◯労災保険に係る訴訟に関する対応の強化について(平成22年8月4日付の厚生労働省労働基準局補償課労災保険審理室長の事務連絡(平成29年3月29日最終改正))の本文は以下のとおりです。
1 訴訟追行における密接な連携等
(1) 適切な事前協議の実施
応訴方針に係る労災保険審理室との協議については、平成17年3月30日付け事務連絡「労災保険に係る訴訟に関する応訴方針等について」の記の1において、新規提訴された全ての事件について行うこととされている。
したがって、全ての新規提訴事件について、事前協議(新件協議(当室において会議形式で行うものをいう。以下同じ。)又は担当中央労災補償訟務官との書面等による協議)を行うこととし、担当中央労災補償訟務官との協議の結果、新件協議を行わないこととした事件についても、担当中央労災補償訟務官と必ず書面等により事前協議を行う。
(2) 原審判決区分Ⅲ又はⅣの訴訟事件の控訴審対応
平成28年度に、最高裁において1件、高裁において10件の敗訴判決があったことから、当分の間も判決区分Ⅲ又はⅣであって勝訴した事件のうち、一審の判決内容に国側主張と異なる事実認定がされている事件等が上訴された場合は、控訴審における応訴方針について、事前に中央労災補償訟務官あて、応訴方針案等を送付した上で、新件協議に準じた協議を行う。
2 応訴方針の協議等
(1) 応訴方針に係る協議について
事前協議に当たっては、その1週間前までに応訴方針案(別添様式1)及び医師意見書(原告側及び国側)を担当中央労災補償訟務官あて送付した上で、応訴方針案の適否、国側医師意見書の適否等について協溌する。
(2) 事前協議後の対応について
事前協議において、応訴方針等に関する指摘事項等があった塙合は、事前協議後2週間以内を目途に当該指示事項を踏まえて応訴方針の修正案を作成し、担当中央労災補償訟務官に送付する。
3 新件協議を行わない場合の適切な事前協議(書面等による協議)の実施
上記1(1)の担当中央労災補償訟務官との書面等による協議は、新件協議に準じて処理する。
4 労災保険審理室と都道府県労働局が共同して処理する事件への対応
(1) 労災保険審理室と都道府県労働局が共同して処理する事件の指定
労災保険審理室と都道府県労働局が共同して処理する事件(以下「共同処理事件」という。)は、新件協議及び担当中央労災補償舩務官との書面による協議の結果を踏まえて労災保険審理室長が指定する。
(2) 共同処理事件の指定対象とする事件
敗訴した際に行政実務に重大な影響を与えることが予想される下記に掲げる労災訴訟事件を指定対象とする。
ア 脳・心臓疾患事件、精神障害事件、石綿関連疾患事件など認定基準等への影響の大きいもの
イ 労働基準法施行規則別表1の2及び告示(平成8年3月29日付け労働省告示33号・改正平成25年9月30日)において示されている疾病に含まれない疾病(化学物質過敏症など)を争点とする事件
ウ 一審で勝訴し控訴された(敗訴し控訴した)事件で上記に準じる事件
エ その他、特に労災保険審理室の指導・支援が必要と認められる事件
(3) 都道府県労働局における対応
共同処理事件に関して、都道府県労働局が対応する必要のある事項を以下(アからオ)に具体的に記述する。
ア 新件協議等における指摘事項に係る実施状況(補充調査、関係者の聴取等)については、実施後速やかに担当中央労災補償訟務官に報告するとともに、調査結果等を送付し、立証内容等について協識する。
イ 法務局又は選任弁護士(以下「法務局等」という。)との協議(期日における協議を含む。)を行った場合、協議後速やかに担当中央労災補償訟務官に内容を報告するとともに、協議によって作成することとした書証、必要な人証等について担当中央労災補償訟務官と協議する。
ウ 準備書面案の作成、尋問案等の作成、医学証人や専門医等の確保、医師意見書等の作成などの各段階において担当中央労災補償訟務官と協議する。
答弁書、準備書面、医師意見書等の案及び準備書面等での主張に係る証拠を、原則として法務局等への提出期限の3週間前までに担当中央労災補償訟務官に送付し、内容を協議する。
証拠調で証人尋問が行われる場合には、尋問案及びその根拠となる書証等を原則として法務局等への提出期限の2週間前までに担当中央労災補償訟務官に送付し、内容を協議する。
工 相手側準備書面等については、入手後速やかに担当中央労災補償訟務官に送付し、対応を協議する。その際、原告等相手側準備書面の主張についての証拠を併せて送付する。
オ 最終の口頭弁論期日の前の期日終了後、双方の主張及び証拠を整理した上で、準備書面及び証拠提出の要否について担当中央労災補償訟務官と協議する。
(4) 都道府県労働局管理者による事案の把握と指示
