目次
第1 懲戒処分の公告(日弁連会則68条)
1 日弁連による公告
2 大阪弁護士会による公告
第2 懲戒処分の通知(日弁連会則68条の3及び68条の4)
1 対象弁護士等に対する通知
2 日弁連等に対する通知
3 最高裁判所等に対する通知
4 懲戒請求者に対する通知
第3 懲戒処分の公表
1 弁護士会の場合
2 日弁連の場合(日弁連会則68条の2第1項参照)
第4 懲戒処分の事前公表
1 弁護士会の場合
2 日弁連の場合(日弁連会則68条の2第2項参照)
第5 弁護士の懲戒処分の官報公告に関する説明
第6 関連記事
第1 懲戒処分の公告(日弁連会則68条)
1 日弁連による公告
(1) 日弁連は,弁護士会又は日弁連が対象弁護士等を懲戒した場合,遅滞なく,懲戒の処分の内容を官報をもって公告しなければなりません(弁護士法64条の6第3項)。
(2) 日弁連は,弁護士会又は日弁連が対象弁護士等を懲戒した場合,懲戒の処分の内容等を機関雑誌である「自由と正義」に掲載して公告します(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程3条参照)。
2 大阪弁護士会による公告
(1) 大阪弁護士会所属の弁護士又は弁護士法人に対する懲戒処分があった場合,懲戒処分の主文及び詳細な理由が大阪弁護士会の機関紙である「月刊大阪弁護士会」(毎月末日発行)(大阪弁護士会HPの「広報誌」参照)に掲載されます。
(2) 大阪弁護士会館13階の会員ロビー掲示板にも,懲戒処分の主文及び詳細な理由が掲載されます。
懲戒制度の最大の問題点は、「懲戒された事例」の具体的事情に関する情報が入手できないことに加えて、「懲戒されなかった事例」が分からないことにあると思っている。これでは、懲戒相当/不相当の分水嶺が見えないので、萎縮効果は勿論のこと、懲戒される範囲もなし崩し的に広がっていく。
— Planar (@makro_planar) September 21, 2023
第2 懲戒処分の通知(日弁連会則68条の3及び68条の4)
1 対象弁護士等に対する通知
弁護士会又は日弁連が対象弁護士等を懲戒した場合,又は懲戒しない旨を決定した場合,対象弁護士等に対し,懲戒の処分の内容及びその理由を書面により通知しなければなりません(懲戒した場合につき弁護士法64条の6第1項,懲戒しない旨を決定した場合につき弁護士法64条の7第1項2号及び同条第2項2号)。
2 日弁連等に対する通知
弁護士会は,対象弁護士等を懲戒した場合,懲戒の手続に付された弁護士法人のほかの所属弁護士会及び日弁連に対し,懲戒の処分の内容及びその理由を書面により通知しなければなりません(弁護士法64条の6第2項)。
3 最高裁判所等に対する通知
弁護士会又は日弁連が業務停止以上の懲戒処分をした場合,遅滞なく,最高裁判所,検事総長その他の官公署に対し,その旨及びその内容を通知しなければなりません(単位弁護士会による懲戒につき日弁連会則68条の3第1項及び懲戒処分の公告及び公表等に関する規程4条,日弁連による懲戒につき日弁連会則68条の3第2項及び懲戒処分の公告及び公表等に関する規程5条)。
4 懲戒請求者に対する通知
弁護士会が対象弁護士等を懲戒し,又は懲戒した旨の決定をした場合,速やかに,懲戒請求者に対し,その旨及びその理由を書面により通知しなければなりません(日弁連会則68条の4第1項)。
その際,日弁連に対して異議の申出ができる旨を教示しなければなりません(日弁連会則68条の4第2項)。
第3 懲戒処分の公表
1 弁護士会の場合
弁護士会は,懲戒処分の効力発生後,懲戒処分の内容を速やかに公表することがあります(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程6条)ものの,戒告の場合は原則として公表しません。
2 日弁連の場合(日弁連会則68条の2第1項参照)
日弁連は,業務停止,退会命令又は除名の場合,懲戒処分の効力発生後,原則として速やかに公表します(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程7条本文及び懲戒処分の公表等に関する規則)。
日弁連は,戒告の場合,弁護士,弁護士法人,弁護士会又は日弁連に対する国民の信頼を確保するために必要と認めるときに限り,公表することができます(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程7条ただし書及び懲戒処分の公表等に関する規則)。
1時間でできる仕事をすぐせずに数か月そのままにしてしまう状態。なぜそんな状態になるのか疑問を持つ者がいるかもしれないが、仕事をいくつも抱えていて、さらに、他の急ぐべき仕事が次々入る状況であれば、上記の状態になることはありうる。見込み作業時間と優先度が仕事の着手順を左右する。
— 光 の 射 す 地 平 線 へ (@sunrise_3uphika) February 5, 2023
第4 懲戒処分の事前公表
1 弁護士会の場合
(1) 弁護士会は,綱紀委員会に事案の調査を求めたとき,又は懲戒委員会に事案の審査を求めたときは,懲戒に関する処分前であっても,会則又は会規に定めるところにより,対象弁護士の氏名等を公表することができます(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程8条参照)。
(2) 平成29年10月11日効力発生の,弁護士法人アディーレ法律事務所に対する業務停止2か月の懲戒処分の場合,懲戒処分の事前公表はされませんでした(弁護士自治を考える会HPの「『アディーレ処分から見える 弁護士組織の“悪質”なる定義』」参照)。
2 日弁連の場合(日弁連会則68条の2第2項参照)
