目的等不正取得助長罪(入管法74条の6)との異同
4 採用時・雇用中に確認すべき事項

第8 裁判例の現況
第9 令和6年改正――永住者に対する取消事由の新設(施行前)

1 新設される取消事由の内容
2 入管庁の説明と弁護士会・国連人種差別撤廃委員会の異論

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「高度専門職」のポイント計算と優遇措置――永住許可要件緩和の法的性質(AI作成)

第1 この記事が扱う対象1 検討の対象と時点2 この記事の位置付け第2 「高度専門職」とはどのような在留資格か1 入管法上の定義とポイント制導入の経緯2 高度専門職1号イ・ロ・ハの活動類型と他の在留資格との重複第3 高度専門職1号のポイント計算1 学歴・職歴・年収・年齢による基本項目2 研究実績・資格・地位・特別加算による加点3 年収による足切り――1号ロ・ハの300万円未満0点ルール第4 高度専門職2号への移行第5 優遇措置の内容1 複合的な在留活動の許容・在留期間5年・優先処理2 配偶者の就労・親及び家事使用人の帯同3 永住許可要件の緩和とその法的性質第6 特別高度人材制度(J-Skip)と未来創造人材制度(J-Find)1 特別高度人材制度(J-Skip)の認定要件と優遇内容2 未来創造人材制度(J-Find)――別の在留資格である点に注意第7 実務上の留意点1 ポイントを「維持」することの意味2 不許可・不交付となった場合の争い方出典・参考資料1 法令・省令2 裁判例3 公的資料

第1 この記事が扱う対象

1 検討の対象と時点

「高度専門職」は,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)別表第一の二に定める在留資格の一つであり,学歴,職歴,年収等を点数化するポイント制により,我が国の学術研究又は経済の発展に寄与すると見込まれる高度な能力を持つ外国人材を受け入れるためのものである。

本記事は,令和8年8月22日現在で確認できる入管法,高度専門職省令(平成26年法務省令第37号)及び特別高度人材の基準を定める省令(令和5年法務省令第25号)の条文,出入国在留管理庁が公表するポイント計算表・優遇措置の内容,並びに関連する裁判例の有無を確認した上で,ポイント計算の仕組みと優遇措置の内容を整理するものである。

なお,高度専門職省令は令和7年法務省令第45号により既に改正されているが,この改正の施行日は令和9年4月1日であり,本記事作成時点ではまだ施行されていない。したがって,以下で紹介する内容は,令和8年8月22日現在で効力を有する規定に基づくものであることに留意されたい。

出入国在留管理庁が作成した内部の審査基準である「入国・在留審査要領」(令和8年4月開示文書)第12編第9節「高度専門職」は,本記事が扱うポイント計算表及び優遇措置の運用を最も詳細に記載した一次資料である。

当該文書は,出入国在留管理庁作成の「入国・在留審査要領」第12編第9節「高度専門職」(令和8年4月の開示文書)として全編を掲載しているので,個別の条文や運用の詳細を原文で確認したい場合はそちらを参照されたい。

2 この記事の位置付け

以下では,まず「高度専門職」という在留資格の定義とポイント制導入の経緯を確認し(第2),高度専門職1号イ・ロ・ハのポイント計算表を項目ごとに整理する(第3)。

次に,1号での在留を経て移行する高度専門職2号の要件(第4),そして本記事の主題である優遇措置の内容を確認する(第5)。優遇措置のうち永住許可要件の緩和については,条文上の根拠と行政の運用指針との関係を整理する。

さらに,令和5年に導入された特別高度人材制度(J-Skip)及びこれとは別制度である未来創造人材制度(J-Find)を確認した上で(第6),ポイントの維持義務や不許可となった場合の争い方といった実務上の留意点を扱う(第7)。

第2 「高度専門職」とはどのような在留資格か

1 入管法上の定義とポイント制導入の経緯

入管法別表第一の二の「高度専門職」の項の下欄第一号は,「高度の専門的な能力を有する人材として法務省令で定める基準に適合する者が行う次のイからハまでのいずれかに該当する活動であって,我が国の学術研究又は経済の発展に寄与することが見込まれるもの」と定める。

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特定技能ビザの審査基準――分野別基準,技能実習からの移行,受入れ機関の基準(AI作成)

第1 「特定技能」という在留資格の位置づけ

1 制度創設の経緯と対象分野の拡大
2 特定技能1号と2号の違い

第2 対象産業分野と分野別基準の構造

1 分野該当性の判断方法
2 分野別運用方針・運用要領という基準体系
3 審査要領で確認できる分野特有の上乗せ要件の例

第3 特定技能1号の上陸基準――外国人本人に求められる要件

1 基本要件
2 技能水準・日本語能力水準の証明方法
3 通算在留期間の上限――原則5年,例外6年
4 保証金・違約金契約の不存在

第4 特定技能2号の上陸基準――1号との相違
第5 技能実習から特定技能への移行

1 技能実習2号良好修了の意義とみなし救済
2 移行に伴う実務上の留意点
3 移行支援を怠った監理団体の責任が問われた裁判例

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「経営・管理」の在留資格――令和7年10月16日改正後の上陸許可基準(AI作成)

第1 この記事が扱う対象第2 「経営・管理」の在留資格とは何か1 入管法上の定義2 「投資・経営」からの改称の経緯3 他の在留資格との関係第3 令和7年10月16日改正――何が変わったのか1 改正の骨格2 改正の理由として示された事情第4 現行の上陸許可基準1 事業所の存在(第1号)2 事業の規模(第2号)3 日本語能力(第3号)4 学歴又は経験(第4号)5 報酬(第5号)第5 事業所の実体をめぐる審査第6 複数の経営者・共同出資の場合の判断基準第7 事業の継続性の審査第8 既存の在留者に対する経過措置第9 改正をめぐる国会での議論第10 経営・管理該当性が争われた裁判例出典・参考資料1 法令・告示2 裁判例3 公的資料4 国会会議録第1 この記事が扱う対象

「経営・管理」は,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)別表第一の二に定める在留資格の一つであり,本邦において事業の経営を行い又はその管理に従事する外国人を対象とする。この在留資格の上陸許可基準は,令和7年10月16日に大きく改正されており,改正前によく知られていた「資本金500万円以上」という要件は,改正後は存在しない。本記事は,令和8年8月22日現在で確認できる入管法及び上陸基準省令の条文(改正前後の対比を含む。),出入国在留管理庁が公表する運用資料,国会審議の内容,並びに関連する裁判例に基づき,現行の上陸許可基準の内容を整理するものである。

第4の法人・個人事業の金額確認及び第8の既存在留者の更新判断には,令和8年10月3日に確認した出入国在留管理庁の改正案内・Q&Aを追補した。

外国人が日本で事業所用の不動産を購入する場合の取得手続,規制及び税金は,外国人による日本の不動産購入―手続・規制・税金とOECD38か国比較を参照されたい。なお,不動産を取得したこと自体によって「経営・管理」の在留資格が認められるものではなく,本記事で説明する活動実態及び上陸許可基準を別に満たす必要がある。

出入国在留管理庁が作成した内部の審査基準である「入国・在留審査要領」(令和8年4月開示文書)第12編第2章第10節は,本記事が扱う在留資格の審査実務を最も詳細に記載した一次資料である。当該文書は,出入国在留管理庁作成の「入国・在留審査要領」(令和8年4月の開示文書)で全編を掲載しているので,個別の条文や運用の詳細を原文で確認したい場合はそちらを参照されたい。

第2 「経営・管理」の在留資格とは何か1 入管法上の定義

入管法別表第一の二の「経営・管理」の項の下欄は,本邦において行うことができる活動を次のとおり定めている。「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(この表の法律・会計業務の項の下欄に掲げる資格を有しなければ法律上行うことができないこととされている事業の経営又は管理に従事する活動を除く。)」。出入国在留管理庁の審査要領によれば,この活動には,①本邦で事業の経営を新たに開始してこれを行い又は管理する活動,②本邦で既に営まれている事業に参画してこれを経営し又は管理する活動,③事業の経営者(法人を含む。)に代わって経営を行い又は管理に従事する活動の3類型が含まれる。事業の経営に従事する活動には代表取締役・取締役・監査役等の役員としての活動が該当し,事業の管理に従事する活動には部長・工場長・支店長等の管理者としての活動が該当するが,いずれも名目的な地位にとどまらず,経営又は管理に実質的に参画し,又は従事するものであることが求められる。

2 「投資・経営」からの改称の経緯

現行の「経営・管理」は,平成26年の入管法改正により,それ以前の「投資・経営」という在留資格を改組して設けられたものである。審査要領によれば,「投資・経営」の在留資格は,日米友好通商航海条約第1条1項が定める内国民待遇・最恵国待遇の規定その他の条約上の待遇を担保するため,外資が参入している企業の経営・管理業務に従事する外国人の受入れを目的として平成元年の法改正で創設された経緯を持つ。「投資・経営」という名称のとおり,外国人が我が国に投資していることが対象となる前提条件であり,これ以外の事業の経営や管理に従事する外国人は対象外とされていた。平成26年改正により,この投資要件は撤廃され,外国人若しくは外国法人が投資しているか,日本人若しくは日本法人のみが投資しているかを問わず,事業の経営又は管理に従事する外国人を広く対象とする「経営・管理」に改められた。

3 他の在留資格との関係

同じ活動内容が複数の在留資格に該当し得る場合の優先関係についても,審査要領が整理を示している。企業の経営活動や管理活動が自然科学又は人文科学の知識等を要する業務と重複する場合は,「技術・人文知識・国際業務」ではなく「経営・管理」を決定する。この振り分けの詳細は,「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で扱った他資格との関係の説明も参照されたい。弁護士,公認会計士等の資格を有しなければ行うことができないとされている事業の経営又は管理に従事する活動は「法律・会計業務」に該当するが,病院の経営に係る活動は,医師の資格を有する者が行う場合であっても「経営・管理」に該当する。日本法人の経営者に就任し,かつ日本法人から報酬が支払われる場合は,会議出席等の短期間の来日であっても「経営・管理」に該当し,「短期滞在」では入国できない。

第3 令和7年10月16日改正――何が変わったのか1 改正の骨格

「経営・管理」の上陸許可基準を定める上陸基準省令は,令和7年10月16日付けの改正省令(令和七年法務省令第五十号)により大きく改められた。改正前の基準では,事業の規模について,①経営・管理に従事する者以外の常勤職員を2人以上雇用していること,②資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること,③これらに準ずる規模であること,のいずれかに該当すればよいという選択制が採られていた。これに対し改正後の基準では,常勤職員の雇用と,事業の用に供される財産の総額が3,000万円以上であることの両方を満たすことが必要になった。金額要件が500万円から3,000万円へ引き上げられただけでなく,選択制からいずれの要件も満たす必要がある構造に変わった点が実務上の影響として大きい。さらに,改正前には存在しなかった日本語能力要件(経営者又は常勤職員のいずれかがCEFR B2相当の日本語能力を有すること)と,学歴又は経営管理の実務経験に関する要件(経営管理関連分野の修士・博士・専門職学位,又は3年以上の経営管理経験)が新設された。新旧の条文は,第4で号ごとに対比して示す。

2 改正の理由として示された事情

出入国在留管理庁は,改正の理由について,許可基準が諸外国の同様の制度と比べて緩やかであり,移住の手段として悪用されているとの指摘があったこと,在留審査において事業の実態がないことが判明する事案が認められていたことを挙げている。参議院法務委員会(令和8年4月14日)における内藤惣一郎・出入国在留管理庁次長の答弁によれば,改正の検討に当たり令和6年末時点で「経営・管理」の在留資格を有する41,615人を対象に調査を行ったところ,資本金の額が3,000万円以上であった者は約4%にとどまっていたことが明らかにされている。同庁は,改正に先立ち令和7年8月20日に法務大臣の私的懇談会「出入国在留管理政策懇談会」で有識者の意見を聴取し,同年8月26日から9月24日までの30日間,意見公募手続(パブリックコメント)を実施して702件の意見を受け付けた。国会審議での賛否両論の内容は,第9で扱う。

第4 現行の上陸許可基準1 事業所の存在(第1号)

