その他裁判所関係

飯島暁裁判官(59期)の経歴

生年月日 S48.8.12
出身大学 早稲田大
退官時の年齢 43 歳
H28.9.15 辞職
H27.4.1 ~ H28.9.14 法総研研修第三部教官
H24.4.1 ~ H27.3.31 鹿児島家地裁判事補
H21.4.1 ~ H24.3.31 山口家地裁判事補
H18.10.16 ~ H21.3.31 大阪地裁判事補

*1 平成28年8月26日の盗撮により,東京都迷惑防止条例違反(盗撮)に基づき警視庁四谷署に逮捕され,同月29日に公表されました。
*2 飯島暁検事に対する処分説明書(停職3月)(平成28年9月15日付)には,「処分の理由」として以下の記載があります。
   被処分者は,平成28年8月26日午後6時半頃,東京都新宿所在のJR新宿駅ホームにおいて,所持していた動画撮影機能付き携帯電話機を,氏名不詳の女性の後方からスカート内に差し向けてスカート内の下着などを撮影し,もって公共の場所において,人を著しく羞恥させ,かつ,人に不安を覚えさせるような行為をしたものである。
*3 平成29年6月1日,レイ法律事務所(代表者は平成23年9月登録の佐藤大和弁護士)にパラリーガルとして就職しました(国家公務員の再就職状況の公表(平成30年9月21日付)末尾45頁(PDF46頁))。
*4 以下の記事も参照してください。
・ 昭和27年4月発覚の刑事裁判官の収賄事件(弾劾裁判は実施されず,在宅事件として執行猶予付きの判決が下り,元裁判官は執行猶予期間満了直後に弁護士登録をした。)
・ 報道されずに幕引きされた高松高裁長官(昭和42年4月28日依願退官,昭和46年9月5日勲二等旭日重光章)の,暴力金融業者からの金品受領
・ 法務省出向中の裁判官に不祥事があった場合の取扱い
・ 性犯罪を犯した裁判官の一覧

類型ごとの戦後補償裁判に関する最高裁判例

目次
第1 類型ごとの戦後補償裁判に関する最高裁判例
第2 関連記事その他

第1 類型ごとの戦後補償裁判に関する最高裁判例
・ 最高裁判所判例解説 民事篇(平成19年度)(上)409頁ないし411頁によれば以下のとおりです。

1 請求権放棄に伴う補償請求型の事件に関する最高裁判例

・ サンフランシスコ平和条約等において,日本国政府が,国民の有していた在外資産を戦争賠償に充当する趣旨で処分したり,連合国又は連合国民に対する戦争被害に係る国民の請求権を放棄したのは,憲法29条3項に基づく損失補償の対象となるなどとして,在外資産を保有していた者又は連合国に対する損害賠償請求権を有していた旨を主張する者が原告となり,国に対し,補償又は賠償を求める類型の事件です。
・ ①カナダ在外資産補償請求訴訟に関する最高裁大法廷昭和43年11月27日判決,②サンフランシスコ平和条約19条(a)に関する最高裁昭和44年7月4日判決,及び③シベリア抑留者補償請求訴訟に関する最高裁平成9年3月13日判決があります。

2 援護立法の不備主張型の事件に関する最高裁判例

・ 戦傷病者戦没者遺族等援護法や恩給法による戦争被害の救済が狭きに失しているとして,その支給対象とならなかった者(一般民間人被災者,国籍条項に係る欠格者等)が原告となり,立法不作為を理由に国家賠償を請求し,あるいは欠格事由を定める国籍条項の違憲無効を理由に受給請求却下処分の取消しを請求するなどの類型の事件です。
・ ①一般民間人被災者に関する最高裁昭和62年6月26日判決,②台湾住民である軍人軍属に関する最高裁平成4年4月28日判決,③在日韓国人である軍人軍属に関する最高裁平成13年4月5日判決最高裁平成13年11月16日判決最高裁平成13年11月22日判決最高裁平成14年7月18日判決最高裁平成16年11月29日判決があります。

3 戦争遂行過程の違法行為追及型の事件に関する最高裁判例
・ 戦争遂行過程で日本軍兵士や日本企業が犯した犯罪行為につき,国又は当該企業を被告として損害賠償責任を追及するという類型です。
   この類型に属する事件には,婦女子に関する監禁暴行事件,強制連行・強制労働事件,捕虜虐待・非戦闘員虐殺事件等の多様なものが含まれています。
   提訴時期は,概ね,平成3年以降であり,国別では,当初は韓国関係が多かったが,平成7年ころから中国人を原告とする事件が多数提訴されるようになり, 最高裁平成19年4月27日判決当時の主流を占めるようになっていました。
・ 中国人の強制連行・強制労働に関する最高裁平成19年4月27日判決(第一小法廷)及び最高裁平成19年4月27日判決(第二小法廷)があります。

第2 関連記事その他
1 原爆被爆者対策基本問題懇談会意見報告-原爆被爆者対策の基本理念及びその基本的在り方について-(昭和55年12月11日付)は,最高裁昭和53年3月30日判決に言及していますところ,そこには例えば,以下の記載があります(リンク先のPDF10頁)。
    原爆被爆者に対する対策は、結局は、国民の租税負担によって賄われることになるのであるが、殆どすべての国民が何らかの戦争被害を受け、戦争の惨禍に苦しめられてきたという実情のもとにおいては、原爆被爆者の受けた放射線による健康障害が特異のものであり、「特別の犠牲」というべきものであるからといって、他の戦争被害者に対する対策に比し著しい不均衡が生ずるようであっては、その対策は、容易に国民的合意を得がたく、かつまた、それは社会的公正を確保するゆえんでもない。この意味において、原爆被爆者対策も、国民的合意を得ることのできる公正妥当な範囲に止まらなければならないであろう。
2 総務省HPの「旧独立行政法人平和祈念事業特別基金の公表文書」には,①恩給欠格者問題,②戦後強制抑留者問題及び③在外財産問題に関する資料が載ってあります。
3 以下の記事も参照してください。
・ 日本の戦後賠償の金額等
・ 在外財産補償問題
・ 平和条約における請求権放棄条項に関する3つの説及び最高裁判例
・ 最高裁平成19年4月27日判決が判示するところの,サンフランシスコ平和条約の枠組みにおける請求権放棄の趣旨等
・ 日韓請求権協定
・ 在日韓国・朝鮮人及び台湾住民の国籍及び在留資格
・ 日中共同声明,日中平和友好条約,光華寮訴訟,中国人の強制連行・強制労働の訴訟等

最高裁平成19年4月27日判決が判示するところの,サンフランシスコ平和条約の枠組みにおける請求権放棄の趣旨等

目次
第1 最高裁平成19年4月27日判決が判示するところの,サンフランシスコ平和条約の枠組みにおける請求権放棄の趣旨等
第2 関連記事

第1 最高裁平成19年4月27日判決が判示するところの,サンフランシスコ平和条約の枠組みにおける請求権放棄の趣旨等
・ 最高裁平成19年4月27日判決は以下の判示をしています(判決文からの抜粋であり,ナンバリング及び改行を追加しました。)。

1 サンフランシスコ平和条約は,個人の請求権を含め,戦争の遂行中に生じたすべての請求権を相互に放棄することを前提として,日本国は連合国に対する戦争賠償の義務を認めて連合国の管轄下にある在外資産の処分を連合国にゆだね,役務賠償を含めて具体的な戦争賠償の取決めは各連合国との間で個別に行うという日本国の戦後処理の枠組みを定めるものであった。
   この枠組みは,連合国48か国との間で締結されこれによって日本国が独立を回復したというサンフランシスコ平和条約の重要性にかんがみ,日本国がサンフランシスコ平和条約の当事国以外の国や地域との間で平和条約等を締結して戦後処理をするに当たっても,その枠組みとなるべきものであった(以下,この枠組みを「サンフランシスコ平和条約の枠組み」という。)。
   サンフランシスコ平和条約の枠組みは,日本国と連合国48か国との間の戦争状態を最終的に終了させ,将来に向けて揺るぎない友好関係を築くという平和条約の目的を達成するために定められたものであり,この枠組みが定められたのは,平和条約を締結しておきながら戦争の遂行中に生じた種々の請求権に関する問題を,事後的個別的な民事裁判上の権利行使をもって解決するという処理にゆだねたならば,将来,どちらの国家又は国民に対しても,平和条約締結時には予測困難な過大な負担を負わせ,混乱を生じさせることとなるおそれがあり,平和条約の目的達成の妨げとなるとの考えによるものと解される。

2(1) サンフランシスコ平和条約の枠組みにおける請求権放棄の趣旨が,上記のように請求権の問題を事後的個別的な民事裁判上の権利行使による解決にゆだねるのを避けるという点にあることにかんがみると,ここでいう
請求権の「放棄」とは,請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく,当該請求権に基づいて裁判上訴求する権能を失わせるにとどまるものと解するのが相当である。
   したがって,サンフランシスコ平和条約の枠組みによって,戦争の遂行中に生じたすべての請求権の放棄が行われても,個別具体的な請求権について,その内容等にかんがみ,債務者側において任意の自発的な対応をすることは妨げられないものというべきであり,サンフランシスコ平和条約14条(b)の解釈をめぐって,吉田茂内閣総理大臣が,オランダ王国代表スティッカー外務大臣に対する書簡において,上記のような自発的な対応の可能性を表明していることは公知の事実である。
(2)   被上告人らは,国家がその有する外交保護権を放棄するのであれば格別,国民の固有の権利である私権を国家間の合意によって制限することはできない旨主張するが,国家は,戦争の終結に伴う講和条約の締結に際し,対人主権に基づき,個人の請求権を含む請求権の処理を行い得るのであって,上記主張は採用し得ない。

3 
「日本国とマレイシアとの間の1967年9月21日の協定」2条は,「マレイシア政府は,両国間に存在する良好な関係に影響を及ぼす第二次世界大戦の間の不幸な事件から生ずるすべての問題がここに完全かつ最終的に解決されたことに同意する。」というやや抽象的な表現となっており,表現としては唯一の例外といえるが,同協定がサンフランシスコ平和条約やそれ以後の前記二国間平和条約における請求権の処理と異なった請求権の処理を定めたものと解することはできず,この条項も,個人の請求権を含めて戦争の遂行中に生じたすべての請求権を相互に放棄するサンフランシスコ平和条約の枠組みに従う趣旨のものと解される。

4 日中共同声明5項の文言上,「請求」の主体として個人を明示していないからといって,サンフランシスコ平和条約の枠組みと異なる処理が行われたものと解することはできない。

5 日中共同声明は,サンフランシスコ平和条約の枠組みと異なる趣旨のものではなく,請求権の処理については,個人の請求権を含め,戦争の遂行中に生じたすべての請求権を相互に放棄することを明らかにしたものというべきである。

第2 関連記事
 日本の戦後賠償の金額等
 在外財産補償問題
 平和条約における請求権放棄条項に関する3つの説及び最高裁判例
 日韓請求権協定
・ 在日韓国・朝鮮人及び台湾住民の国籍及び在留資格
・ 日中共同声明,日中平和友好条約,光華寮訴訟,中国人の強制連行・強制労働の訴訟等

