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衆議院議員総選挙における,一票の格差に関する最高裁判決の一覧(昭和時代及び平成時代)(AIリライト)

第1 この記事の対象と読み方

この記事は,衆議院議員総選挙の選挙区間の一票の格差(投票価値の較差)を争った選挙無効請求訴訟について,最高裁判所が示した判決を,選挙ごとに整理した一覧です。
対象とするのは,第33回総選挙(昭和47年12月10日施行)から第48回総選挙(平成29年10月22日施行)までの14回分で,これに対応する最高裁判決は昭和51年から平成30年までに言い渡されています。
令和以降に施行された総選挙は,この記事の対象に含みません。

各判決の結論は,大きく「合憲」「違憲状態」「違憲」に分かれます。
その意味は第3で説明し,第2の早見表で全体を一望できるようにしたうえで,第4で選挙ごとの判決内容と,その後の公職選挙法等の改正を記載しています。
掲載した最高裁判決には,裁判所ウェブサイトの判決全文へのリンクを付けています。

最大格差は,特記しない限り,選挙当日の選挙区間の議員1人当たり選挙人数(有権者数)の比です。人口(国勢調査)を基準とした較差とは数値が異なる場合があります。

第2 一票の格差判決の早見表(第33回~第48回)

回・施行日最大格差最高裁判決法廷結論
第33回
昭和47年12月10日
4.99倍昭和51年4月14日大法廷違憲(事情判決)
第36回
昭和55年6月22日
3.94倍昭和58年11月7日大法廷違憲状態
第37回
昭和58年12月18日
4.40倍昭和60年7月17日大法廷違憲(事情判決)
第38回
昭和61年7月6日
2.92倍昭和63年10月21日第二小法廷合憲
第39回
平成2年2月18日
3.18倍平成5年1月20日大法廷違憲状態
第40回
平成5年7月18日
2.82倍平成7年6月8日第一小法廷合憲
第41回
平成8年10月20日
2.309倍平成11年11月10日大法廷合憲
第42回
平成12年6月25日
2.471倍平成13年12月18日小法廷合憲
第43回
平成15年11月9日
2.150倍平成17年9月27日小法廷却下(訴えの利益なし)
第44回
平成17年9月11日
2.171倍平成19年6月13日大法廷合憲
第45回
平成21年8月30日
2.304倍平成23年3月23日大法廷違憲状態
第46回
平成24年12月16日
2.43倍平成25年11月20日大法廷違憲状態
第47回
平成26年12月14日
2.13倍平成27年11月25日大法廷違憲状態
第48回
平成29年10月22日
1.98倍平成30年12月19日大法廷合憲

第3 「合憲」「違憲状態」「違憲」の意味と事情判決

最高裁は,選挙区間の投票価値の較差が問題となる事件を,2段階の枠組みで判断してきました。
第1に,較差が憲法の投票価値の平等の要求に反する程度に達しているかどうかを見ます。
第2に,達している場合でも,これを是正するために憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったといえるかどうかを見ます。

この枠組みから,結論は次のように分かれます。

合憲
較差が,憲法の投票価値の平等の要求に反する程度には達していないとされた場合です。

違憲状態
較差は違憲の程度に達しているものの,合理的期間内の是正がされなかったとまではいえないとして,定数配分規定を直ちに違憲とはしなかった場合です。
結論としては請求は棄却されますが,「合憲」とは区別されます。

違憲
較差が違憲の程度に達し,かつ合理的期間内の是正もされなかったとして,定数配分規定が違憲とされた場合です。
もっとも,選挙自体を無効にすると,かえって憲法の予定しない事態が生じかねないため,行政事件訴訟法31条1項の事情判決の法理を用い,選挙は無効とせず,違法である旨を宣言するにとどめるのが,これまでの取扱いです(第33回・第37回)。

この事情判決による処理は,最高裁大法廷昭和51年4月14日判決で採られました。
Wikipediaの「中村治朗」には,同判決について,事情判決の法理を活用して違憲宣言にとどめる手法を,最高裁首席調査官の立場から実質的に生み出したと紹介されています。

