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弁護士会の会派―東京三会・大阪・愛知の会派と役割(AIリライト)

第1 弁護士会の会派とは何か

1 弁護士会と会派は別の団体である

弁護士法8条及び9条により,弁護士となるには日本弁護士連合会の弁護士名簿に登録され,入会しようとする弁護士会を経由して登録請求をする必要がある。

また,同法31条は,弁護士会が弁護士及び弁護士法人の指導,連絡及び監督等に関する事務を行う団体であることを定めている。

これに対し,「会派」は弁護士法が設置する機関ではなく,特定の弁護士会に所属する弁護士が任意に加入する団体である。

会派ごとに入会手続,会費,総会及び執行部等が設けられるため,弁護士会への入会と会派への入会は区別しなければならない。

会派は法律事務所とも別の団体であり,同じ事務所の弁護士が必ず同じ会派に所属するわけではない。

2 会派の主な役割

東京弁護士会の機関誌『LIBRA』平成23年2月号及び各会派の規約等によれば,会派は,おおむね次の役割を担ってきた。

① 弁護士会及び日弁連の会長,副会長,委員等の候補者を推薦し,会務を担う人材を育成すること。

② 弁護士会の制度又は司法政策に関する意見を集約し,提言すること。

③ 法律実務の研究会,研修会及び出版等を行うこと。

④ 修習期又は所属事務所を超えた親睦,相互扶助及び情報交換の機会を設けること。

会派は選挙及び人事の基礎組織という側面を有するが,それだけの組織ではなく,政策形成,研鑽及び人的ネットワークという複数の機能を有する。

もっとも,会派内部の意見が常に統一されているわけではなく,会派に所属しない弁護士の意見を会務へ反映する仕組みも重要である。

3 会派の影響力と地域差

東京弁護士会の令和7年の会派史は,過去に問題とされた金権選挙は遠いものとなり,会派の組織統制力も往時より弱くなったと指摘している。

また,東京弁護士会の親和全期会は,近年,同会に入会する若手弁護士の半数以上が会派に加入しないと説明している。

大阪弁護士会の法曹同志会が平成29年に実施した無所属会員69人の調査でも,会派を「有益」とした回答が43人あった一方,無所属の理由として「所属するメリットを感じない」とする回答が28人あった。

この調査は一会派が回答を得た小規模な調査であって,全会員を代表する統計ではないが,会派の機能への評価が分かれていることを示している。

さらに,平成30年の『LIBRA』に掲載された札幌弁護士会の紹介では,同会には東京のような会派活動はないと説明されている。

したがって,東京三会,大阪及び愛知の会派構造を全国の弁護士会にそのまま当てはめることはできない。

第2 東京弁護士会の会派

1 現在まで続く四つの大きな枠組み

東京弁護士会では,法友会,法曹親和会,期成会及び水曜会という四つの大きな会派の枠組みが形成されている。

東京弁護士会『LIBRA』令和7年12月号によれば,昭和21年に法友会,昭和23年に法曹親和会,昭和34年に期成会,昭和48年に水曜会が成立し,昭和42年に法曹親和会を離れた同志会は後に法友会へ合流した。

この経過によって,現在まで続く会派構成の大枠が形成された。

法友会及び法曹親和会の内部には複数の部又は構成会派があり,若手会員の横断組織として法友全期会及び親和全期会がある。

法友会の現行組織図では,法友会は10部で構成されている。

2 法友会の結成団体数に関する資料の相違

法友会の結成団体数については,東京弁護士会自身の資料にも相違がある。

東京弁護士会『東京弁護士会百年史』739頁~746頁は,昭和21年12月14日に法友会を結成した団体として11団体を列挙する。

これに対し,同会の『LIBRA』平成23年2月号は,九つの会派が大同団結して法友会を結成したと説明する。

このため,結成時の団体数を11又は9のいずれかに断定することは避け,公式資料間に相違があることを明記するのが正確である。

なお,結成時の団体数と,現在の法友会を構成する10部の数とは別の問題である。

3 古い会員数を現在の人数として扱わないこと

『LIBRA』平成23年2月号には,平成22年当時の東京弁護士会6207人のうち,法友会2398人,法曹親和会1497人,期成会587人とする図が掲載されている。

