目次第1 本記事の対象と基準日第2 金宝堂に対する措置命令(令和8年9月18日)1 命令の対象となった表示と実際の価格2 CM画面の注記と命令の内容第3 葬儀業者に対する景品表示法の処分の系譜1 平成29年から令和8年までの7件2 処分例に共通する表示の型第4 打消し表示についての消費者庁の考え方1 動画広告の打消し表示2 追加料金型の打消し表示第5 国民生活センターの相談統計と事例1 相談件数と相談内容2 公表された3つの事例3 国民生活センターの助言第6 相談を受けたときの法的構成1 クーリング・オフは原則として使えない2 消費者契約法による取消し3 キャンセル料の一部無効4 景品表示法違反と被害者個人の請求第7 葬儀社と遺族の紛争に関する裁判例1 契約の当事者は誰か2 契約前の搬送と困惑による取消し3 生活保護葬での意向確認と慰謝料4 葬儀費用の最終的な負担者第8 Googleマップの口コミの見方第9 互助会の解約と結婚式場のキャンセル料との違い第10 実務のチェックリスト1 葬儀社を決める前2 契約後にトラブルになったとき第11 関連記事第12 出典1 法令・告示2 裁判例3 行政処分(消費者庁の報道発表)4 所管行政機関の資料・Q&A5 統計・相談事例
第1 本記事の対象と基準日
本記事は,テレビCM,インターネット広告,チラシ等に表示された低価格の葬儀プランを見て葬儀社に依頼したところ,見積額や請求額が広告の価格を大きく上回ったという場面を扱う。
想定する読者は,葬儀の見積もりや請求に納得できない遺族と,死後事務や相続の相談の中でこの種の相談を受ける弁護士である。
まず,令和8年9月18日に消費者庁が株式会社金宝堂に対して行った措置命令と,平成29年以降に葬儀業者に対して行われた景品表示法の処分例を,消費者庁の公表資料に基づいて整理する。
次に,国民生活センターが公表した相談統計と事例を確認した上で,相談を受けたときに検討する法律(特定商取引法,消費者契約法,民法及び景品表示法)と,葬儀社と遺族の間の裁判例を取り上げる。
本記事の基準日は令和8年9月20日である。
条文はe-Gov法令検索で基準日時点の現行条文を確認した。
個別の事業者名は,消費者庁が公表した処分の対象となった事業者に限って記載する。
取り上げる下級審の裁判例は,いずれも個別の事案についての判断であり,同種の事案で同じ結論になることを保証するものではない。
第2 金宝堂に対する措置命令(令和8年9月18日)
1 命令の対象となった表示と実際の価格
(1) テレビCMの表示
消費者庁は,令和8年9月18日,株式会社金宝堂(東京都渋谷区)に対し,景品表示法7条1項に基づく措置命令(消表対第807号)を行った。
違反とされたのは,価格その他の取引条件についての有利誤認表示を禁止する同法5条2号である。
対象は,「小さな森の家」という屋号で提供する「貸切ホールを用いる家族葬に係る葬儀サービス」であり,表示媒体は地上波放送のテレビCMである。
表示期間は,令和7年3月1日から同年5月31日までのうちの一部の期間である。
CMでは,花飾りを背景に,「1日1組限定」との音声と共に「1日1組 貸切ホール」との文字,「選べるホールがこんなに」との音声と共に「えらべるホールがこんなに」との文字が映され,続いて「お得なプランがこの価格から」との音声と共に「家族葬 10.45万円~ (税込)」との文字が映された。
消費者庁は,これにより,あたかも貸切ホールを用いる家族葬が「最低料金として10万4500円で提供されるかのように表示していた」と認定した。
(2) 実際の最低額と報道の「約3倍」
これに対し,実際には,貸切ホールを用いる家族葬の提供を受けるには,「僅かな場合を除き,30万8000円以上の費用が必要であった」と認定されている。
一部の報道はこれを「約3倍」と伝えたが,30万8000円を10万4500円で割ると約2.95倍であり,「約3倍」は丸めた表現である。
消費者庁の発表資料及び命令書には「3倍」という語はない。
2 CM画面の注記と命令の内容
(1) 別紙の画像に写る注記
消費者庁の発表資料の別紙には,CMの画面が画像で添付されている(PDF7頁)。
その画像を見ると,「家族葬 10.45万円~」の画面の下部に,小さな文字で,「会員割引適用価格」,「こちらの料金は火葬式プランになります。」,「10.45万円のプランはお付き添い面会はできません。」,「火葬料金は別途お客様負担になります。」,「事前に資料請求と会員登録が必要です。」,「資料請求・会員登録・年会費無料」という注記が表示されている。
この読み取りは,本記事が別紙の画像から行ったものであり,消費者庁が命令書の中で認定した事実ではない。
命令書の本文は注記に言及しておらず,注記が付されていても,表示全体として5条2号に当たると判断されたものと考えられる。
画像の注記によれば,10.45万円は火葬式プランの会員割引価格であり,CMが音声と映像で強調していた「貸切ホール」の家族葬の価格ではなかったと読める。
(続きを読む...)格安葬儀の広告と葬儀社とのトラブル―景品表示法の処分例,クーリング・オフの可否,消費者契約法及び裁判例(AI作成)