最高裁判所は大審院の後身ではないこと

第1 最高裁大法廷昭和23年7月19日判決
第2 関連記事その他

第1 最高裁大法廷昭和23年7月19日判決
・ 最高裁大法廷昭和23年7月19日判決は,以下のとおり判示しています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。

1 大審院は、明治憲法と裁判所構成法とに基く組織と構成と権限を有する裁判所であり、最高裁判所は、厳粛な歴史的背景の下に、日本国憲法と裁判所法とに基く組織と構成と権限を有する裁判所である。
   共に司法権を行使する機関であり又わが国における最上級の裁判所であるという関係において、相互の間にもとより幾多の類似点がないのではないが、両者の組織、構成、権限、職務、使命及び性格が著しく相違することは、敢て多言を要しないところである。
   従つて、最高裁判所は所論のように、大審院の後身でもなく、その承継者でもなく、又両者の間に同一性を認めることもできない。
   されば、論旨のごとく大審院に繋属した事件は、最高裁判所において当然継承して審判しなければならぬという道理もなく、かかる憲法の法意が存在するとも考えられない。
2   最高裁判所の裁判権については、違憲審査を必要とする刑事、民事、行政事件が終審としてその事物管轄に属すべきことは、憲法上要請されているところであるが(第八一条)、その他の刑事、民事、行政事件の裁判権及び審級制度については、憲法は法律の適当に定めるところに一任したものと解すべきである。
   そして、最高裁判所は必ずしも常に訴訟の終審たる上告審のみを担任すべきものとは限らない。
   外国の事例も示すように時に第一審を掌ることも差支えない(裁判所法第八条参照)。
   又必ずしも常に最高裁判所のみが終審たる上告審の全部を担任すべきものとは限らない。他の下級裁判所が同時に上告審の一部を掌ることも差支えない。
3   わが国の過去においても下級裁判所たる控訴院が上告の一部を取扱つた事例もあり、又現在においても下級裁判所たる高等裁判所が地方裁判所の第二審判決及び簡易裁判所の第一審判決に対する上告について、裁判権を有している(裁判所法第一六条)。
   その間における法律解釈統一の問題は、他におのずから解決の方法が幾らも存在し得る。
   されば、裁判所法施行令第一条が、「大審院においてした事件の受理その他の手続は、これを東京高等裁判所においてした事件の受理その他の手続とみなす」旨を規定したのは、毫も憲法の法意又は裁判所法第七条の規定に牴触する違法ありとは考えられない。第2 関連記事その他
1 国立公文書館アジア歴史資料センターアジ歴グロッサリーHP「大審院」が載っています。
2 大審院判例簡易化ソフトとして韋駄天(いだてん)があります。
3 以下の記事も参照してください。
・ 戦前の裁判官の報酬減額の適法性に関する国会答弁
・ 戦前の判事及び検事の定年
・ 裁判官及び検察官の定年が定められた経緯(日本国憲法の制定経緯を含む。)

裁判官の配偶者同行休業,育児休業等に関する国会答弁

目次
1 裁判官の配偶者同行休業,育児休業等に関する国会答弁
2 関連記事その他

1 裁判官の配偶者同行休業,育児休業等に関する国会答弁
・ 35期の安浪亮介最高裁判所人事局長は,平成25年11月8日の衆議院法務委員会において,以下のとおり答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しました。)。

① 裁判官の昇給につきましては、裁判官の報酬等に関する法律三条によりまして、最高裁判所が定めることとされております。具体的には、各裁判官の勤務状況、経験年数等を考慮して個別に決定しておるところでございます。
    御質問の昇給への影響の点でございますけれども、配偶者同行休業の期間中には報酬の支給がございませんので昇給自体は行いませんが、復職後に同期の裁判官と同じ給与への昇給を行うということにより、給与上の不利益を受けることのないように対処してまいることを考えております。
② 裁判官につきましても、休業期間中、裁判所共済組合の組合員となっております。そのため、休業期間中も国家公務員共済組合制度が適用され、組合員本人が掛金を、また事業主であります国が負担金を負担するということになると考えております
③ 配偶者同行休業を取得した裁判官につきましても、休業中に自己研さんに努めてもらうという必要性はそのとおりだと考えております。
    復帰後のことでございますけれども、私どもでは、司法研修所というところでさまざまな研修を実施しておりまして、この研修の多くが公募制、自分で手を挙げて参加するという仕組みになっております。休業から復帰した裁判官につきましても、こういう研修の機会を積極的に活用してもらいたいというふうに考えております。
    また、復帰後の人事配置の点でございます。これも、休業期間がどれぐらいの期間であったのかということにもよるんだろうとは思いますけれども、いずれにしましても、復帰後、円滑に職務が遂行できるよう、必要な配置上の配慮をしてまいりたいと考えております。
④ この制度が始まりました後、裁判官が何人ぐらいこの制度を利用するかという潜在的なニーズの点でございますけれども、現時点での私どもの予測としては、年間二、三名程度かなというふうに推測しておるところでございます。
  その理由でございますけれども、一つは、先ほど委員御指摘のとおり、この五年間、平成二十年から二十四年度の間で退官した裁判官のうち、配偶者の海外転勤等に同行することを理由とした者が五名でございまして、平均しますと年間一人ということでございます。
そのほかに考え得る点といたしましては、現在、若い判事補が留学に出ておりますけれども、その留学に出ております配偶者もまた同じように裁判官という者がこの五年間では十一名ほどおります。したがいまして、年間二人ぐらい。その二人が可能性のある者というふうに考えておりますので、先ほど申しましたとおり、二、三人かなと思います。
    それから、現在、配偶者が海外に赴任しておりまして、にもかかわらず日本で裁判官を続けておる者の数というのは把握しておりません。
    あと、取り急ぎ、東京地裁と大阪地裁におります判事補に、こういう制度があったら利用したいかというようなことを聞いてみたことはございます。そうしますと、やはり九割を超える者が、この制度ができれば利用したいというような声がございます。
⑤ 平成二十年度から平成二十四年度までの五年間についてお答え申し上げます。
   女性裁判官の育児休業の取得率でございますけれども、平成二十年度が九三・五%、平成二十一年度及び二十二年度が一〇〇%、平成二十三年度が九七・六%、平成二十四年度が一〇〇%でございます。
  今申し上げましたそれぞれの年度におきまして、新規に育児休業を取得した者の平均取得期間でございますけれども、平成二十年度が約十七カ月、平成二十一年度が約十六カ月、平成二十二年度が約十七カ月、平成二十三年度が約十五カ月、平成二十四年度が約十四カ月となっております。
⑥ 裁判官の休暇制度につきましては、その職務の性質に反しません限り、一般職の国家公務員と同様の取り扱いとなっております。子の看護休暇制度は裁判官にも導入されております。
   その一方で、短時間勤務制度は設けておりません。これは、裁判官につきましては、その職務の性質上、明確な勤務時間の定めがございません。夜間も記録や資料を読んで判決の起案をするというようなこともございまして、裁判官の執務を一定の時刻、時間によって画するということがなじまないということからきているものでございます。
⑦   妊娠中の女性裁判官に対しまして、特別の制度を設けて何かしておるということはございませんが、配属庁におきましては、当該女性裁判官の体調に応じまして、先ほども申し上げましたとおり、令状事務の担当を外したり軽減したりということもしておりますし、体調不良時の応援体制をあらかじめ整備したりするなど、きめ細やかな配慮をしているものと承知しております。
⑧ 先ほど申し上げました、平成二十年度から平成二十四年度までの五年間でお答え申し上げます。
   男性裁判官の育児休業取得率でございますけれども、平成二十年度及び平成二十一年度は取得者がおらず、〇%ということになります。平成二十二年度は四・三%、平成二十三年度は一三・二%、平成二十四年度は一・四%でございます。
⑨ 分母になっております数字が、男性裁判官の配偶者が出産を迎えている、そういうものが母数になります。したがいまして、男性裁判官の母数が少ないこともありまして、一人とか二人とかという、数字が変動すると大きくパーセンテージがずれていくということによるものでございます。
    ただ、最初の二年度はゼロでございましたけれども、その後の三年間には数字が少し出てきておりますので、今後はもう少し数字が上がるのではないかと考えております。
⑩ 裁判官につきましても、一般職の国家公務員と同様に、配偶者出産休暇及び育児参加休暇の制度がございます。
    配偶者出産休暇は、二日の範囲内で、妻の出産に伴う入退院の付き添い等を行う男性裁判官に与えられるものでございます。また、育児参加休暇は、五日の範囲内で、妻の産前産後期間中に子を養育する男性裁判官に与えられるものでございます。いずれの休暇も有給休暇でございます。
⑪ 先ほど申し上げました過去五年間で申し上げます。
    男性裁判官の育児参加休暇の一日以上の取得率でございますけれども、平成二十年度が一一・五%、平成二十一年度が三・四%、平成二十二年度が一七・四%、平成二十三年度が二四・五%、平成二十四年度が三七・五%でございます。
⑫ 同じ五年間で申し上げます。
    男性裁判官の配偶者出産休暇の一日以上の取得率でございますが、平成二十年度が三〇・八%、平成二十一年度が三三・九%、平成二十二年度が四七・八%、平成二十三年度が四九・一%、平成二十四年度が五二・八%でございます。
⑬ この法律に基づきます配偶者同行休業期間中におきましても、裁判官たる身分を失わない以上、当然裁判官の職にあったと言えますので、育児休業期間中と同じく、任命資格の期間計算上は配偶者同行休業期間も通算されるということになります。
  判事の再任、それから判事補から判事への任命につきましては、下級裁判所裁判官指名諮問委員会に諮問をして、同委員会におきまして、能力、資質の点で判事への指名適当との答申がされた者について判事に任命するという取り扱いをしておるところでございます。
    この委員会におきましては、任期十年間の執務状況についても検討していただいているところでございます。そうしますと、例えば、休業期間が相当に長く、現に執務していた期間のみではこの指名の適否の判断が困難だというような場合も出てくるかもしれません。そういう場合には、休業期間中の自己研さんの状況というようなものも参考にされることも出てまいるのではないかと考えております。


2 関連記事その他
(1) 平成13年10月に育児休業を取得した男性裁判官は46期の平野哲郎大阪地家裁判事補(昭和44年10月30日生まれ)のことです。
 同人は,育児休業について周囲の理解が得られなかったこと等を理由に,平成14年3月31日に依願退官しています。
(2) 育児休業制度は,義務教育諸学校等の女子教育職員及び医療施設、社会福祉施設等の看護婦、保母等の育児休業に関する法律(昭和50年7月11日法律第62号)にもとづき,昭和51年4月1日に開始しました。
(3)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判官の育児休業,介護休暇,配偶者同行休業取得者数(平成18年から平成27年まで)
・ 裁判所における出産・育児と仕事を両立させるための制度(最高裁判所事務総局)
・ 裁判所職員のための両立支援制度ハンドブック~妊娠・出産編~(平成29年7月)
・ 裁判所職員のための両立支援制度ハンドブック~育児編~(平成29年8月)
・ 裁判所職員のための両立支援制度ハンドブック~介護編~(平成29年3月)
・ 裁判所職員のための両立支援制度ハンドブック~フレックスタイム制編~(平成29年5月)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 裁判官の育児休業に関する国会答弁