水曜会は同図で会員数を公表していない。

これらは平成22年当時の資料であり,現在の会派別会員数として引用してはならない。

第3 第一東京弁護士会の会派

1 第一東京弁護士会の創立日

第一東京弁護士会は,大正12年5月8日に設立の承認を受けて創立され,同月20日に創立総会を開催した。

第一東京弁護士会『われらの弁護士会史』の冒頭及び91頁は,この二つの日付を区別して記録している。

したがって,従前の記事にあった「大正11年5月20日に設立された」との記載は,年と出来事の双方について訂正する必要がある。

2 平成27年資料に掲載された四会派

平成27年頃の状況をまとめた週刊東洋経済編集部『弁護士業界 最前線』7頁~12頁は,第一東京弁護士会の会派として,全期会,新緑会,青風会及び第一倶楽部を掲載している。

全期会は,昭和26年4月に若手会員を中心として設立され,現在も会務人材の推薦,政策研究,研修,互助及び親睦等を行っている。

もっとも,令和8年現在の全会派を一括して示す第一東京弁護士会の公開資料は確認できなかった。

そのため,四会派を紹介する場合は「平成27年頃の資料に掲載された会派」と時点を付し,現在の会派数又は人数と断定しないことが適切である。

第4 第二東京弁護士会の会派

1 第二東京弁護士会の創立

第二東京弁護士会は,大正15年3月30日に創立され,令和8年3月30日に創立100周年を迎えた。

2 平成27年資料に掲載された八会派

前記『弁護士業界 最前線』は,平成27年頃の第二東京弁護士会の会派として,紫水会,全友会,五月会,日比谷倶楽部,向陽会,新風会,清友会及び日本法曹倶楽部を掲載している。

令和8年の公開ウェブ資料では,少なくとも紫水会全友会五月会日比谷倶楽部及び新風会の活動を確認できる。

これに対し,向陽会,清友会及び日本法曹倶楽部については,令和8年現在の活動を確認できる公開一次資料を発見できなかった。

公開資料を発見できないことは解散を意味しないため,確認できなかった三会派を「消滅した」と断定してはならない。

第5 大阪弁護士会の七会派

1 現在の七会派

大阪弁護士会には,現在,次の七つの任意加入団体があり,法友倶楽部の公式サイトも七会派の名称及び結成年を掲げている。

友新会(明治32年・1899年)

一水会(大正4年・1915年)

法曹同志会(大正9年・1920年)

法友倶楽部(昭和5年・1930年)

法曹公正会(昭和13年・1938年)

春秋会(昭和33年・1958年)

五月会(昭和46年・1971年)

