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一票の格差是正に関する公職選挙法の一部を改正する法律等の一覧―一票の格差を争う選挙無効訴訟の実務を含む―(AIリライト)

本記事は,令和8年7月15日現在,一票の格差是正のために最高裁大法廷平成23年3月23日判決後に成立した公職選挙法等の改正を衆議院・参議院別に整理するとともに,国政選挙の一票の格差を公職選挙法204条の選挙無効訴訟で争う場合の出訴期間,当事者,主張立証及び想定反論を解説するものです。

目次
第1 最高裁大法廷平成23年3月23日判決以後に成立した,一票の格差是正に関する公職選挙法の一部を改正する法律等の一覧
1 衆議院に関するもの(議員定数は480人→475人→465人)
2 参議院に関するもの(議員定数は242人→245人→248人)
3 平成30年改正に伴う条文の引用ずれとその是正
第2 一票の格差を争う選挙無効訴訟の実務
1 訴訟の選択,出訴期間及び当事者
2 主張立証の組み立て
3 想定される反論とその備え
4 違憲判断と選挙無効の関係
第3 関連する最高裁判例・関連記事

第1 最高裁大法廷平成23年3月23日判決以後に成立した,一票の格差是正に関する公職選挙法の一部を改正する法律等の一覧

最高裁大法廷平成23年3月23日判決(平成22年(行ツ)第129号,集民236号249頁)は,平成21年8月30日総選挙当時,一人別枠方式に係る区割基準及びこれに従って定められた選挙区割りが,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判断しました。ただし,憲法上要求される合理的期間内に是正されなかったとはいえないとして,区割規定自体を違憲とはしませんでした。以下の改正は,この判決後の国会の対応を衆議院と参議院に分けて整理したものです。

1 衆議院に関するもの(議員定数は480人→475人→465人)

① 衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律(平成24年11月26日法律第95号)
→ 野田首相が党首討論で衆議院の解散を表明した平成24年11月14日の翌日に衆議院で可決し,同月16日(解散日)に参議院で可決・成立した法律です。
小選挙区の一人別枠方式の規定が削除されたほか,衆議院小選挙区定数に関する「0増5減」が実施されることとなりました。
② 衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律(平成25年6月28日法律第68号)(改正後の議員定数は475人)
→ 17都県42選挙区で選挙区の区割りが変わったほか,衆議院小選挙区定数に関する「0増5減」が実施された結果,小選挙区選出議員の定数が300人から295人となりました。平成24年法律第95号の成立直後に行われた平成24年12月16日総選挙は従前の区割りで実施され,「0増5減」に対応する新しい区割りが初めて用いられたのは平成26年12月14日総選挙でした。
③ 衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律(平成28年5月27日法律第49号)
→ 衆議院小選挙区定数に関する「0増6減」及び比例代表定数の4人削減が実施されることとなりました。また,この法律は,10年ごとの大規模国勢調査の結果に基づく都道府県別の小選挙区定数配分にアダムズ方式を導入し,令和2年国勢調査から適用することとしました。「0増6減」及び比例代表定数の4人削減は,アダムズ方式の初適用までの措置として行われたものです。
④ 衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律の一部を改正する法律(平成29年6月16日法律第58号)(改正後の議員定数は465人)
→ 19都道府県97選挙区で選挙区の区割りが変わったほか,衆議院小選挙区定数に関する「0増6減」が実施された結果,小選挙区選出議員の定数が295人から289人となりました。
また,比例代表選出議員の定数が180人から176人となりました。この区割りは,平成29年10月22日総選挙から用いられました。
⑤ 公職選挙法の一部を改正する法律(令和4年11月28日法律第89号)(改正後の議員定数は465人)
→ 令和2年国勢調査の日本国民の人口にアダムズ方式を初めて適用した結果に基づき,小選挙区の都道府県別定数について「10増10減」が行われ,25都道府県140選挙区の区割りが変更されました。比例代表についても,南関東ブロックを1人及び東京ブロックを2人増やし,東北,北陸信越及び中国の各ブロックを1人減らす「3増3減」が行われました。小選挙区289人,比例代表176人及び総定数465人という合計は変わりません。
同法は令和4年12月28日に施行され,施行日以後初めて総選挙の期日が公示された令和6年10月27日総選挙から新しい区割りが用いられました。令和2年国勢調査人口による最大人口較差は,改定前の2.096倍から改定後の1.999倍となりました(衆議院議員選挙区画定審議会の改定案の概要参照)。

