衆議院の解散に関する内閣答弁書


目次

1 衆議院の解散に関する内閣答弁書
2 関連記事その他

1 衆議院の解散に関する内閣答弁書
① 衆議院議員飯田忠雄君提出内閣の衆議院解散権に関する質問に対する答弁書(昭和54年2月16日付)
 衆議院の解散は、憲法第七条の規定により天皇の国事に関する行為とされているが、実質的に衆議院の解散を決定する権限を有するのは、天皇の国事に関する行為について助言と承認を行う職務を有する内閣である。
 憲法第六十九条は、同条に規定する場合には、内閣は、「衆議院が解散されない限り」、総辞職をしなければならないことを規定するにとどまるものと理解している。
 なお、衆議院の解散が憲法第七条の規定によつて行われるものであることは、既に先例として確立しているところであると考えている。
 右答弁する。
② 衆議院議員飯田忠雄君提出内閣の衆議院解散権に関する再質問に対する答弁書(昭和54年3月23日付)
一及び二について
(一) 内閣が実質的に衆議院の解散を決定する権限を有することの法的根拠は、憲法第七条の規定である。
(二) 衆議院の解散は、それ自体としては高度の政治的性質を有する行為であり、したがつて、国政に関するものであることは疑いのないところであるが、天皇は、内閣の助言と承認により衆議院を解散することとされており、ここにいう内閣の助言と承認とは、天皇が行う衆議院の解散について内閣が実質的にこれを決定することを意味すると解されるから、憲法第七条の規定がその法的根拠であると考えられる。
(三) 天皇が行う衆議院の解散は、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が実質的に決定したとこうに従つて形式的・名目的に行うものであるから、右に述べたように解しても、憲法第四条第一項の規定と矛盾するものではない。
(四) (一)に述べたことにより、御指摘の内閣の職務の範囲の逸脱という問題は起こらないと考える。
三について
 衆議院の解散権についての政府の見解は、一及び二についてにおいて述べたとおりであり、衆議院の解散の詔書に対し、多数の議員が万歳をもつてこたえたことをもつて、衆議院の解散の議決があつたものと解することはできないと考える。
四について
 御指摘の質問第五号の質問一、三及び六については、一及び二についてにおいて述べたことによつて承知されたい。
 右答弁する。
③ 参議院議員飯田忠雄君提出衆議院解散詔書の効力に関する質問に対する答弁書(昭和61年4月11日付)
 衆議院の解散は、憲法第七条の規定により、天皇の国事に関する行為として行われるものである。 
 天皇の行う衆議院の解散は、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が実質的に決定したところに従つて形式的・名目的に行うものであるから、天皇が国政に関する権能を行使したことにはならず、したがつて、憲法第四条第一項に違反するものではない。
④ 衆議院議員柿澤未途君提出内閣総理大臣の衆議院解散権に関する質問に対する答弁書(平成23年5月17日付)
一について
お尋ねの衆議院解散権は、内閣が、国政上の重大な局面等において主権者たる国民の意思を確かめる必要があるというような場合に、国民に訴えて、その判定を求めることを狙いとし、また、立法府と行政府の均衡を保つ見地から、憲法が行政府に与えた国政上の重要な権能であり、現行の公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)等の規定の下で内閣が衆議院の解散を決定することは否定されるものではないと考える。
二について
憲法第五十四条の規定により、衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行うこととなる。なお、内閣が衆議院の解散を決定することについて、憲法上これを制約する規定はない。
三について
憲法第五十四条の規定により、衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行うこととされていること等から、選挙期日の特例や任期の特例を規定した御指摘の平成二十三年東北地方太平洋沖地震に伴う地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律(平成二十三年法律第二号)と同様の対応をとることはできないものと考える。
四について
仮定の御質問にお答えすることは差し控えたい。なお、内閣が衆議院の解散を決定することについて、憲法上これを制約する規定はない。
⑤ 衆議院議員逢坂誠二君提出内閣の国会召集の権限に関する質問に対する答弁書(平成29年11月10日付)
一、二及び五について
