◯本ブログ記事は専らAIで作成したものです。
目次
第1 弁護士に対する懲戒処分の概要(総論)
1 懲戒処分の4種類と根拠規定
(1) 4種類の懲戒処分(弁護士法57条1項)
弁護士に対する懲戒は,次の4種類とされています(弁護士法57条1項)。
- 戒告
- 2年以内の業務の停止
- 退会命令
- 除名
この順序は,非行が軽いものから重いものへと並んでいます。戒告が最も軽く,除名が最も重い処分です。
弁護士法人に対する懲戒も,戒告,2年以内の弁護士法人の業務の停止(又はその法律事務所の業務の停止),退会命令及び除名の4種類とされています(弁護士法57条2項)。
(2) 懲戒事由(弁護士法56条1項)
弁護士及び弁護士法人は,次のいずれかに該当するときに懲戒を受けます(弁護士法56条1項)。
- 弁護士法又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会(以下「日弁連」といいます。)の会則に違反したとき
- 所属弁護士会の秩序又は信用を害したとき
- その他職務の内外を問わず,その品位を失うべき非行があったとき
懲戒は,その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会が行います(弁護士法56条2項)。
2 懲戒処分の法的性質
(1) 広い意味での行政処分
弁護士会の懲戒処分は,弁護士にとって刑罰にも比すべき重大なものではありますが,弁護士法の定めるところにより,弁護士の使命及び職務の特殊性にかんがみ,弁護士会に与えられた公の権能の行使として当該弁護士会が自主的に行うものであって,その性質は,広い意味での行政処分としての懲戒罰であると解されています(東京高裁平成元年4月27日判決)。
(2) 二重処罰・二重の危険との関係
憲法39条後段の規定は,何人も同じ犯行について二度以上罪の有無に関する裁判を受ける危険にさらされるべきものではないという根本思想に基づく規定です(最高裁大法廷昭和25年9月27日判決)。
そして,弁護士法に規定する懲戒は刑罰ではありませんから,被告人が弁護士法に規定する懲戒処分を受けた後,さらに同一の事実に基づいて刑事訴追を受けて有罪判決を言い渡されたとしても,二重の危険にさらされたものということはできません(最高裁昭和29年7月2日判決)。
3 懲戒処分の効力発生時期(告知時説)
(1) 告知の時に効力が生じる
弁護士に対する懲戒処分は,それが対象弁護士に告知されたときにその効力が生じます(最高裁大法廷昭和42年9月27日判決・民集21巻7号1955頁)。
「告知されたとき」とは,具体的には,懲戒の言渡期日に弁護士が出頭した場合は言渡しのとき,出頭しなかった場合は懲戒書が送達されたとき,公示送達の方法によった場合は所定の期間を経過したときをいいます。
(2) 確定時説から告知時説への変遷
上記の告知時説が確立する前は,弁護士の懲戒処分は,他の行政処分と異なり,告知と同時に効力を生ぜず,確定を待って初めて効力を生ずるものと解釈され,実務の上でもそのように取り扱われていました(日弁連二十年史99頁及び100頁)。
これは,旧弁護士法(昭和8年法律第53号)が懲戒について判事懲戒法を準用し,同法により懲戒の裁判は確定の後でなければ執行することができないものとされていたことに由来する解釈でした。しかし,最高裁大法廷昭和42年9月27日判決が,弁護士に対する懲戒は広い意味での行政処分であり,執行停止に関する特別の規定が設けられていること自体が告知によって直ちに効力が生ずることを前提としていることなどを理由に,全員一致で告知時説を採用しました。これを受けて,日弁連も,昭和43年1月20日の理事会において,懲戒処分は告知の時に直ちに効力を発生することを承認し,以後,告知時説による取扱いをしています。
(3) 税理士の懲戒処分との対比
他の士業と比べると,弁護士は判例によって告知時説に至りましたが,税理士については,かつては税理士法の規定の仕方から確定時に効力が生ずると解されていました。もっとも,昭和55年の税理士法改正により,税理士の懲戒処分の効力発生時期も処分告知時に改められ,立法的に解決されています。同じ「告知時に効力が生ずる」という結論でも,弁護士は判例で,税理士は立法で到達したという違いがあります。
4 懲戒処分の周知・公表・処分歴の開示
(1) 官報公告と「自由と正義」への掲載