裁判官の育児休業に関する国会答弁

目次
1 平成3年12月16日の国会答弁
2 平成13年11月16日の国会答弁
3 平成21年11月27日の国会答弁
4 令和4年3月4日の国会答弁
5 関連記事その他

1 平成3年12月16日の国会答弁
・ 泉徳治最高裁判所人事局長は,平成3年12月16日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① 現在女性の裁判官は百五十五人でございまして、そのうち九十七人が結婚をいたしております。
   それからこの女性の裁判官の出産でございますが、昨年女性裁判官で出産いたしました者は九人でございます。過去五年間の平均をとりますと、平均八人の女性裁判官が出産をいたしております。
② この育児休業法ができましたときには何人ぐらいの育児休業をとる者が予想されるかという御質問でございますけれども、平均でまいりますと、最大八人とる可能性はございます。
   ただ、現在女子教職員等について育児休業制度というのはできておりますが、それの取得率を見ますと、七割というふうに聞いておりますので、七割といたしますと、六人ということになります。六人から八人程度の者がとることが予想されるわけでございます。

2 平成13年11月16日の国会答弁
・ 21期の金築誠志最高裁判所人事局長は,平成13年11月16日の衆議院法務委員会において,以下のとおり答弁しています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① この育児休業制度が施行されましたのは平成四年の四月一日からでございます。それから本年の九月一日現在まででほぼ十年弱でございますが、育児休業をとった裁判官は合計百十四人でございます。その後、現在までにまた数人ふえております。
 男女別で申しますと、今申し上げました九月一日までの百十四人は全員女性の裁判官でございまして、その後現在までに取得した数名の中の一名が男性でございます。
② 復帰するときのポジションという御質問で、判事補が育児休業をとりまして、任期内であればまた判事補に戻る、それから、育児休業中に異動をさせるということは普通は考えられませんので、例えばある裁判所に配置されている裁判官であれば、同じその裁判所の裁判官として戻るということになると思います。ですから、原則として同じポジションに戻るということになりましょうか。

 今例としてお尋ねになりました、九年目の判事補が三年間育児休業を取得してどういう形で戻るのかという御質問だったかと思いますが、この場合は、途中で、判事補の任期が十年で終了いたしまして判事へ任命する、俗称は再任と申しておりますが、この問題がちょっと絡みますので、こうした点についても育児休業を取得することによる不利益を負わせないという基本的な姿勢で考えていくべきものかと思いますけれども、再任自体については、これは裁判官に対しての新しい任命でございますので、いろいろなほかの問題もございまして、総合的な見地から判断して決定していかなければならない。ですから、九年目で三年やった場合にはどういう形で戻るかということを一律に申し上げるということがなかなかできないんじゃないかと思っております。
③ いわゆる宅調というものは、これは昔、裁判所の施設、部屋、机等も十分でなかった時期に、非開廷日には家で判決を書いたり記録を検討したりするということで事実上かなり行われていた制度でございまして、現在でも、例えば判決を集中して書く、特に長い大きな判決を書くときなどは、役所へ参りますとどうしても電話がかかってきたりいろいろな人が来たりして、十分落ち着いて、妨げられずにできにくいということで、事実上自宅でそういう仕事をする。これが宅調と言われているものでございますが、これは、今申し上げましたように、あくまでも仕事のために必要なときにするということで、育児というようなものを宅調制度を利用してやるというのは、ちょっと考えられないのではないか。
   仕事、育児を担う裁判官について、育児休業制度以外の面で裁判所がどういう配慮、努力をするかという点では、事件の分担などは各裁判所が事務分配で自律的に決めておりますが、そういう場合にある程度何かの配慮をしているというケースもあるかもしれませんし、任地でございますと、育児について協力してくれる親御さんがおりますと、できるだけその近くに配置してあげるとか、そういうふうないろいろな配慮はしております。

④ まず現在から申し上げますと、十月十七日現在の数でございますが、全裁判官三千六人のうち、女性は三百七十九人、一二・六%でございます。内訳を申し上げますと、判事が千四百十四人中百二十九人で九・一%、判事補が八百人中百九十七人で二四・六%、簡裁判事が七百九十二人中五十三人で六・七%。今申し上げましたように、判事補の割合が圧倒的に高うございます。ということは、つまり、最近の若い方の女性の比率が非常にふえておりまして、非常に増加傾向にあるということでございます。

3 平成21年11月27日の国会答弁
・ 29期の大谷直人最高裁判所人事局長は,平成21年11月27日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 今の御質問(山中注:平成4年4月1日の育児休業制度の開始以来,育児休業を取得した男性裁判官は何人であるかという質問)の点については、男性裁判官は一名でございます。
② 最高裁としましては、育児休業を申し出られた際にはすべてこれを認めるという運用で来ているわけでございます。女性裁判官につきましては、ですからかなりの数が申し出られているわけでございますが、裁判官については今御指摘のとおりということでございます。ちょっと原因について、なぜ取得しないのかということはつまびらかではありませんが、いずれにせよ今回の改正でその環境整備をしていきたいと、こんなふうには考えております。
③ まず私どもとしては、何といっても言わばユーザーといいますか若い世代の裁判官がこの制度について正しく理解しているということが必要だろうと思うわけでありまして、この点については、判事補に任官したこの時点の、この段階から育児休業制度の趣旨あるいは内容、利用方法というものは十分説明してまいりました。
 さらに、それぞれの各庁におきまして、所長が妊娠の事実を把握したときには、改めてこういう制度があるということについての注意を喚起してまいりましたし、それからまた、育児休業を取得しやすい職場の雰囲気づくりということであれば、これは部総括裁判官、受け入れる側の部総括裁判官の認識あるいは理解も十分必要だろうと思うわけで、この点については、部総括の研究会でこれまでもその重要性について、制度の重要性についてはいろいろ告知をしてきたところでございます。その運用、こういった運用、いろいろな機会において、更に今回の改正がされた際には、その制度の趣旨を含めて十分伝えていきたいと、このように考えております。


4 令和4年3月4日の国会答弁
・ 47期の小野寺真也最高裁判所総務局長は,令和4年3月4日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
 裁判官が育休を取得した場合でありましても、全国的規模の異動、所属裁判所内での配置換え、事件配填の変更、係属事件の配填替えなどの措置を講ずることで、裁判等の事務に支障が生じないよう対応しておりますほか、各庁に裁判官を配置するに当たりましては、こうした事情も総合考慮して配置を行っているところであります。
 今回の判事補四十人の減員につきましては、充員の状況のほか、育休取得等の観点も考慮に入れました上で、減員しても将来の事件処理に支障を生じさせない範囲であるというふうに考えておりまして、今後も引き続き、裁判官の育休取得に対しても適切な対応を行っていくことができるものと考えております。

5 関連記事その他

(1) 平成13年10月に育児休業を取得した男性裁判官は46期の平野哲郎大阪地家裁判事補(昭和44年10月30日生まれ)のことです。
 同人は,育児休業について周囲の理解が得られなかったこと等を理由に,平成14年3月31日に依願退官しています。
(2) 東北大学法科大学院メールマガジン第50号(2009年11月30日付)には49期の高橋彩裁判官の発言として以下のものがあります。
① 今は育休期間が3年になりましたが、実際に3年間取得している人は少ないと思います。それは取得できないからではなく、その期間中に職場に戻りたくなってしまうからだと思います。やはりずっと家にいると、職場に戻りたくなってしまうので、育休の取得期間は長い人で2年、一般的なのは1年であると思われます。男性も育休を取得できますが、男性で取得する人は少ないです。
② ご夫婦で裁判官をやっている人は、基本的には、任官して最初のうちはほとんど一緒に異動していますし、同じ裁判所に勤めなくとも同居して通える範囲に赴任している人が多いです。検察官と裁判官のご夫婦の場合も、検察官の異動は2年毎、裁判官は3年毎なのでずれてしまいますが、できるだけ同居できるようにしてもらっている人が多いと思います。ただし、これは若いうちのみで、子供がある程度大きくなりそれなりの地位になると、やはり別居する場面はあると思います。

(3)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判官の育児休業,介護休暇,配偶者同行休業取得者数(平成18年から平成27年まで)
 裁判所における出産・育児と仕事を両立させるための制度(最高裁判所事務総局)
・ 裁判所職員のための両立支援制度ハンドブック~妊娠・出産編~(平成29年7月)
 裁判所職員のための両立支援制度ハンドブック~育児編~(平成29年8月)
・ 裁判所職員のための両立支援制度ハンドブック~介護編~(平成29年3月)
・ 裁判所職員のための両立支援制度ハンドブック~フレックスタイム制編~(平成29年5月)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 裁判官の配偶者同行休業,育児休業等に関する国会答弁

平成20年度以降,任期終了により退官した裁判官の一覧

目次
第1 平成20年度以降,任期終了により退官した裁判官の一覧
第2 各種注記
第3 関連記事その他

第1 平成20年度以降,任期終了により退官した裁判官の一覧
令和7年
3月31日:
46期の小林邦夫

令和6年
10月16日
57期の西田祥平
4月13日46期の丸山徹

令和5年
4月 9日:
45期の中島栄
1月16日:
65期の蕪城真由子

令和4年
10月16日:
55期の斎藤岳彦
4月 7日:
44期の金光秀明
3月31日:
53期の目黒大輔
1月16日:
64期の池上絵美

令和3年
4月 9日:
43期の近田正晴43期の西崎健児
3月31日:36期の泉薫

令和2年
4月10日:42期の大崎良信42期の忠鉢孝史42期の松田浩養42期の山本由利子52期の早田久子52期の藤本ちあき
4月12日:50期の橋本耕太郎

平成31年
4月11日:41期の佐藤美穂41期の飯畑正一郎41期の前田昌宏

平成30年
4月 7日:30期の駒谷孝雄
4月12日:40期の酒井康夫50期の宮本博文


平成29年
4月10日:39期の植野聡49期の常盤紀之49期の佐藤建49期の新阜真由美

平成28年
4月 9日:28期の氣賀澤耕一
4月11日:38期の小池一利48期の堀禎男

平成27年
4月11日:37期の高橋裕37期の源孝治

平成26年
4月 1日:33期の石田裕一35期の加藤美枝子
4月12日:26期の柴田秀樹
4月13日:46期の河村隆司
10月16日:57期の岸田航

平成25年
4月 9日:45期の山下美和子45期の山本善平
4月10日:25期の紙浦健二25期の有吉一郎
10月 1日:43期の大庭和久

平成24年
4月13日:34期の村田鋭治34期の河野泰義
10月16日:55期の内藤大作

平成23年
4月 1日:28期の伊藤正高
4月 9日:43期の西田時弘43期の左近司映子43期の亀井宏寿43期の早川真一
10月17日:54期の中野智昭54期の井原千恵

