天皇の生前退位に関する国会答弁

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天皇の生前退位に関する国会答弁は以下のとおりです。

横畠裕介内閣法制局長官(28期の検事です。)の,平成29年6月1日の衆議院議院運営委員会における答弁
 天皇がその意思に基づいて退位するということについては、憲法との関係において、まず、憲法第一条が規定する象徴天皇制のもとでふさわしいものであるかどうか。第二点として、御指摘の憲法第四条第一項が「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と規定していることと抵触しないかどうか。また、三つ目として、憲法上の制度であります天皇、皇室の安定的な維持という観点から問題を生ずることがないのかといった問題があると考えております。
 すなわち、天皇の退位という行為が憲法に規定されている国事に関する行為に当たらないことは明らかでありますことから、天皇の交代という国家としての重要事項が天皇の意思によって行われるものとした場合、これを国政に関する権能の行使に当たるものではないと言えないのではないかという問題、また、仮に天皇がその意思によって退位することができるとした場合、将来においてでありますが、いわゆる退位の強制、例えば天皇に対して退位を迫るような行為が行われることや、いわゆる恣意的な退位、例えば政治的な意図を含んだ退位あるいはその表明が行われるといったことが生じないことを制度として担保することができるのかといった諸問題があると考えられます。

◯羽毛田信吾宮内庁次長の,平成13年11月21日の参議院共生社会に関する調査会における答弁
 現行の皇室典範が御指摘のように天皇の意思によります退位の制度を認めていないということはそのとおりでございます。
 そういうふうになっておりますところのゆえんのものは、一つには、退位を認めるということが、歴史上いろいろ見られましたようないわゆる上皇でありますとか法皇的な存在というもののある種弊害を生ずるというおそれがありはしないかということ、それから、必ずしも天皇の自由意思に基づかない退位ということの強制があり得るということです。
 いろいろ政治的な思惑の中でそういうようなことが起こるというようなことがありはしないかということ、あるいは天皇が恣意的に退位をされるというようなことになりはしないかというようなことを懸念をいたしまして、そういったことを挙げて、天皇の地位を安定させるということが望ましいという観点から退位の制度を認めないということに現行法なっておるわけでございます。
 そういった皇室典範制度の制定当時の経緯というものをやはり踏まえていかなければならないと思いますし、さらに今、先生もちょっとお挙げになりましたけれども、天皇に心身の疾患あるいは事故があるというような場合につきましては、現在も国事行為の臨時代行でありますとかあるいは摂政の制度が設けられておりますので、そういった事態の起きました場合にはそういった対応をする制度もあるということを考えますと、現在の段階で退位制度を設けるというようなことについては私ども考えていないところでございます。

◯宮尾盤宮内庁次長の,平成4年4月7日の参議院内閣委員会における答弁
 これ[注:天皇の生前退位]も現在の皇室典範制定当時いろいろな考え方があったようでございますけれども、その制定当時、退位を認めない方がいいではないか、こういうことで、制度づくりをしたときの考え方といたしましては三つほど大きな理由があるわけでございます。
 一つは、退位ということを認めますと、これは日本の歴史上いろいろなことがあったわけでございますが、例えば上皇とか法皇というような存在が出てまいりましていろいろな弊害を生ずるおそれがあるということが第一点。
 それから第二点目は、必ずしも天皇の自由意思に基づかない退位の強制というようなことが場合によったらあり得る可能性があるということ。
 それから第三点目は、天皇が恣意的に退位をなさるというのも、象徴たる天皇、現在の象徴天皇、こういう立場から考えまして、そういう恣意的な退位というものはいかがなものであろうかということが考えられるということ、これが第三番目の点。こういったことなどが挙げられておりまして、天皇の地位を安定させることが望ましいという見地から、退位の制度は認めないということにされたというふうに承知をいたしております。
 以上でございます。