 憲法第五十三条による臨時会の召集の決定と憲法第七条による衆議院の解散とは別個の事柄であり、また、お尋ねの「質問時間を確保して議論を行う」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十九年六月二十二日に衆議院及び参議院から送付のあった臨時国会召集要求書を踏まえ、内閣として諸般の事情を勘案した上で、同年九月二十八日に国会の臨時会を召集することを、同月二十二日に決定したところである。他方、内閣が衆議院の解散を決定することについて憲法上これを制約する規定はなく、いかなる場合に衆議院を解散するかは内閣がその政治的責任で決すべきものと考えている。こうしたことから、「日本国憲法第五十三条の要請するところを踏みにじることにほかならない」との御指摘は当たらない。
三及び四について
 お尋ねの「時間的制約」、「いわゆるプログラム規定」及び「政治的な要請」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として申し上げれば、憲法第五十三条の規定により、いずれかの議院の総議員の四分の一以上から、国会の臨時会の召集要求があった場合には、内閣は、臨時会で審議すべき事項等をも勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に臨時会の召集を行うことを決定しなければならないものと考えている。
⑥ 衆議院議員逢坂誠二君提出内閣の国会召集の権限に関する再質問に対する答弁書(平成29年11月24日付)
一及び二について
 お尋ねの「専ら内閣総理大臣の政治判断により衆議院の解散が決定される」及び「内閣の解散権は内閣総理大臣の自由意思によっても行使できる」の意味するところが必ずしも明らかではないが、先の答弁書(平成二十九年十一月十日内閣衆質一九五第八号)一、二及び五についてでお答えしたとおり、内閣が衆議院の解散を決定することについて憲法上これを制約する規定はなく、いかなる場合に衆議院を解散するかは内閣がその政治的責任で決すべきものと考えている。
三について
 お尋ねの「論理、価値基準」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「合理的な期間」については、召集に当たって整理すべき諸課題等によって変わるものであるため、一概にお答えすることは困難である。
四について
 お尋ねの「この間、国民の多くが国会を開会し、国政の課題を議論することを望んでいる事実」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
⑦ 衆議院議員奥野総一郎君提出日本国憲法第七条による衆議院解散に関する質問に対する答弁書(平成30年5月11日付)
一について
 御指摘の「第一回解散においては、「第六十九条及び第七条」を根拠としてのみ解散を行うことができるとの解釈にたっていた」の意味するところが必ずしも明らかではないが、憲法第六十九条は、同条に規定する場合には、内閣は、「衆議院が解散されない限り」、総辞職をしなければならないことを規定するにとどまり、内閣が実質的に衆議院の解散を決定する権限を有することの法的根拠は、憲法第七条の規定である。
二から五までについて
御指摘の「実質的決定権を含む場合もある」及び「内閣の自由な解散決定権」の意味するところが必ずしも明らかではなく、また、個々の学説についての見解を述べることは差し控えたいが、衆議院の解散は憲法第七条の規定により天皇の国事に関する行為とされているところ、実質的に衆議院の解散を決定する権限を有するのは、天皇の国事に関する行為について助言と承認を行う職務を有する内閣であり、内閣が衆議院の解散を決定することについて憲法上これを制約する規定はなく、いかなる場合に衆議院を解散するかは内閣がその政治的責任で決すべきものと考えている。

2 関連記事その他
(1) 石破茂(いしばしげる)オフィシャルブログ「解散のあり方など」には以下の記載があります。
・ 選挙の際の公約を果たすため、与えられた四年の任期を全うするのが国民に対する責任であると考えます。
・ 先日BS番組でご一緒した高安健将・成蹊大教授は、「解散して国民の判断を仰ぐ場合には、国民が判断するに必要な十分な情報と時間(解散から投票までは40日以内。公職選挙法第31条第3項)が与えられるべき」と述べておられましたが、これもまさしく然りと思います。
(2) 以下の記事も参照してください。
 衆議院の解散
・ 衆議院の解散は司法審査の対象とならないこと
 日本国憲法下の衆議院の解散一覧
・ 一票の格差是正前の解散は可能であることに関する政府答弁
・ 閉会中解散は可能であることに関する内閣法制局長官の答弁
・ 国会制定法律の一覧へのリンク


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