2 参議院に関するもの(議員定数は242人→245人→248人)

① 公職選挙法の一部を改正する法律(平成24年11月26日法律第94号)
→ 参議院(選挙区)定数に関する「4増4減」が実施されました。具体的には,福島県及び岐阜県の定数を各2人減らし,神奈川県及び大阪府の定数を各2人増やしたものであり,総定数242人は変わりませんでした。平成25年通常選挙から適用されました。
② 公職選挙法の一部を改正する法律(平成27年8月5日法律第60号)
→ 参議院(選挙区)定数に関する「10増10減」,鳥取・島根及び徳島・高知の合区等が実施されました。総定数242人は変わらず,平成28年通常選挙から適用されました。
③ 公職選挙法の一部を改正する法律(平成30年7月25日法律第75号)(改正後の議員定数は248人)
→ 参議院選挙区選出議員の定数を148人(改正前146人)とした上で,埼玉県選挙区の改選定数を4人(改正前3人)としたり,参議院比例代表選出議員の定数を100人(改正前96人)としたり,特定枠制度が導入されたりしました(総務省HPの「参議院議員選挙制度における公職選挙法改正の概要」参照)。ただし,定数増は2回の通常選挙に分けて実施され,令和元年通常選挙では比例代表98人,選挙区147人の合計245人となり,令和4年通常選挙で比例代表100人,選挙区148人の合計248人となりました。

3 平成30年改正に伴う条文の引用ずれとその是正

(1) 平成30年法律第75号により公職選挙法142条の4第4項が新設され,従前の同条6項が7項に繰り下がりました。しかし,同法244条1項2号の2が引用する項番号は6項のまま残されました。平成30年12月の総務省と参議院法制局との電子メール(PDF)では,参議院法制局がこの点を改正漏れと認めています。
(2) その後,令和3年法律第51号により,同法244条1項2号の2の引用は「第百四十二条の四第六項」から「第百四十二条の四第七項」に改められ,同法は令和3年6月2日に施行されました。現行の公職選挙法244条1項2号の2は,同法142条の4第7項の表示義務に違反した者を1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する旨を定めています。したがって,条文の引用ずれは現在では解消されています。

第2 一票の格差を争う選挙無効訴訟の実務

一票の格差訴訟の憲法上の根拠は,憲法14条1項,15条1項・3項,43条1項及び44条ただし書です。最高裁は,これらの規定が選挙権の形式的平等にとどまらず,選挙権の内容の平等,すなわち投票価値の平等を要求すると解しています。

1 訴訟の選択,出訴期間及び当事者

(1) 衆議院議員又は参議院議員の選挙における一票の格差を争う場合は,公職選挙法204条の選挙無効訴訟を選択します。選挙人又は同条所定の候補者等は,選挙の日から30日以内に,高等裁判所へ直接訴えを提起しなければなりません。通常の取消訴訟を地方裁判所に提起するものではなく,地方選挙に関する異議申出及び審査申立ての手続とも区別する必要があります。
(2) 衆議院小選挙区選挙及び参議院選挙区選挙では,当該選挙に関する事務を管理する都道府県選挙管理委員会が被告となります。参議院合同選挙区選挙では参議院合同選挙区選挙管理委員会が,衆参の比例代表選挙では中央選挙管理会が被告となります。
(3) 30日の出訴期間は極めて短いため,選挙前から訴状,較差計算表及び証拠説明書のひな型を準備しておく必要があります。公職選挙法213条は,判決を事件受理の日から100日以内にするよう努め,他の訴訟の順序にかかわらず速やかに裁判することを裁判所に求めています。

2 主張立証の組み立て

(1) まず,原告が対象選挙区の選挙人であること,対象選挙の施行日,被告となる選挙管理委員会及び出訴期間内の提訴であることを明らかにします。選挙人名簿に登録されていることを示す選挙管理委員会の証明等,選挙の公示及び結果を示す公的資料を準備します。
(2) 較差の立証では,国勢調査の日本国民の人口に基づく「人口較差」と,選挙当日の選挙人数に基づく「選挙人数較差」とを区別します。分子と分母,基準日,最少選挙区及び最大選挙区を計算表に明記し,較差が2倍以上又は3倍以上となる選挙区の数と,そこに属する選挙人数も併記します。異なる基準日の数値を一つの倍率として組み合わせてはなりません。
(3) 証拠としては,①総務省又は選挙管理委員会が公表した選挙当日の選挙人数及び選挙結果,②国勢調査の日本国民の人口,③選挙当時の公職選挙法別表第1又は別表第3,④衆議院議員選挙区画定審議会の勧告及び区割り資料,⑤改正法の新旧対照表及び国会審議録,⑥当該選挙以前の最高裁判決を用います。現行条文ではなく,選挙当時に適用された条文と区割りを証拠化することが重要です。
(4) 主張は,単に最大較差の数値を示すだけでなく,ア 選挙制度及び区割りの仕組み,イ 較差が生じた原因が自然な人口異動か制度自体の構造的要因か,ウ 国会が違憲状態を認識できた時点,エ 是正に必要な合理的期間が経過したか,オ 具体的な立法措置の内容とその効果,という順序で組み立てます。