◯宮尾盤宮内庁次長の,平成3年3月11日の衆議院予算委員会における答弁
1 今御質問の中にあったようなお考え方というものも一つの考え方であろうかと思うのでございますが、ただ、現在の皇室典範にはそういう考え方というものは全く導入されていないわけでございます。現在の皇室典範の制定当時にも、そういうようなことを含めた制度の検討というか考え方がいろいろあったようでございますが、それは現在の典範には取り込まれていない。
 その理由といたしましては、三つぐらいの考え方があったようでございます。第一点は、生前の退位でございますが、退位をするということについては、日本の歴史などを振り返ってみましても明らかなところでありますけれども、例えば上皇とか法皇というような形の存在があったわけでございまして、そういうものが天皇制というものに対していろいろな弊害を生じた過去の歴史的な経験というものが一つあるわけでございます。第二点は、この退位という制度を仮に認めたといたしますと、天皇の自由意思に基づかないでの退位ということがあり得ては非常に困ることになるわけでございます。そういうことの可能性というものを運用によっては残すという問題が出てくる。第三点は、今度は天皇御自身が理由なしに恣意的な形でおやめになるというようなことが出てきては困るということがあるわけでございます。
 そういういろいろな問題がありまして、そういう制度をつくることはいかがなものであろうかということで、現在の皇室典範ではそういう制度を採用していない、退位の制度を認めていない、こういうふうにしてあるわけでございます。
 そしてさらに、仮に天皇陛下に心身の疾患あるいは事故というようなことがある場合には、現在の皇室典範では、現在の制度といたしましては、国事行為の臨時代行に関する法律の制度がありますし、また、典範の中に摂政という制度も認められておるわけでございますから、臨時代行あるいは摂政という制度を活用することによって退位の制度というものを考える必要はないではないかというのが今私どもの基本的な考え方でございます。
2 まず、摂政の規定ですが、この第三条の方はこれは直接摂政の問題では……(沢田分科員「順序ですよね」と呼ぶ)ええ。これは第三条の方は皇位継承順位ですから特にあれはありません、十六条の関係でございますね。
 それで、ここには身体の重患または重大な事故というふうに摂政を置く場合の規定、それから御成年に達しないとき、こういうことがありますが、今お話の中にありましたように、昭和天皇は大変御高齢で天皇としてのお務めをなさったわけでございますが、御病気になる前は、確かに年齢は八十を超えたりいたしまして相当な御高齢に達しておられましたけれども、そういう点から私どもとしましてはいわゆる御負担の軽減ということを実際上は図りながら、しかし天皇としてのお務めというものは立派にお果たしになれたわけでございます。ですから、何歳以上だからそれは隠居をしなければならぬというような考え方をとる必要はないのであって、やはりその年齢にかかわらず、その地位としてのお務めが十分果たせられるならばこれは全く問題がない、ただ御負担軽減というようなものは図っていきましょう、こういうのが私どもの考え方であります。
 ただ現実に、御病気になられた昭和六十二年、それから手術をされたとき、それから昭和六十三年、病いが重くなられたこのときには、これはやはり御公務をお果たしをすることがなかなか困難であったわけでございますから臨時代行の制度を置きまして、これによって天皇としてのお務めを当時の皇太子さんにお果たしいただいた、こういうことになっておるわけでございます。ですから、こういう制度がありますから、高齢化、お年を召したからそういう退位の制度を考えたらどうかという点については、私どもは今全く必要がないのではないかと考えておるわけでございます。

*1 令和の代替わりに際しての天皇の生前退位に関する基本資料は以下のとおりです。
① 象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば(ビデオ)(平成28年8月8日付)
② 天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議(平成28年10月17日初会合)最終報告(平成29年4月21日付)
③  天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成29年6月16日法律第63号),及び天皇の退位等に関する皇室典範特例法施行令(平成30年3月9日政令第44号) 
④ 天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典準備委員会(平成30年1月9日初会合)基本方針(平成30年3月30日付)
⑤ 天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典委員会(平成30年10月12日初会合)の各種決定
*2 天皇の生前退位の日は,天皇の退位等に関する皇室典範特例法の施行期日を定める政令(平成29年12月13日政令第302号)によって平成31年4月30日とされました。
*3 「令和への改元に関する閣議書及び内閣総理大臣談話」も参照してください。

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