平成22年
4月10日:42期の尾﨑智子42期の磯貝祐一52期の櫛橋明香52期の高松晃司

平成21年
4月 1日:25期の島田清次郎26期の田中信義26期の布村重成
4月 9日:31期の荒井九州雄
4月11日:41期の一木泰造41期の村越啓悦41期の山田徹41期の伊沢文子

平成20年
4月 7日:30期の小林秀和30期の畑中芳子
4月11日:27期の木村烈
4月12日:50期の和田はる子50期の新阜創太郎


第2 各種注記
1 ウエストロージャパンHP「法曹界人事」と一緒に見れば分かりやすいです。
2 20期代の任期終了退官の場合,勤続40年となりますから,大学卒業直後に裁判官になっていたとしても,任期更新後,定年までの期間は1年もありません(例えば,10月生まれの場合,定年まで約半年です。)。
   そのため,この場合,実質的には定年退官とほぼ同じです。
3 41期の一木泰造 福岡高裁宮崎支部判事につき,平成21年2月8日,福岡発宮崎行きの高速バスの車内で女子短大生に痴漢行為を働き,同月10日に準強制わいせつ罪で逮捕され,同月27日に起訴されて,同年7月7日に懲役2年執行猶予5年の有罪判決を言い渡されました。
   しかし,任期満了が近かった関係で弾劾裁判が実施されることはありませんでした。
4 11年以上勤務した裁判官が,任期の終了に伴う裁判官の配置等の事務の都合により任期終了1年前に依願退官した場合,定年退官に準ずる支給率で退職手当を支給してもらえます(勤続期間25年未満の裁判官につき国家公務員退職手当法4条1項2号・国家公務員退職手当法施行令3条1号,勤続期間25年以上の裁判官につき国家公務員退職手当法5条1項5号・国家公務員退職手当法施行令4条・3条1号)。


第3 関連記事その他
1(1) 38期の井上薫裁判官は,「諸君!」2006年1月号の80頁ないし88頁に,「あの「靖国傍論」判決批判の裁判官がクビ?我、「裁判干渉」を甘受せず」と題する記事を寄稿していますところ,82頁には以下の記載があります。
     平成一六年一一月のある日、私は、横浜地裁の浅生重機所長から、「判決の理由が短いので改善せよ」と言われた。執務時間中所長室で二人きりの時のことである。
     平成一七年七月一四日、所長面談の時、私は所長から「判決の理由を改善するように言ったのに改善しないので、来年の判事再任は無理である。第二の人生を考えておくように」と言われた。所長面談というのは、所長が裁判官の人事評価をするに先立ち、その裁判官としなければならないものとして制度化された面談であり、公式行事である。余人は立ち会わない。
(2)ア じつは裁判所ってこんな所なんです!PART282頁及び83頁には以下の記載があります。
    私も実際に再任されなかった裁判官を数名見てきましたが、やはり、誰の目から見ても「この裁判官は再任されないかもしれないな」と思われていた方で、実際に再任されなかったというケースがほとんどでした。
(中略)
    「任期終了退官」という形で裁判官を辞めた場合は、問題があって裁判官を続けることができなかったというパターンがほとんどだとは思いますが、中には「10年や20年という節目で任期終了という形で辞めよう」と考えて、再任を希望しなかった裁判官も一部いますので、一概には言い切れない側面もあります。
イ 著者の中村圭二は,平成13年に裁判所職員となり,最高裁,福岡高裁,福岡地裁,福岡家裁,佐賀地裁などで勤務し,令和3年3月に退職しました(司法書士・行政書士K1オフィスHP「これまでの実績」参照)。
2 任命権者が,日々雇用職員に対して,任用予定期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど,右期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものとみられる行為をしたというような特別の事情がある場合には,職員がそのような誤った期待を抱いたことによる損害につき,国家賠償法に基づく賠償を認める余地があり得ます(最高裁平成6年7月14日判決)。
3(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判官の人事評価に関する規則(平成16年1月7日最高裁判所規則第1号)
・ 裁判官の人事評価に関する規則の運用について(平成16年3月26日付の最高裁判所事務総長の依命通達)
・ 裁判官の人事評価の実施等について(平成16年3月26日付の最高裁判所人事局長通達)
・ 裁判官に関する人事事務の資料の作成等について(平成16年5月31日付の最高裁判所人事局長の依命通達)
・ 裁判官の再任等に関する事務について(平成16年6月17日付の最高裁判所人事局長通達)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 下級裁判所裁判官指名諮問委員会委員名簿
・ 下級裁判所裁判官指名諮問委員会で再任不適当とされた裁判官の数の推移
・ 任期終了直前の依願退官及び任期終了退官における退職手当の支給月数(推定)
・ 
裁判官の種類
・ 裁判官の再任の予定年月日,及び一斉採用年月日
・ 裁判官の退官情報
・ 50歳以上の裁判官の依願退官の情報
・ 判事補時代に退官した元裁判官の名簿(令和時代)
 判事補時代に退官した元裁判官507人の名簿(昭和時代及び平成時代)
・ 弁護士任官候補者に関する下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申状況

一票の格差是正前の解散は可能であることに関する政府答弁

目次
第1 昭和60年12月11日の内閣法制局長官の答弁
第2 昭和61年4月23日の内閣法制局長官の答弁
第3 平成23年5月17日の内閣答弁書
第4 関連記事

第1 昭和60年12月11日の内閣法制局長官の答弁
・ 茂串俊内閣法制局長官は,昭和60年12月11日の衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員会において以下の答弁をしています。

1 最高裁判決で違憲とされた議員定数配分規定につきまして是正措置が講じられないうちに衆議院の解散権の行使ができるかという問題につきましては、純粋の法律論としては、そのような解散権の行使が否定されることにはならないというふうに考えておるわけでございます。
2(1) その理由といたしましては、まず衆議院の解散制度は、立法府と行政府の意見が対立するとか国政上の重大な局面が生じまして主権者たる国民の意思を確かめる必要があるというような場合に、国民に訴えてその判定を求めるということを主たるねらいといたしまして、憲法に明定されておる基本的に重要な制度でございまして、この解散権の制度は、同時にまた権力分立制のもとで立法府と行政府との権力の均衡を保つという機能を果たすものであるというふうに言われております。
   そして、このように基本的に重要な機能である解散権につきまして、憲法上これを制約する明文の規定はございません。また、衆議院で不信任決議案が可決されたような場合におきましても解散権の行使が許されないということになりますと、内閣としては総辞職の道しかないことになりまして、憲法69条の趣旨が全うされないということにもなるわけでございます。
(2) さらにまた、解散がございますとそれに伴って総選挙が施行されることになりますけれども、解散は議員の身分を任期満了前に失わせる行為でございます。
   一方、総選挙は解散あるいは任期満了に伴って国民が新たに議員を選任する行為でございまして、それぞれ別々の規定に従って行われる別個のものであるということは明らかでございます。
3 こういったことを総合勘案いたしますと、純粋の法律論として言えば、定数配分規定の改正前における衆議院解散権の行使が否定されることにはならないというふうに考えておる次第でございます。

第2 昭和61年4月23日の内閣法制局長官の答弁
・ 茂串俊内閣法制局長官は,昭和61年4月23日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
1(1) ただいまの御質問には二つの意味があると思うのでございます。
一つは、仮に定数是正が行われなかった場合、実現できなかった場合に、それを理由として解散権の行使ができるかという問題、それから、もしそういうことであれば定数是正が行われる前に選挙が行われることにならざるを得ない、そうなれば違憲の判決がおりているところの定数配分規定によって選挙をすることになるがそれでよいのかという二つの問題があろうかと思うのでございます。
(2) そのうち、第一の問題については、解散権の行使というのは高度な政治的な判断を要する問題でございまして、これは法律的な見地からどうこうという問題ではないと思うのでございます。
   そういう意味で、私からこれこれというふうに直接的な御答弁をいたしますのは差し控えたいと思います。
(3)ア それから、二つ目の問題については、前々から申し上げておりますように、違憲とされる定数配分規定が是正されないままで、すなわち憲法に違反する状態のままで残っていること自体がそもそも法的に言ってあってはならないと申しますか予想されていない異例の事態でございまして、そのような特殊、異例な事態を前提としての処理ということになるわけでございますから、どうしてもそのことが法理論の展開面に反映されるということにならざるを得ないわけでございます。
   その意味におきまして、ただいま国会におかれまして与野党こぞって定数是正の実現にいろいろ御努力されておるということでございますので、このような違憲とされた定数配分規定が一日も早く是正されることを我々としても強く希望しておるところでございます。
イ ところで、任期満了に伴う総選挙でも解散に伴う総選挙でも同じでございますけれども、総選挙しなければ衆議院が組織できないわけでございまして、衆議院が不存在になってしまうということでございます。
   これは憲法に規定する前提から考えて到底放置できない事態であることは当然でございます。
   そこで総選挙をやらざるを得ないといたしまして、その選挙を執行する手続を定めておるものとしては、違憲とされた定数配分規定を含む公職選挙法しかない、ほかに準拠すべき法律がないわけでございますから、政府といたしましては、これに基づいて総選挙を行うほかはないわけであって、それによって憲法全体の秩序を全うすることができると考えておるわけでございまして、この点については過去においても何遍か御答弁申し上げているところでございます。
2 私の立場はあくまでも法律のいわば専門家と申しますか、そういう立場からの御答弁にならざるを得ないわけでございますが、一般的に申しまして衆議院の解散権というのは、言うまでもないことでございますけれども、国政の重大な局面において民意を問う手段として憲法上内閣に与えられた重要な機能でありまして、いかなる場合に衆議院を解散するかについては憲法上これを制約する明文の規定はないわけでございまして、内閣はその政治的責任で決すべきものである旨を述べているわけでございます。

   そういった法律論を私は前々から述べておるわけでございますが、しからばいかなる場合に解散するのが適当かどうかということになりますと、先ほども申し上げましたように内閣の高度の政治的判断に基づいて決定される筋合いのものでございまして、純粋に法律的な立場からとやかく御答弁申し上げることは差し控えたい、かように考えております。

第3 平成23年5月17日の内閣答弁書
・ 最高裁大法廷平成23年3月23日判決において一票の格差は違憲状態であると判示されました。
   このことと関連して,
平成23年5月17日付の,衆議院議員柿澤未途君提出内閣総理大臣の衆議院解散権に関する質問に対する答弁書(内閣衆質177第164号)には以下の記載があります。

一について
お尋ねの衆議院解散権は、内閣が、国政上の重大な局面等において主権者たる国民の意思を確かめる必要があるというような場合に、国民に訴えて、その判定を求めることを狙いとし、また、立法府と行政府の均衡を保つ見地から、憲法が行政府に与えた国政上の重要な権能であり、現行の公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)等の規定の下で内閣が衆議院の解散を決定することは否定されるものではないと考える。
二について
憲法第五十四条の規定により、衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行うこととなる。なお、内閣が衆議院の解散を決定することについて、憲法上これを制約する規定はない。
三について
憲法第五十四条の規定により、衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行うこととされていること等から、選挙期日の特例や任期の特例を規定した御指摘の平成二十三年東北地方太平洋沖地震に伴う地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律(平成二十三年法律第二号)と同様の対応をとることはできないものと考える。
四について
仮定の御質問にお答えすることは差し控えたい。なお、内閣が衆議院の解散を決定することについて、憲法上これを制約する規定はない。