日弁連は,綱紀委員会に事案の調査を求めたとき,又は懲戒委員会に事案の審査を求めたときは,懲戒に関する処分前であっても,日弁連又は弁護士及び弁護士法人に対する国民の信頼を確保するために緊急かつ特に必要と認めるときは,対象弁護士の氏名等を公表することができます(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程9条参照)。
日弁連が「弁護士と言えども私的な発言は表現の自由の対象として広く許されるべき」、「弁護士の報酬を踏み倒す依頼者は許されないという意見自体は妥当」、「正規の報酬を支払えない依頼者は法テラスに行けという点も虚偽の主張を含むものではない」と宣言したのは大きいね。ちょっと見直したよw https://t.co/t5pFqNQouC
— W h i c h (今は社会的距離を保ってね) (@which0623) May 23, 2022
第5 弁護士の懲戒処分の官報公告に関する説明
・ 村山晃日弁連副会長は,平成20年12月5日の日弁連臨時総会において以下の説明をしています。
懲戒制度を適正に運営をするということは、弁護士会への市民の信頼を確保し、弁護士自治を堅持するうえで不可欠である。懲戒制度の適正な運営は、まず懲戒処分が適正になされていることが最も大切なことである。しかし併せて、処分がなされた後、処分結果をどう扱っていくのかということも、もう一つの課題だと言える。
そこで、まず導入をされたのが、「自由と正義」に公告をするという制度である。平成15年には弁護士法の改正があり、平成16年からは官報に、戒告も含めてすべての処分が公告をされることになっている。
これと違って公表制度が、平成3年の臨時総会で導入された。「自由と正義」では、一般市民が知ることはできず不十分だということで、創設された。公表は、いわゆる業務停止以上の処分については、原則全部公表をする。戒告については、それぞれ単位会や日弁連の判断で、社会的にこれは公表するべきだと判断をされたものについてのみ公表をする。この5年間で今日時点まで165件の戒告事例があり、公表をされたのは6件となっている。そういう意味では、戒告については公表されていないケースがほとんどだとご理解をいただきたい。
ただ、平成16年に官報公告が始まった結果、戒告もすべてこの公告の対象になるので、大変広い範囲の人たちが、結果的には弁護士の処分を知りうる状況になっている。
こいつ、腐ってやがる…!遅すぎたんだ…!#弁護士 #法律事務所 #漫画 #四コマ漫画 #エッセイ漫画 #漫画が読めるハッシュタグ #マンガが読めるハッシュタグ #たぬじろう #食っていけない弁護士 pic.twitter.com/2SLgFme9H8
— 【漫画】弁護士のたぬじろう (@B_Tanujiro) March 4, 2022
第6 関連記事その他
1(1) 奈良地裁平成20年11月19日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています。
弁護士会が、綱紀委員会や懲戒委員会の懲戒に関する意見表明の前に、当該弁護士に詐欺・横領等の可能性が濃厚であることを公表することについても、それが当該弁護士に対する著しい不利益処分であり、ときにその名誉・信用を甚だしく毀損し回復不可能な損害を与える場合があることに照らせば、これを認める法令・会則等の規定があるか、又は当該弁護士の非行が重大であって、公表せずにいることによる依頼者等への被害の発生及び拡大が明白であり、公表の緊急の必要性があると認められる場合でなければ、公表することは許されないというべきところ、当時、被告弁護士会につきかかる公表をすることができる旨を定めた法令ないし会則等の規定が存在したことは認められない。
(2)ア 国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,具体的事情の下において,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは,その不行使により被害を受けた者との関係において,国家賠償法1条1項の適用上違法となります(最高裁平成26年10月9日判決。なお,先例として,最高裁平成16年4月27日判決,最高裁平成16年10月15日判決参照)。
イ 主務大臣の安衛法に基づく規制権限は,労働者の労働環境を整備し,その生命,身体に対する危害を防止し,その健康を確保することをその主要な目的として,できる限り速やかに,技術の進歩や最新の医学的知見等に適合したものに改正すべく,適時にかつ適切に行使されるべきものです(最高裁令和3年5月17日判決。なお,先例として,最高裁平成16年4月27日判決,最高裁平成26年10月9日判決)。
2 以下の記事も参照してください。
・ 弁護士の懲戒事由
・ 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例
・ 弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義
・ 弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めた弁護士職務基本規程の条文
・ 「弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(平成5年以降の分)
→ 令和元年の場合,審査請求の件数は30件であり,原処分取消は3件であり,原処分変更は1件です。
・ 弁護士会の懲戒手続
嫌な依頼者だと、同じ作業でも取りかかるまでに多大な時間と労力を要する。
弁護士サイドで、仕事は仕事と割り切ってフラットに考えられればいいのだが、依頼者サイドも弁護士を困らせるようなことがないような言動を心がけてほしい。
全部自分に返ってくるよ。— ついぶる (@harvey61616) January 4, 2023