上陸基準省令の「経営・管理」の項第1号は,「申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし,当該事業が開始されていない場合にあっては,当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること」と定めている。この要件は令和7年10月改正の前後を通じて変わっていない。事業所の実体をめぐる審査の詳細は第5で扱う。

2 事業の規模(第2号)

第2号は,「申請に係る事業の規模が次のいずれにも該当していること」として,イ「その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること」,ロ「申請に係る事業の用に供される財産の総額(資本金の額及び出資の総額を含む。)が三千万円以上であること」の両方への該当を求める。改正前の第2号は,イ「常勤の職員(同)が2人以上」,ロ「資本金の額又は出資の総額が500万円以上」,ハ「イ又はロに準ずる規模」のいずれかに該当すればよいとしていた。

財産の総額を確認する際には,事業主体が法人である場合と個人事業である場合を分ける必要がある。出入国在留管理庁の改正案内・Q&Aの「資本金の額等」問5,問7及び問8によれば,法人については,株式会社の払込済資本の額(資本金の額)又は合名会社,合資会社若しくは合同会社の出資の総額で判断する。資本準備金,資本剰余金及び利益剰余金は含まれず,従業員の給与や事務所の維持費を資本金等に合算して3,000万円とすることもできない。登記事項証明書等によって,この法人としての金額を確認する。

個人事業については,事業所の確保,雇用する職員の1年間の給与,設備投資経費など,事業を営むために必要なものとして投下されている総額を確認する。法人のように資本金を準備するという意味ではない。同Q&A問12は,直近年度の決算文書のほか,必要に応じて事業経費に関する領収書等の提出を求めるとしている。審査要領に基づく確認では,貸借対照表の資産の部の額と実際の事業への投下を対応させる。単なる預貯金をそのまま投下財産として扱わず,設備投資契約書,雇用契約書等によって事業との関係を明らかにする必要がある。

3 日本語能力(第3号)

第3号は,改正により新設された要件であり,「申請に係る事業の経営を行い,又は当該事業に従事する者(非常勤の者を除く。)のうちいずれかの者が,高度に自立して日本語を理解し,使用することができる水準以上の能力を有している者であって,かつ,申請人が当該事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する時において,本邦に居住することとしているものであること」と定める。審査要領によれば,「高度に自立して日本語を理解し,使用することができる水準以上の能力」とは,日本語教育の参照枠におけるB2相当以上の日本語能力であり,日本語能力試験(JLPT)N2以上,又はBJTビジネス日本語能力テストにおいて400点以上を得点した者が対象となる。次のいずれかに該当する場合は,試験による証明を要しない。①日本人,②特別永住者,③中長期在留者として20年以上本邦に在留している者,④本邦の大学を卒業し,又は本邦の高等専門学校若しくは専修学校の専門課程を修了した者(恒常的に外国語で授業を行う課程等を除く。),⑤我が国の義務教育及び高等学校を修了・卒業している者。参議院法務委員会(令和8年6月18日)における内藤惣一郎次長の答弁によれば,この日本語能力要件は,パブリックコメントの意見募集時点の改正案には含まれておらず,「近隣の住民等と日本語でコミュニケーションが取れることを担保する必要がある」等の意見を踏まえて省令案を修正する形で追加されたものである。

4 学歴又は経験(第4号)

第4号も改正により新設された要件であり,イ「経営管理に関する分野又は申請に係る事業の業務に必要な技術又は知識に係る分野において博士の学位,修士の学位又は専門職学位(外国において授与されたこれに相当する学位を含む。)を有していること」,ロ「事業の経営又は管理について三年以上の経験」のいずれかへの該当を求める。経営又は管理の経験には,本邦外での経歴のほか,起業準備を目的とする「特定活動」(貿易その他の事業の経営を開始するために必要な事業所の確保その他の準備行為を行う活動を指定されたもの)で在留していた期間も算入される。

5 報酬(第5号)

第5号は,「申請人が事業の管理に従事しようとする場合は,日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」と定める。改正前の第3号後段と同内容であり,事業の経営に従事する場合(役員として経営に当たる場合)にはこの要件は適用されない。

第5 事業所の実体をめぐる審査

事業所の存在(第1号)に関する審査で実務上特に問題となるのは,名目的な事業所を排除する運用である。審査要領は,事業所は実際に事業が営まれている場所であることを要するとし,住所及び電話番号等のみを借り受け,電話にはオペレーターが対応し,郵便物を転送するなど,実際に経営又は管理を行う場所が存在しない「バーチャル・オフィス」等と称する形態は,事業所として認めないと明記している。月単位の短期間賃貸スペースや,容易に処分可能な屋台等の施設を利用する場合も,それを合理的とする特別の事情がない限り,事業所の確保の要件に適合しているとは認められない。賃貸借契約は,使用目的が事業用・店舗・事務所等の事業目的であることを明らかにし,契約者名義も当該法人等とすることが必要である。審査要領は,令和7年10月改正により事業規模要件が見直され常勤職員の雇用が必須となったことも踏まえ,「自宅兼事業所とするような形態は基本的に想定されず,独立して事業を営む事業所であることが客観的に見て明らかであることを必要とする」と述べており,改正が事業所要件の運用にも影響を及ぼしていることを示している。

もっとも,例外的な取扱いもある。独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)が運営する対日投資・ビジネスサポートセンター等のインキュベーションオフィスについては,独立区画でなくても,起業支援を目的として一時的に貸与されているものであれば事業所の確保の要件に適合するものとして扱われる。地方公共団体が実施する起業支援対象者についても,自治体がインキュベーション施設の賃料等を負担している場合,その負担額(年間最大200万円)を申請人の投下額に合算して3,000万円要件の充足を判定する取扱いがある。

第6 複数の経営者・共同出資の場合の判断基準

複数の外国人が同一の事業の経営又は管理に従事する場合,審査要領は,それだけの人数の者が経営又は管理に従事することが必要とされる程度の事業規模,業務量,売上げ,従業員数等がなければならないとした上で,次の3条件を満たす場合に,それぞれの外国人について該当性を認めるとしている。①事業の規模や業務量等の状況を勘案して,それぞれの外国人が経営又は管理を主たる活動として行うことについて合理的な理由が認められること,②経営又は管理に係る業務について,それぞれの外国人ごとに従事することとなる業務の内容が明確になっていること,③それぞれの外国人が経営又は管理に係る業務の対価として相当の報酬の支払を受けることとなっていること。共同出資で会社が運営される場合についても,同じ観点から確認を行い,申請に係る事業の用に供される財産の総額が基準と乖離していないことを確認するとされている。したがって,複数の外国人を経営者として並べるだけでは足りず,それぞれの業務分担と報酬が事業の規模に見合ったものであることを個別に示す必要がある。なお,入国・在留を認める役員の人数自体には制限がないが,この観点からの慎重な審査を要するとされている。

第7 事業の継続性の審査

上陸許可基準そのものではないが,「経営・管理」の在留資格該当性の判断において,事業の継続性は独立した重要な審査対象である。審査要領は,決定する在留期間の途中で事業が立ち行かなくなるなど在留活動が途切れることが想定される場合には,該当する活動を行うものと認められないとした上で,直近期の決算状況に応じた段階的な判断枠組みを示している。直近期末に剰余金がある場合,又は剰余金も欠損金もない場合は,事業の継続性に問題はない。直近期末に欠損金があるが債務超過となっていない場合は,事業計画や資金調達の状況を踏まえ,原則として継続性を認める。直近期末が債務超過であっても直近期前期末は債務超過でなかった場合は,中小企業診断士・公認会計士・税理士による改善見通しの評価書の提出を求めた上で継続性を判断する。直近期末及び直近期前期末の双方が債務超過である場合は,原則として継続性を認め難いが,増資や他企業による救済等の具体的な予定があればこれを考慮する。この場合でも,設立5年以内の新興企業については,独自性のある技術やサービスに基づき事業を成長させようとする過程での赤字であることを踏まえ,投融資の状況や製品・サービス開発の状況を示す資料により柔軟に判断するとされている。直近期及び直近期前期の双方で売上総利益がない場合は,増資等の具体的な予定がある場合を除き,原則として継続性が認められない。

第8 既存の在留者に対する経過措置

令和7年10月16日より前から「経営・管理」の在留資格で在留していた者に対しては,経過措置が設けられている。出入国在留管理庁の公表資料によれば,施行日から3年後に当たる令和10年10月16日までの間の更新申請については,改正後の基準に適合していないことのみを理由として不許可とはせず,事業の経営状況等を踏まえて許否を判断するとされている。もっとも,この経過措置は上陸基準省令自体の条項としてではなく,運用上のガイドラインとして示されたものである。参議院法務委員会(令和8年6月18日)における内藤惣一郎次長の答弁は,この点について「省令事項ではございませんが,出入国在留管理政策懇談会やパブリックコメントでいただいた御意見も踏まえて一定の配慮を行うべきと,ガイドラインにおいて対応を明らかにした」と説明している。永住許可申請及び高度専門職2号への移行については,改正後の基準への適合が前提とされており,経過措置の対象には含まれていない。

3年を経過した後の更新については,原則として改正後の基準への適合が必要である。ただし,出入国在留管理庁の改正案内の「特にお問合せが多い質問」問3(令和8年6月26日更新)及び「施行に伴う留意点」には,改正後の基準に適合していなくても,①経営状況が良好であること,②法人税等の納付義務を適切に履行していること,③次回更新時までに改正後の基準を満たす見込みがあることを踏まえ,その他の在留状況を総合的に考慮して許否を判断する取扱いが示されている。したがって,3,000万円に満たないことのみで一律に更新不許可となるとは説明できない。他方,基準への適合が不要になったわけではなく,良好な経営状況や具体的な適合見込みを裏付ける必要がある。

経過期間中も,経営状況と納税状況だけを確認すれば足りるものではない。同案内の「特にお問合せが多い質問」問2は,労働関係法令の遵守,社会保険・雇用保険・労災保険の加入及び納付,必要な許認可の取得に問題があると,消極的な要素として評価され,更新が認められない事例もあると説明している。

更新の相談では,①施行前からの在留の有無,申請予定日及び現在の在留期限,②法人・個人の区別と事業規模を示す資料,③売上,決算,資金繰り及び実際の経営活動,④納税,労働法令,保険加入・納付及び許認可,⑤新基準に未適合の項目,資金調達・採用等の実施時期と裏付け資料を順に確認するとよい。次回更新までの適合見込みは,単なる希望として記載せず,誰がいつ何を実行するかを示す計画と資料にする。これは同案内を踏まえた相談準備の提案であり,全申請に共通する追加提出書類の一覧を意味しない。

第9 改正をめぐる国会での議論

改正の是非については,国会審議において賛否両論が示されている。改正を推進する立場から,内閣総理大臣石破茂は,参議院決算委員会(令和7年6月9日)において,「民泊経営を口実に経営・管理の在留資格を取得し,我が国に移住する者が増えておるという御指摘がございます。この許可基準につきましては,今後,出入国在留管理庁において適切に見直しをいたしてまいります」と述べている。参議院外交防衛委員会(令和7年5月8日)における福原申子・出入国在留管理庁在留管理支援部長の答弁も,「経営・管理の在留資格に関する在留申請の中には,委員御指摘の民泊も含めまして,事業の実態が疑われるような事案もあるというふうに承知をしている」とし,実地調査や不許可処分等の対応を説明している。

これに対し,改正の急激さや遡及的な影響を批判する意見も示された。参議院法務委員会(令和8年4月14日)における打越さく良議員(立憲民主・無所属)は,「経営・管理の在留資格は昨年末時点で約四万一千六百人,資本金などが三千万円以上の方は全体の四%にとどまる」とした上で,「あと九六%のお店とか事業所を潰してどうするんでしょうか」と改正を批判した。同委員会(令和8年5月21日)で参考人として出席した近藤敦・名城大学法学部教授は,改正後「申請者が九六%減少したと最近報じられております」と指摘し,既存の経営者に改正後の基準を将来的に適用することは「信頼保護の原則」に反すると論じた。同参考人は,改正の根拠として政策懇談会で示された「韓国が資本金要件を500万円から3,000万円に引き上げた」という説明についても,韓国には資本金要件の異なる2つの在留資格制度(「貿易経営」と「企業投資」)が並存しており,比較対象の選定に誤りがあると指摘している。参議院法務委員会(令和8年5月14日)では,仁比聡平議員(日本共産党)が,大阪出入国在留管理局における具体的な事案(飲食店開業準備中の申請人について,建設資材や職人の不足による工事遅延のために保健所の営業許可取得が遅れたことを理由に在留期間更新が不許可とされた事案)を挙げ,運用の硬直性を問題視した。