第4 関連記事
・ 衆議院の解散
 衆議院の解散は司法審査の対象とならないこと
 日本国憲法下の衆議院の解散一覧
 一票の格差是正前の解散は可能であることに関する政府答弁
 閉会中解散は可能であることに関する内閣法制局長官の答弁
・ 国会制定法律の一覧へのリンク
・ 衆議院の解散に関する内閣答弁書

大阪地裁の歴代の所長代行者,上席裁判官,大阪簡裁司掌裁判官等

目次
1 大阪地裁の歴代の所長代行者
2 歴代の大阪簡裁司掌裁判官
3 大阪地裁所長代理順序2位の上席裁判官
4 歴代の大阪地裁1民部総括
5 歴代の大阪地裁10刑部総括
6 関連記事

1 大阪地裁の歴代の所長代行者
(1) 大阪地裁の歴代の所長代行者は以下のとおりです。
・ 46期の井上直哉裁判官(令和 6年 4月 3日~)
・ 44期の内藤裕之裁判官(令和 3年10月10日~)
・ 42期の北川清 裁判官 (令和 2年 2月 5日~)
・ 40期の森純子 裁判官(平成30年10月 4日~)
・ 38期の古財英明裁判官(平成28年 2月22日~)
・ 36期の小野憲一裁判官(平成26年11月19日~)
・ 34期の中本敏嗣裁判官(平成24年11月18日~)
・ 33期の小久保孝雄裁判官(平成23年12月19日~)
・ 31期の山下郁夫裁判官(平成23年 5月10日~)
・ 30期の小佐田潔裁判官(平成22年 1月18日~)
・ 28期の松本芳希裁判官(平成19年 3月31日~)
・ 27期の吉野孝義裁判官(平成17年 7月22日~)
・ 26期の佐々木茂美裁判官(~平成17年7月21日)
(2) 着任日については,前任者の異動発令日を記載しただけであるため,現実の着任日より少し先の日付となっています。

2 歴代の大阪簡裁司掌裁判官
(1) 歴代の大阪簡裁司掌裁判官(正式名称は「大阪簡易裁判所司法行政事務掌理裁判官」です。)は以下のとおりです。
・ 48期の松永栄治裁判官(令和 6年 4月 3日~)
・ 46期の井上直哉裁判官(令和 3年10月10日~)
・ 44期の内藤裕之裁判官(令和 2年 2月 5日~)
・ 42期の北川清 裁判官 (平成30年10月 4日~)
・ 40期の森純子 裁判官 (平成28年 2月22日~)
・ 38期の古財英明裁判官(平成26年11月19日~)
・ 36期の小野憲一裁判官(平成24年11月18日~)
・ 34期の中本敏嗣裁判官(平成23年12月19日~)
・ 33期の小久保孝雄裁判官(平成23年5月17日~)
・ 31期の山下郁夫裁判官(平成22年 1月26日~)
・ 30期の小佐田潔裁判官(平成19年 3月31日~)
・ 28期の松本芳希裁判官(平成17年 7月22日~)
・ 27期の吉野孝義裁判官(平成16年 3月31日~)
(2) 着任日については,前任者の異動発令日を記載しただけであるため,現実の着任日より少し先の日付となっています。

3 大阪地裁所長代理順序2位の上席裁判官
(1) 大阪地裁の司法行政事務の代理順序(大阪地裁の事務分配54条)を見る限り,以下のとおり,大阪地裁所長代理順序2位の上席裁判官は大阪簡裁司掌裁判官です(新しい順です。)。
・ 1民の松永栄治裁判官
・ 1民の内藤裕之裁判官
・ 1民の北川清 裁判官
・ 1民の森純子 裁判官
・ 1民の古財英明裁判官
・ 1民の小野憲一裁判官
・ 1民の中本敏嗣裁判官
・ 1民の小久保孝雄裁判官
・ 1民の山下郁夫裁判官
・ 1民の小佐田潔裁判官
・ 10刑の松本芳希裁判官
・ 1民の吉野孝義裁判官
(2) 大阪地裁所長代理順序3位の上席裁判官は,大阪簡裁司掌裁判官ではない上席裁判官,つまり,1民(保全部)部総括又は10刑(令状部)部総括であると思われます。

4 歴代の大阪地裁1民部総括
(1) 歴代の大阪地裁1民部総括は以下のとおりです。
 48期の松永栄治裁判官(令和 6年 4月 3日~)
・ 46期の井上直哉裁判官(令和 3年10月10日~)
・ 44期の内藤裕之裁判官(令和 2年 2月 5日~)
・ 42期の北川清 裁判官 (平成30年10月 4日~)
・ 40期の森純子 裁判官(平成28年 2月22日~)
・ 38期の古財英明裁判官(平成26年11月19日~)
・ 36期の小野憲一裁判官(平成24年11月18日~)
・ 34期の中本敏嗣裁判官(平成23年12月19日~)
・ 33期の小久保孝雄裁判官(平成23年5月17日~)
 31期の山下郁夫裁判官(平成22年 1月26日~)
 30期の小佐田潔裁判官(平成17年 7月22日~)
 27期の吉野孝義裁判官(平成16年 3月31日~)
(2) 着任日については,前任者の異動発令日を記載しただけであるため,現実の着任日より少し先の日付となっています。

5 歴代の大阪地裁10刑部総括
(1)ア 歴代の大阪地裁10刑部総括は以下のとおりです。
・ 48期の渡部市郎裁判官(令和 6年11月5日~)
・ 46期の長瀬敬昭裁判官(令和 3年 6月10日~)
・ 43期の村越一浩裁判官(平成30年 7月18日~)
・ 41期の遠藤邦彦裁判官(平成28年 1月 1日~)
・ 36期の宮崎英一裁判官(平成27年 2月17日~)
 34期の西田眞基裁判官(平成26年 1月29日~)
 33期の中川博之裁判官(平成24年 2月20日~)
・ 32期の横田信之裁判官(平成23年 1月 1日~)
 30期の並木正男裁判官(平成21年 5月22日~)
・ 29期の川合昌幸裁判官(平成19年 3月31日~)
・ 28期の松本芳希裁判官(平成15年 4月 1日~)
イ 着任日については,前任者の異動発令日を記載しただけであるため,現実の着任日より少し先の日付となっています。
(2) 平成19年3月31日以降,大阪地裁10刑部総括の後任者は常に大阪地裁12刑部総括(租税部)となっていたものの,令和3年6月10日就任の,46期の長瀬敬昭裁判官の前職は大阪地裁5刑部総括でした。

6 関連記事
 東京地裁の所長代行者
・ 東京地裁の歴代の第一所長代行
・ 大阪地裁の所長代行者,上席裁判官等
・ 東京家裁の歴代の家事部所長代行者
 下級裁判所の裁判官会議から権限を委任された機関

東京地裁の歴代の第一所長代行

目次
1 東京地裁の歴代の民事部第一所長代行
2 東京地裁の歴代の刑事部第一所長代行
3 絶望の裁判所の記載
4 関連記事

1 東京地裁の歴代の民事部第一所長代行
(1) 東京地裁の歴代の民事部第一所長代行は以下のとおりです(所属部は特に決まっていません。)。
・ 45期の朝倉佳秀裁判官(令和7年 3月27日~)(推測)
・ 44期の佐藤達文裁判官(令和5年 3月12日~)
・ 43期の江原健志裁判官(令和3年 8月 2日~)
・ 42期の松本利幸裁判官(令和2年10月26日~)
・ 41期の後藤健 裁判官(令和元年 9月 2日~)
・ 40期の渡部勇次裁判官(平成30年 9月 7日~)
・ 39期の中山孝雄裁判官(平成29年 6月23日~)
・ 38期の近藤昌昭裁判官(平成28年 9月 5日~)
・ 37期の八木一洋裁判官(平成27年 8月16日~)
・ 36期の白井幸夫裁判官(平成26年10月 2日~)
・ 34期の大門匡 裁判官 (平成25年 7月 8日~)
・ 33期の小林昭彦裁判官(平成24年 3月12日~)
・ 32期の菅野博之裁判官(平成23年 1月19日~)
・ 29期の荒井勉 裁判官 (平成21年 4月20日~)
・ 28期の市村陽典裁判官(平成19年12月17日~)
(2) 東京地裁民事部の場合,前任の民事部第一所長代行が転出した時点で民事部第二所長代行(9民部総括)が昇格することにより就任していますから,就任日と前任者の異動発令日が一致します。

2 東京地裁の歴代の刑事部第一所長代行
(1) 東京地裁の歴代の刑事部第一所長代行は以下のとおりです(所属部は特に決まっていません。)。
 46期の平出喜一裁判官(令和6年 9月11日~)
 44期の鈴木巧 裁判官(令和5年 6月29日~)
・ 42期の永渕健一裁判官(令和3年11月13日~)
・ 41期の島田一 裁判官(令和2年 8月 5日~)
・ 40期の伊藤雅人裁判官(平成30年 8月30日~)
・ 39期の大野勝則裁判官(平成29年 9月 3日~)
・ 37期の中里智美裁判官(平成28年 7月22日~)
・ 36期の若園敦雄裁判官(平成27年 7月11日~)
・ 34期の合田悦三裁判官(平成26年 4月 1日~)
・ 33期の栃木力 裁判官 (平成24年 3月27日~)
・ 32期の河合健司裁判官(平成23年 5月18日~)
・ 30期の三好幹夫裁判官(平成22年 1月 1日~)
・ 28期の村瀬均 裁判官 (平成20年 9月 5日~)
・ 27期の岡田雄一裁判官(平成18年12月11日~)
・ 26期の永井敏雄裁判官(平成17年 5月25日~)
(2) 東京地裁刑事部の場合,前任の刑事部第一所長代行が転出した時点で刑事部第二所長代行(14刑部総括)が昇格することにより就任していますから,就任日と前任者の異動発令日が一致します。
(3) 令和5年7月10日現在の東京地裁刑事部第二所長代行は,同日就任の46期の平出喜一裁判官です(リンク先では14刑部総括への就任日だけを記載しています。)。


