◯本ブログ記事は,従前の「内閣法制局参事官経験のある裁判官」を,内閣法制局の組織及び各職を解説した内閣法制局の長官,次長,部長,総務主幹及び参事官(AI作成)との役割分担を意識してAIでリライトしたものである。参事官の任用や俸給等の一般的な制度は同記事に譲り,本記事は,裁判官という属性に着目し,内閣法制局参事官を経験した裁判官,裁判官出身の内閣法制局長官,及びこれに関連する弁護士資格の特例を整理する。
第1 内閣法制局参事官を経験した裁判官
内閣法制局の参事官は各府省からの出向者で構成され,裁判官も,検事に任命された上で法務省から出向する形で参事官に就く(第一部の参事官は具体の訴訟事件に関与しない。詳細は別稿内閣法制局の長官,次長,部長,総務主幹及び参事官参照)。以下は,プロパーの検事及び期外を除き,内閣法制局参事官を経験した裁判官を,就任の新しい順に整理したものである。
1 第一部(意見事務)参事官の経験者
- 53期 畑佳秀裁判官(令和3年8月1日~ )
- 48期 馬渡直史裁判官(平成28年8月1日~令和3年7月31日)
- 45期 菊池章裁判官(平成23年8月1日~平成28年7月31日)
- 40期 舘内比佐志裁判官(平成18年8月7日~平成23年7月31日)
- 37期 八木一洋裁判官(平成12年8月10日~平成18年8月6日)
- 33期 青柳勤裁判官(平成7年7月3日~平成12年8月9日)
- 26期 永井敏雄裁判官(平成2年8月1日~平成7年7月2日)
- 19期 堀籠幸男裁判官(昭和59年8月13日~平成2年7月9日)
- 15期 鈴木康之裁判官(昭和54年7月1日~昭和59年8月13日)
- 10期 上谷清裁判官(昭和49年4月15日~昭和54年6月30日)
2 第二部(審査事務)参事官の経験者
- 52期 家原尚秀裁判官(令和5年8月1日~ )
- 50期 衣斐瑞穂裁判官(平成30年8月1日~令和5年7月31日)
- 47期 岡田幸人裁判官(平成25年8月1日~平成30年7月31日)
- 42期 森英明裁判官(平成20年8月1日~平成25年7月31日)
- 37期 尾島明裁判官(平成15年8月1日~平成20年7月31日)
- 38期 岩井伸晃裁判官(平成13年6月4日~平成18年7月23日)
- 33期 野山宏裁判官(平成11年10月1日~平成15年7月31日)
- 28期 高橋利文裁判官(平成6年9月1日~平成11年9月30日)
- 21期 雛形要松裁判官(昭和58年6月15日~平成元年7月17日)
- 13期 町田顕裁判官(昭和52年1月27日~昭和58年6月14日)
- 8期 梅田晴亮裁判官(昭和42年9月6日~昭和52年2月28日)
第一部は意見事務を,第二部から第四部までは審査事務を担当する。裁判官出身者の出向先は,従来,第一部及び第二部に見られる。
第2 参事官経験のない裁判官出身の内閣法制局長官
裁判官出身者の中には,内閣法制局参事官を経ずに幹部職から入り,長官に至った者もいる。
1期の味村治裁判官は,昭和48年10月1日に法務大臣官房司法法制調査部長から内閣法制局第二部長となり,その後,第一部長及び次長を経て,昭和61年7月22日に内閣法制局長官に就任した。
14期の大森政輔裁判官は,昭和58年11月1日に法務省民事局参事官から内閣法制局総務主幹となり,その後,第二部長,第一部長及び次長を経て,平成8年1月11日に内閣法制局長官に就任した。
両名の経歴にみられるとおり,内閣法制局の職は各省の職位に対応させて理解されることがある。すなわち,内閣法制局総務主幹は各省の官房長に,第一部から第四部までの部長は各省の局長に,内閣法制次長は各省の事務次官に,内閣法制局長官は各省の大臣に,それぞれ相当するポストと説明される。
第3 裁判官からみた内閣法制局参事官の位置づけ