弁護士会が弁護士を懲戒したときは,速やかに,懲戒請求者及び日弁連等に対し,懲戒の処分の内容及びその理由を書面により通知しなければならず(弁護士法64条の6第2項),日弁連は,遅滞なく,懲戒の処分の内容を官報をもって公告しなければなりません(弁護士法64条の6第3項)。あわせて,懲戒の処分の理由の要旨が,日弁連の機関雑誌である「自由と正義」に毎月掲載されます。そのため,戒告を含むいずれの懲戒処分であっても,その内容が弁護士業界に広く知られることになります。
(2) 関係官公署等への通知
弁護士会が懲戒処分をしたときは,戒告である場合を除き,その旨及びその内容を遅滞なく最高裁判所,検事総長その他の官公署(対象弁護士の所属弁護士会の地域を管轄する裁判所・検察庁,簡易裁判所,区検察庁等)及び日本司法支援センターに通知しなければなりません(日弁連会則68条の3第1項)。これは,懲戒により弁護士の身分を失ったり業務を停止された弁護士が裁判等に関与することを防止するための仕組みです。したがって,戒告の場合には,官報公告と「自由と正義」への掲載は行われますが,これら関係官公署等への通知は行われないという違いがあります。
(3) 公表制度・事前公表制度
以上の通知・公告に加えて,懲戒処分の結果が一般の国民により一層届くように,公表制度が設けられています。業務停止,退会命令及び除名の懲戒処分は原則として公表され,戒告の懲戒処分は,弁護士等に対する国民の信頼を確保するために特に必要である場合に公表されます。
さらに,懲戒処分前であっても,弁護士等に対する国民の信頼を確保するために緊急かつ特に必要があると認められるときは,一定の要件のもとで事案の概要等を公表することができる事前公表制度も設けられています。
(4) 懲戒処分歴の開示制度
弁護士に法律事務を依頼している者又は将来依頼しようとする者に対し,当該弁護士に関する情報を提供して適切な判断をしてもらうことを目的として,日弁連の懲戒処分歴の開示制度が設けられています(平成21年7月1日から実施)。開示を請求できるのは,その弁護士に法律事務を現に依頼し若しくは委嘱している者,又は将来依頼し若しくは委嘱しようとする者であり,取材目的のマスコミ,信用調査目的の金融機関,相手方などは請求できません。開示を受けられる懲戒処分歴は,除名及び退会命令についてはその効力が生じた日から3年以内のもの,業務停止についてはその期間の満了から3年以内のもの,戒告については効力が生じた日から3年以内で公表されたものに限られます。開示請求には,実費相当の手数料(現在,1000円に消費税相当額を加算した額)がかかります。
(5) 弁護士懲戒処分検索センター
弁護士懲戒処分検索センターHPの「懲戒の種類」に,戒告,業務停止,退会命令及び除名に関する説明が載っています。
5 懲戒処分件数の実情
日弁連が毎年公表している懲戒請求事案集計報告によれば,弁護士会による懲戒処分の件数は,毎年おおむね100件前後で推移しています。処分の種類別に見ると,最も多いのが戒告で毎年55件から68件程度,次いで業務停止が毎年30件前後(その大半は1年未満の業務停止で,1年から2年の重い業務停止は年に数件です。),退会命令と除名はそれぞれ年に数件にとどまります。
他方,懲戒請求の新受件数は,通常は年2000件から4000件程度ですが,特定の弁護士に対する大量の懲戒請求があった2018年(平成30年)には1万2000件を超えました。もっとも,懲戒請求が急増しても,実際に懲戒処分に至る件数は100件前後で安定しています。
ある会社。ぼろもうけしたので臨時ボーナス→みんな大喜び、2年目も同じ。3年目、そうでもなかったので臨時ボーナスはなし→みんなブーブー。→「これだったら最初から臨時ボーナス出さなきゃ良かった」という社長の話を聞いたことがある。 https://t.co/3jGIShrffL
— スラ弁(弁護士大西洋一) (@o2441) June 28, 2022
第2 戒告
1 戒告の意義
戒告とは,対象弁護士に対し,その非行の責任を確認させて反省を求め,再び過ちがないように戒める懲戒処分をいい,懲戒処分の中では最も軽い処分です。