3 絶望の裁判所の記載
(1) 平成15年度から平成21年度までの間,東京地裁42民部総括をしていた31期の瀬木比呂志裁判官が著した「絶望の裁判所」には以下の記載があります。
(53頁の記載)
   同等のレヴェルのポストにある人物について露骨に差を付けるといった、過去にはあまりみられなかった不自然な人事もある。私のよく知っているある期(前記のとおり、司法研修所修了の「期」)の東京地裁民事と刑事の所長代行に関する人事を例にして説明しよう。一方は裁判官としての実績があり弁護士からもかなり評価されている人物、一方は追随姿勢で取り立てられた中身に乏しい人物であった。ところが、最高裁判所事務総局に対しても自分なりの意見を述べていた前者が遠方の所長に、後者が東京近辺の所長に、それぞれ異動になったのである。この人事については、民事訴訟法学者の間からさえ奇妙だという声が聞かれた。これは一種の見せしめ人事なのであるが、「事務総局の方針に意見など述べず黙って服従しないとこうなるぞ」という脅しの効果は絶大である。なお、「事務総局に逆らうと」といったレヴェルの問題ではないことに注意していただきたい。先の人物も、ただ、「自分の意見を述べた」だけであり、ことさらに逆らってなどいない。
(87頁の記載)
    事務総局の外、つまり現場の裁判官たちとの関係では、事務総局の権力と権威は、そのトップについてはもちろん、総体としても決定的に強大である。
その結果、先にも記したとおり、傲慢な局長であれば地家裁所長、東京地裁所長代行クラスの先輩裁判官たちにさえ命令口調で接することがありうるし、課長たちの地家裁裁判長たちに対する関係についても、同様のことがいえる。

(2) ちなみに,28期の市村陽典 東京地裁民事部第一所長代行は平成21年4月20日に水戸地裁所長となった後,仙台高裁長官を最後に平成28年1月18日限りで定年退官したのに対し,28期の村瀬均 東京地裁刑事部第一所長代行は平成22年1月1日に宇都宮地裁所長となった後,東京高裁10刑部総括を最後に平成27年8月5日限りで定年退官しました。


4 関連記事
・ 東京地裁の所長代行者
・ 東京家裁の歴代の家事部所長代行者
・ 大阪地裁の所長代行者,上席裁判官等
・ 大阪地裁の歴代の所長代行者,上席裁判官,大阪簡裁司掌裁判官等

大阪高裁の歴代の上席裁判官

目次
1 大阪高裁の歴代の民事上席裁判官
2 大阪高裁の歴代の刑事上席裁判官
3 関連記事その他

1 大阪高裁の歴代の民事上席裁判官
(1) 大阪高裁の歴代の民事上席裁判官は以下のとおりです。
・ 39期の牧賢二裁判官(令和6年1月31日~)
・ 38期の石原雅也裁判官(令和5年5月25日~)
・ 38期の植屋伸一裁判官(令和4年8月22日~)
・ 37期の松井英隆裁判官(令和4年6月10日~)
・ 36期の山田陽三裁判官(令和2年12月8日~)
・ 33期の佐村浩之裁判官(令和2年4月26日~)
・ 33期の田中敦裁判官(令和2年2月6日~)
・ 31期の山下郁夫裁判官(平成29年4月19日~)
・ 30期の森宏司裁判官(平成28年3月7日~)
・ 28期の水上敏裁判官(平成27年3月12日~)
・ 26期の矢延正平裁判官(平成26年1月16日~)
・ 25期の前坂光雄裁判官(平成24年12月13日~)
・ 25期の渡邊安一裁判官(平成23年12月31日~)
・ 23期の永井ユタカ裁判官(平成22年1月3日~)
・ 23期の大谷正治裁判官(平成21年3月27日~)
・ 21期の横田勝年裁判官(平成20年10月8日~)
・ 20期の井垣敏生裁判官(平成17年8月22日~)
・ 19期の岡部崇明裁判官(~平成17年8月21日)
(2) 着任日については,前任者の定年退官発令日等を記載しただけであるため,現実の着任日より少し先の日付となっています。

2 大阪高裁の歴代の刑事上席裁判官
(1) 大阪高裁の歴代の刑事上席裁判官は以下のとおりです。
・ 39期の石川恭司裁判官(令和6年12月1日~)
・ 37期の長井秀典裁判官(令和5年3月31日~)
・ 37期の和田真裁判官(令和4年11月1日~)
・ 34期の西田眞基裁判官(令和2年10月24日~)
・ 34期の樋口裕晃裁判官(平成30年10月13日~)
・ 34期の増田耕児裁判官(平成29年9月30日~)
 32期の笹野明義裁判官(平成29年7月15日~)
・ 31期の福崎伸一郎裁判官(平成28年3月17日~)
・ 30期の並木正男裁判官(平成27年12月18日~)
・ 28期の的場純男裁判官(平成26年3月9日~)
・ 25期の森岡安廣裁判官(平成23年9月30日~)
・ 24期の古川博裁判官(平成20年8月2日~)
・ 21期の島敏男裁判官(平成18年9月26日~)
・ 18期の白井万久裁判官(~平成18年9月25日)
(2) 着任日については,前任者の定年退官発令日等を記載しただけであるため,現実の着任日より少し先の日付となっています。

3 関連記事その他
(1) 大阪高裁の上席裁判官は,一般的には大阪高裁長官代行といわれています。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 高裁の部総括判事の位置付け
・ 東京高裁の歴代の代表常置委員
・ 部の事務を総括する裁判官の名簿(昭和37年度以降)

東京高裁の歴代の代表常置委員

目次
1 総論
2 歴代の民事部代表常置委員
3 歴代の刑事部代表常置委員
4 関連記事その他

1 総論
・ 東京高裁常置委員会規程2条1項には,「常置委員会は,委員12人でこれを組織し,そのうち2人を代表委員とする。」と書いてあります。

2 歴代の民事部代表常置委員
(1) 東京高裁の歴代の民事部代表常置委員は以下のとおりです。
・ 38期の木納敏和裁判官(令和7年7月15日~)
・ 38期の三角比呂裁判官(令和7年1月27日~)
・ 36期の中村也寸志裁判官(令和5年3月12日~)
・ 35期の高橋 譲裁判官(令和3年9月3日~)
・ 35期の秋吉仁美裁判官(令和3年7月8日~)
・ 34期の深見敏正裁判官(令和3年1月1日~)
・ 33期の野山 宏裁判官(令和2年3月30日~)
 33期の大段 亨裁判官(平成30年9月7日~)
・ 33期の杉原則彦裁判官(平成29年10月25日~)
・ 30期の菊池洋一裁判官(平成28年6月19日~)
・ 29期の富田善範裁判官(平成28年4月9日~)
・ 29期の高世三郎裁判官(平成27年4月1日~)
・ 27期の加藤新太郎裁判官(平成26年11月19日~)
・ 26期の園尾隆司裁判官(平成26年7月26日~)
・ 26期の鈴木健太裁判官(平成24年11月26日~)
・ 24期の南 敏文裁判官(平成23年3月19日~)
・ 23期の原田敏章裁判官(平成22年2月5日~)
・ 22期の小林克巳裁判官(平成21年4月20日~)
・ 21期の石川善則裁判官(平成19年5月7日~)
・ 21期の江見弘武裁判官(平成18年6月19日~)
・ 19期の赤塚信雄裁判官(平成17年9月12日~)
・ 17期の鬼頭季郎裁判官(~平成17年9月11日)
(2) 着任日については原則として,1月1日開始のものを除き,前任者の定年退官発令日等を記載しただけであるため,現実の着任日より少し早い日付となっています。

3 歴代の刑事部代表常置委員
(1) 東京高裁の歴代の刑事部代表常置委員は以下のとおりです。
・ 40期の細田啓介裁判官(令和6年10月2日~)
・ 38期の大善文男裁判官(令和5年8月24日~)
・ 38期の近藤宏子裁判官(令和4年7月6日~)
・ 36期の若園敦雄裁判官(令和3年1月1日~)
・ 34期の藤井敏明裁判官(令和2年3月30日~)
・ 33期の青柳 勤裁判官(平成30年1月1日~)
・ 32期の大島隆明裁判官(平成28年9月5日~)
・ 29期の井上弘通裁判官(平成27年8月6日~)
・ 28期の村瀬 均裁判官(平成26年8月1日~)
・ 27期の金谷 暁裁判官(平成24年11月18日~)
・ 26期の若原正樹裁判官(平成23年6月14日~)
・ 23期の植村立郎裁判官(平成22年6月6日~)
 22期の阿部文洋裁判官(平成22年2月26日~)
・ 21期の原田國男裁判官(平成21年8月23日~)
・ 21期の安廣文夫裁判官(平成20年1月25日~)
・ 20期の高橋省吾裁判官(平成19年1月13日~)
・ 19期の河邉義正裁判官(~平成19年1月12日)
(2) 着任日については原則として,1月1日開始のものを除き,前任者の定年退官発令日等を記載しただけであるため,現実の着任日より少し早い日付となっています。

4 関連記事その他
(1) 東京高裁の代表常置委員は,一般的には東京高裁長官代行といわれています。
(2) 平成28年9月5日に大阪高裁長官に就任した29期の井上弘通東京高裁12刑部総括は,東京高裁刑事部代表常置委員であり,最高裁判所刑事上席調査官の経験者です。
   そのため,東京高裁部17民部総括から大阪高裁長官に就任した32期の菅野博之裁判官の前例を考えれば,大阪高裁長官の後任候補者としては十分に予想されたものであったと思います。
(3) 東京高裁の常置委員は以下のとおりです。
平成31年:1月1日3月20日
令和 2年:1月1日5月29日
令和 3年:1月26日6月14日7月8日9月9日
令和 4年:1月1日3月24日
令和 5年:1月1日3月22日
令和 6年:3月25日11月5日
令和 7年:3月26日7月15日
(4) 以下の記事も参照して下さい。
・ 大阪高裁の歴代の上席裁判官

最高裁判所における違憲判決の一覧

目次
1 法令違憲の判決及び決定
2 適用違憲の判決
3 違憲判決の効力
4 関連記事その他

1 法令違憲の判決及び決定
* 法令違憲の「決定」は最高裁大法廷平成25年9月4日決定及び最高裁大法廷令和5年10月25日決定だけです。
(1) 最高裁大法廷昭和48年 4月 4日判決
・ 刑法200条(尊属殺重罰規定)が憲法14条1項に違反すると判示しました。
・ 日経ビジネスHPに「「父殺しの女性」を救った日本初の法令違憲判決」が載っています。
・ 同じ日付で3件の違憲判決が言い渡されています。


