参議院議員通常選挙における,一票の格差に関する最高裁判決の一覧(昭和時代及び平成時代)


目次
第1 参議院議員通常選挙における,一票の格差に関する最高裁判決の一覧(昭和時代及び平成時代)
1 昭和37年7月1日実施の第6回参議院議員通常選挙(最大格差4.09倍)
2 昭和46年6月27日実施の第9回参議院議員通常選挙(最大格差は5.08倍)
3 昭和52年7月10日実施の第11回参議院議員通常選挙(最大格差は5.26倍)
4 昭和55年6月22日実施の第12回参議院議員通常選挙(最大格差は5.37倍)
5 昭和58年6月26日実施の第13回参議院議員通常選挙(最大格差は5.56倍)
6 昭和61年7月6日実施の第14回参議院議員通常選挙(最大格差は5.85倍)
7 平成4年7月26日実施の第16回参議院議員通常選挙(最大格差6.59倍)
8 平成7年7月23日実施の第17回参議院議員通常選挙(最大格差4.97倍)
9 平成10年7月12日実施の第18回参議院議員通常選挙(最大格差4.98倍)
10 平成13年7月29日実施の第19回参議院議員通常選挙(最大格差5.06倍)
11 平成16年7月11日実施の第20回参議院議員通常選挙(最大格差5.13倍)
12 平成19年7月29日実施の第21回参議院議員通常選挙(最大格差4.86倍)
13 平成22年7月11日実施の第22回参議院議員通常選挙(最大格差5.00倍)
14 平成25年7月21日実施の第23回参議院議員通常選挙(最大格差4.77倍)
15 平成28年7月24日実施の第24回参議院議員通常選挙(最大格差3.08倍)
第2 関連記事その他



第1 参議院議員通常選挙における,一票の格差に関する最高裁判決の一覧(昭和時代及び平成時代)
1 昭和37年7月1日実施の第6回参議院議員通常選挙(最大格差4.09倍)

(1)    最高裁大法廷昭和39年2月5日判決は,合憲と判断しました。
(2) 判決文には,「議員定数、選挙区および各選挙区に対する議員数の配分の決定に関し立法府である国会が裁量的権限を有する以上、選挙区の議員数について、選挙人の選挙権の享有に極端な不平等を生じさせるような場合は格別、各選挙区に如何なる割合で議員数を配分するかは、立法府である国会の権限に属する立法政策の問題であつて、議員数の配分が選挙人の人口に比例していないという一事だけで、憲法14条1項に反し無効であると断ずることはできない。」という記載があります。

2 昭和46年6月27日実施の第9回参議院議員通常選挙(最大格差は5.08倍)
・ 最高裁昭和49年4月25日判決は,合憲と判断しました。

3 昭和52年7月10日実施の第11回参議院議員通常選挙(最大格差は5.26倍)
・ 最高裁大法廷昭和58年4月27日判決は,合憲と判断しました。

4 昭和55年6月22日実施の第12回参議院議員通常選挙(最大格差は5.37倍)
・ 最高裁昭和61年3月27日判決は,合憲と判断しました。

5 昭和58年6月26日実施の第13回参議院議員通常選挙(最大格差は5.56倍)
・ 最高裁昭和62年9月24日判決は,合憲と判断しました。

6 昭和61年7月6日実施の第14回参議院議員通常選挙(最大格差は5.85倍)
・ 最高裁昭和63年10月21日判決は,合憲と判断しました。

7 平成4年7月26日実施の第16回参議院議員通常選挙(最大格差6.59倍)
・ 平成8年6月26日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成8年9月11日判決は,違憲状態と判断しました。

8 平成7年7月23日実施の第17回参議院議員通常選挙(最大格差4.97倍)
・ 平成10年6月3日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成10年9月2日判決は,合憲と判断しました。

9 平成10年7月12日実施の第18回参議院議員通常選挙(最大格差4.98倍)
・ 平成12年7月5日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成12年9月6日判決は,合憲と判断しました。