弁護士に対する戒告処分は,それが当該弁護士に告知された時にその効力が生じ,告知によって完結するのであって,その後に日弁連会則97条の3第1項に基づいて行われる公告は,処分があった事実を一般に周知させるための手続であって,処分の効力として行われるものでも,処分の続行手続として行われるものでもありません(最高裁平成15年3月11日決定・集民209号155頁)。したがって,戒告処分については,公告がされることによる社会的信用の低下等を理由として,行政事件訴訟法25条2項による執行停止を求めることはできません。
2 戒告の効果
(1) 弁護士業務・身分への影響
戒告を受けた弁護士は,処分の告知を受けた後も従前どおり弁護士業務を行うことができますし,弁護士たる身分及び弁護士資格を失うことはありません。戒告は,対象弁護士の身分や弁護士となる資格に影響を及ぼさず,また,弁護士活動に制限を加えるものではありません。
(2) 就職説明会・「自由と正義」掲載等の付随的効果
もっとも,戒告を受けた弁護士が所属している法律事務所は,1年間,東京三弁護士会主催の司法修習生向け就職説明会に参加できなくなります(「司法修習開始前の日程」参照)などの効果を伴います。
また,戒告の理由の要旨が「自由と正義」等に掲載されるため,自分の不祥事の内容が弁護士業界に広く知られることとなります。そのため,懲戒処分としての戒告は,軽い処分とはいえません。
弁護士自治を考える会HPの「弁護士懲戒処分〔戒告〕と〔業務停止〕ではどこが違うのか」にも,戒告と業務停止は月とスッポンぐらいに処分の重さに違いがあると書いてあります。
(3) 日弁連会長選挙の被選挙権
さらに,戒告を受けた弁護士は,その処分に対し不服の申立てができなくなった日から3年間,日弁連会長選挙の被選挙権を失います(日弁連会長選挙規程14条1号)。もっとも,この被選挙権の喪失は,戒告という懲戒処分の効力そのものによって生ずるものではないと解されています。
3 戒告後の手続
戒告については,処分をした弁護士会による日弁連への通知,官報公告及び「自由と正義」による公告がされますが(弁護士法64条の6第2項・第3項),前記第1の4(2)のとおり,他の懲戒処分の場合と異なり,裁判所,検察庁等の関係官公署及び日本司法支援センターに対する通知は行われません。
第3 業務停止
1 業務停止の意義
業務停止とは,対象弁護士に一定期間,弁護士業務を行うことを禁止する懲戒処分をいいます。業務停止の期間は,2年以内で定められます(弁護士法57条1項2号)。
2 業務停止の効果と期間
(1) 効力と効力停止
業務停止を受けた弁護士は,特に効力停止の決定(行政事件訴訟法25条2項,行政不服審査法25条2項等)を得ない限り,処分の告知を受けた時から一定期間,弁護士業務を行うことができなくなります。ただし,退会命令及び除名と異なり,弁護士たる身分及び弁護士資格を失うわけではなく,依頼者との委任契約も当然に失効するわけではありません。
(2) 業務停止期間の計算
業務停止の期間は,裁決書又は懲戒書の送達の日から起算し,月又は年をもって定めたときは暦に従って計算されます(懲戒委員会及び懲戒手続に関する規程77条)。例えば,1月10日に業務停止2月の処分が告知された場合,告知された日も業務ができなくなるため初日が算入され,3月9日の経過をもって満了します。
(3) 会費・登録取消し
業務停止期間中であっても弁護士の身分は維持されるため,会費は徴収されます。なお,業務停止期間中であっても,請求により弁護士名簿の登録を取り消すことができ,この場合,業務停止の懲戒処分の効力は,登録が取り消された時点で失効すると解されています。
(4) 業務停止の重さ
弁護士業務は,その性質上,高い信用の保持と業務の継続性が求められますところ,多数の訴訟案件,交渉案件を受任している弁護士が数か月間にわたる業務停止処分を受けた場合,その間,法廷活動,交渉活動,弁護活動はもちろんのこと,顧問先に係る業務を始めとして一切の法律相談活動はできず,業務停止処分により,従前の依頼者は他の弁護士に法律業務を依頼せざるを得なくなりますところ,進行中の事件の引継ぎは容易ではありません。
また,懲戒を受けた弁護士の信用は大きく失墜しますし,業務停止期間が終了しても,いったん他の弁護士に依頼した元の依頼者が再度依頼するとは限らず,また,失墜した信用の回復は容易ではありません(最高裁平成19年12月18日決定における裁判官田原睦夫の補足意見参照)。そのため,懲戒処分としての業務停止は,非常に重い処分であるといえます。