国立公文書館ホームページの「内閣法制局移管文書について」は,各部に部長以下11名から15名ほどの参事官・事務官が配置され,法案審査を担当する参事官は,伝統的に他省庁から出向した,法律及び実務についての知識・経験の豊かな,概ね在職10年から15年の本省課長クラスの職員で占められると説明する。参事官に他省庁からの出向者を充てる制度は戦前から続くもので,出向者は将来の幹部候補と目され,内閣法制局への出向に選ばれることは名誉と受けとめられてきたという。
阪田雅裕元長官も,法制局が独自採用を行わない理由として組織が小規模であることを挙げ,70人余りのうち部長を含め30人以上が課長・参事官以上に相当し,参事官は各部に5名から6名ずつ配置され,部長・総務主幹の兼務を含めて全体で26名から27名程度にとどまる,いわば頭でっかちの組織であると説明する(「法の番人」内閣法制局の矜持25頁,26頁)。参事官の在任期間は原則として5年以上に及ぶことが多く(同36頁),また,省庁によっては内閣法制局参事官の経験者がその後に局長・長官・事務次官に就く例が少なくないため,将来の幹部候補を法制局に出す慣例が生じているとされる(同40頁)。
なお,内閣法制局長官については,「官吏ハ己ノ職務ニ関スルト又ハ他ノ官吏ヨリ聞知シタルトヲ問ハス官ノ機密ヲ漏洩スルコトヲ禁ス其職ヲ退ク後ニ於テモ亦同様トス」と定める官吏服務紀律(明治20年勅令第39号)4条1項の適用があると解されている(参議院議員藤末健三君提出特別職公務員の守秘義務に関する質問に対する答弁書(平成21年7月10日付))。
また,内閣法制局は国家公務員採用一般職試験からの新規採用を行っているが,このルートで採用された職員が参事官になることはなく,参事官付として意見事務又は審査事務に関与するにとどまる。
第4 法律案の5点セット
法律案の立案に際しては,国会議員等への説明のために「5点セット」と呼ばれる文書を作成することが慣例となっている。その内容は次のとおりである(NHK特集「官僚の劣化?相次ぐ法案ミス」参照)。
- 要綱(法案の趣旨を要約したもの)
- 法律案(改正又は追加された部分を条文化したもの)
- 理由(法案の目的等を記したもの)
- 新旧対照表(新旧の条文を並べ,改正又は追加された部分を比較する表)
- 参照条文(法案に関係する他の法律の条文一覧)
もっとも,これらの文書の位置づけは一様ではない。例えば,法務省民事局総務課の標準文書保存期間基準等においては,5点セットは「閣議を求めるための決裁文書及び閣議に提出された文書」と位置づけられており,国会議員への説明資料という位置づけにはなっていない。
第5 内閣法制局参事官と弁護士資格の特例
内閣法制局参事官の経歴は,弁護士資格の特例とも結びつく。すなわち,司法修習生となる資格を得た後に内閣法制局参事官の職に通算して5年以上在った者は,弁護士業務についての研修の課程を修了したとの法務大臣の認定(弁護士法5条柱書・1号,同法5条の3)を受けることにより,弁護士法4条の規定にかかわらず,弁護士となる資格を有する。
例えば,平成23年9月2日から平成24年1月13日まで法務大臣を務めた平岡秀夫衆議院議員(当時)は,東京大学法学部在学中の昭和50年10月に司法試験に合格した後に大蔵省に入省し,平成5年7月2日から平成10年7月2日までの5年間,内閣法制局参事官を経験した後に弁護士登録をした。
もっとも,この特例は,単にその者が特殊な法律専門知識を有することのみに着目したものではなく,少なくとも弁護士法4条所定の司法修習生の修習を終えた者と同程度の一般的な法律的素養に欠けるところがないことを予定したものと解されている(最高裁昭和43年11月15日判決)。
第6 関連記事その他
- 明治大学西川伸一ゼミナールホームページの「内閣法制局を見学してきました」に,審査風景及び参事官の執務部屋の写真が掲載されている。
以下の記事も参照されたい。