第1 社会保険の適用1 この記事で扱う社会保険2 法人と個人事業所3 通常の労働者と短時間労働者4 法律事務所と弁護士国民健康保険第2 資格取得・資格喪失と標準報酬1 事業所と従業員の届出2 標準報酬月額の定時決定と随時改定3 賞与と育児休業等第3 令和8年度の保険料1 大阪支部の健康保険料等2 厚生年金保険料3 給与からの控除と納付第4 健康保険1 マイナ保険証と資格確認書2 傷病手当金3 被扶養者4 退職後の医療保険5 75歳到達時の取扱い第5 厚生年金と国民年金1 70歳到達後の届出2 在職老齢年金3 令和8年度の国民年金保険料4 20歳前傷病による障害基礎年金第6 介護保険1 第1号被保険者と第2号被保険者第7 出典・参考資料1 法令2 行政資料3 裁判例4 文献
第1 社会保険の適用
1 この記事で扱う社会保険
「社会保険」は広い意味では労災保険及び雇用保険を含むことがあるが,本記事では,事業所と従業員に関係する健康保険,厚生年金保険及び介護保険を中心に扱う。労災保険及び雇用保険については,労働保険の加入・保険料・労災給付・雇用保険の手続で説明している。
健康保険は業務外の疾病,負傷,出産及び死亡に関する給付を行い,厚生年金保険は老齢,障害及び死亡に関する給付を行う。業務上又は通勤による傷病は原則として労災保険の対象であり,健康保険と労災保険を傷病の原因に応じて区別する必要がある。
2 法人と個人事業所
国,地方公共団体又は法人の事業所で,常時従業員を使用するものは,業種及び従業員数を問わず健康保険及び厚生年金保険の強制適用事業所となる。したがって,法人は,代表者1人だけの事業所であっても,その代表者に労務の対償として報酬を支払う場合,原則として適用を受ける。
個人事業所は,現在,常時5人以上の従業員を使用する法定17業種の事業所が原則として強制適用となる。弁護士,司法書士,社会保険労務士,税理士等が行う法律又は会計に係る業務は,令和4年10月から法定業種に追加された。
令和11年10月からは,常時5人以上を使用する個人事業所について業種要件が撤廃される。ただし,施行時に強制適用事業所でない既存の個人事業所には当分の間適用しない経過措置があるため,「令和11年10月からすべての既存個人事業所が直ちに加入する」と理解するのは正確でない。
強制適用の対象でない個人事業所も,従業員の半数以上の同意を得て厚生労働大臣の認可を受ければ,任意適用事業所となることができる。適用事業所となった後は,加入を希望しない従業員だけを制度から外すことはできない。
3 通常の労働者と短時間労働者
適用事業所に常用的に使用される者は,原則として健康保険の被保険者となり,そのうち70歳未満の者は厚生年金保険の被保険者にもなる。1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が同一事業所の通常の労働者の4分の3以上である者は,雇用形態又は名称にかかわらず加入対象となる。
4分の3基準を満たさない短時間労働者も,令和8年10月1日以後は,厚生年金保険の被保険者数が常時51人以上である企業等の特定適用事業所において,①週の所定労働時間が20時間以上,②2か月を超えて使用される見込みがある,③学生でないという要件を満たせば加入対象となる。
任意特定適用事業所及び国・地方公共団体の事業所にも別の適用関係があり,学生には法定の例外がある。
短時間労働者の月額8万8000円の所定内賃金要件は,令和8年10月1日に原則として撤廃された。
ただし,最低賃金の減額特例許可を受け,月額8万8000円未満である者は原則として加入対象外であるが,本人が加入を希望する場合は事業主の同意なく加入できる。
詳細は日本年金機構の令和8年10月1日からの加入要件の案内を確認されたい。
企業規模要件は,令和9年10月に36人以上,令和11年10月に21人以上,令和14年10月に11人以上へ段階的に縮小され,令和17年10月に撤廃される予定である。
既に撤廃された賃金要件と,将来の企業規模の変更を区別して加入判定を行う必要がある。
適用事業所であることと,そこで働く個々人が被保険者資格を取得することは別の問題である。被保険者資格は,①契約名ではなく,事業所との間に実態上の使用関係又は常用的使用関係があるかを確認し,②これを満たす者について,4分の3基準又は短時間労働者の法定要件を検討するという二段階で判断する必要がある。
勤務先の適用状況と本人の資格を確認する順序,店舗名と法人名が違う場合及び全喪・適用拡大の表示の読み方は,厚生年金・健康保険の適用事業所検索と労働保険適用事業場検索-活用方法と確認の限界で説明する。事業所の検索表示だけで個々人の加入を確定しない点も整理している。
所定労働時間,所定労働日数又は月額賃金を数値要件に合わせただけでは,第一段階の使用関係を代替できない。反対に,勤務時間が短いことだけで資格が当然に否定されるわけでもなく,実際の指揮命令,勤務管理,作業,成果物,報酬を受ける権利及び継続性を総合して判断する。
厚生労働省令和8年9月14日通知は,勤務時間が短い正規型労働者について,報酬の対価性と経常的な労務の双方を実態審査する。詳細は「「国保逃れ」と社会保険料削減ビジネス―名目的役員・短時間勤務の被保険者資格と資格喪失後の対応(AI作成)」を参照されたい。
4 法律事務所と弁護士国民健康保険
常時5人以上を使用する個人経営の法律事務所は,令和4年10月以降,原則として健康保険及び厚生年金保険の強制適用事業所である。弁護士法人は,従業員数にかかわらず法人事業所として強制適用を受ける。
弁護士国民健康保険組合の組合員等が所定の要件を満たす場合,健康保険の適用除外承認を受け,健康保険には加入せず,厚生年金保険だけに加入する取扱いを選択できることがある。弁護士国保への加入だけで健康保険の適用が当然に除外されるものではなく,組合の資格要件を確認した上で,年金事務所を通じた適用除外承認の手続が必要である。
法律事務所の形態及び本人の立場から加入先を確認する順序は,弁護士・法律事務所の社会保険を参照されたい。
具体的な保険料・家族・休業時の給付は,弁護士国保と協会けんぽの違い,法人化や採用時の承認申請は,弁護士国保を続けるための健康保険適用除外承認で別に説明する。
第2 資格取得・資格喪失と標準報酬
(続きを読む...)社会保険の加入・保険料・資格取得喪失と士業の適用(AIリライト)