近藤敦参考人が「報じられております」として紹介した申請件数の96%減という数値は,実際には出入国在留管理庁自身が国会で認めている。同じ参議院内閣委員会(令和8年4月14日)で,礒部哲郎・出入国在留管理庁在留管理支援部長は,「経営・管理」及び一部の「高度専門職」に係る在留資格認定証明書交付申請件数について,「令和七年五月一日から同年十月十五日までの五か月半の期間において月平均で約千七百件であったのに対し,基準改正日である令和七年十月十六日から令和八年三月三十一日までの五か月半の期間においては月平均で約七十件となっております」とし,「在留資格認定証明書交付申請件数は約九六%減となっておりまして,大幅に減少している状況にございます」と答弁した。もっとも同部長は,この数値が「通常の統計として作成しているものではな」く,「基準見直しの前後の状況を把握することを目的として概数として集計した」単純比較であると留保を付けている。

これらの国会答弁からは,出入国在留管理庁が把握している「経営・管理」の在留者数の推移も確認できる。同じ参議院内閣委員会における礒部部長の答弁によれば,「令和七年末現在,我が国において経営・管理の在留資格を持って在留する者の数は四万六千七百八十一人」であり,新規の申請件数が大幅に減少した後も,在留者総数自体は増加している。もっとも,この総数の増加が新規許可によるものか,既存在留者の更新によるものかは,同答弁からは判別できない。

第10 経営・管理該当性が争われた裁判例

「経営・管理」及びその前身である「投資・経営」の在留資格該当性が正面から争われた行政訴訟の公刊裁判例は多くないが,資格外活動該当性が争われた事案として,東京地方裁判所平成20年9月19日判決(平成19年(行ウ)第274号等)とその控訴審である東京高等裁判所平成21年1月29日判決(平成20年(行コ)第346号)がある。「投資・経営」の在留資格で在留していた外国人が,入国審査官から入管法24条4号イ(資格外活動)に該当する旨の認定を受け,異議申出も棄却された上で退去強制令書の発付を受けたことから,各処分の取消しを求めた事案である。判決は,「投資・経営」の在留資格を有する外国人が無許可の資格外活動を「専ら」行っているといえるか否かは,①本邦において開始し又は投資している事業の経営又は管理への従事の状況,②無許可で行われた資格外活動の状況・態様及びその就労等に至った経緯,③生活費の支出状況その他の諸事情を総合考慮し,本来の在留資格に係る事業の経営又は管理の遂行状況と資格外活動の状況・態様等を比較検討した上で,活動内容が本来の在留資格に対応する事業経営・管理以外の資格外活動に「実質的に変更されたもの」と認められるか否かの観点から判断するのが相当であるとした。本件では,会社への関与が事業の経営又は管理としての実質を相応に備えたものとは評価し難く,会社は実質的に休眠状態にあり,申請人が主にホステスとして稼働して生計を維持していたという事情の下で,資格外活動を専ら行っていたと認定し,請求をいずれも棄却した(控訴審も同旨)。

この判断枠組みは,名称こそ改正前の「投資・経営」についてのものであるが,事業の経営又は管理への従事が「実質」を備えているかを問う点で,現行の「経営・管理」の在留資格該当性の判断にも参考になる。もっとも,令和7年10月16日改正後の基準適合性を正面から扱った公刊の行政訴訟判決は,本記事の作成に当たって網羅的に検索した範囲では見当たらなかった。改正の施行から日が浅いことに加え,行政裁量が広範な分野であるため,不許可・不交付の多くが再申請等の形で処理され,訴訟にまで至らないまま解決している可能性があるが,この点を裏付ける統計資料までは確認できていない。

出典・参考資料1 法令・告示

①出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)別表第一の二,2条の2,7条,20条,24条(e-Gov法令検索)
②出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号)「経営・管理」の項(令和7年10月16日改正後現行,e-Gov法令検索)

2 裁判例

①東京地方裁判所平成20年9月19日判決(平成19年(行ウ)第274号等,退去強制令書発付処分取消請求事件,裁判所ウェブサイト)
②東京高等裁判所平成21年1月29日判決(平成20年(行コ)第346号,退去強制令書発付処分取消請求控訴事件,裁判所ウェブサイト)

3 公的資料

①「経営・管理」の許可基準の改正等について(出入国在留管理庁,令和7年10月10日公表・同月30日更新)
②外国人経営者の在留資格基準の明確化について(出入国在留管理庁)
③出入国在留管理庁「入国・在留審査要領」(令和8年4月開示文書)第12編第2章第10節(山中弁護士ブログ掲載版)

4 国会会議録

①第217回国会参議院外交防衛委員会第11号(令和7年5月8日)福原申子出入国在留管理庁在留管理支援部長答弁(国立国会図書館国会会議録検索システム)
②第217回国会参議院決算委員会第9号(令和7年6月9日)石破茂内閣総理大臣答弁(国立国会図書館国会会議録検索システム)
③第221回国会参議院法務委員会第4号(令和8年4月14日)打越さく良議員質疑(国立国会図書館国会会議録検索システム)
④第221回国会参議院法務委員会第4号(令和8年4月14日)内藤惣一郎出入国在留管理庁次長答弁(国立国会図書館国会会議録検索システム)
⑤第221回国会参議院内閣委員会第3号(令和8年4月14日)礒部哲郎出入国在留管理庁在留管理支援部長答弁(在留者数,国立国会図書館国会会議録検索システム)
⑥第221回国会参議院内閣委員会第3号(令和8年4月14日)礒部哲郎出入国在留管理庁在留管理支援部長答弁(申請件数の増減,国立国会図書館国会会議録検索システム)
⑦第221回国会参議院法務委員会第8号(令和8年5月14日)仁比聡平議員質疑(国立国会図書館国会会議録検索システム)
⑧第221回国会参議院法務委員会第10号(令和8年5月21日)近藤敦参考人(名城大学法学部教授)意見陳述(国立国会図書館国会会議録検索システム)
⑨第221回国会参議院法務委員会第16号(令和8年6月18日)内藤惣一郎出入国在留管理庁次長答弁(経過措置,国立国会図書館国会会議録検索システム)
⑩第221回国会参議院法務委員会第16号(令和8年6月18日)内藤惣一郎出入国在留管理庁次長答弁(日本語能力要件の追加経緯,国立国会図書館国会会議録検索システム)

名義株の時効取得は10年・20年で成立するか―民法163条の要件と裁判例(AI作成)

第1 この記事が扱う対象と検討の順序
第2 時効取得の対象となりうるか―民法163条と株式

1 民法162条ではなく民法163条が問題となる理由
2 株券という有価証券自体の即時取得との違い
3 東京地方裁判所が示した適用肯定の判断枠組み

第3 成立要件―「自己のためにする意思」をもって「平穏かつ公然」に「行使」すること

1 会社に対する株主としての行動が中心的な判断要素となること
2 時効取得が認められた事案で認定された行使の実態
3 時効取得が否定された事案で欠けていた事実

第4 善意・無過失の10年と,悪意・過失の20年
第5 時効取得を認めた一審判決は,その後どうなったか
第6 そもそも「誰が真の株主か」を立証すること自体が高い壁になる
第7 名義株を巡る実務上の対応

1 実質株主が名義株を放置した場合のリスクと対応
2 名義人の側から時効取得を主張する場合の高いハードル
3 会社に対する関係―株主名簿の名義書換

第8 出典・参考資料

(続きを読む...)名義株の時効取得は10年・20年で成立するか―民法163条の要件と裁判例(AI作成)

トランプ関税で値上げ・値下げ要求に応じる必要はあるか―価格転嫁と契約実務(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 トランプ関税が日本企業の契約関係に及ぶ二つの経路第3 不可抗力条項による免責の可否第4 事情変更の原則による契約改定・解除の限界1 判例上の要件2 適用を否定してきた最高裁判例3 下級審で適用が認められた例外的な事例4 トランプ関税への当てはめと予見可能性の壁第5 下請取引における価格転嫁――改正取適法による保護1 適用対象2 買いたたきの禁止3 価格協議拒否・一方的代金決定の禁止(2026年改正)4 違反時の効果第6 取適法の対象外となる取引・国際取引における価格交渉第7 契約書における不可抗力条項・価格改定条項の設計1 改定事由と協議手続を分けて定める2 協議が調わない場合の終了と既発注分の精算3 税率引下げ・適用除外・還付があった場合の精算第8 実務上の初期対応順序第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 関連記事

第1 この記事の対象と結論

関税を理由に値上げ又は値下げを求められても,それだけで既存契約の価格が当然に変わるわけではない。
準拠法,価格改定・再協議条項,既発注分の成立状況及び取適法の適用を確認する。
協議に応じること,要求額を受け入れること,契約を終了できることは,それぞれ別の問題である。

求められた対応最初に確認すること検討する箇所米国の買主からの値下げ関税負担の合意,固定価格,準拠法第2・第6・第7国内の仕入先からの値上げ対象委託・規模,原価変動,協議記録第5・第7・第8国内仕入先への減額・取消し既発注分,受注者の責任,精算費用第5・第7の2税率低下・還付後の精算負担した税目,補填・精算の合意第7の3

本記事は,米国の関税措置(いわゆるトランプ関税)によって取引コストが変動した場合に,日本企業が既存の契約関係の中でどのような法的対応を取り得るかを,日本法(民法及び製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律,以下「取適法」という。旧称・下請代金支払遅延等防止法)の観点から整理するものである。米国の関税制度自体の仕組みや現行税率については,別稿「トランプ関税とは―税率の仕組み・日本への影響・最高裁判決を解説(AI作成)」で扱っており,本記事ではこれを前提として,コスト変動が生じた後の契約上・取引法上の対応に絞って検討する。

トランプ関税が日本企業の契約関係に及ぶ経路は,主として二つある。一つは,米国向けに輸出する日本企業が,米国側の買主から,関税負担分を吸収するための値下げを求められる経路である。もう一つは,米国向け輸出比率の高い企業が採算悪化を理由に,国内の下請事業者に対して代金を据え置き又は減額しようとする経路である。前者は主として国際的な取引交渉と契約条項の解釈の問題であり,後者は取適法の規律に直接関わる。

結論を先取りすると,次のとおりである。①契約書に不可抗力条項があっても,関税による採算悪化は履行不能ではなく履行が不利益になるだけであることが多く,免責事由として機能しないことが多い。②民法上の「事情変更の原則」は,最高裁が要件の存在自体は認めながら,実際に適用を認めた例がほとんどなく,特にトランプ関税のように2018年以降繰り返し発動され,予見可能性を否定しにくい事情については,主張のハードルが一段と高い。③他方で,中小の下請事業者がコスト上昇を理由に価格協議を求めたのに,発注者が協議に応じず又は必要な説明をしないまま一方的に代金を決定することは,2026年1月1日施行の改正取適法により明文で禁止されており,この経路の方が現実的な対応手段となり得る。④取適法の対象とならない大企業間取引や国際取引では,契約書の価格改定条項・不可抗力条項の解釈と,通常の商取引上の交渉力に委ねられる部分が大きい。

第2 トランプ関税が日本企業の契約関係に及ぶ二つの経路

米国税関に対する責任を負う輸入者と,売主・買主間で関税を負担する者は区別する必要がある。
記録上の輸入者であるIORを輸入申告で確認し,日本企業であるという理由だけで,直接の納付責任がないと決めない。
米国側の買主が関税分の値下げを求める場合と,日本の発注者が国内仕入先へコスト圧縮を求める場合では,契約,準拠法及び取適法の適用関係が異なる。

このほか,鉄鋼・アルミニウム等,通商拡大法232条の対象となった品目については,米国向け輸出の減少や,米国内での代替生産の拡大を通じて,国際商品市況そのものが変動し,米国と直接取引のない日本企業の調達コストにも間接的に影響し得る。以下では,これらの経路によって生じた代金・原価の変動について,契約当事者がとり得る法的手段を検討する。