(2) 最高裁大法廷昭和50年 4月30日判決
・ 薬事法6条2項(薬局の距離制限規定)が憲法22条1項に違反すると判示しました。
(3) 最高裁大法廷昭和51年 4月14日判決
・ 公職選挙法の衆議院議員定数配分規定が憲法14条及び44条ただし書に違反すると判示しました。
(4) 最高裁大法廷昭和60年 7月17日判決
・ 公職選挙法の衆議院議員定数配分規定が憲法14条及び44条ただし書に違反すると判示しました。
(5) 最高裁大法廷昭和62年 4月22日判決
・ 森林法186条(共有林の分割制限)が憲法29条2項に違反すると判示しました。
(6) 最高裁大法廷平成14年 9月11日判決
・ 郵便法68条及び73条(郵便業務従事者の過失により発生した損害賠償責任の免除)が憲法17条に違反すると判示しました。
(7) 最高裁大法廷平成17年 9月14日判決
・ 在外日本人に対し,国政選挙における選挙権行使の全部又は一部を認めていなかった公職選挙法が憲法15条1項,3項,43条1項及び44条ただし書に違反すると判示しました。
・ 立法不作為を理由として,原告1人当たり5000円の国家賠償を認めました。
・ 平成12年5月1日,在外日本人が国政選挙のうち比例代表選挙において選挙権を行使できるようになり,平成19年6月1日,在外日本人が衆議院小選挙区及び参議院選挙区においても選挙権を行使できるようになりました(総務省HPの「在外選挙制度について」参照)。
(8) 最高裁大法廷平成20年 6月 4日判決
・ 日本国籍を有する父と外国人女性との間に生まれ,父親から生後認知を受けた非嫡出子について,父母が婚姻しなければ,日本国籍を取得できないとする国籍法3条1項が憲法14条1項に違反すると判示しました。
・ この大法廷判決言渡しの際,当事者席に原告の少女が着席しましたところ,未成年者が当事者席に着席したのは,おそらく大法廷で初めてのことと思われるみたいです(自由と正義2013年6月号15頁)。
・ 平成21年1月1日,改正国籍法3条の施行により,出生後に日本人に認知されていれば,父母が結婚していない場合にも届出によって日本国籍を取得できるようになりました(法務省HPの「国籍法が改正されました」参照)。
・ 同じ日付で2件の違憲判決が言い渡されています。
(9) 最高裁大法廷平成25年 9月 4日決定
・ 非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1であるとする民法900条4号ただし書前段は,遅くとも平成13年7月の時点では憲法14条1項に違反するに至っていたと判示しました。
・ 民法900条4号ただし書前段は憲法14条1項に違反しないとした最高裁大法廷平成7年7月5日決定を変更しました。
・ 平成25年12月11日,改正民法900条の施行により,平成25年9月5日以後に開始した相続については,嫡出子と非嫡出子の相続分は等しいものとなりました(法務省HPの「民法の一部が改正されました」参照)。
(10) 最高裁大法廷平成27年12月16日判決
・ 女性の再婚禁止期間を100日を超えるものとしている民法733条1項は過剰な制約であり,遅くとも平成20年の時点では憲法14条1項,24条2項に違反するに至っていたと判示しました。
・ 同じ日付で2件の違憲判決が言い渡されています。
・ 平成28年6月7日,改正民法733条1項の施行により,女性の再婚禁止期間は100日に短縮されました(法務省HPの「民法の一部を改正する法律(再婚禁止期間の短縮等)について」参照)。
(11) 最高裁大法廷令和4年5月25日判決
・ 最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことは,憲法15条1項,79条2項,3項に違反すると判示しました。
(12) 最高裁大法廷令和5年10月25日決定
・  性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号は,憲法13条に違反すると判示しました。
(13) 最高裁大法廷令和6年7月3日判決
・ 優生保護法中のいわゆる優生規定(同法3条1項1号から3号まで,10条及び13条2項)は憲法13条及び14条1項に違反すると判示しました。


2 適用違憲の判決
(1) 最高裁大法廷昭和23年 7月19日判決
・ 不当に長い拘禁の後に自白を証拠に採ることは憲法38条2項に違反すると判示しました。
(2) 最高裁大法廷昭和25年 7月12日判決
・ 第一審における被告人の自白及び司法警察員に対する自白だけで有罪を認定するのは憲法38条3項に違反すると判示しました。
(3) 最高裁大法廷昭和28年 7月22日判決最高裁大法廷昭和28年 7月22日判決
・ 占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)を講和条約発効後に適用することは憲法21条,39条に違反すると判示しました。
・ 最高裁大法廷昭和28年12月16日判決及び最高裁大法廷昭和30年 4月27日判決も占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)に関するものです。
(4) 最高裁大法廷昭和35年 7月 6日決定
・ 性質上純然たる訴訟事件につき,当事者の意思にかかわらず,終局的に事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定するような裁判は,憲法所定の例外を除き,公開の対審及び判決によってなされなければ,憲法82条及び32条に違反すると判示しました。
(5) 最高裁大法廷昭和37年11月28日判決
・ 第三者の所有物を没収する場合において,その没収に関して当該所有者に対し,何ら告知,弁解,防御の機会を与えることなく,その所有権を奪うことは憲法29条1項及び31条に違反すると判示しました。
・ 刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和38年7月12日法律第138号)が制定されました。
(6) 最高裁大法廷昭和40年 4月28日判決
・ 第三者に対し告知,弁解,防御の機会を与えないで追徴を命ずることは,憲法29条1項及び31条に違反すると判示しました。
(7) 最高裁大法廷昭和42年 7月 5日判決
・ 起訴されていない犯罪事実で,被告人の捜査官に対する自白のほかに証拠のないものをいわゆる余罪として認定し,これをも実質上処罰する趣旨のもとに重い刑を科することは憲法31条,38条3項に違反すると判示しました。
(8) 最高裁大法廷昭和45年11月25日判決
・ 偽計によって被疑者が心理的強制を受け,その結果虚偽の自白が誘発されるおそれのある場合には,偽計によって獲得された自白はその任意性に疑いがあるものとして証拠能力を否定すべきであり,このような自白を証拠に採用することは,刑訴法319条1項,憲法38条2項に違反すると判示しました。
(9) 最高裁大法廷昭和47年12月20日判決(高田事件)
・ 15年余りの公判の中断がなされ,被告人自らが迅速な裁判を受ける権利を放棄したといえない事情の下で,憲法37条1項に違反する状態に立ち至っていたとして免訴の判決を出しました。
(10) 最高裁大法廷平成 9年 4月 2日判決(愛媛玉串訴訟)
・ 愛媛県知事が,戦没者の遺族の援護行政のために靖国神社及び愛媛県護国神社に対し玉串料を支出したことが憲法20条3項及び89条に違反すると判示しました。
・ 住民訴訟の被告となった愛媛県知事の白石春樹は,平成9年3月30日に死亡していました。
・ 「愛媛玉ぐし訴訟大法廷判決(最高裁大法廷平成9年4月2日判決)の事前漏えい疑惑に関する国会答弁」も参照して下さい。
(11) 最高裁大法廷平成22年 1月20日判決(砂川政教分離訴訟のうち,空知太(そらちぶと)神社事件)
・ 砂川市が市有地を宗教団体に無償提供したことが憲法20条3項及び89条に違反すると判示しました。
(12) 最高裁大法廷令和 3年 2月24日判決(孔子廟訴訟)
・  那覇市長が都市公園内の国公有地上に孔子等を祀った施設を所有する一般社団法人に対して同施設の敷地の使用料を全額免除した行為が憲法20条3項に違反すると判示しました。


3  違憲判決の効力
(1) 5期の筧栄一法務省刑事局長は,昭和59年4月19日の衆議院決算委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 今、先生御指摘のように、昭和四十八年刑法二百条が違憲であるという最高裁の判決が下されたわけでございます。
   これを受けまして、その尊属殺に関します一般社会その他いろいろの意見を参照いたしまして、法務省といたしましては尊属関係の加重規定を廃止するという案を考えまして、第七十一回国会に提出すべく準備をいたしましたが、各方面の御了解が得られなくて提案までに至らなかった次第でございます。その後も各方面のいろいろの御意見を伺っておるわけでございますが、申し上げるまでもなく、この問題は最高裁の判決自体が法定刑、死刑または無期ということが重過ぎるということでございまして、直ちに全部がいかぬという趣旨でもございません。いろいろ軸足意見あるいは別の意見もあるわけでございます。
   したがいまして、これに対しましては、親子関係をめぐる道徳に関連する問題でございますとか、いろいろの道徳観、倫理観あるいは家族観と申しますか人生観に基づきますいろいろな考え方が各方面にあるわけでございまして、それを検討を続けておるわけでございます。その間、先生御指摘のように、刑法全面改正の作業が進みまして改正草案ができ、さらにそれをまた検討を続けておるわけでございます。
② 私どもといたしましては、刑法の全面改正をできるだけ近い機会に実現いたしたいと考えておりまして、その一環として当然にこの尊属関係の規定につきましても、最高裁の判決の趣旨を体しまして改正を行うという方針で現在も進めておるところでございます。
(2) 26期の中山隆夫最高裁判所総務局長は,平成13年11月21日の参議院憲法調査会において以下の答弁をしています。
   今、御質問の中にもございましたように、我が国では付随的違憲審査制をとっております。当該事件の解決に必要な限りで違憲審査を行うということにしておりますことから、違憲判決の効力もその当該事件に限って効力を持つ、いわゆる個別的効力説というのが通説とされております。もっとも、個別的効力といいましても、他の国家機関、立法機関あるいは行政機関は、最高裁判所の違憲判決を尊重すべきであるというふうに言われているところであります。
 そのような観点からいえば、違憲判決が出されましたときに、その執行に当たる行政機関においてその条項を適用しないようにし、あるいは法令の制定機関によって速やかにその廃止または改正がされる、それが一番好ましいことであろうとは考えております。
(3) 34期の谷垣禎一法務大臣は,平成25年11月20日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しています。)。
① 今、椎名委員がおっしゃったように、違憲審査も付随的審査制である、それから個別的効力説であるというのが大方の理解ですね。その前提の上でありましても、違憲無効と判断されますと、その判断はやはり後の判決等も拘束して、事実上の拘束力を持つということになりますから、その時点以降は当該法令は無効という形で処理される、これが大方の理解であろうと思うんです。
   しかしながら、本件(山中注:最高裁大法廷平成25年9月4日決定が取り扱った,非嫡出子相続分差別規定に関する事件)においては、遅くとも平成十三年七月当時においては違憲であったと判断しながら、七月以降に相続を開始した事案のうち、確定的なものとなった法律関係には影響を及ぼさないものとして、この事実上の拘束力の及ぶ範囲を、今までの考え方からすると相当立ち入って判断をしている。委員は、これが付随的違憲審査制を超えて立法作用を営んでいるのではないか、こういうお考え、感じをお持ちなんだろうと思うんです。
② 実は私も、こういう違憲判決をもし出すとすれば、遡及的適用なんかをやったらこれはもう法的安定性もないから、一体ここをどう最高裁は判断するのかな、どういう判決を書くんだろうか、それによって法務省の対応も変わってくるしと思いながら見ていたら、余りにもあっさりと遡及効はないんだとおっしゃったので、やや拍子抜け、拍子抜けと言うと言葉は悪いですが、肩透かしを食ったような気になったことは事実でございます。
   今回の最高裁判決は、私が今申し上げたその遡及効までやってしまったら、原則からすれば多分遡及効になるんでしょうけれども、遡及効までやってしまったら世の中の法的安定性を著しく害してしまうという前提で、違憲判断の拘束力を一部拘束、制限したものというふうな理解ができるのではないか。最高裁の違憲審査権、判断権の行使のあり方として、違憲判断の効力の及ぶ範囲をフルに使ったのではなく、限定したというふうに見ることができるのではないか。そうすると、この限定するということは許されることであって、三権分立に反するということにはならないのではないかというのが、私もその後、法務省内部の議論をいろいろ聞きまして、そういうふうに理解するのかなと現在思っているわけでございます。
   そして、これはもちろん、こういう判断手法が過去に例があったわけではございません。違憲判断についての新たな判例法理をつくったものだというふうに理解しております。
   