3 想定される反論とその備え

(1) 被告側からは,投票価値の平等は選挙制度を決定する唯一絶対の基準ではなく,行政区画,地勢,交通,人口密度,住民構成及び選挙制度の安定性を考慮する国会の広範な裁量が認められるとの反論が予想されます。これに対しては,個々の考慮要素を否定するだけでなく,それらを考慮してもなお当該較差を合理的に説明できるかを,選挙区ごとの資料に基づいて検討します。
(2) 衆議院については,アダムズ方式,10年ごとの大規模国勢調査及び5年目の国勢調査による中間見直しが制度化されており,区割り改定後の自然的な人口異動による一時的な較差拡大にすぎないとの反論が予想されます。最高裁第二小法廷令和7年9月26日判決は,令和6年総選挙について,令和2年国勢調査人口による最大較差1.999倍が選挙当日には2.059倍となり,2倍以上の選挙区が10あったものの,較差拡大の原因が自然な人口異動以外にあるとはいえず,拡大の程度も著しくないとして,違憲状態ではないと判断しました。
(3) もっとも,同判決の高須順一裁判官の意見は,改定時の最大較差が1.999倍であり,短期間で2倍以上となることがほぼ確実に見込まれたことを重視して,違憲状態であったと判断しました。原告側では,基準時に2倍未満だったという一点だけでなく,改定時点の人口動態から選挙時の較差拡大を予測できたか,2倍未満の状態を安定的に維持できる区割りであったかを具体的に主張立証する必要があります。ただし,高須裁判官の見解は多数意見ではないことを明記します。
(4) 参議院については,二院制,6年の任期,3年ごとの半数改選及び都道府県を単位とする選挙区を通じて地域の民意を反映させるという考慮を踏まえた国会裁量が反論の中心となります。最高裁大法廷令和5年10月18日判決(民集77巻7号1654頁)は,令和4年通常選挙の最大較差3.03倍について,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態ではないと判断しました。他方,同判決には違憲状態とする意見及び違憲とする反対意見があるため,合区導入後の較差の推移,国会における選挙制度改革の進捗及び具体的な是正措置を時系列で立証することが重要です。
(5) 仮に違憲状態であっても,国会が是正するための合理的期間を経過していないとの反論が予想されます。これに備えるため,先行判決の言渡日,国会が判決内容を認識した時点,区割り審の勧告,法案提出・審議・成立の日,その後に行われた選挙の回数を一覧化し,制度改正に必要な作業期間を考慮しても不作為が国会裁量の限界を超えたかを論じます。

4 違憲判断と選挙無効の関係

(1) 公職選挙法205条1項は,選挙の規定への違反があり,選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある場合に選挙の全部又は一部を無効とする旨を定めています。また,同法219条1項は,選挙関係訴訟には行政事件訴訟法31条の事情判決の規定を準用しないと定めています。
(2) しかし,最高裁大法廷昭和51年4月14日判決(民集30巻3号223頁)は,違憲な定数配分規定に基づく選挙について,行政事件訴訟法31条1項の基礎に含まれる一般的な法の基本原則を用い,選挙無効請求を棄却しつつ,選挙が違法である旨を主文で宣言しました。したがって,訴状では,区割規定の違憲性だけでなく,選挙を直ちに無効とした場合の影響,無効の効力を将来に限定する方法の可否及び違法宣言にとどめるべきかについても主張を準備します。
(3) 「違憲状態」,「違憲だが事情判決の法理により選挙は有効」及び「選挙無効」は別の結論です。判例を引用するときは,最大較差の数値だけで判決を分類せず,違憲状態の有無,合理的期間の経過の有無及び選挙の効力という三段階を分けて記載する必要があります。

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