Incoterms 2020では,DAPは買主が輸入通関・輸入関税等を,DDPは売主がこれらを負担するという役割分担を定める。
ただし,契約上DDPと記載しただけで,米国税関に対するIORの資格・責任が当然に入れ替わるわけではない。
外国売主による輸入通関が可能か,実際のIORは誰か,どの版・指定場所・特約を合意したかを確認する(ICC AcademyのDAP・DDP解説)。

同じ条件名を使っていても,関税込みの固定価格か,実際の関税額を別途精算する価格かで,税率変更時の交渉は変わり得る。
不可抗力条項だけで判断する前に,価格と費用負担の合意を確認する必要がある。

CPTPPによる関税撤廃・削減は輸入原価を下げる方向に働くが,原産地要件を満たす取引に限られ,米国の追加関税とは別の制度である。
CPTPPの国内法改正,特恵利用額及び農林水産業への影響は,「TPP・CPTPPが日本に与えた具体的影響――法改正・貿易・農業・裁判例の検証(AI作成)」で整理している。

第3 不可抗力条項による免責の可否

契約書で「関税その他の輸入規制の変更」を不可抗力事由として列挙していても,列挙されていることだけで当然に免責されるわけではない。
その措置と具体的な不履行との関係,条項が要求する回避・影響軽減の対応,通知期限及び提出資料を,契約の定めに従って確認する。
条項の効果が履行の一時停止,損害賠償責任の免除,再協議又は契約終了のいずれなのかも区別し,免責条項から当然に代金の増減額まで導かない。

日本法が準拠法となる場合,債務不履行による損害賠償については,契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものかを検討する(民法415条1項ただし書)。
これに対し,民法536条1項は,当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行できなくなった場合の,反対給付の履行拒絶を定める規定である。

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「技術・人文知識・国際業務」の在留資格――上陸許可基準と専攻・業務関連性の審査実務(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 検討の対象と時点
2 この記事の位置付け

第2 「技術・人文知識・国際業務」とは何か

1 入管法上の定義
2 平成26年改正による統合の経緯
3 他の在留資格との関係

第3 上陸許可基準

1 学歴要件
2 情報処理技術者の特例
3 外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務
4 報酬要件

第4 専攻科目と従事する業務内容との関連性

1 大学卒業者の場合
2 専修学校卒業者の場合

第5 特定技能・技能実習との違い

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名義株の解消方法―名義書換え,訴訟,買取り及び所在不明株主の株式売却(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 名義株の解消とは何を指すか
2 解消方法を分ける二つの軸

第2 名義書換えによる解消―名義人の協力が得られる場合

1 名義株確認書の作成
2 株主名簿の名義書換請求
3 贈与税認定を避けるための注意
4 株券発行会社での留意点

第3 訴訟による解消―名義人が争う場合

1 株主権確認訴訟の当事者と請求
2 確定判決による単独での名義書換請求
3 連絡が取れない名義人に対する訴訟

第4 買取りによる強制的な解消

1 合意による任意の買取り
2 相続人等に対する売渡請求
3 相続人等に対する売渡請求の逆用リスク
4 株式併合及び特別支配株主の株式等売渡請求

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高次脳機能障害者を支援するための諸制度――令和8年4月施行の支援法,障害者手帳,障害年金,労災及び障害福祉サービス(AI作成)

第1 この記事が扱う範囲1 検討の対象と時点2 「高次脳機能障害」という語の三つの用法3 使える制度の一覧第2 高次脳機能障害者支援法1 成立の経緯と施行の時期2 政令が定める定義と四つの除外3 高次脳機能障害者支援センター4 地域協議会,専門的な医療機関及び司法手続における配慮5 国会審議で確認された適用範囲6 令和8年度診療報酬改定による退院支援の義務付け第3 診断の基準と障害者手帳1 行政的診断基準の令和5年版2 精神障害者保健福祉手帳の等級判定基準3 手帳を要する制度と要しない制度第4 障害年金1 器質性精神障害としての認定基準2 等級判定ガイドラインと考慮要素の借用3 就労している場合の評価4 支分権の消滅時効第5 労働者災害補償保険及び公務災害1 四つの能力による障害等級の認定2 画像所見がない場合の第14級の9第6 障害福祉サービス,医療及び介護保険1 障害者総合支援法による給付2 支給量の決定に対する司法審査3 自立支援医療と介護保険との関係第7 就労及び差別の解消1 合理的配慮と法定雇用率2 障害を理由とする差別の解消第8 自動車の運転第9 相談窓口及び期間の制約1 支援センターと大阪府内の窓口2 期間に関する制約の整理出典1 法令2 行政通知3 認定基準・診断基準4 裁判例5 公的資料第1 この記事が扱う範囲1 検討の対象と時点

この記事は,記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害等の認知機能の障害を負った人が利用できる公的な制度を,令和8年8月21日の時点で整理するものである。令和8年4月1日に高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)が施行され,同法に基づく実施要綱及び関係通知が同年4月から5月にかけて発出されたことにより,従前は予算事業と個別の給付制度に分かれていた支援の枠組みが,一つの法律を頂点とする体系に組み替えられた。もっとも,実際に金銭給付やサービスを受ける根拠となるのは,従前と同じく障害者手帳,障害年金,労働者災害補償保険及び障害者総合支援法であり,支援法はこれらを置き換えるものではない。

この記事では,交通事故の加害者に対する損害賠償請求を扱わない。高次脳機能障害を理由とする後遺障害等級の認定と,その等級を前提とする賠償額の算定については,高次脳機能障害で後遺障害等級7級4号を認定してもらうための具体的な主張立証方法で扱っている。ここで取り上げるのは,加害者がいるかどうかにかかわらず利用できる制度,すなわち脳血管疾患,低酸素脳症,脳炎,脳腫瘍等の疾病によって障害を負った場合にも同じように使える制度である。厚生労働省は,同法の対象となる患者数を令和4年の調査に基づき全国で約23万人と推計している。本記事はAIを用いて作成し,一次資料への到達性を優先した。記載内容は,令和8年8月時点でe-Gov法令検索により確認した現行条文,厚生労働省,内閣府,日本年金機構及び国立障害者リハビリテーションセンターが公表している通知及び資料,並びに裁判所ウェブサイト及び国立国会図書館国会会議録検索システムで確認した裁判例及び議事録に基づく。

2 「高次脳機能障害」という語の三つの用法

制度を調べるときに最初につまずくのは,「高次脳機能障害」という語が,法令上の定義,行政的な診断基準,個々の給付制度の認定基準という三つの層でそれぞれ別に定義されており,除外される範囲も一致していないことである。第一の層は高次脳機能障害者支援法2条1項及び同法施行令(令和8年政令第60号)1条であり,これは支援法の対象を画する。第二の層は,平成13年度に開始された高次脳機能障害支援モデル事業に由来する行政的診断基準であり,医師が診断書に「高次脳機能障害」と記載するときの基準として機能する。第三の層は,障害年金の障害認定基準,労災保険の障害等級認定基準といった,給付ごとの物差しである。

三つの層は目的が違うため,一方に該当することが他方に該当することを意味しない。支援法施行令1条は認知症を明文で除外しているが,障害年金の障害認定基準は「症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む。)」という区分の中に認知症も併せて含めている。逆に,労災保険の障害等級認定基準は,画像所見が得られない場合であっても第14級の9として等級を認める余地を明文で残しているのに対し,行政的診断基準は検査所見を診断の要件として掲げている。他方,自賠責保険の後遺障害認定は,CT・MRIによる異常所見の存在を重視する方針を維持しており,損害保険料率算出機構の報告書(平成30年5月)も,拡散テンソル画像,SPECT,PET等の検査のみで,脳の器質的損傷の有無や障害の程度を確定的に示すことはできないとしている。画像所見のない事案では,行政上の支援の対象となることと,自賠責保険で後遺障害等級が認められることとの差が特に大きくなる。制度ごとに使う物差しが違うという前提を置かずに一つの基準だけで判断すると,本来受けられる給付を取りこぼすことになる。

3 使える制度の一覧

以下は,この記事で取り上げる制度を,利用したい場面ごとに整理したものである。実施主体と根拠条文を併記したのは,令和8年4月15日障精発0415第1号が各自治体に対して相談窓口の明確化と周知を求めていることからも分かるとおり,窓口が明確でないことが制度利用の入口の問題として認識されているためである。

場面制度(実施主体)根拠相談先を確保する高次脳機能障害者支援センター(都道府県知事又は指定都市市長が指定し,又は自ら実施)高次脳機能障害者支援法19条1項障害があることを公証する精神障害者保健福祉手帳(都道府県知事)精神保健福祉法45条麻痺・失語がある身体障害者手帳(都道府県知事)身体障害者福祉法15条生活費を得る障害基礎年金・障害厚生年金(厚生労働大臣)国民年金法30条,厚生年金保険法47条業務上の負傷による場合障害補償給付(労働基準監督署長)労働者災害補償保険法15条通院の自己負担を下げる自立支援医療(精神通院医療。市町村)障害者総合支援法5条25項生活訓練・機能訓練を受ける自立訓練(市町村の支給決定)同法5条12項住まいを確保する共同生活援助(市町村の支給決定)同法5条18項施設・病院から地域へ移る地域移行支援(市町村の地域相談支援給付決定)同法5条21項就労に向けた訓練を受ける就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援(市町村の支給決定)同法5条13項ないし15項職場で配慮を受ける合理的配慮の提供(事業主)障害者雇用促進法36条の2ないし36条の4事業者から配慮を受ける合理的配慮の提供(事業者)障害者差別解消法8条2項外出を支援してもらう移動支援事業(市町村)障害者総合支援法5条27項,77条1項8号日中の居場所を得る地域活動支援センター(市町村)同法5条28項,77条1項9号

注 支給決定を要する制度については,市町村への申請と障害支援区分の認定が前提となる場合がある。

第2 高次脳機能障害者支援法1 成立の経緯と施行の時期

高次脳機能障害者支援法は,衆議院厚生労働委員長提出の法律案として令和7年12月5日に同委員会で起草・可決され,同月8日に衆議院本会議,同月16日に参議院本会議で可決されて成立し,同月24日に令和7年法律第96号として公布された。施行日は令和8年4月1日であり(附則1項),国は施行後3年を目途として施行の状況について検討を加え,必要があると認めるときは所要の措置を講ずるものとされている(附則2項)。提出者である田畑裕明議員は,同委員会において,超党派の議員連盟を設立して関係者からのヒアリングを重ねた結果として本案を取りまとめた旨を説明しており,内閣提出法案ではなく議員立法として成立した経緯がある。

法律は全4章31条から成り,第1章に目的,定義,基本理念及び責務を,第2章に個別の支援施策を,第3章に高次脳機能障害者支援センター等を,第4章に雑則を置く。基本理念(3条)として掲げられているのは,①意思を尊重しつつ自立及び社会参加の機会が確保され,尊厳を保ちつつ他の人々と共生することを妨げられないこと,②社会的障壁の除去に資すること,③個々の性別,年齢,障害の状態及び生活の実態に応じ,関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に,意思決定の支援に配慮しつつ,医療の提供から地域での生活支援を経て社会参加の支援に至るまで切れ目なく行われること,④居住する地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられるようにすること,の四つである。

2 政令が定める定義と四つの除外

同法2条1項は「高次脳機能障害」を,疾病の発症又は事故による受傷による脳の器質的病変に起因すると認められる記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害,失語,失行,失認その他の認知機能の障害として政令で定めるものと定義し,同条2項は「高次脳機能障害者」を,高次脳機能障害がある者であって,高次脳機能障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものと定義する。原因となる疾病や受傷の種類を限定していないため,厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長は,令和7年12月5日の衆議院厚生労働委員会において,循環器病対策基本法が循環器病という疾患に着目しているのに対し,本法は原疾患を問わず高次脳機能障害のある者の支援を対象としている旨を説明している。