個人事務所の場合、業務停止命令で良い顧客が減り、貧すれば鈍するで客筋が悪くなり、メンタルダウンや収益低下が起き悪循環に陥るということもあります。課徴金以外にも業務改善命令や新規契約停止を追加する手もありそうですね。 https://t.co/RrGlqgFAIH
— 古家野 彰平 (@shoheikoyanolaw) February 7, 2021
弁護士法人が業務停止を受けた場合の影響の大きさについては,msnニュースの「アディーレの不適切業務めぐる「処分」の重み 懲戒の段階によって影響は断然変わってくる」が参考になります。
3 停止される業務の範囲
業務停止処分により禁止されるのは,弁護士としての一切の職務です。これには,当事者その他関係人(依頼者)の依頼に基づく事務のほか,官公署の委嘱による事務も含まれます。例えば,裁判所から委嘱される国選弁護人,破産管財人,民事再生手続の監督委員等,及び最高裁判所・法務省・行政機関の所管に係る委員会等の委員として弁護士が就任している職務のうち,法律的な事務処理を内容とするものについては,業務停止期間中はこれを行うことができません。対象弁護士は,これらの職務を辞任し,委嘱した官公署も委嘱を取り消すべきものとされています。
4 業務停止期間中にとるべき措置
(1) 平成4年基準の概要
業務停止期間中に対象弁護士が具体的にどのように対処すべきかについては,「被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準」(平成4年1月17日日弁連理事会議決。以下「本基準」といいます。)が定めています。本基準は,日弁連の弁護士会に対する指導連絡監督権(弁護士法45条2項等)を根拠として,弁護士会が業務停止処分を受けた弁護士に説明・説示すべき措置を,第一号から第十五号まで具体的に定めています。その概要は次のとおりです。
- 受任している法律事件について,直ちに依頼者との委任契約を解除すること
- 顧問契約を解除すること
- 期日の延期・変更申請をしないこと,裁判所等からの送達を受領しないこと
- 保釈保証金,保全保証金及び供託金の還付・取戻し並びに和解金等の受領をしないこと
- 依頼者及び後任の弁護士に対し,誠実に事務の引継ぎをすること
- 新たに復代理人を選任し,又は他の弁護士を雇用しないこと
- 処分前に選任していた復代理人・補助弁護士に指示・監督をしないこと
- 事務所の管理行為,賃貸借契約及び雇用契約の継続はすることができること
- 事務所を使用しないこと(引継ぎ等の必要があるときは弁護士会等の承認を得て使用可)
- 弁護士及び法律事務所であることを表示する表札,看板等を除去すること
- 弁護士の肩書・法律事務所名を表示した名刺,事務用箋及び封筒を使用しないこと
- 弁護士記章(バッジ)及び身分証明書を日弁連に返還すること
- 弁護士会等の会務に関する活動をしないこと
- 弁護士会等の推薦により官公署等の委員等に就任している場合は,直ちに辞任の手続をとること
- 弁護士の資格に基づき登録している弁理士・税理士の業務を行わないこと
(2) 委任契約の解除(1か月を超える場合は全部解除)
1か月を超える期間の業務停止処分を受けた弁護士又は弁護士法人は,依頼者が委任契約の継続を求める場合であっても,委任契約を全部解除しなければなりません(本基準第二の一)。逆に,業務停止の期間が1か月以内であって,依頼者が委任契約の継続を求める場合には,委任契約を解除する必要はありません。この「1か月」という区切りは,民事事件における口頭弁論期日の間隔がおおむね1か月であることなどを踏まえたものです。
(3) 戸籍謄本等職務上請求用紙の返還
1か月を超える期間の業務停止処分を受けた弁護士又は弁護士法人は,所属弁護士会に対し,戸籍謄本等請求用紙を返還しなければなりません(弁護士につき戸籍謄本等請求用紙の使用及び管理に関する規則7条1項,弁護士法人につき同規則7条2項)。
戸籍謄本等請求用紙とは,弁護士が,戸籍法及び住民基本台帳法並びにこれらに基づき定められた政省令の規定に基づき,弁護士の業務に関する戸籍謄本,住民票の写し等の交付の請求に使用する用紙であって,日弁連が作成したものをいいます(戸籍謄本等請求用紙の使用及び管理に関する規則2条)。
5 弁護士法人の業務停止
弁護士法人に対しても,2年以内の業務の停止の懲戒処分があります(弁護士法57条2項2号)。この場合,弁護士法人自体の業務の停止のほか,その法律事務所の業務の停止という形で行われることがあり,従たる法律事務所のみを有する弁護士法人に対しては,その地域内にある法律事務所の業務の停止のみを行うことができます(弁護士法57条3項)。