『大阪弁護士会百年史』によれば,五月会は昭和46年6月16日に春秋会の一部会員が分離して結成した団体であり,この時点で大阪の会派は合計七会派となった。

なお,筆者は大阪弁護士会五月会の会員である。

2 会派と副会長選出の関係

大阪弁護士会の役員一覧によれば,令和8年度の副会長は7人である。

大阪の会派資料では,各会派が副会長候補者を推薦する慣行が確認でき,会派は会務人材を供給する中間団体として機能してきた。

もっとも,副会長が7人であることと会派が七つであることは,各会派に弁護士法上の副会長枠が保障されていることを意味しない。

会派による候補者推薦という慣行と,弁護士会の会則及び選挙規程に基づく正式な選任手続は区別する必要がある。

3 大阪の会派の役割と無所属会員

大阪の各会派の周年史は,会派が会員相互の親睦及び研鑽に加え,弁護士会の運営,政策議論,役員候補者の推薦及び若手育成を担ってきたことを記録している。

法曹同志会の令和2年の特集は,会派を,専門分野ごとの委員会とは異なり,世代及び専門を横断して会員と弁護士会を結ぶ中間団体と位置付けている。

他方で,同特集は,無所属会員がどの単独会派よりも多い状況となり,情報共有及び意見集約の方法を見直す必要があるとも指摘している。

大阪の会派を説明する際には,七会派が会務を支えてきた歴史と,無所属会員の増加という変化の双方を示す必要がある。

第6 愛知県弁護士会の会派

1 「公正クラブ」が正式名称である

愛知県弁護士会の会派について,従前の記事にあった「公正倶楽部」との表記は「公正クラブ」に訂正する必要がある。

公正クラブは,愛知県弁護士会所属の弁護士による親睦及び研鑽の組織であり,昭和6年・1931年に創立されたと説明している。

2 平成27年資料に掲載された五会派

前記『弁護士業界 最前線』は,平成27年頃の愛知県弁護士会の会派として,公正クラブ,無名会,法友会,中央会及び春秋会を掲載している。

また,愛知県弁護士協同組合の平成31年の公開資料では,少なくとも公正クラブ及び無名会の名称を確認できる。

もっとも,令和8年現在の全会派を一括して示す愛知県弁護士会の公開一次資料は確認できなかった。

そのため,五会派は平成27年頃の資料に掲載された一覧として紹介し,個人ブログだけを根拠として清流会,烏合会又は法曹維新会等を現在の会派一覧へ追加することはしない。

第7 会派一覧を読む際の注意点

1 時点と資料の性質を明示すること

会派の結成,分裂,統合,会員数及びウェブサイトの有無は変化するため,会派一覧には資料の年月を付す必要がある。

会派自身の周年史及び公式サイトは沿革及び活動内容の確認に有用であるが,自団体の役割に対する評価を中立的な事実と同一視してはならない。

また,選挙報道は会派の集票機能を理解する資料となるが,特定年の選挙情勢を現在の恒常的な勢力関係として一般化することはできない。

2 現行公開資料で確認できないことの扱い

公開ウェブ資料で現在の活動を確認できない場合は,「公開資料では確認できなかった」と記載するにとどめ,解散又は活動停止を推測しないことが重要である。

会派別の現在人数を掲載する場合も,同じ基準日で各会派を比較できる一次資料がない限り,異なる年度の数字を並べない方が正確である。

第8 関連記事

弁護士会館

日弁連会長及び副会長

弁護士会の会長及び事務総長

日弁連の機関及び役員

第9 出典

1 法令及び弁護士会の公表資料

① e-Gov法令検索「弁護士法」8条,9条及び31条。

② 東京弁護士会「東弁における会派―その現状と未来―」『LIBRA』平成23年2月号2頁~17頁。

③ 東京弁護士会「東京弁護士会民主化の活動(会派・選挙制度)」『LIBRA』令和7年12月号19頁。

④ 東京弁護士会『東京弁護士会百年史』(昭和55年)739頁~746頁(PDF実頁768頁~775頁)。

⑤ 第一東京弁護士会『われらの弁護士会史』(昭和46年)冒頭及び91頁(PDF実頁10頁及び108頁)。

⑥ 第二東京弁護士会「創立100周年を迎えて」(令和8年3月30日)。

⑦ 大阪弁護士会『大阪弁護士会百年史』(平成11年)158頁~159頁,230頁~232頁及び631頁(PDF実頁208頁~209頁,279頁~281頁及び678頁)。

⑧ 東京弁護士会「地方の若手弁護士に聞く―札幌弁護士会編―」『LIBRA』平成30年3月号49頁~50頁(PDF実頁44頁~45頁)。

2 会派資料及び書籍

① 大阪弁護士会法曹同志会「特集・無所属会員に聞く!」『法曹同志会2018年』69頁~71頁(PDF実頁70頁~72頁)。

② 大阪弁護士会法曹同志会「弁護士の仕事と弁護士会・会派」『法曹同志会2020年』37頁~39頁。

③ 友新会『友新会創立120周年記念誌』(令和2年),一水会『一水百年』(平成27年),春秋会『60周年記念誌』(平成31年),法友倶楽部『創立90周年記念誌』(令和4年),五月会『50周年記念誌』(令和4年)及び法曹公正会『公正第42号・創立80周年記念号』(平成30年)。

④ 週刊東洋経済編集部『弁護士業界 最前線』(東洋経済新報社,令和3年)7頁~12頁。

⑤ 鈴木秀幸・水林彪編『司法改革の検証―法科大学院の破綻と弁護士過剰の弊害』(日本評論社,令和5年)136頁,426頁,431頁,434頁及び437頁。

⑥ 高倉光俊『弁護士が独立を思い立ったら最初に読む本』(日本法令,令和2年)76頁。

⑦ 豊田誠『公害・人権裁判の発展をめざして―豊田誠弁護士たたかいの記録』(日本評論社,令和6年)203頁。