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数量指示売買で実測面積が超過したとき―代金増額,清算合意,錯誤及び不当利得(AI作成)

第1 結論

土地の売買契約に「実測」と単価の記載があり,後の測量で面積が契約書記載より多いことが判明しても,売主が当然に超過分の代金増額を請求できるわけではない。最高裁平成13年11月27日第三小法廷判決は,改正前民法565条を類推適用して売主の増額請求権を認めることを否定した。

もっとも,同判決は,超過分についても単価に従って支払う旨の合意があれば,その合意に基づく請求の余地まで否定していない。実務上の中心は,法定責任の対称的な類推ではなく,①売買対象の特定,②表示面積と実測面積の意味,③単価と総額の関係,④過不足の清算条項,⑤契約締結過程における説明及び⑥代金債権の帰属を契約解釈で確定することである。

第2 最高裁平成13年11月27日判決

1 事案

最高裁平成13年11月27日第三小法廷判決(平成12年(受)第375号,民集55巻6号1380頁)の売買契約書には,実測面積による趣旨,平方メートル当たりの単価及び売買代金総額が記載されていた。添付図面の計算には誤りがあり,契約書上の面積339・81平方メートルに対し,実際の面積は399・67平方メートルであった。

原審は,数量が不足した場合の買主の権利を定めた改正前民法565条を超過の場合に類推し,売主側の代金増額請求を認めた。最高裁はこの法的構成を採らなかった。

2 旧民法565条の類推による増額請求はできない

改正前民法565条は,数量を指示して売買した物に不足がある場合等に,善意の買主が代金減額等を求める場面を規定していた。最高裁は,この規定を数量超過の場合に類推適用し,売主に当然の代金増額請求権を認めることはできないとした。

不足の場合に買主を保護する制度があるからといって,超過の場合に売主へ対称的な請求権を作ることにはならない。類推適用では,外形的な類似だけでなく,規定の趣旨,保護対象及び相手方へ生じる不利益を確認する必要がある。

3 超過分を支払う合意は別に検討する

最高裁は,売主と買主との間に,実測面積が契約書記載を上回る場合にも単価に従って代金を増額する合意があったかを審理すべきであるとして事件を差し戻した。したがって,結論は「超過分は常に無償」でも「単価が書いてあれば常に増額」でもない。

また,請求権を取得した者が誰かという問題も別である。売主から第三者へ債権が移転したと主張する場合には,増額代金債権の存在,譲渡又は保険代位等による取得及び第三者対抗要件を分けて立証する。

第3 現行民法との関係

平成13年判決は,平成29年改正前の民法565条についての判決である。現行民法562条は,引き渡された目的物が種類,品質又は数量に関して契約内容に適合しない場合の買主の追完請求権を定め,563条は代金減額請求権を定める。現行565条は,移転した権利が契約内容に適合しない場合に562条から564条までを準用する規定であり,旧565条とは内容が異なる。

令和2年4月1日より前に締結された売買契約には,民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)の経過措置により旧法が適用されることがある。契約締結日を最初に確認する必要がある。

現行法の下でも,目的物が契約内容に適合するかは,契約の文言,契約締結過程,取引慣行その他の事情から定まる。平成13年判決は,旧565条を直接適用する先例としてではなく,法定責任を反対方向へ安易に類推せず,超過分清算の合意を契約解釈で確定するという方法上の先例として参照する。

第4 契約書と証拠の確認事項

確認項目主な資料着眼点
売買対象登記,公図,地積測量図,現地標識一定の土地全部か,特定面積部分か
面積表示契約書,重要事項説明書,図面公簿売買か実測売買か,数値は概数か確定値か
価格の定め方単価,総額,見積書,交渉記録単価は計算根拠か,最終的な総額合意か
清算条項過不足清算条項,免責条項不足・超過の双方か,一方だけか,許容差はあるか
測量と認識測量報告,メール,仲介記録誰がいつ誤差を知り,誰が計算責任を負ったか
請求権の帰属債権譲渡,保険,代位資料請求権の存在と取得原因を分ける

第5 錯誤・不当利得等の主張を分ける

錯誤について,現行民法95条は,法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤を理由とする意思表示の取消しを定める。動機・基礎事情の錯誤では,その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたことが必要であり,重大な過失や第三者保護も問題となる。面積の誤差だけで当然に取消しとなるわけではない。

不当利得について,民法703条は「法律上の原因なく」利益を受けたことを要件とする。売買契約が土地全部を一定総額で移転する内容であれば,買主が実測面積の超過分を取得したことにも契約という法律上の原因がある可能性がある。契約解釈を飛ばして,超過面積×単価を直ちに不当利得とすることはできない。

損害賠償を主張する場合には,誰の説明・測量・計算上の義務違反か,契約内容どおりの履行との関係,因果関係及び損害額を特定する。代金増額請求と損害賠償請求は,要件も損害の捉え方も同じではない。

第6 訴訟実務のチェックリスト

①契約締結日と適用法を確認する。
②対象土地を筆・境界・図面で特定する。
③「公簿」「実測」「単価」「総額」「清算」の各文言を抜き出す。
④契約締結前後の見積書,メール,仲介記録及び測量資料を時系列化する。
⑤不足と超過の双方を想定した清算合意があるかを確認する。
⑥主位的・予備的に,契約上の代金,錯誤取消し,不当利得及び損害賠償の各要件事実を分ける。
⑦請求権が第三者へ移転したときは,存在,取得原因及び対抗要件を分ける。
⑧差戻し判決であるため,差戻審の最終結論を確認しない限り,売主又は買主の最終勝敗を断定しない。

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第8 出典・確認範囲

①最高裁平成13年11月27日第三小法廷判決全文(平成12年(受)第375号,民集55巻6号1380頁)【裁判所公式全文確認済み】
②民法95条,562条,563条,565条,703条及び704条【e-Gov現行条文確認済み】
③矢尾渉「最高裁民事破棄判決等の実情―平成13年度(5・完)」判例時報1789号【判例時報論文本文確認済み】

判例秘書は今回照会しておらず,照会0件,ヒット不明,本文確認0件である。差戻審の判決全文及び最終的な当事者間の解決は確認していないため,それらは【要確認】である。