なお,憲法43条1項が両議院の議員を「全国民を代表する」ものとしている趣旨について,最高裁大法廷平成11年11月10日判決は,議員は,その選出方法のいかんにかかわらず,特定の階級・党派・地域住民など一部の国民を代表するものではなく,全国民を代表して独立して行動すべき使命を有することを意味すると解しています。

第4 各総選挙と最高裁判決

1 第33回(昭和47年12月10日・最大格差4.99倍)

最高裁大法廷昭和51年4月14日判決は,議員定数配分規定を全体として違憲としました。
ただし,事情判決の法理により選挙自体は無効とせず,千葉県第1区の選挙が違法である旨を宣言するにとどめました。
最高裁が法令を違憲と判断した初期の代表的な判決です。

2 第36回(昭和55年6月22日・最大格差3.94倍)

衆議院と参議院の同日選挙でした。
最高裁大法廷昭和58年11月7日判決は,3.94倍の較差は憲法の選挙権の平等の要求に反する程度に至っていたとしつつ,合理的期間内の是正がされなかったとまでは断定し難いとして,定数配分規定を違憲とはしませんでした。
較差が違憲の程度に達していたことを認めた点で,結論は違憲状態にあたります。

3 第37回(昭和58年12月18日・最大格差4.40倍)

最高裁大法廷昭和60年7月17日判決は,定数配分規定を再び全体として違憲としました。
このときも,事情判決の法理により選挙は無効とせず,違法の宣言にとどめました。

4 第38回(昭和61年7月6日・最大格差2.92倍)

衆議院と参議院の同日選挙でした。
昭和61年のいわゆる8増7減の改正により較差が縮小した後の選挙で,最高裁昭和63年10月21日判決(第二小法廷)は合憲としました。

5 第39回(平成2年2月18日・最大格差3.18倍)

平成4年11月11日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成5年1月20日判決は違憲状態としました。

6 第40回(平成5年7月18日・最大格差2.82倍)

平成4年のいわゆる9増10減の改正の後の選挙で,最高裁平成7年6月8日判決(第一小法廷)は合憲としました。

7 第41回(平成8年10月20日・最大格差2.309倍)

中選挙区制に代えて小選挙区比例代表並立制を導入した後,初めての総選挙でした。
平成11年10月6日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成11年11月10日判決は合憲としました。

8 第42回(平成12年6月25日・最大格差2.471倍)

最高裁平成13年12月18日判決(小法廷)は合憲としました。

9 第43回(平成15年11月9日・最大格差2.150倍)

最高裁平成17年9月27日判決(小法廷)は,選挙を無効とする判決を求める訴えについて,衆議院の解散(平成17年8月8日)によって訴えの利益を失ったとして,訴えを却下しました。
較差そのものの合憲性は判断されていません。

10 第44回(平成17年9月11日・最大格差2.171倍)

平成19年4月25日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成19年6月13日判決は合憲としました。

11 第45回(平成21年8月30日・最大格差2.304倍)

(1) 判決の内容

平成23年2月23日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成23年3月23日判決は違憲状態としました。
多数意見は,各都道府県にまず1を配当したうえで残りを人口比例で配分するいわゆる1人別枠方式が,投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判断しました。
田原睦夫裁判官及び宮川光治裁判官は,1人別枠方式は違憲であるとする反対意見を付しました。

(2) その後の法改正

平成24年11月26日公布のいわゆる緊急是正法により,1人別枠方式を定めていた衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条2項が削除されました。
あわせて,山梨・福井・徳島・高知・佐賀の5県の定数を各1減らすいわゆる0増5減が行われ,小選挙区の定数は300から295となりました。

改正前の同法3条2項は,都道府県ごとの小選挙区の数を,各都道府県にあらかじめ1を配当したうえで,残りを人口に比例して配分すると定めていました。

衆議院議員選挙区画定審議会は,内閣総理大臣に対し,平成25年3月28日に区割りの改定案を勧告しました。
これを受けた平成25年6月28日公布の改正公職選挙法により,17都県42選挙区の区割りが改められ,衆議院の定数は480人(小選挙区300人+比例代表180人)から475人(小選挙区295人+比例代表180人)となりました。
新しい区割りは平成25年7月28日に施行されました。

