第1 閉会中解散は可能であることに関する内閣法制局長官の答弁
第2 行政府としての憲法の解釈は、国会及び裁判所を拘束するものではないこと
第3 関連記事その他
・ 真田秀夫内閣法制局長官は,昭和54年3月19日の衆議院決算委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を行っています。)。
3 なおついでに申し上げますと、もし閉会中は国会解散ができないのだという解釈をとりますと、たとえば国会の会期の最終日なり、あるいは非常に会期の終了間近に衆議院において内閣の不信任案が可決され、または信任案が否決されるというようなことがあった場合に、憲法69条は、そういう場合には10日間、つまり内閣は10日間、総辞職をするか解散をするかどちらかの選択をしなさいという選択権を与えているわけなんで、いま申しましたように、会期の終了間近、つまり10日以内の間近に衆議院において内閣の不信任案が可決されたような場合にはもうその選択ができないというような不都合なことになりますので、それでやはり閉会中においても解散ができるのだという解釈の趣旨は、憲法69条から見てもやはり是認されてしかるべきであろうというふうに考えるわけでございます。
5分11秒より後の動画は,昭和55年5月19日の衆議院解散に関するものです。
5分13秒より後の動画は,昭和61年6月2日の衆議院解散に関するものです。
第2 行政府としての憲法の解釈は、国会及び裁判所を拘束するものではないこと
・ 参議院議員小西洋之君提出内閣の解釈変更と議院内閣制等との関係に関する質問に対する答弁書(平成27年10月6日付)には以下の記載があります。
憲法の解釈を最終的に確定する権能を有する国家機関は、憲法第八十一条によりいわゆる違憲立法審査権を与えられている最高裁判所である。他方、行政府においても、いわゆる立憲主義の原則を始め、憲法第九十九条が公務員の憲法尊重擁護義務を定めていることなども踏まえ、その権限を行使するに当たって、憲法を適正に解釈していくことは当然のことであり、このような行政府としての憲法の解釈については、第一次的には法律の執行の任に当たる行政機関が行い、最終的には、憲法第六十五条において「行政権は、内閣に属する。」と規定されているとおり、行政権の帰属主体である内閣がその責任において行うものである。行政府としての憲法の解釈は、国会及び裁判所を拘束するものではない。
その上で、憲法を始めとする法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるべきものであり、政府による憲法の解釈は、このような考え方に基づき、それぞれ論理的な追求の結果として示されてきたものであって、諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても、なお、前記のような考え方を離れて政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではないと考えている。仮に、政府において、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないと考えられる。
このようなことを前提に検討を行った結果、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないというものではないと考えられるが、政府として、御指摘のような「歴代政府の解釈に対して論理的整合性を逸脱し、法的安定性を損ねるような解釈変更」を行うことはない。
第3 関連記事その他
1 「衆議院議員初鹿明博君提出違憲状態の衆議院の解散に関する質問に対する答弁書(平成28年1月19日付)」には以下の記載があります。
御指摘の衆議院の選挙制度の抜本的な見直しについては、議会政治の根幹に関わる問題であることから、まずは、各党各会派において御議論いただくべき事柄と考えている。
2 以下の記事も参照してください。
・ 衆議院の解散は司法審査の対象とならないこと
・ 日本国憲法下の衆議院の解散一覧
・ 一票の格差是正前の解散は可能であることに関する政府答弁