第4 退会命令
1 退会命令の意義
退会命令とは,対象弁護士をその所属弁護士会から一方的に退会させる懲戒処分をいいます。
2 退会命令の効果
退会命令を受けた弁護士は,特に効力停止の決定を得ない限り,処分の告知を受けた時からその所属弁護士会を当然に退会して弁護士たる身分を失います。ただし,除名と異なり,弁護士資格(弁護士となる資格)を失うわけではありません。
退会命令が確定したときは,日弁連は弁護士名簿の登録を取り消さなければなりません(弁護士法17条3号)。退会命令の処分を受けた者は,直ちにその事務所を閉鎖し,弁護士の肩書のある名刺を使用してはならず,看板等も除去しなければならず,弁護士記章及び身分証明書を日弁連に返還しなければなりません。また,弁護士でない者となるため,弁護士又は法律事務所の標示・記載をすること(弁護士法74条)や,報酬を得る目的で業として法律事務を取り扱うこと(弁護士法72条)が禁止され,これに違反すると刑罰(弁護士法77条等)の対象となります。
3 退会命令後の手続・再登録
退会命令を受けた弁護士は,法的には,改めて入会を希望する弁護士会を通じて弁護士登録の請求をすることができます。しかし,「弁護士会の秩序若しくは信用を害するおそれがある者」(弁護士法12条1項柱書)に該当するかどうかが特に審査され,当該おそれがあると判断された場合,入会しようとする弁護士会から日弁連への登録請求の進達を拒絶されることがあります。弁護士会の入会審査については,「弁護士登録制度」を参照してください。
なお,退会命令を受けた者は弁護士でない者となるため,業務停止の場合と異なり,弁護士会等の指導監督を受けることはありません。会費についても,処分告知後の会費は徴収されず,既に徴収された分は返還されます。
懲戒処分としての退会命令は,弁護士生命を事実上終わらせる可能性があるぐらい,重い処分です。
第5 除名
1 除名の意義
除名とは,対象弁護士の弁護士たる身分を一方的に失わせる懲戒処分をいい,懲戒処分の中で最も重いものです。
2 除名の効果
除名処分を受けた弁護士は,特に効力停止の決定を得ない限り,処分の告知を受けた時からその所属弁護士会を当然に退会して弁護士たる身分を失い,かつ,処分の告知を受けた日から3年間,弁護士となる資格を失います(弁護士法7条3号)。その結果,日弁連は弁護士名簿の登録を取り消さなければなりません(弁護士法17条3号)。
除名処分を受けた者も,退会命令の場合と同様に,直ちに事務所を閉鎖し,弁護士の肩書のある名刺を使用せず,看板等を除去し,弁護士記章及び身分証明書を返還しなければなりません。また,弁護士でない者となるため,弁護士又は法律事務所の標示・記載の禁止(弁護士法74条)及び非弁護士の法律事務取扱いの禁止(弁護士法72条)に服し,違反は刑罰(弁護士法77条等)の対象となります。
3 除名後の再登録
除名された弁護士は,告知の日から3年が経過するまでの間,弁護士登録の請求をすることができません。
また,告知の日から3年が経過してから弁護士登録の請求をした場合であっても,「弁護士の職務を行わせることがその適正を欠くおそれがある者」(弁護士法12条1項)に該当するかどうかが特に審査され,当該おそれがあると判断された場合,入会しようとする弁護士会から日弁連への登録請求の進達を拒絶されることがあります。実際にも,除名処分を受けた者がその後に再登録されたケースは,極めて少数にとどまっています。
懲戒処分としての除名は,弁護士生命を事実上終わらせる可能性が極めて高い,重い処分です。
第6 懲戒処分に違反してなされた行為の効力
業務停止,退会命令又は除名を受けた弁護士が,懲戒処分の内容に違反して弁護士業務を行った場合,その行為の効力はどうなるのでしょうか。以下,行為の類型ごとに整理します(戒告の場合は,弁護士の業務を禁止する不作為義務を課するものではないので,戒告を受けた弁護士の行為の効力は問題となりません。)。
1 民事訴訟における訴訟代理行為
除名・退会命令によって弁護士でなくなった者がした訴訟代理行為は,非弁護士の訴訟行為と同様に論じられ,その効力については,有効説,絶対無効説,追認有効説,折衷説など,学説が分かれています。