12 第46回(平成24年12月16日・最大格差2.43倍)

平成25年10月23日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成25年11月20日判決は違憲状態としました。
第45回総選挙が平成23年の大法廷判決で違憲状態とされていたことからすれば,第46回総選挙も違憲状態と判断されることは予想されるところでした。
日本弁護士連合会は,平成25年11月20日,会長声明を発表しています。

13 第47回(平成26年12月14日・最大格差2.13倍)

(1) 高裁判決の内容

平成27年3月26日までに,高裁本庁及び高裁支部の判決17件が出そろい,内訳は違憲1件・違憲状態12件・合憲4件でした。

(2) 最高裁判決の内容

平成27年10月28日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成27年11月25日判決は違憲状態としました。
千葉勝美裁判官が補足意見を付しました。
櫻井龍子裁判官及び池上政幸裁判官は,定数配分は合憲であるとする意見を付しました。

反対意見は次のとおりです。
大橋正春裁判官は,定数配分は違憲であり,判決確定後6か月の経過の後に無効とすべきであるとしました。
鬼丸かおる裁判官は,定数配分は違憲であるとしました。
木内道祥裁判官は,定数配分は違憲であり,12の選挙区については無効とすべきであるとしました。

(3) その後の法改正

平成26年6月19日に設置された衆議院選挙制度に関する調査会は,平成28年1月14日,定数10減及びアダムズ方式の導入を柱とする答申を行いました。
これを受けた平成28年5月27日公布の改正公職選挙法により,小選挙区で6人(青森・岩手・三重・奈良・熊本・鹿児島から各1人),比例代表で4人(東北・北陸信越・近畿・九州の各ブロックから1人)が削減され,衆議院の定数は465人(小選挙区289人+比例代表176人)となることが定められました。

衆議院議員選挙区画定審議会は,内閣総理大臣に対し,平成29年4月19日,区割りの改定案を勧告しました。
この改定案は,最大較差が平成27年国勢調査による日本国民の人口で1.956倍(平成32年見込み人口で1.999倍)となる19都道府県97選挙区のものでした。
これを受けた平成29年6月16日公布の改正公職選挙法により,19都道府県97選挙区の区割りが改められ,衆議院の定数は465人(小選挙区289人+比例代表176人)となりました。
新しい区割りは平成29年7月16日に施行されました。
日本弁護士連合会は,平成27年11月25日,会長声明を発表しています。

14 第48回(平成29年10月22日・最大格差1.98倍)

(1) 高裁判決の内容

区割りの改定後,最初の総選挙でした。
公示日前日である平成29年10月9日の時点で,一票の格差は最大1.98倍でした。
平成30年3月30日までに,高裁本庁及び高裁支部の判決16件が出そろい,内訳は違憲状態1件・合憲15件でした。

(2) 最高裁判決の内容

平成30年11月28日の口頭弁論を経て,最高裁大法廷平成30年12月19日判決は,裁判官全員一致で上告を棄却し,合憲としました。
林景一裁判官は,なお残る「ほぼ2倍」の較差を懸念しつつ,累次の大法廷判決を受けて国会が行った是正努力の結果,相当な前進がみられるとして,合憲とする多数意見に同調する意見を付しました。
宮崎裕子裁判官は,定数配分は違憲状態であるとする意見を付しました。

反対意見は次のとおりです。
鬼丸かおる裁判官は,定数配分は違憲であるとしました。
山本庸幸裁判官は,定数配分は違憲であり,一票の価値が0.8を下回る選挙区から選出された議員は,すべてその身分を失うと解すべきであるとしました。
日本弁護士連合会は,平成30年12月21日,会長声明を発表しています。

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出典・参考資料

1 法令

2 裁判例(いずれも最高裁判所判決。掲載誌の記載があるものは民集)

3 公文書・資料

4 文献

  • 国立国会図書館 調査及び立法考査局「選挙無効訴訟と国会の裁量――衆議院の選挙区割りをめぐる最高裁平成25年11月20日大法廷判決を素材として――」(レファレンス平成26年11月号) PDF

5 ウェブ資料