政令に委任された部分を定めるのが高次脳機能障害者支援法施行令1条であり,同条は,記憶障害以下の認知機能の障害から,①先天性疾病による認知機能の障害,②周産期における胎児又は新生児が受けた脳の損傷による認知機能の障害,③介護保険法5条の2第1項に規定する認知症に該当する認知機能の障害,④発達障害者支援法2条1項に規定する発達障害に該当する認知機能の障害の四つを除いている。除外されているのはこの四つだけであり,進行性の疾患を原因とする場合が一律に除外されているわけではない。この点は,後述する行政的診断基準の平成16年版が「進行性疾患」を除外項目に掲げていたのと異なっており,除外項目から進行性疾患を落とした令和5年版の診断基準と整合する定め方になっている。

3 高次脳機能障害者支援センター

同法19条1項は,都道府県知事が,①高次脳機能障害者及びその家族その他の関係者に対する専門的な相談,情報の提供又は助言,②円滑な社会生活を促進するための特性に対応した専門的な支援,③関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者に対する情報の提供及び研修,④これらの機関及び団体との連絡調整,⑤これらに附帯する業務を,高次脳機能障害者支援センターに行わせ,又は自ら行うことができると定める。指定は申請により行われ(同条2項),都道府県知事は,地域の実情を踏まえつつ,可能な限り身近な場所で必要な支援を受けられるよう適切な配慮をするものとされている(同条3項)。センターについては,役職員等の秘密保持義務(20条),報告の徴収等(21条),改善命令(22条)及び指定の取消し(23条)が置かれている。指定都市においては,31条及び施行令2条により,指定都市市長が同様の事務を処理する。

運用上の細目を定めるのは,令和8年4月7日障発0407第19号「高次脳機能障害者支援事業の実施について」の別紙1「高次脳機能障害者支援事業実施要綱」と,令和8年4月15日障精発0415第1号「高次脳機能障害者支援法の施行に伴う留意事項について」である。実施主体は都道府県又は指定都市とされ,事業の全部又は一部を団体等に委託することができる。センターは同一都道府県等の区域内に複数箇所設置することができ,指定数の上限は設けられておらず,都道府県と指定都市が同一の機関を指定することも可能である。都道府県知事等が指定をせずに自ら業務を担う場合も国庫補助の対象となり,「高次脳機能障害者支援センター」の名称を使用することは差し支えないとされている。

センターに配置される支援コーディネーターについて,留意事項通知は,社会福祉士,精神保健福祉士,保健師,作業療法士,公認心理師,言語聴覚士等のほか,高次脳機能障害者やその家族等で,自らの経験を活かして適切に相談支援を行うことができるものが想定されると述べている。当事者や家族による支援を国家資格保持者と並べて明記した点は,同種の相談支援の要綱の中では特徴的である。なお,従前の予算事業である「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業」(平成19年5月25日障発0525001号)は上記の新通知により廃止されたが,実施要綱第6は経過措置を置き,センターが指定されるまでの間は従前の支援拠点機関が業務の一部又は全部を引き続き実施することができ,当該業務はセンターが指定された日をもって終了するものとしている。留意事項通知は,やむを得ない事情で直ちに指定することが困難な場合には,令和8年度内に指定することを前提として,指定手続が完了するまでの期間も国庫補助の対象とすることができるとしている。

4 地域協議会,専門的な医療機関及び司法手続における配慮

同法25条1項は,都道府県に対し,支援の体制の整備を図るため,高次脳機能障害者及びその家族,学識経験者その他の関係者並びに医療,保健,福祉,教育,労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体等により構成される高次脳機能障害者支援地域協議会を置くよう努めなければならないと定め,同条2項は,協議会が,支援体制に関する課題についての情報共有,関係者の連携の緊密化及び地域の実情に応じた体制の整備に関する協議を行うものとしている。同法24条1項は,都道府県に対し,専門的に高次脳機能障害の診断,治療,リハビリテーション等を行うことができると認める病院又は診療所を確保するよう努めなければならないとし,同条2項は,国及び地方公共団体が医療機関の相互協力を推進し,医療機関に対して情報提供その他必要な援助を行うものとする。

司法手続との関係で置かれているのが15条であり,同条は,高次脳機能障害者が刑事事件若しくは少年の保護事件に関する手続その他これに準ずる手続の対象となった場合,又は裁判所における民事事件,家事事件若しくは行政事件に関する手続の当事者その他の関係人となった場合において,その権利を円滑に行使できるようにするため,個々の特性に応じた意思疎通の手段の確保のための配慮その他の適切な配慮をするものとすると定める。刑事司法の手続と民事・家事・行政の各手続を並べて配慮の対象とした点に特徴がある。これと対をなすのが29条であり,同条は,国及び地方公共団体が研修を実施すべき対象として,医療,保健,福祉,教育,労働等に関する業務に従事する者と並べて「捜査及び裁判に関する業務に従事する者」を挙げている。

5 国会審議で確認された適用範囲

条文だけからは判然としないのが,画像検査で脳の器質的病変を確認できない場合に法の対象となるかという問題である。令和7年12月5日の衆議院厚生労働委員会において,田村貴昭議員は,画像所見がなくても神経学的な診断等により医学的に脳に器質的病変があると診断される患者及び軽度外傷性脳損傷(MTBI)の患者が本案の対象となるかを提出者に質した。これに対し,提出者側の早稲田ゆき議員は,器質的病変の確認方法としてはMRI,CT,脳波等の検査所見によることが原則であるとした上で,受傷や疾病の事実が確認され,かつ認知障害を主たる原因として日常生活や社会生活に制約があるにもかかわらず検査所見で器質的病変を明らかにできない症例については,慎重な評価によって器質的病変が存在しているとの確認ができる場合には高次脳機能障害と診断され得るのであり,その場合には当然に本案の対象になると答弁した。

同議員は,軽度外傷性脳損傷についても,意識消失の時間の長短にかかわらず,高次脳機能障害と認められるものであれば当然に本案の対象に含まれる旨を述べている。もっとも,これは支援法の適用対象に関する立法者の説明であり,個別の給付の等級が認められるかどうかは各制度の認定基準によることに変わりはない。同じ委員会において,田村議員は,画像所見が認められない高次脳機能障害について労災保険の障害給付が請求された場合には各労働局が本省に協議することとされており,厚生労働省から示された資料によれば過去13年間の協議件数171件に対して支給決定は38件であったと述べている。この数値については政府参考人から明示の確認がされておらず,公表資料により裏付けられたものとして扱うことはできないが,法の対象となることと給付を受けられることとが同義ではないという点は,答弁の全体からうかがわれる。

6 令和8年度診療報酬改定による退院支援の義務付け

支援法自体には罰則を伴う義務規定が乏しい。センターの設置は「行わせ,又は自ら行うことができる」という規定であり,地域協議会の設置と専門的医療機関の確保は努力義務である。これに対し,実際の医療機関の行動を規律する形で置かれたのが,令和8年度診療報酬改定(令和8年6月1日適用)における回復期リハビリテーション病棟入院料及び特定機能病院リハビリテーション病棟入院料の施設基準である。令和8年5月8日障精発0508第1号「高次脳機能障害者への退院支援に関する診療報酬の改定等について」によれば,これらの入院料を算定する保険医療機関は,次のアからウまでの要件をいずれも満たすこととされた。

アは,当該地域において高次脳機能障害の患者に適したサービスを提供するもの,すなわち①支援法19条1項の高次脳機能障害者支援センター,②他の保険医療機関,③障害者総合支援法に基づく生活介護,自立訓練,就労継続支援,自立生活援助,共同生活援助,相談支援,計画相談支援等の障害福祉サービス等を提供する事業所又は施設,④児童福祉法に基づく指定障害児通所支援事業者,指定障害児入所施設等及び指定障害児相談支援事業者について,所在地,連絡先及び提供サービス等の情報をあらかじめ把握できる体制を整備することである。イは,基本診療料の施設基準等の別表第9に掲げる「高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害,重度の頸髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷の場合」に該当する患者の退院時に,患者又はその家族等退院後に患者の看護に当たる者に対して,アの情報を説明の上で提供できる体制を整備することである。ウは,退院後に他の保険医療機関でのリハビリテーション,介護保険によるリハビリテーション又は障害福祉サービスによるリハビリテーションへの移行を予定している患者について,同意が得られた場合には,移行先に対して3月以内に作成したリハビリテーション総合実施計画書等を文書により提供できる体制を整備することである。

同通知は,これと対応させて,高次脳機能障害者支援センターが,高次脳機能障害の患者に適した医療機関及び障害福祉サービス事業所等の情報を把握して一覧を作成し,これを医療機関に情報提供することを求めている。制度の設計としては,センターが地域の受け皿の一覧を作り,回復期リハビリテーション病棟がその一覧を退院時に患者と家族へ渡す,という流れが想定されていることになる。したがって,回復期リハビリテーション病棟から退院するに際してこの種の情報提供を受けていない場合には,施設基準の充足について医療機関に確認を求める余地があると考えられる。

第3 診断の基準と障害者手帳1 行政的診断基準の令和5年版

医師が診断書に「高次脳機能障害」と記載する際に用いられる行政的診断基準には,平成13年度の高次脳機能障害支援モデル事業に由来する平成16年版と,国際疾病分類のICD-10からICD-11への改訂に合わせて作成された令和5年版とがある。国立障害者リハビリテーションセンターの高次脳機能障害情報・支援センターのウェブサイトには現在も平成16年版が掲載されており,両者は構造こそ同じであるものの,実務に影響する差異がある。

条項平成16年版令和5年版Ⅱ 検査所見MRI,CT,脳波などにより器質的病変の存在が確認されているか,あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる脳MRI,頭部CT,脳波などにより確認されているか,あるいは医学的に十分に合理的な根拠が示された診断書等により確認できるⅢ 除外項目3先天性疾患,周産期における脳損傷,発達障害,進行性疾患を原因とする者を除外先天性疾患,発達障害,周産期における脳損傷を原因とする者を除外(進行性疾患の記載なし)Ⅲ 除外項目2受傷又は発症以前から有する症状と検査所見は除外する発症又は受傷以前から症状や検査所見が存在する場合には,発症又は受傷後に新たに現れた症状や検査所見に基づき診断し,それらが十分とは言えない者を除外する軽度外傷性脳損傷記載なし単回のMTBIについて,病歴,神経心理学的検査による評価及び診断基準の対象とならない精神疾患の除外から総合的に判定する必要があると明記国際疾病分類ICD-10のF04,F06,F07が対象ICD-11ではF0に対応する大分類が消滅し,6D72,6D7,6E6に分散していることを明記

注 いずれも診断基準の本体は「Ⅰ主要症状等」「Ⅱ検査所見」「Ⅲ除外項目」「Ⅳ診断(令和5年版は診断に際しての留意事項)」の四つで構成される。

令和5年版が実務上重要なのは,解説部分において,脳損傷の存在が診断の必要条件であるとしつつ,高次脳機能障害の臨床症状を呈しながらも頭部CTや脳MRIを用いた画像診断において有意な異常所見が得られないケースが多々あるとして,「脳損傷の可視化は決して必要条件ではない」と明言した点である。同版は,画像診断で有意な異常所見が得られないケースにおいては臨床経過と神経心理学的検査の所見が極めて重要になり,ケースによっては神経心理学的検査の所見が診断の決め手になることがしばしばあると指摘している。ただし,この場合には神経心理学的検査の専門家による精密な検査施行と結果の解釈が必須であるとも述べており,検査を受けさえすれば足りるという趣旨ではない。なお,除外項目から進行性疾患が落ちた理由について,同版は,本診断基準が行政的な支援対策推進を目的とするものであるから,他の行政的支援が拡充されている病態(認知症等)については除外する形を取っていると説明している。

2 精神障害者保健福祉手帳の等級判定基準

高次脳機能障害を理由として取得する手帳は,精神保健福祉法45条に基づく精神障害者保健福祉手帳である。同条1項により居住地の都道府県知事に交付を申請し,同条2項により政令で定める精神障害の状態にあると認められれば交付を受けるが,同条4項により2年ごとに,政令で定める精神障害の状態にあることについて都道府県知事の認定を受けなければならない。等級の判定は,平成7年9月12日健医発第1133号「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」によるところ,平成23年3月3日障発0303第1号による一部改正(平成23年4月1日適用)によって,「⑥器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)」の(b)として高次脳機能障害の定義が明記された。