これに対し,業務停止の場合については,最高裁大法廷昭和42年9月27日判決(民集21巻7号1955頁)が,「業務停止の懲戒処分に違反してされた弁護士の訴訟行為は,無効ではない」と判示しています。すなわち,裁判所は,懲戒の事実を知ったときは当該弁護士を訴訟手続から排除しなければなりませんが,これを看過した場合であっても,訴訟行為を直ちに無効とするものではないとされています。もっとも,学説には,業務停止処分の実効性を確保する観点から,これを無効と解すべきであるとする有力な見解もあります。
2 刑事訴訟における弁護活動
刑事訴訟における弁護人となるための弁護士資格は,憲法37条の要請に由来する公益性の高いものです。そのため,除名・退会命令によって弁護士でなくなった者はもちろん,業務停止の処分を受けた弁護士についても,その関与は無効と解すべきであり,原則として被告人による追認も認められないと解されています。
3 裁判外の私法行為
除名・退会命令によって弁護士でなくなった者が,報酬を得る目的で業として代理人として私法上の行為を行った場合は,非弁護士の法律事務取扱いを禁止する弁護士法72条に違反し,公の秩序(民法90条)に反するものとして無効と解されます。
これに対し,業務停止の場合は,弁護士たる身分を失っていないため弁護士法72条違反とはなりませんが,業務停止処分の趣旨を徹底する見地から,やはり公序良俗違反として無効と解すべきものとされています(ただし,業務停止期間の経過後に改めて有効に代理行為をすることは可能です。)。
第7 弁護士の懲戒処分に関する日弁連副会長の説明
井元義久日弁連副会長は,法曹制度検討会(第4回)(平成14年5月14日実施分)において以下のとおり説明しています。
懲戒処分というのがどういうものであるかということを御理解いただくために、若干申し述べさせていただきます。まず、資料3をごらんいただきます。懲戒処分につきましては、4つの種類がございまして、まず軽い順番からいきますと「戒告」、次に2年以内の「業務停止」、更に「退会命令」、「除名」という4段階になっております。これは要するに、非行が軽いという順番でこういう具合に懲戒処分がなされるということでございます。退会命令と除名というのは、弁護士会は強制加入団体でございますから、弁護士会に加入しないと弁護士活動はできないということは御承知のとおりだと思いますが、退会命令と除名の違いというのは、「綱紀・懲戒制度に関する資料」の資料3に書いておりますので、ごらんいただければ幸いでございます。
いずれの処分がなされた場合でも、日弁連の機関誌『自由と正義』に毎月掲載されます。したがいまして、会員には少なくとも全員に周知徹底されておるということでございます。業務停止以上になりますと、弁護士会から最高裁、最高検などを含め、弁護士会のある地域の地方裁判所及びその支部、地方検察庁及びその支部、簡易裁判所、区検察庁、都道府県、そういうところ全部に懲戒された弁護士の氏名、住所、生年月日、それから懲戒の種類、内容、業務停止になりました場合はその期間、こういうものがすべて通知される仕組みになっておりまして、更に記者会見が行われて公表されます。ときどき新聞に載っているのは、この記者会見をされた結果でございまして、これは弁護士会が積極的にそのような外部公表をしているということでございます。
それから、更に懲戒された弁護士への執行といたしましては、弁護士会が担当副会長、あるいは事務職員がその弁護士の事務所に行きまして、弁護士の看板をはずす。それからバッチの返還をさせる。更に看板が撤去できない場合は、白紙を看板の上に張ってくるということをしております。そして、弁護士は現在受任している事件、これもすべて辞任しなければいけない。更に顧問会社との契約は即時解約しなければいけないというような極めて厳しい処分だということになっております。この辺を十分御理解くださいまして、今回の綱紀・懲戒問題の制度設計については、お考えいただければ弁護士会としては幸いだと考えております。
第8 弁護士会の名簿登録拒否事由(第二東京弁護士会の例)
第二東京弁護士会は,「各種法律相談,弁護士紹介等担当者名簿に関する規則」6条に基づき,以下の事項に該当する会員については,名簿への登録を拒否しているみたいです(二弁フロンティア2018年7月号の「弁護士保険とリーガル・アクセス・センター~その期待と課題,今後の展望~」末尾26頁及び27頁)。
- 当会または日弁連の懲戒委員会で審査中
- 戒告処分から3年を経過していない
