予約前には,①誰の法律問題か,②本人が相談を希望しているか,③家族の同席又は家族だけの相談を希望するか,④家族にも関係する争いがあるかを整理し,予約先へ伝えてください。家族への説明・連絡の範囲は本人の意思と秘密の取扱いを踏まえて確認します。相談全体の準備は弁護士とは―仕事内容,相談できること,費用と選び方,相談先の確認事項は弁護士の選び方―取扱分野,説明,費用と相談時の確認事項をご参照ください。
目次第1 この記事の対象と結論1 対象とする読者と基準日2 結論第2 弁護士が本人の意思を確かめる理由1 依頼者の意思の尊重と説明2 秘密の保持3 依頼するための契約を結ぶのも本人である第3 家族が同席するときと席を外すとき1 同席について直接の定めはない2 本人だけと話す時間が必要になりやすい場面第4 交通事故の相談に家族が付き添う場合1 経過の説明役としての家族2 本人が意思を表明できない場合3 付き添う家族が同じ事故の当事者である場合第5 相続・遺言の相談に家族が付き添う場合1 遺産分割の相談2 遺言の相談第6 付き添う家族が事前に準備すること第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令2 職能団体の規程3 所管行政機関の資料
第1 この記事の対象と結論
1 対象とする読者と基準日
この記事は,交通事故でけがをした家族や,相続・遺言について相談したい高齢の親に付き添って,弁護士の法律相談に同席しようとしている人を対象とする。
弁護士職務基本規程は日本弁護士連合会が公表している現行の本文(会規第70号)により,法令は令和8年9月28日時点でe-Gov法令検索により確認した内容に基づく。
相談を受ける側の事務所ごとの運用は扱わない。
2 結論
(1) 依頼者は相談の当事者である本人である
弁護士に事件を依頼するのは,事故の被害者や遺産を相続する人など,相談の当事者である本人である。
家族が付き添う場合でも,弁護士は本人の意思を確かめ,本人に説明し,本人の秘密を守る立場にある。
そのため,家族が同席していても,弁護士が本人に直接質問したり,本人だけと話す時間を求めたりすることがある。
(2) 同席するかどうかは本人の意思と事案の性質で決まる
弁護士職務基本規程には,法律相談への家族の同席を直接定めた条文はない。
同席の可否は,本人がそれを望んでいるか,本人の意思を家族のいない場で確かめる必要があるか,家族が相手方又は利害関係人になり得るかによって判断されると考えられる。
相続で家族が他の相続人に当たる場合や,遺言の内容を相談する場合は,本人だけと話す時間が設けられることを前提に付き添うのがよい。
第2 弁護士が本人の意思を確かめる理由
1 依頼者の意思の尊重と説明
(1) 依頼者の意思の尊重(22条)
弁護士職務基本規程22条1項は,弁護士は,委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重して職務を行うものとすると定めている。
同条2項は,依頼者が疾病その他の事情のためその意思を十分に表明できないときは,適切な方法を講じて依頼者の意思の確認に努めると定めている。
家族が本人の気持ちを代弁してくれることもあるが,弁護士が尊重すべきなのは本人の意思であり,本人が十分に話せない場合でも,弁護士には本人の意思を確かめる努力が求められる。
『解説「弁護士職務基本規程」第4版』63頁~65頁は,意思を十分に表明できない場合と,意思能力が欠ける場合を区別している。22条2項は,疾病その他の事情によって十分な意思表明が難しい場合の確認を扱う。意思能力を欠く場合には,同項による意思確認の努力だけで委任契約や代理権の問題が解決するのではなく,民法等の実体法に従った検討が必要となる。
家族や通訳等が本人の伝達を補助することと,家族が本人に代わって決定する権限を持つことは別である。同書65頁は,事情に応じた意思確認の方法を示しているが,特定の方法を全ての相談に一律に要求しているわけではない。本記事では,本人の意思を確認するための補助,家族への秘密開示の承諾及び家族が本人に代わって法律行為をする権限を,それぞれ区別して確認する。意思能力や法定代理が問題となる場合は,第2の3及び第4の2を参照されたい。
(2) 受任の際の説明(29条)
同規程29条1項は,事件を受任するに当たり,依頼者から得た情報に基づき,事件の見通し,処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について適切な説明をしなければならないと定めている。
同項は説明の相手方を明記していないが,依頼者である本人に対する説明と考えられ,家族が内容を理解しただけで足りるとは限らない。
2 秘密の保持
弁護士法23条は,弁護士は,その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し,義務を負うと定めている。
弁護士職務基本規程23条も,弁護士は,正当な理由なく,依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし,又は利用してはならないと定めている。
(続きを読む...)家族が付き添って弁護士に相談するとき―同席の可否,本人の意思確認,守秘義務と交通事故・相続での注意点(AI作成)