同改正が定義するところによれば,高次脳機能障害とは,①脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認され,②日常生活又は社会生活に制約があり,その主たる原因が記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害等の認知障害であるものをいい,ICD-10コードではF04,F06又はF07に該当する。等級の判定基準は,器質性精神障害によるものについて,記憶障害,遂行機能障害,注意障害及び社会的行動障害のいずれかがあり,そのうち一つ以上が高度のものを1級,一つ以上が中等度のものを2級,いずれも軽度のものを3級としている。判定は,(1)精神疾患の存在の確認,(2)精神疾患(機能障害)の状態の確認,(3)能力障害(活動制限)の状態の確認,(4)精神障害の程度の総合判定という順を追って行われるものとされており,診断書に記載された機能障害の状態と活動制限の状態の双方を審査することが求められている。

麻痺や失語がある場合には,身体障害者福祉法15条に基づく身体障害者手帳を別に申請することができ,身体症状と精神症状を併せ持つ場合には2種類以上の手帳を同時に取得することが可能である。障害者手帳の等級は制度ごとに意味が異なり,同じ「3級」でも手帳と障害年金では要件が違うことに注意を要する。この点は,別の傷病を素材とするものであるが,大腿骨骨折の障害者手帳と障害年金――「3級」の違いと人工骨頭の認定基準でも整理している。

3 手帳を要する制度と要しない制度

手帳がなければ制度を利用できないという理解は,制度の根拠規定と一致しない。手帳の所持を要件とするかどうかは制度ごとに定め方が異なっており,条文又は基本方針まで立ち返って確認する必要がある。

制度手帳の要否根拠障害福祉サービスの支給申請不要自立支援医療受給者証又はICD-10コードの記載のある医師の診断書によることができる(国立障害者リハビリテーションセンター掲載の関係通知)障害を理由とする差別の解消不要障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針が,法の対象となる障害者はいわゆる障害者手帳の所持者に限られないとし,高次脳機能障害は精神障害に含まれると明記雇用における合理的配慮の提供条文上は不要障害者雇用促進法36条の2ないし36条の4は「障害者」について定めており,37条2項の「対象障害者」とは別の概念である障害者雇用率における算定必要同法37条2項は,対象障害者たる精神障害者を精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限っている障害年金不要国民年金法30条及び厚生年金保険法47条は手帳の所持を支給要件としていない

注 手帳を取得することにより,税の控除,公共料金の減免,公営住宅の入居の優遇等を受けられる場合があるが,その範囲は自治体により異なる。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針は,法の対象範囲を説明する箇所において,法が対象とする障害者はいわゆる障害者手帳の所持者に限られないとした上で,「なお,高次脳機能障害は精神障害に含まれる。」と述べている。障害者基本法2条1号が「精神障害(発達障害を含む。)」としか規定していないのに対し,基本方針が高次脳機能障害を精神障害に含まれると明示していることは,学校や事業者との交渉において最初に確認すべき点である。

第4 障害年金1 器質性精神障害としての認定基準

障害年金における高次脳機能障害の取扱いは,国民年金・厚生年金保険障害認定基準の第3第1章第8節「精神の障害」のうち「B 症状性を含む器質性精神障害」による。同節は,症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む。)を,先天異常,頭部外傷,変性疾患,新生物,中枢神経等の器質障害を原因として生じる精神障害に,膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものと定義し,高次脳機能障害については,脳損傷に起因する認知障害全般を指し,日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となると定める。

等級は,高度の認知障害,高度の人格変化,その他の高度の精神神経症状が著明なため常時の援助が必要なものを1級,認知障害,人格変化,その他の精神神経症状が著明なため日常生活が著しい制限を受けるものを2級,認知障害及び人格変化は著しくないがその他の精神神経症状があり労働が制限を受けるもの又は認知障害のため労働が著しい制限を受けるものを3級とし,認知障害のため労働が制限を受けるものを障害手当金とする。同節は,脳の器質障害については精神障害と神経障害を区分して考えることはその多岐にわたる臨床症状から不能であり,原則としてそれらの諸症状を総合して全体像から総合的に判断して認定するとしており,症状を要素ごとに切り分けて評価する建て付けを採っていない。

見落としやすいのが失語の扱いである。同節は,高次脳機能障害の主な症状として失語,失行,失認のほか記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害などを挙げた上で,失語の障害については本章第6節「音声又は言語機能の障害」の認定要領により認定すると定めている。したがって,失語がある場合には第8節と第6節の双方が問題となり,併合認定によって上位の等級となる余地がある。また同節は,障害の状態が代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状の経過を十分考慮するとしており,症状固定を前提とする後遺障害等級とは異なり,経過を通じた評価が予定されている。

制度の入口として決定的なのは,初診日にどの年金制度に加入していたかである。国民年金法30条2項は障害等級を1級及び2級とし,厚生年金保険法47条2項は1級から3級までとしているから,3級及び障害手当金は厚生年金保険にしかない。同じ障害の状態であっても,初診日に国民年金の第1号被保険者であった場合は2級に届かなければ支給されないことになる。

2 等級判定ガイドラインと考慮要素の借用

障害基礎年金の不支給割合に都道府県間の差があることが確認されたことを受けて策定されたのが,平成28年9月の「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」である。同ガイドラインは,診断書の記載項目のうち「日常生活能力の程度」の5段階評価と「日常生活能力の判定」の4段階評価を1から4の数値に置き換えた平均とを組み合わせた表1により障害等級の目安を示し,表2に掲げる考慮要素を踏まえて認定医が総合的に判定する仕組みを採る。

高次脳機能障害について注意を要するのは,表2に器質性精神障害のための独立の考慮要素欄が置かれていないことである。ガイドラインは第3の3(3)②において,障害認定基準に規定する「症状性を含む器質性精神障害」について総合評価を行う場合は,「精神障害」「知的障害」「発達障害」の区分にとらわれず,各分野の考慮すべき要素のうち該当又は類似するものを考慮して評価すると定めており,他の区分の考慮要素を借用する建て付けになっている。この規定を前提とすれば,知能検査の結果が正常範囲であるにもかかわらず社会的行動障害によって生活が破綻している事案では,発達障害の欄に置かれた「知能指数が高くても日常生活能力が低い(特に対人関係や意思疎通を円滑に行うことができない)場合は,それを考慮する」という要素を,該当又は類似するものとして援用することができると整理される。

3 就労している場合の評価

就労していることが不支給の理由になるかという点については,認定基準とガイドラインの双方が明文で釘を刺している。障害認定基準第8節は,Bの(6)において,日常生活能力等の判定に当たっては身体的機能及び精神的機能を考慮の上,社会的な適応性の程度によって判断するよう努めるとした上で,現に仕事に従事している者については,労働に従事していることをもって直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず,その療養状況を考慮するとともに,仕事の種類,内容,就労状況,仕事場で受けている援助の内容,他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認した上で日常生活能力を判断することと定めている。

等級判定ガイドラインの表2「④就労状況」の共通事項も同旨を定めた上で,「援助や配慮が常態化した環境下では安定した就労ができている場合でも,その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する」とし,就労継続支援A型・B型及び障害者雇用制度による就労並びに就労移行支援については1級又は2級の可能性を検討するとし,障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも,これらと同程度の援助を受けて就労している場合は2級の可能性を検討するとしている。

裁判例にも同様の判断がある。東京地方裁判所令和4年3月18日判決(令和2年(行ウ)第58号)は,広汎性発達障害のほか既存障害として軽度の知的障害等がある者が障害者雇用枠で就職して定型的な作業又は単純な事務作業に従事していた事案において,判断を要するような行為については身のまわりのことであっても自発的かつ適正に行うことができず家族の援助や指導等が必要な状況にあったこと等を勘案し,就労を相当期間継続してきたことについては,本来であれば継続が困難であるところを周囲の理解や援助,指導等によって継続が可能となったものと評価することができるとして,障害等級2級に該当するとし,不支給処分を取り消すとともに,厚生労働大臣に対して2級の裁定をするよう命じた。高次脳機能障害の事案ではないが,就労の事実をどのように評価するかについての判断の型を示したものとして参照できる。

障害年金の認定において就労状況が考慮されることと,特定の職務について労務提供能力があるかを判断することは,同じ問題ではない。
障害者手帳・障害年金の認定と労務提供能力は同じかでは,行政上の認定,診断・症状・治療,日常生活・社会生活上の機能及び具体的職務についての労務提供能力を四つの判断層に分けて整理している。

4 支分権の消滅時効

障害年金には,見落とすと回復できない期間の制約がある。最高裁判所第三小法廷平成29年10月17日判決(平成29年(行ヒ)第44号,民集71巻8号1501頁)は,厚生年金保険法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)47条に基づく障害年金の支分権,すなわち支払期月ごとに支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利の消滅時効は,当該障害年金に係る裁定を受ける前であっても,厚生年金保険法36条所定の支払期が到来した時から進行すると判示した。

この判断によれば,障害認定日に遡って等級が認められたとしても,古い支払期の分から順に時効によって消滅していくことになる。障害認定日は初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内に傷病が治った場合はその日)であるから(国民年金法30条1項,厚生年金保険法47条1項),発症又は受傷から相当の年月が経過した後に相談を受けた場合には,遡及請求が可能かどうかの検討と並行して,時効により失われる範囲を早期に確定させる必要がある。障害の程度が重いほど本人による手続が困難であり,家族が制度の存在を知るまでに時間がかかりやすいという事情があるだけに,この点は最初に確認すべき事項の一つである。

第5 労働者災害補償保険及び公務災害1 四つの能力による障害等級の認定

業務上の事由又は通勤による負傷若しくは疾病を原因とする場合の障害等級は,平成15年8月8日基発第0808002号「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」による。同基準は,脳の器質性障害を「高次脳機能障害」(器質性精神障害)と「身体性機能障害」(神経系統の障害)に区分した上で,両者の程度及び介護の要否・程度を踏まえて総合的に判断することとし,たとえば高次脳機能障害が第5級に相当し軽度の片麻痺が第7級に相当するからといって併合の方法を用いて準用等級第3級と定めるのではなく,その場合の全体病像として第1級の3,第2級の2の2又は第3級の3のいずれかに認定すべきものとしている。

高次脳機能障害の評価は,意思疎通能力,問題解決能力,作業負荷に対する持続力・持久力及び社会行動能力という四つの能力の喪失の程度によって行い,複数の障害が認められるときは原則として最も重篤なものに着目する。等級の対応は,生命維持に必要な身のまわり処理の動作について常に他人の介護を要するものを第1級の3,随時介護を要するものを第2級の2の2,身のまわり処理は可能であるが労務に服することができないもの(四つの能力のいずれか一つ以上が全部失われているもの又はいずれか二つ以上の大部分が失われているもの)を第3級の3,きわめて軽易な労務のほか服することができないもの(いずれか一つ以上の大部分又は二つ以上の半分程度)を第5級の1の2,軽易な労務にしか服することができないもの(いずれか一つ以上の半分程度又は二つ以上の相当程度)を第7級の3,就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの(いずれか一つ以上の相当程度)を第9級の7の2,多少の障害を残すもの(いずれか一つ以上が多少失われているもの)を第12級の12とする。

手続面では,障害補償給付請求書等の裏面の診断書の傷病名の欄等に頭部外傷又は脳血管疾患等による高次脳機能障害が想定される障害が記載されている場合について,主治医に対して様式1により,家族(あるいは家族に代わる介護者)に対して様式2により障害の状態についての意見を求めることとされている。そして同基準は,高次脳機能障害の状態について家族と主治医の意見が著しく異なる場合には再度必要な調査を行うことと定めており,本人の病識が低下していることによって主治医の把握と生活実態とがずれる場合に,家族側の意見を無視して処理することは想定されていない。労災保険の給付の全体像については,労災保険の給付内容―給付の種類,金額及び令和8年改正で扱っている。

2 画像所見がない場合の第14級の9

同基準は,「通常の労務に服することはできるが,高次脳機能障害のため,軽微な障害を残すもの」を第14級の9とし,これに該当するものとして「MRI,CT等による他覚的所見は認められないものの,脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき,高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるもの」を挙げている。画像所見が得られない場合の類型が明文で置かれている点は,前記の令和5年版診断基準が「脳損傷の可視化は決して必要条件ではない」と述べていることと方向を同じくする。