10 平成13年7月29日実施の第19回参議院議員通常選挙(最大格差5.06倍)
(1)   平成15年12月10日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成16年1月14日判決は,合憲と判断しました。
(2) 最高裁大法廷平成16年1月14日判決の多数意見は5行だけであって(判決文4頁参照),残りは以下のとおりでした。
① 補足意見1(裁判官5人)
② 補足意見1の追加補足意見(裁判官島田仁郎)
③ 補足意見2(裁判官4人)
④ 補足意見2の追加補足意見(裁判官亀山継夫)
⑤ 補足意見2の追加補足意見(裁判官横尾和子)
⑥ 反対意見(裁判官6人)
⑦ 追加反対意見(裁判官福田博)
⑧ 追加反対意見(裁判官梶谷玄)
⑨ 追加反対意見(裁判官深澤武久)
⑩ 追加反対意見(裁判官濱田邦夫)
⑪ 追加反対意見(裁判官滝井繁男)
⑫ 追加反対意見(裁判官泉徳治)
(3) 多数意見が結論しか書いていない最高裁判決としては,最高裁大法廷昭和28年7月22日判決ぐらいです(「一歩前へ出る司法」172頁参照)。

11 平成16年7月11日実施の第20回参議院議員通常選挙(最大格差5.13倍)
・ 平成18年7月12日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成18年10月4日判決は,合憲と判断しました。

12 平成19年7月29日実施の第21回参議院議員通常選挙(最大格差4.86倍)
・ 平成21年7月8日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成21年9月30日判決は,合憲と判断しました。

13 平成22年7月11日実施の第22回参議院議員通常選挙(最大格差5.00倍)
(1) 判決内容
ア 高裁判決の内容
   平成23年2月28日までに那覇支部を除く15件の高裁本庁及び高裁支部の判決が出そろい,違憲が3件,違憲状態が12件,合憲が0件でした(外部HPの「一人一票(参院選)全国の判決日/判決文マップ」参照)。
イ 最高裁判決の内容
   平成24年9月12日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成24年10月17日判決は,違憲状態と判断しました。
   違憲状態であると判断したのが12人,違憲であると判断したのが3人,合憲であると判断したのは0人でした(外部HPの「最高裁大法廷平成24年10月17日判決について」参照)。
(2) その後の法改正
・ 平成24年11月26日公布の公職選挙法改正において,参議院(選挙区)定数に関する「4増4減」(福島県及び岐阜県の議員数をそれぞれ4人から2人に減らし,神奈川県及び大阪府の議員数を6人から8人に増やすというもの)が規定されました。
   そして,同日施行の参議院選挙区選出議員の定数の変更が,総務省HPの「参議院選挙区選出議員の選挙区の定数の改正」に掲載されています。
・ 公職選挙法の一部を改正する法律(平成24年11月26日法律第94号)附則3項は,「平成二十八年に行われる参議院議員の通常選挙に向けて、参議院の在り方、選挙区間における議員一人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、結論を得るものとする。」と定めています。
(3) その他
・ 第22回参議院議員通常選挙に関して,Chikirinの日記ブログ「格差問題@一票の価値」に,「もしも選挙区割りがなく、得票数の多い順に当選していたらどうなっていたのか」が書いてあります。