- 業務停止明けから5年を経過していない
- 過去20年間に戒告1回以上+業務停止1回以上,または過去20年に戒告3回以上
- 退会命令または除名の懲戒処分を受けたことがある
- 会費免除中(出産・育児を理由とするものを除く)
- 過去3年に会費滞納額が6か月分以上に達したことがある
- 非弁提携の疑いで是正指導を受けてから1年を経過していない
- 会立件により綱紀委員会で調査中
- 法テラスの契約締結拒絶期間中
- 倫理研修の未履修による措置を受け,措置の期間中
- 市民窓口への苦情が一定期間中に一定回数を超え事情聴取の対象となり,事情聴取の結果名簿への登録拒否が相当と認められた会員
など。
第9 関連する論点・事例・記事
1 団体の内部処分と司法審査
懲戒処分と同じく「団体による構成員への処分」という観点からは,次の裁判例も参考になります。
普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は,従前,司法審査の対象外でしたが(最高裁大法廷昭和35年10月19日判決),最高裁大法廷令和2年11月25日判決によって司法審査の対象となりました。
他方,政党が党員に対してした処分は,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り,裁判所の審判権は及びません(最高裁昭和63年12月20日判決)。
2 懲戒事例(守秘義務・利益相反)
自由と正義2018年12月号64頁に載ってある,大阪弁護士会の業務停止3月(平成30年9月12日発効)の「処分の理由の要旨」は以下のとおりです(「【弁護士】◯◯ ◯◯ 大阪:業務停止3月」(リンク先の記事は実名です。)参照)。
- 被懲戒者は、懲戒請求者株式会社AからB株式会社の懲戒請求者A社らに対する所有権移転登記手続等を求める訴訟等への対応につき受任し、2014年12月5日に成立した訴訟上の和解に基づきB社に支払うために懲戒請求者A社から合計6460万円の送金を受けたが、B社が代理人弁護士を解任していたため、上記和解の条項にのっとって支払をすることができず、上記金6460万円を預かったままとなっていたところ、2015年7月17日に懲戒請求者A社が被懲戒者に対し一切の委任契約の解除を申し入れ、被懲戒者がこれに同意した後、明確な報酬合意がないにもかかわらず、弁護士報酬等との相殺を一方的に主張して上記6460万円を懲戒請求者A社に返還しなかった。
- 被懲戒者は、C株式会社が懲戒請求者A社に対して提起した訴訟において、C社の要請に応じて、被懲戒者が懲戒請求者A社の代理人として活動してきた経過や職務上知り得た事実をかなり詳細に記載した陳述書を2016年10月26日付けで作成し、C社はこれを証拠として裁判所に提出した。
- 被懲戒者の上記1の行為は弁護士職務基本規程第45条に、上記2の行為は同規程第23条に違反し、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
このように,依頼者から預かった金員の返還を怠る行為(預り金の問題)や,かつての依頼者の秘密を相手方のために用いる行為(利益相反・守秘義務違反)は,懲戒の対象となります。とりわけ,遺言執行者や財産管理人など,中立的な立場に立つべき地位に就いた弁護士が,その後に特定の当事者の代理人となる場面では,利益相反が問題となりやすく,注意が必要です。
遺言執行者をした後に特定の相続人の代理人をすれば原則として懲戒されますが,
私が代理人として関与した懲戒請求の場合,破産管財人をした後に非免責債権に関して破産者の訴訟代理人をした兵庫県弁護士会副会長経験者は日弁連懲戒委員会の全員一致で懲戒されませんでした。https://t.co/qE20MMGBxJ— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) October 3, 2019
3 関連記事
以下の記事も参照して下さい。
とのことだそうです。ということは主張の当否など全く考えずクレーマーのお気持ちを通すために安易に紛議調停を進めて相談受付としての責任を放棄するのが市民相談窓口であるという理解になる。ダメなもの、通らないものを通らないというアドバイスをするのも立派な専門家のアドバイスのはずだが。
— ひなた荘の管理人(弁護士) (@shinobuhome) June 29, 2022