もっとも,同基準は,高次脳機能障害が脳の器質的病変に基づくものであることからMRI,CT等によりその存在が認められることが必要であるとも述べており,画像所見が不要であるという趣旨ではない。他方で同基準は,神経心理学的な各種テストの結果のみをもって高次脳機能障害が認められないと判断することなく四つの能力の障害の程度により障害等級を認定することと定め,注記において,神経心理学的な各種テスト等の検査結果は臨床判定の際の有効な手段であるが,知能指数が高いにもかかわらず高次脳機能障害のために生活困難度が高い例があると述べている。知能検査の数値が保たれていることを理由に障害を否定する判断を,基準自身が明示的に戒めている。

公務上の災害による場合は地方公務員災害補償法等によることになる。名古屋地方裁判所平成23年6月29日判決(平成20年(行ウ)第101号)は,中学校の教員が公務遂行中に脳出血により倒れて高次脳機能障害等の後遺症を負い,公務外認定処分を受けた事案において,従事した公務に量的及び質的な過重性が認められ,これにより高血圧及びもやもや病の基礎疾患が自然的経過を超えて増悪化して脳出血の発症に至ったことが推認されるとして,公務起因性を認めた。他方,岐阜地方裁判所平成23年8月4日判決(平成20年(行ウ)第1号)は障害補償の不支給処分の取消請求を棄却し,仙台地方裁判所平成24年1月12日判決(平成22年(行ウ)第25号)は,自宅療養及びそのための休業が医師の事前の指示ないし指導に基づくものでない場合であっても,医師の医学的知見に基づく判断により客観的に見て必要性が明らかであると証明された場合には休業補償給付の支給要件を満たすと解した上で,当該事案では必要性が明らかであるとは認められないとして請求を棄却している。

第6 障害福祉サービス,医療及び介護保険1 障害者総合支援法による給付

日常生活の支援は障害者総合支援法による。高次脳機能障害の事案で用いられることが多いのは,同法5条12項の自立訓練(機能訓練及び生活訓練),同条18項の共同生活援助,同条21項の地域移行支援,同条13項から15項までの就労選択支援,就労移行支援及び就労継続支援である。就労選択支援は,就労を希望する障害者等について短期間の生産活動その他の活動の機会の提供を通じて就労に関する適性,知識及び能力の評価並びに就労に関する意向及び必要な配慮の整理を行うものとして新設された。この新設によって同条の項番号が繰り下がっているため,新設前に刊行された文献の項番号をそのまま引用すると条項の指示を誤ることになる。

令和7年10月に始まった就労選択支援は,本人の希望,就労能力や適性等に合った就労先・働き方の選択を支えるサービスである。
厚生労働省「就労選択支援の実施について」(令和7年9月30日改正)は,新たに就労継続支援B型を利用する場合の原則的な事前利用と,50歳以上,障害基礎年金1級受給者等の例外を示す。A型の新規利用等の令和9年4月以降の取扱いは,同通知では予定として記されている。
本人の意思,市町村の支給決定,地域の事業所と利用順序を確認する必要があり,評価結果だけで就職先が決定するものではない。制度開始時点を含めた整理は,令和7年10月の厚生労働省制度変更を参照されたい。

施設や病院から地域へ移る場面の給付である地域移行支援,共同生活援助及び自立生活援助の内容,並びに住まいの確保に用いる住宅確保要配慮者居住支援法人等の制度については,精神科病院退院者の環境調整の諸制度――退院後生活環境相談員,地域移行支援,居住支援法人及び費用負担で詳しく扱っている。高次脳機能障害の場合も同じ給付を用いることになるが,精神科病院からの退院に固有の制度である退院後生活環境相談員及び医療保護入院者退院支援委員会は,医療保護入院又は措置入院を経ていない限り適用されない。

なお,令和8年4月15日障精発0415第1号は,各自治体に対し,支援法17条を踏まえて高次脳機能障害者やその家族その他の関係者が相談できる窓口を明確化し,関係機関等との連携を図りながら十分な支援が行われるよう相談支援体制を整備するとともに,必要な周知を進めることを求めている。同通知は地方自治法245条の4第1項の規定に基づく技術的助言であり,これ自体が個々の住民に対する具体的な請求権を生じさせるものではない。

交通事故の被害者が障害福祉サービスを利用する場合に,その給付が将来介護費から差し引かれるかどうかは,交通事故の将来介護費と公的給付――日額,平均余命,余命短縮,定期金及び年金・労災・介護保険・NASVA介護料の控除で扱っている。

2 支給量の決定に対する司法審査

サービスの種類や支給量に不服がある場合の枠組みは,一連の裁判例によって形成されてきた。大阪地方裁判所平成22年4月23日判決(平成19年(行ウ)第200号)及びその控訴審である大阪高等裁判所平成22年12月14日判決(平成22年(行コ)第84号)は,重度訪問介護の支給量を1か月当たり318時間とする介護給付費支給決定の取消請求について,市町村がする支給要否決定並びに障害福祉サービスの種類及び支給量の決定は,その判断の基礎となる事実に重大な誤認があり,あるいはその判断内容が社会通念に照らして明らかに合理性を欠くこと等により,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用にわたるものと認められるような場合に限って違法になるとした上で,違法となるかどうかは,決定に至る判断の過程において,勘案事項を適切に調査せず,又はこれを適切に考慮しないことにより,その内容が,当該障害者等の個別具体的な障害の種類及び内容並びにその程度その他の具体的事情に照らして,社会通念上当該障害者等において自立した日常生活又は社会生活を営むことを困難とするものであって,同法の趣旨目的に反するのではないかという観点から検討すべきであると判示した。

この枠組みの下でも,生活場面の切り出し方が不合理であれば違法とされる。東京地方裁判所平成30年10月12日判決(平成28年(行ウ)第369号)は,午前10時から午後2時までの時間帯をボランティア対応として昼食介助及び昼食後の歯磨き介助の時間を算定せず,重度訪問介護の支給量を1か月527時間(1日当たり17時間)を超えて算定しなかったことについて,申請者が作成した利用計画案が1日24時間の常時介助を前提として2人介助を含む1日当たり27時間30分から自助努力分として4時間を差し引いた1日当たり23時間30分を求めるものとなっており,支給決定における支給量が申請者の求める時間に満たない場合にまで4時間分全部の支給量を不要とする意向であるとは解し難いこと等の事情の下では,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとした。

さらに,最高裁判所第一小法廷令和7年7月17日判決(令和5年(行ヒ)第276号)は,両下肢の機能の全廃及び両上肢の機能の著しい障害により1級の身体障害者手帳の交付を受け,障害支援区分4の認定を受けた上で居宅介護(身体介護月45時間及び家事援助月25時間)の支給決定を受けていた者が,同じ内容の支給決定を求めたところ却下処分を受けた事案について,処分当時65歳に達していたが介護保険法27条1項に基づく申請をしていなかったという事情の下で,処分を違法とした原審の判断には,市町村の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った結果,受けることができる介護給付のうち自立支援給付に相当するものの量を算定することができないとした市の判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるか否かについて審理を尽くさなかった違法があるとして,原判決を破棄し差し戻した。これらはいずれも身体障害等の事案であり,高次脳機能障害の支給量を正面から争った裁判例を裁判所ウェブサイトで確認することはできなかったが,判断の枠組み自体は障害の種別を問わないものとして組み立てられている。

3 自立支援医療と介護保険との関係

通院医療費の負担軽減には,障害者総合支援法5条25項の自立支援医療(精神通院医療)を用いる。介護保険との関係では,年齢によって扱いが分かれる。介護保険法7条3項2号及び同法施行令2条は,第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)が要介護認定を受けるための特定疾病を16列挙しており,その13号に「脳血管疾患」が置かれている。したがって,40歳以上65歳未満の場合,脳血管疾患を原因とする高次脳機能障害であれば介護保険の給付を受け得るが,交通事故等による外傷性脳損傷を原因とする場合は特定疾病に当たらないため介護保険を利用することができず,障害福祉サービスによることになる。65歳以上であれば原因を問わず介護保険の被保険者となる。

もう一つ,介護保険法5条の2第1項の「認知症」との関係にも注意を要する。同項は認知症を,アルツハイマー病その他の神経変性疾患,脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態と定義しており,高次脳機能障害者支援法施行令1条はこれに該当する認知機能の障害を支援法の対象から除いている。脳血管疾患を原因とする事案では,同じ状態が「認知症」と評価されるか「高次脳機能障害」と評価されるかによって適用される制度が分かれ得ることになるが,行政的診断基準の令和5年版が認知症を除外する理由として他の行政的支援が拡充されていることを挙げていることからすれば,いずれの制度からも漏れることを想定した仕分けではないと考えられる。

第7 就労及び差別の解消1 合理的配慮と法定雇用率

雇用の場面では,二つの制度を区別して考える必要がある。第一は合理的配慮の提供義務であり,障害者雇用促進法36条の2は,事業主に対し,労働者の募集及び採用について,障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため,募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならないと定め,同法36条の3は,採用後について,均等な待遇の確保又は有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため,障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備,援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないと定める。いずれも事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときはこの限りでないという留保が付されている。同法36条の4は,これらの措置を講ずるに当たって障害者の意向を十分に尊重すべきこと,及び障害者である労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずべきことを定める。

第二は障害者雇用率制度である。同法37条2項は,雇用義務の対象となる「対象障害者」のうち精神障害者について,精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限ると定めており,実雇用率の算定に当たっては手帳が必要になる。したがって,手帳を取得していない高次脳機能障害者について事業主が合理的配慮を提供する義務を負う一方で,その労働者は実雇用率には算入されないという状態があり得る。法定雇用率の水準及び算定方法については,令和8年7月の障害者法定雇用率2.7%への引上げ―37.5人基準,算定方法及び企業の対応で扱っている。

支援法13条1項は,国及び地方公共団体に対し,公共職業安定所,地域障害者職業センター,障害者就業・生活支援センター,社会福祉協議会,教育委員会その他の関係機関及び民間団体相互の連携を確保しつつ,個々の特性に応じた適切な就労の機会の確保及び就労の定着のための支援に努めるべきことを定め,同条3項は,事業主に対し,高次脳機能障害者の雇用に関し,その有する能力を正当に評価し,適切な雇用の機会を確保するとともに,個々の特性に応じた適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならないと定める。また,支援法6条は,事業主が高次脳機能障害者又はその家族の雇用の継続等に配慮するよう努めるべきものとしており,本人だけでなく介護に当たる家族の就業継続を条文上取り上げている。

2 障害を理由とする差別の解消

障害者差別解消法7条は行政機関等に,同法8条は事業者に,それぞれ不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供を義務付ける。事業者による合理的配慮の提供は,令和3年法律第56号による改正により努力義務から法的義務に改められ,同改正法は令和6年4月1日に施行された。合理的配慮の提供は,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときに,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて必要かつ合理的な配慮をするというものである。

前記のとおり,同法の基本方針は高次脳機能障害が精神障害に含まれること及び対象が手帳の所持者に限られないことを明記している。もっとも,同法が求めるのは意思の表明を契機とする個別の調整であり,記憶障害や社会的行動障害のために自ら配慮を求めることが難しい場合には,その意思の表明を誰がどのように補うかという問題が残る。支援法3条3項が意思決定の支援への配慮を基本理念に掲げているのは,この局面にも関わる。成年後見制度の側からの手当てについては,令和8年成年後見制度改正と関係法律61本の整備で扱っている。

第8 自動車の運転

運転免許を維持できるかどうかは,条文を追うだけでは答えが出ない領域である。道路交通法103条1項1号は,免許の取消し又は効力の停止の事由となる病気として,イ「幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの」,ロ「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの」,ハ「イ及びロに掲げるもののほか,自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」を掲げ,同項1号の2は認知症であることが判明したときを掲げる。同項1号ハの政令で定める病気は,道路交通法施行令38条の2第3項が同令33条の2の3第3項各号を引用しており,同項は,1号にそう鬱病,2号に重度の眠気の症状を呈する睡眠障害を掲げた上で,3号に「前二号に掲げるもののほか,自動車等の安全な運転に必要な認知,予測,判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気」を掲げる。高次脳機能障害は病名として列挙されておらず,この3号の包括的な規定への当てはめの問題となる。