14 平成25年7月21日実施の第23回参議院議員通常選挙(最大格差4.77倍)
(1) 判決内容等
ア 高裁判決の内容
・   平成25年12月26日までに16件の高裁本庁及び高裁支部の判決が出そろい,違憲が3件(うち,違憲無効が1件(広島高裁岡山支部平成25年11月28日判決(裁判長は30期の片野悟好裁判官))),違憲状態が13件,合憲が0件でした(外部HPの「昨夏の参院選は「違憲状態」最高裁が判決」及び「一人一票(2013参院)裁判~1人1票判決へ~」参照)。
・   国政選挙を違憲無効とした判決は,鹿児島2区選挙無効事件に関する大審院昭和20年3月1日判決(平成21年8月16日放送の,NHKスペシャル終戦ドラマ「気骨の判決」で取り上げられました。)以来です。
イ 最高裁判決の内容
・  最高裁大法廷平成26年11月26日判決は,違憲状態と判断しました。
・ 山本庸幸裁判官(元 内閣法制局長官)の反対意見は,違憲無効を主張しました。
ウ 判決の解説
・    「参議院議員定数配分をめぐる近時の最高裁判例-最高裁平成26年11月26日大法廷判決を中心として-」(レファレンス平成27年7月号)で解説されています。
(2) その後の法改正
・ 公明党は,平成27年6月15日,参議院選挙区における一票の格差を是正するため,隣接する20選挙区を合区して10選挙区に再編し,格差を2倍未満とする案を発表しました(公明党HPの「参院選挙制度で公明が改革案」参照)。
これによれば,合区とされる選挙区は,秋田・山形(2人),富山・岐阜(4人),石川・福井(2人),山梨・長野(4人),奈良・和歌山(4人),鳥取・島根(2人),徳島・高知(2人),香川・愛媛(4人),佐賀・長崎(2人),大分・宮崎(4人)です。
・   平成27年8月5日公布の公職選挙法改正において,参議院(選挙区)定数に関する「10増10減」,鳥取・島根及び徳島・高知の合区等が規定されました。
そして,平成27年11月5日施行の参議院選挙区選出議員の選挙区及び定数の変更が,総務省HPの「参議院選挙区選出議員の選挙区及び定数の改正等について」に掲載されています。
(3) その他
・   日弁連は,平成26年11月26日,「参議院選挙定数配分に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明」を出しました。
・ 全国知事会は,平成28年7月29日,参議院選挙における合区の解消に関する決議を出しました(全国知事会HPの「平成28年8月25日「参議院選挙における合区の解消に関する決議」に係る要請活動について」参照)。

15 平成28年7月24日実施の第24回参議院議員通常選挙(最大格差3.08倍)
(1) 高裁判決の内容等
・   一人一票実現国民会議HPの「一人一票(2016参院)裁判始まりました!」に,高裁判決の全文,最高裁の弁論期日における弁論要旨等が載っています。
・ 平成28年11月8日までに16件の高裁本庁及び高裁支部の判決が出そろい,違憲が0件,違憲状態が10件,合憲が6件でした(外部HPの「合憲?違憲状態?判断分かれる「一票の格差」特集」参照)。
(2) 最高裁判決の内容等
・ 平成29年7月19日の口頭弁論期日において,「傍聴人の皆様へ 選挙無効請求事件(参議院議員定数訴訟)について」と題する説明資料が配布されました(Youtube動画につき「最高裁で弁論 「一票の格差」巡り参院選無効の訴え(2017/7/19)」参照)。
・ 最高裁大法廷平成29年9月27日判決(升永弁護士のグループ)及び最高裁大法廷平成29年9月27日判決(山口弁護士のグループ)は,合憲と判断しました(Youtube動画につき「「一票の格差」最高裁は「合憲」 去年の参院選」参照)。
(3) その他
・ 日弁連は,平成29年9月28日,「参議院選挙定数配分に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明」を出しました。

第2 関連記事その他
1 憲法43条1項が両議院の議員が全国民を代表する者でなければならないとしているのは,本来的には,両議院の議員は,その選出方法がどのようなものであるかにかかわらず,特定の階級,党派,地域住民など一部の国民を代表するものではなく全国民を代表するものであって,選挙人の指図に拘束されることなく独立して全国民のために行動すべき使命を有するものであることを意味していると解されています(最高裁大法廷平成11年11月10日判決)。
2 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所における違憲判決の一覧
・ 最高裁が出した,一票の格差に関する違憲状態の判決及び違憲判決の一覧
・ 衆議院議員総選挙における,一票の格差に関する最高裁判決の一覧(昭和時代及び平成時代)
・ 一票の格差是正に関する公職選挙法の一部を改正する法律等の一覧


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