労災補償課長は、法務専門員等の積極的な活用を図り、共同処理事件の処理体制の強化に努める。
労災補償課長など局管理者は、共同処理事件として指定された事件について、準備書面案の作成、尋問案の作成、医学証人や専門医の確保、医師意見書等の作成などの各段階において進ちょく状況を把握するとともに、提訴後事前協議までの間(必要に応じて原告側から医師意見書が提出された口頭弁論期日終了後)に、調整官、補佐、監察官、その他必要な職員を構成員とする応訴方針検討会議を開催し、主張・立証方法等の適否や補充調査の必要性等(山中注:不開示部分8文字)について検証した上で、必要な指示を行う。
(山中注:12行ぐらいの不開示部分がある。)
(5) 中央労災補償訟務官における対応
担当中央労災補償訟務官は、都道府県労働局の指定代理人と同様、準備書面作成や医証の確保などについて、都道府県労働局と共同して訴訟を処理する。(下記アからキ)
ア 新件協議における本省指示事項を速やかに作成し、都道府県労働局に提示
イ 原告等相手側主張に対する反論方針の検討
ウ 準備書面案、尋問案等の作成
工 医学証人や専門医等の確保、医師意見書等の作成
オ 準備書面作成のために必要な資料(医学専門書など)の確保・提供
力 原告等相手側主張に対する反論漏れや主張不足の有無の確認
キ その他
5 労災保険審理室への報告等
(1) 新件協議等における指摘事項に係る実施状況の報告
新件協議等における指摘事項に係る実施状況(補充調査、関係者の聴取等)について、実施後速やかに担当中央労災補償訟務官に別添様式2「共同処理事件に関する対応状況報告」に、調査結果等を添付して報告する。(上記4の(3)のア)
(2) 訴訟追行上の問題点等の報告
共同処理事件として指定された事件については、以下アからウの場合に別添様式「共同処理事件に関する対応状況報告」により口頭弁論期日、弁論準備期日等(以下「口頭弁論期日等」という。)における法務局等の指示の具体的内容や訴訟追行上の問題点(問題点と必要とされる対応とをできる限り書き分ける。)等を、その都度速やかに報告する。
ア 上記4の(3)のアの指摘事項に基づく対応に問題が生じた場合
イ 法務局等との協議を行った場合(上記4の(3)のイ)
法務局等から新たな指示があった場合、及び本省指摘事項と異なる指示等があった場合
ウ 次回口頭弁論期日等に備えた準備書面案、尋問案等を作成した場合、医学意見書(案を含む。)を入手した場合及び医学証人や専門医を確保した場合(依頼をしようとする場合など確保の準備を行うときを含む。) (上記4の(3)のウ)
工 原告等相手側から準備書面、医学意見書等が提出された堀合(上記4の(3)の工)
(3) 報告に当たっての留意点
ア 上記(2)イについて、協議の結果、作成することとした書証や必要な人証等に関する資料、及び証拠化した書証等を併せて送付する。
イ 上記(2)ウについて、準備書面案、尋問案、医学意見書(案を含む。)、及び根拠となる書証等を添付して報告する。
医学証人や専門医の医学意見書等の確保(依頼)に当たっては、候補者の所属、専門分野その他参考となる事項を記載すること。
ウ 上記(2)エについて、原告等相手側準備書面の主張についての証拠を併せて送付する。
6 共同処理事件に指定しない事件等の処理
共同処理事件に指定しない事件又は新件協議の対象としない事件については、担当中央労災補償訟務官と準備書面案等の事前送付(上記4、 (3)、ウ)等の対応の要否を協議する。
原告等相手側準備番面等については、入手後直ちに担当中央労災補償訟務官に送付する。
その際、原告等相手側準備書面の主張についての主要な証拠も併せて送付する。
証拠調で証人尋問が行われる場合には、尋問案を法務局等に提出する2週間前までに担当中央労災補償訟務官に送付し、内容を協議する。
最終の口頭弁論期日の前の期日終了後、必要に応じて双方の主張及び証拠を整理した上で、準備書面及び証拠提出の要否について検討し、担当中央労災補償訟務官に報告する。
7 共同処理事件の随時指定と指定解除
共同処理事件として指定を行っていない事件であって、原告等から新たな主張がなされたこと等により、共同処理事件として指定する必要が生じた事件、判決区分Ⅱの訴訟事件であって、一審で勝訴した事件のうち、一審の判決内容に国側主張と異なる事実認定がされている事件等判決の内容に問題が認められる事件は、都道府県労働局労災補償課長等と協識の上、共同処理事件として追加指定する。
また、訴訟の進行に伴い、共同処理事件として処理する必要性が消滅した事件については、都道府県労働局労災補償課長等と協議の上、共同処理事件の指定を解除する。
* 「平成30年度全国労災補償課長会議資料」も参照してください。