手続としては,公安委員会は,免許を受けた者が同項1号から3号までのいずれかに該当することとなったと疑う理由があるときは,臨時に適性検査を行い,又は内閣府令で定める要件を満たす医師の診断書を提出すべき旨を命ずることができ,この場合には,免許の申請又は更新の際に提出された質問票の記載内容,法101条の5の規定による報告の内容その他の事情を考慮するものとされている(法102条4項)。また,法101条の6第1項は,医師が,その診察を受けた者が法103条1項1号,1号の2又は3号のいずれかに該当すると認めた場合において,その者が免許を受けた者であることを知ったときは,診察の結果を公安委員会に届け出ることができるとし,同条3項は,刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は,この届出をすることを妨げるものと解釈してはならないと定める。届出は義務ではないが,守秘義務違反にならないことが法律上明示されている。

質問票について注意を要するのは罰則である。法117条の4第1項3号は,法89条1項(免許の申請),法101条1項(免許証等の更新の申請)又は法101条の2第1項の質問票に虚偽の記載をして提出した者を,1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処すると定める。免許を失うことをおそれて質問票に事実と異なる記載をすることは犯罪を構成し得るのであって,運転の継続を希望する場合には,臨時適性検査又は医師の診断書の提出という手続の中で判断を求めることになる。運転の再開を支援する体制も整備されつつあり,令和8年4月7日障障発0407第1号等による高次脳機能障害支援養成研修の実施要綱は,実践研修の標準的なカリキュラムの講義科目に「自動車運転再開支援」を置き,高次脳機能障害者の自動車運転支援に関連する法制度,運転評価,課題や留意事項の理解を内容とすると定めている。

第9 相談窓口及び期間の制約1 支援センターと大阪府内の窓口

これまで見てきたとおり,制度の実施主体は国,都道府県,指定都市,市町村,労働基準監督署及び厚生労働大臣に分かれている。国立障害者リハビリテーションセンターの高次脳機能障害情報・支援センターは,都道府県別の支援拠点機関の一覧を公開しており,令和8年3月現在の大阪府については,大阪府障がい者医療・リハビリテーションセンター(大阪府高次脳機能障がい相談支援センター。大阪市住吉区大領3丁目2番36号,電話06-6692-5262)及び堺市立健康福祉プラザ生活リハビリテーションセンター(指定管理者は社会福祉法人堺市社会福祉事業団。堺市堺区旭ヶ丘中町4丁3番1号,電話072-275-5019)の2機関が掲載されている。指定都市である大阪市を実施主体とする機関は,同一覧には掲載されていない。

実施要綱によれば,センターの業務には,相談支援及び情報提供のほか,診断・評価,適切なリハビリテーション及び福祉サービス等の提供並びに情報提供という専門的な支援,関係施設・関係機関等の職員,当事者及びその家族等に対する研修,並びに普及啓発活動及び地域における実態及びニーズの把握が含まれる。相談の対象は本人に限られず,家族その他の関係者及び関係機関も含まれる。都道府県等は,センターから業務の実施状況等について少なくとも年1回の報告を聴取し,業務内容について定期的に評価を行い,必要に応じて改善を促すなど,適切な運営の確保に努めるものとされている。

2 期間に関する制約の整理

制度ごとに期間の定めがあり,遅れると回復できないものがある。主なものを挙げると,①障害認定日は初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内に傷病が治った場合はその日)である(国民年金法30条1項,厚生年金保険法47条1項),②障害年金の支分権は支払期の到来時から時効が進行し,裁定を受ける前であっても進行する(最高裁判所第三小法廷平成29年10月17日判決),③精神障害者保健福祉手帳は2年ごとに都道府県知事の認定を受ける必要がある(精神保健福祉法45条4項),④高次脳機能障害者支援センターの指定については,旧支援拠点機関を指定する予定であるがやむを得ない事情により直ちに指定することが困難な場合について,令和8年度内に指定することを前提とする取扱いが示されている,⑤支援法附則2項により,国は施行後3年を目途として施行の状況について検討を加えるものとされている,となる。

このうち実務上最も影響が大きいのは②であり,発症又は受傷から年月が経過してから相談に至る事案では,遡及請求の可否を検討する前に,まず時効によって失われる範囲を確定する必要がある。高次脳機能障害は外形から判断しにくく,本人が自らの障害を認識しにくいという特性があるため,制度の存在に気付くまでに時間がかかりやすい。厚生労働省が公表した支援法の概要も,この障害が外形上判断しづらくその特性の理解も進んでいない等の理由で,患者と家族が適切な支援を受けることができず日常生活や社会生活に困難を抱えているとの指摘があることを,立法の理由として挙げている。

出典1 法令

①高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)2条・3条・6条・11条・13条・15条・17条・19条・20条・21条・22条・23条・24条・25条・29条・31条・附則(e-Gov法令検索)
②高次脳機能障害者支援法施行令(令和8年政令第60号)1条・2条(e-Gov法令検索)
③精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)45条(e-Gov法令検索)
④障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)5条12項・13項・14項・15項・18項・21項・25項・27項・28項,77条1項(e-Gov法令検索)
⑤障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)36条の2・36条の3・36条の4・37条2項(e-Gov法令検索)
⑥障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)7条・8条(e-Gov法令検索)
⑦障害者基本法(昭和45年法律第84号)2条(e-Gov法令検索)
⑧発達障害者支援法(平成16年法律第167号)2条1項(e-Gov法令検索)
⑨国民年金法(昭和34年法律第141号)30条(e-Gov法令検索)
⑩厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)36条・47条(e-Gov法令検索)
⑪労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)15条(e-Gov法令検索)
⑫介護保険法(平成9年法律第123号)5条の2第1項・7条3項2号・27条1項(e-Gov法令検索)
⑬介護保険法施行令(平成10年政令第412号)2条(e-Gov法令検索)
⑭道路交通法(昭和35年法律第105号)89条1項・101条1項・101条の5・101条の6・102条4項・103条1項・117条の4第1項(e-Gov法令検索)
⑮道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)33条の2の3・38条の2(e-Gov法令検索)
⑯身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)15条(e-Gov法令検索)

2 行政通知

①厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「「高次脳機能障害者支援法」の公布について(通知)」(障発1224第1号,令和7年12月24日)(厚生労働省)
②厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「高次脳機能障害者支援事業の実施について」(障発0407第19号,令和8年4月7日)及び別紙1「高次脳機能障害者支援事業実施要綱」(厚生労働省)
③厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長「高次脳機能障害者支援法の施行に伴う留意事項について」(障精発0415第1号,令和8年4月15日)(厚生労働省)
④厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長・精神・障害保健課長「高次脳機能障害支援養成研修の実施について」(障障発0407第1号・障精発0407第3号,令和8年4月7日)及び別添「高次脳機能障害支援養成研修実施要綱」(厚生労働省)
⑤厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長「高次脳機能障害者への退院支援に関する診療報酬の改定等について」(障精発0508第1号,令和8年5月8日)(厚生労働省)
⑥厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「「地域生活支援事業等の実施について」の一部改正について」(障発0407第31号,令和8年4月7日)(厚生労働省)
⑦厚生労働省労働基準局長「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」(基発第0808002号,平成15年8月8日)(厚生労働省法令等データベースサービス)
⑧厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準についての一部改正について」(障発0303第1号,平成23年3月3日。平成7年9月12日健医発第1133号の一部改正)(国立障害者リハビリテーションセンター)

3 認定基準・診断基準

①日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第3第1章第8節「精神の障害」(令和4年4月1日改正)56頁~62頁(日本年金機構)
②厚生労働省年金局「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月)1頁~10頁(厚生労働省)
③「高次脳機能障害診断基準ガイドライン」(平成16年度作成版)1頁~6頁(国立障害者リハビリテーションセンター)
④「令和5年版 高次脳機能障害 診断基準 ガイドライン」1頁~9頁(日本高次脳機能障害学会)

4 裁判例

①最高裁判所第一小法廷令和7年7月17日判決(令和5年(行ヒ)第276号,裁判所ウェブサイト)
②最高裁判所第三小法廷平成29年10月17日判決(平成29年(行ヒ)第44号,民集71巻8号1501頁,裁判所ウェブサイト)
③東京地方裁判所平成30年10月12日判決(平成28年(行ウ)第369号,裁判所ウェブサイト)

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名義株と死亡・相続―真の株主と名義人の死亡を分ける(AI作成)

第1 死亡したのが誰かで相続の結論が変わる

1 本記事が扱う範囲
2 三つの場面の基本的な違い

第2 各死亡時点の真の株主を先に確定する

1 株主名簿だけで相続財産を決めない
2 死亡日ごとに帰属が変わっていないかを確認する
3 会社法上の帰属と相続税上の帰属を同じ資料で検証する

第3 真の株主が死亡した場合

1 名義が別人でも株式は真の株主の相続財産となる
2 遺産分割までは共同相続人の準共有となる
3 株主名簿が真の株主名義か別人名義かで手続が分かれる
4 会社法174条は株式を承継した相続人に適用される

第4 名義人だけが死亡した場合

1 株式は名義人の相続財産に入らない
2 名義人の相続人は名義書換えの共同申請者となる
3 相続人の協力が得られない場合は判決による例外を検討する
4 会社法174条を名義人の相続人へ当然には使えない

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子供名義の株は誰のものか―親の出資・贈与・管理・配当・議決権(AI作成)

第1 子供名義の株式は取得経路によって帰属が分かれる

1 本記事が扱う範囲
2 三つの取得経路
3 名義・出資・管理の一要素だけでは決まらない

第2 親が資金を出した場合

1 親が自己のために子の名を借りた場合
2 現金を子に贈与して買い付けた場合
3 親の既存株式を贈与した場合

第3 未成年者への贈与と親権者の受諾

1 親権者は子を代理して贈与を受諾できる
2 単純贈与と利益相反行為を区別する
3 令和8年4月1日以後の共同親権

第4 親が管理していても親の株式とは限らない

1 未成年中の管理は子の所有と両立する
2 成年後は引渡しと管理計算が必要になる
3 成年後の継続支配は反対証拠になり得る

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精神科病院退院者の環境調整の諸制度――退院後生活環境相談員,地域移行支援,居住支援法人及び費用負担(AI作成)

第1 この記事が扱う範囲

1 検討の対象と時点
2 隣接する論点との切り分け3 使える制度の一覧

第2 精神科病院に課されている退院促進の措置

1 退院後生活環境相談員
2 地域援助事業者の紹介
3 医療保護入院者退院支援委員会
4 入院者訪問支援事業

第3 都道府県及び市町村が負う相談援助と調整

1 相談援助の義務と精神保健福祉センター
2 障害福祉サービスの利用のあっせん,調整及び要請

第4 障害者総合支援法による地域移行の給付

1 地域移行支援及び地域定着支援
2 共同生活援助,自立生活援助及び体験の機会
3 相談支援事業者,基幹相談支援センター及び協議会
4 地域活動支援センター及び成年後見制度利用支援事業

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名義株は違法か―会社法・相続税・重加算税・上場規則違反を区別する(AI作成)

第1 名義株が直ちに違法になるわけではない

1 この記事が扱う問い
2 「違法」を七つの効果に分ける

第2 会社法上の株主帰属と株主名簿

1 承諾を得た借名引受けでは実際の引受人が株主になり得る
2 株主名簿への記載と株式の帰属は同じ問題ではない

第3 相続税は株式の実質的な帰属から判定する

1 被相続人の財産であれば相続税の課税対象になる
2 名義株であることは重加算税の十分条件ではない

第4 重加算税は隠蔽又は仮装がある場合に限られる

1 税率は35%又は40%を基本とする
2 他人名義という状態を認識して申告しない行為が問題になる
3 名義株の申告漏れでも重加算税が取り消された裁決がある
4 名義状態を利用したとして重加算税が認められた例もある
5 相続税法上の刑事罰は別の要件である

第5 上場会社では大量保有報告と上場規則を分ける

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