第1 登録換えの意味と必要となる場合1 登録換えの意味2 法律事務所の移転と登録換え3 登録事項変更との区別第2 登録換えの手続と効力1 旧所属会への届出と新所属会を経由する請求2 提出書類3 登録換えの効力発生日4 希望日,所要期間及び費用5 通知及び官報公告第3 進達拒絶,日弁連による拒絶及び不服申立て1 新所属会による進達拒絶2 東京高裁昭和50年1月30日判決3 日弁連への審査請求と東京高裁への取消訴訟第4 懲戒手続中の登録換えの制限1 弁護士法62条1項の制限2 懲戒請求の提出と懲戒手続の開始3 登録換え請求との先後及び手続の結了第5 関連記事第6 出典・参考資料1 法令・会則2 裁判例3 文献4 弁護士会の実務案内
第1 登録換えの意味と必要となる場合
1 登録換えの意味
弁護士法10条は,弁護士が所属弁護士会を変更するには,新たに入会しようとする弁護士会を経て,日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)に登録換の請求をしなければならないと定めている。登録換えは,弁護士資格を新たに取得したり,弁護士名簿の登録をいったん取り消して再登録したりする手続ではなく,弁護士名簿上の所属弁護士会を変更する手続である。
弁護士法は,10条,19条,36条及び62条では「登録換」と表記する一方,12条等では「登録換え」と表記している。本記事では,法令名や書類名を引用する場合を除き,一般に用いられている「登録換え」と表記する。本記事は,令和8年8月15日現在の法令,裁判例,公表資料及び弁護士会の案内を生成AIを用いて照合し,個別の登録換えに共通する制度を説明するものである。
2 法律事務所の移転と登録換え
弁護士法20条2項及び3項によれば,法律事務所は所属弁護士会の地域内に設けなければならず,弁護士は原則として2個以上の法律事務所を設けることができない。そのため,法律事務所を現在の所属弁護士会の地域外へ移転し,新たな弁護士会に所属しようとする場合は,登録換えが必要となる。
もっとも,制限されているのは法律事務所の所在地であり,弁護士が法律事務を取り扱う地域ではない。所属弁護士会の地域外で執務するだけで登録換えが必要になるわけではなく,弁護士法20条3項ただし書も,他の弁護士の法律事務所で執務することを妨げないと定めている。
また,東京都内には東京弁護士会,第一東京弁護士会及び第二東京弁護士会が併存するため,法律事務所の所在地を変更しないまま所属弁護士会だけを変更する登録換えもあり得る。登録換えを法律事務所の地理的移転だけで説明することはできない。
3 登録事項変更との区別
法律事務所を同じ弁護士会の地域内で移転する場合は,通常,登録換えではなく,法律事務所の移転及び登録事項変更の手続となる。弁護士法21条は,法律事務所を設け,又は移転したときは,直ちに所属弁護士会及び日弁連へ届け出ることを求めている。
大阪弁護士会の組織内弁護士向け案内も,勤務先の変更に伴う登録上の法律事務所の変更について,同会の地域内であれば登録事項変更,地域外であれば登録換えとして区別している。企業その他の組織に勤務する弁護士についても,登録上の法律事務所の所在地と所属弁護士会との関係を確認する必要がある。
第2 登録換えの手続と効力
1 旧所属会への届出と新所属会を経由する請求
弁護士は,登録換えを請求する旨を現在の所属弁護士会に届け出るとともに,新たに入会しようとする弁護士会を経て日弁連へ請求する(弁護士法10条1項及び2項)。旧所属会への届出と,新所属会を経由する日弁連への請求は,別の手続である。
旧所属会への届出は,同会の承認を受けるための申請ではない。新所属会は,提出書類を確認し,会則に基づく審査,面接又は常議員会の手続を行った上で,進達拒絶事由がないと判断したときは,登録換え請求を日弁連へ進達する。
2 提出書類
法務省が公表している日本弁護士連合会会則の20条は,日弁連に提出する基本書類として,①登録換え請求書,②弁護士法10条2項の届出に関する書面,③弁護士法12条2項の事項に関する書面を掲げている。
実際には,新所属会が定める入会申込書,履歴書,戸籍関係書類,身分証明書,誓約書,質問事項書,写真,紹介者又は推薦者に関する書類等が追加されることがある。例えば,愛知県弁護士会の登録換え案内は,紹介者2名による報告書を含む提出書類と,常議員会の審議後に日弁連へ進達する流れを掲載しているため,申込み前に新所属会の最新案内を確認する必要がある。
3 登録換えの効力発生日
登録換えは,旧所属会への届出,新所属会への書類提出又は新所属会の承認だけでは完了せず,日弁連が弁護士名簿上の登録換えを行った日に効力が生じる。弁護士法36条1項により,登録換えを受けた弁護士は当然に新所属会の会員となり,これによって旧所属会を退会するため,旧所属会からの退会のために別途登録取消しを請求する必要はない。
大阪弁護士会の案内も,日弁連から登録換え完了の通知があるまでは現在の所属弁護士会の会員であると説明している。所属会を前提とする届出,負担金その他の会員関係については,効力発生日を基準として処理する必要がある。
4 希望日,所要期間及び費用
登録換え希望日を記載できる場合であっても,希望日に当然に効力が生じるわけではない。東京弁護士会の弁護士登録手続日程は,日弁連の処理日程を踏まえた最短の登録予定日を示し,希望日を指定しても手続の進行により遅れる場合があるとしている。
所要期間,申込締切,面接の有無,必要書類,入会金及び会館負担金等は弁護士会ごとに異なる。令和8年8月15日取得時点の案内では,大阪弁護士会は通常1か月半から2か月程度,第二東京弁護士会はおおむね2か月としているが,不備の補正,面接,常議員会又は日弁連の審査日程によって延びることがある。
5 通知及び官報公告
弁護士法19条によれば,弁護士名簿の登録換えについて,日弁連は所属弁護士会へ通知し,官報で公告しなければならない。官報の登録換え欄には,登録番号,新所属会,旧所属会及び氏名等が掲載される。
第3 進達拒絶,日弁連による拒絶及び不服申立て
1 新所属会による進達拒絶
弁護士法12条によれば,新所属会は,弁護士会の秩序若しくは信用を害するおそれがある者等について,資格審査会の議決に基づき,登録換え請求の日弁連への進達を拒絶できる。登録換え請求前1年以内に同会の地域内で常時勤務を要する公務員であった者についても,同条2項所定の要件がある場合は同様である。