目次
第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象2 結論第2 制度の概要1 根拠となる省令と施行日2 国籍等の意味3 制度の目的4 検索用情報の申出との関係第3 誰が申し出るか1 対象となる登記2 自然人に限られる3 国外に住所がある人4 申請人でない人第4 申請書の書き方1 記載例2 書いてはならない記載3 書かなかった場合第5 国籍等を証する情報1 原則2 日本国籍の人3 住民票コードによる省略4 外国籍の人5 相続登記の場合第6 既に登記名義人である人の単独申出1 単独申出2 添付情報と却下3 登記官による職権の記録第7 施行の前後の注意点1 申請日で様式が変わる2 システムの改修3 登記事項証明書には表示されない第8 関連記事第9 出典1 法令2 法務省・法務局の資料
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象
本記事は,令和8年10月5日から,所有権の保存又は移転の登記等を申請する際に「国籍等」を申し出ることになった制度を扱う。
売買,贈与,相続等で不動産の所有権の登記名義人になる人が対象であり,日本国籍の人も含まれる。
調査基準日は令和8年10月5日である。
改正省令,法務省民事局長通達,法務省のウェブサイト及び法務局の記載例は原本を取得して確認し,条文はe-Gov法令検索で確認した。
国籍等の申出は,令和7年4月21日に始まった「検索用情報」の申出の項目が一つ増えたものである。
検索用情報の申出と,それを使った職権による住所等変更登記(スマート変更登記)の全体像は,令和8年4月から義務化された不動産の住所等変更登記――期限,過料及びスマート変更登記で説明している。
2 結論
①令和8年10月5日以後に所有権の保存又は移転の登記等を申請するときは,所有権の登記名義人となる申請人について,氏名,氏名の振り仮名,住所,生年月日及び電子メールアドレスに加えて,国籍等を申請書に書く。
②国籍等とは,国籍の属する国,又は台湾若しくはヨルダン川西岸地区及びガザ地区をいう。
③国外に住所がある人も,国籍等を含めて申し出る必要がある。
④国籍等を証する情報として,日本国籍の人は,本籍地が記載された住民票の写し又は戸籍の附票の写し等を提供する。
⑤日本に住所がある日本国籍の人が住所を証する情報として住民票コードを提供し,登記官が住基ネットで日本国籍を確認できたときは,国籍等を証する情報は要らない。
⑥相続登記では,法務局の記載例が,日本国籍の相続人については相続人の戸籍の証明書で足りるとしている。
⑦申請書に「日本以外」「国籍不明」と書くことはできず,国籍等を書かなければ補正を求められる。
⑧国籍等は登記事項証明書には表示されず,登記所の内部情報として管理される。
売買では,通常は新たに所有者となる個人の買主について申し出る。売主であるというだけで,同じ申出の対象となるわけではない。法人はこの自然人向けの国籍等申出の対象ではなく,外国法人の設立準拠法国等とは別の手続である。海外居住者も申出の対象だが,スマート変更登記の対象にはならない。
メールアドレスは本人だけが使用するものを記載し,代理人や家族のメールアドレスは記載しない。本人のメールアドレスがない場合又は提供を希望しない場合は「なし」と記載する(法務省の申出案内)。
国籍情報の公開範囲は不動産登記で国籍は公開されるか―登記事項証明書・申請書閲覧と情報管理,記載漏れの補正と既存所有者の対応は不動産登記で国籍を申し出ないとどうなるか―補正・却下と既存所有者の対応で詳しく説明している。
第2 制度の概要
1 根拠となる省令と施行日
根拠は,不動産登記規則の一部を改正する省令(令和8年法務省令第23号)である。
この省令は令和8年3月31日に公布され,附則で令和8年10月5日から施行するとされている。
あわせて,法務省民事局長は,令和8年9月4日付け法務省民二第872号通達「不動産登記規則の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」で,登記官の取扱いを示している。
以下,この通達を「令和8年通達」という。
主な改正点は,次のとおりである。
①検索用情報管理ファイルに記録する事項に国籍等を加えた(改正後の不動産登記規則158条の38第1項6号)。