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4 関連記事その他
(1) 事件記録等の廃棄留保について(令和元年11月18日付の最高裁判所総務局第三課長の事務連絡)を掲載しています。
(2) 「「法の番人」内閣法制局の矜持」(著者は阪田雅裕 元内閣法制局長官)52頁には以下の記載があります。
   残念ながら、法制局は新しい立法についてしか判断できない。新たな立法や法改正をするときには、それが憲法の規定に反しないかということについて意見を述べることができます。しかし、時代は変わるのですね。尊属殺や民法900条もそうですし、他のさまざまな規制にしてもそうですが、いまやもう合理性がないではないかというものもないではない。しかし、それらについて法制局が主導して変えるということはできないわけです。逐一法律を点検しているわけではありませんから。こうしたことは立法を企画する各省庁、あるいは立法府である国会が気をつけなければならないわけですが、やはり司法に期待せざるをえないということです。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所大法廷の判決及び決定の一覧
・ 最高裁が出した,一票の格差に関する違憲状態の判決及び違憲判決の一覧
・ 弁護人上告に基づき原判決を破棄した最高裁判決の判示事項(平成元年以降の分)
・ 民事事件の判決原本の国立公文書館への移管
・ 日本国憲法外で法的効力を有していたポツダム命令

処分証書及び報告文書

目次
1 処分証書
2 報告文書
3 関連記事その他

1 処分証書
(1) 処分証書の意義については以下の二つの説があります(事例で考える民事事実認定21頁,及び民事弁護の起案技術39頁参照)。
① 「よってした」説
・ 意思表示その他の法律行為が文書によってされた場合における当該文書をいうとするものです。
② 「記載した」説
・ 立証命題たる意思表示その他の法律行為が記載されている文書をいうとするものであり,例えば,契約成立後に作成された確認書も処分証書に含まれます。
(2) 処分証書の例としては,判決書のような公文書のほか,契約書,約束手形,解除通知書,遺言書がありますところ,「よってした」説に立った場合,契約成立後に作成された確認書は処分証書に含まれないこととなります。
(3)ア 処分証書が真正に成立している場合,特段の事情がない限り,原則としてその記載通りの事実が認定されることとなります(最高裁昭和32年10月31日判決最高裁昭和45年11月26日判決)。
イ 処分証書が真正に成立している場合,処分証書の記載以上に本人尋問の結果を信頼すべき特段の事情がない限り,処分証書の記載が尊重されることとなります(最高裁平成14年6月13日判決(判例時報1816号25頁)参照)。
ウ 判例から学ぶ民事事実認定222頁ないし226頁には,最高裁平成14年6月13日判決に関する34期の林道晴司法研修所事務局長(当時)の解説が載っています。
(4) 例えば,以下の契約書については必ずしも処分証書であるとは限りません(一橋大学機関リポジトリに掲載されている「処分証書による法律行為の証明」(リンク先のPDF5頁及び6頁)照)。
① 代金総額の記載がない売買契約書その他記載の不備がある契約書
② 税金対策のために本当の契約書とは別に金額等を偽った契約書
③ 登記手続のための登記原因証明情報として細かい条項を省略した契約書
(5) 判例タイムズ1410号(平成27年5月1日発行)26頁ないし34頁に「契約の実質的証拠力について-処分証書とは-」が載っています。


2 報告文書
(1)ア 報告文書とは,処分証書以外の文書で,事実に関する作成者の認識,判断,感想等が記載されたものをいいます。
イ 報告文書の例としては,領収証,商業帳簿,議事録,日記,手紙,陳述書があります。
(2)ア 最高裁平成7年5月30日判決(判例体系)は,「一般に、金員の授受に関する領収書等が存する場合には、実際にその授受があったものと事実上推定することができるが、その逆に、右領収書等が存しないからといって、直ちに金員の授受がなかったものということはできない。」と判示しています。
イ 最高裁平成11年4月13日判決(判例体系)の事案では,和解契約に基づく金員の支払を裏付ける文書として,和解契約書,合意書,信用状開設通知,小切手,領収書が提出されていた事案において,原審はこれらの書証の内容などが不自然,不合理であるなどとして弁済の事実を認めなかったものの,最高裁は,弁済の事実を認めなかった原審の判断には,経験則違反ないし採証法則違反があるとして破棄差戻しとしました。
(3)ア 報告文書が真正に成立している場合であっても,その文書が示す事実の基礎となる法律行為の存在や内容については,その文書から直接に認められるわけではないのであって,報告文書の性質等に左右されることとなります。
イ どのような報告文書が信用されるかについては,「通常は信用性を有する私文書と陳述書との違い」を参照してください。

3 関連記事その他
(1) 裁決書起案の留意事項(参考資料)37頁には「租税回避事案については、「処分証書」が大きな壁になることが多い。」と書いてあります。
(2)ア 「ステップアップ民事事実認定 第2版」109頁には以下の記載があります。
    ある行動をする際に通常は作成されるはずの書証が存在しない時,作成されなかった(または,作成されたがその後に消滅した)理由についての合理的な説明がされない限り,その行動がされたと認めることはできません。
イ 国と私人との間に,私人を売主として成立した土地売買契約において,目的土地の利用方法に関する特約は,当事者にとって極めて重要な特約であるから,右契約につき予算決算及び会計令68条に基づき契約書が作成された以上,かかる特約の趣旨は契約書に記載されるのが通常の事態であり,これに記載されていないときは,特段の事情のないかぎり,かかる特約は存在しないものとされました(最高裁昭和47年3月2日判決)。
(3)ア 最高裁昭和38年7月30日判決は,賃貸借契約の合意解約の存在を否定した判断が経験法則に反するとされた事例です。
イ 最高裁昭和42年12月21日判決は,「契約書」等と題する書面に法的拘束力を認めないのが違法とされた事例です。
(4) 以下の記事も参照して下さい。
・ 二段の推定
・ 文書鑑定
・ 陳述書の機能及び裁判官の心証形成
・ 陳述書作成の注意点
 新様式判決
 裁判所が考えるところの,人証に基づく心証形成
 尋問の必要性等に関する東京高裁部総括の講演での発言
・ 通常は信用性を有する私文書と陳述書との違い

証拠説明書

目次
第1 総論
第2の1 証拠説明書の「号証」欄及び「標目」欄
第2の2 証拠説明書に記載することが望ましい事項等
第3 証拠説明書の重要性等
第4 原本,(写し)及び写し
1 原本,(写し)及び写しの区別
2 民訴法上の,書証の申出の原則的な方法
3 実務上の,書証の申出の原則的な方法
第5 書証の提出方法に関する裁判官の意見
第6 動画を記録した媒体を書証として提出する場合の取扱い等
第7 交通事故で損傷を受けた携行品に関する写真
第8 陳述書に関する証拠説明書の記載方法
第9 電子メール等に関する証拠説明書についての大阪地裁の要望
第10 ウィキペディアを書証として提出する場合の作成者
第11 関連記事その他

第1 総論

1 書証を提出する場合,文書の標目,作成者及び立証趣旨(民事訴訟規則137条1項)並びに証拠方法及び作成年月日を記載した証拠説明書を一緒に提出することが望ましいです。
2 書証とは,証拠となるべき文書をいいます(民事訴訟規則55条2項)。


第2の1 証拠説明書の「号証」欄及び「標目」欄
・ 特許庁HPの「証拠説明書の提出について」に載ってある「証拠説明書の作成方法」には以下の記載があります。
(1)「号証」欄
証拠文書について、提出人が請求人、被請求人又は参加人のいずれであるかによって、甲、乙又は丙を頭に付けるとともに、提出順に第何号証と番号を付したものを記載してください。例えば、請求人が提出する最初の証拠文書は「甲1」となります。
番号は、1つの文書には1つの番号を付すことを原則としますが、契約書とそれに添付されている印鑑登録証明書のように、関連する文書の場合は枝番(契約書を甲〇号証の1とし、添付されている印鑑登録証明書を甲〇号証の2とする)としてください。
(中略)
(2)「 標目」欄
証拠文書の題名を記載してください。例えば、「実施許諾契約書」という題名の文書であれば、「実施許諾契約書」との記載としてください。
同じ題名の文書が複数ある場合は、「令和〇〇年〇〇月〇〇日付け実施許諾契約書」、「令和△△年△△月△△日付け実施許諾契約書」のように、作成年月日等で特定してください。
定まった題名がない文書の場合は、「『〇〇』と題する文書」、「『△△』から始まる文書」等、一応の題名や書き出し等によって特定してください。

第2の2 証拠説明書に記載することが望ましい事項等
1 以下の事項は証拠説明書に記載することが望ましいとされています。
① 偽造文書として提出する場合にはその旨
② 原本及び写しの別
③ 書証に書き込みがあり,書き込み部分も立証趣旨と関連する場合,書き込み部分とそれ以外の部分とのそれぞれの作成者
④ 写真提出の場合,撮影者,撮影対象,撮影日時及び撮影場所(民事訴訟規則148条参照)
⑤ 図面等につき,拡大・縮小コピーにより写しを作成した場合にはその旨
⑥ 文書の一部のみの提出である場合にはその旨
2 偽造文書として提出する場合としては,以下の二つの場合があります。
① 挙証者が,当該文書は偽造された文書であるとして,偽造行為を立証するために提出する場合
・ この場合,偽造された文書の存在を立証すれば足りるため,具体的な偽造者名というのは必ずしも主張する必要はありません。
   そのため,証拠説明書の作成者欄に偽造者名まで記載する必要はありません。
② 当該文書が偽造者の作成に係る文書であるということで偽造者自身の意思・思考内容を立証するために提出する場合
・ 例えば,民法117条に基づいて無権代理人の責任を追及する場合です。
・ この場合,偽造者の意思に基づいて申請に作成された文書となるため,証拠説明書の作成者欄に当該偽造者を具体的に特定して記載する必要があります。
3(1) 月刊大阪弁護士会2018年5月号21頁及び22頁に,証拠説明書の記載に関する裁判官の意見として以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)。
① 作成者が複数の文書,例えば引用多数の電子メール,LINE等は,該当部分ごとに作成者を明らかにする必要がある。
② 写真,録音テープ等は,撮影,録音,録画などの対象並びにその日時及び場所を明らかにするほか(民訴規則148条),必要に応じ撮影の場所,方向などを図示するなどの工夫をしてほしい。
③ 立証趣旨は,書証のどこをどのように読み取れば立証命題につながるのかを端的に説明し,当該書証から読み取れる事実とその事実から推認できる事実は区別して記載してほしい。
(2) 会話録音や動画が長い場合,立証趣旨に関係する部分を経過時間等により特定し,動画については,切り出した静止画像を別の書証として提出した方がいいです。
4 民事訴訟規則との関係でいえば,写真又は録音テープの場合,撮影の日時及び場所を明らかにする必要がある(民事訴訟規則148条)のに対し,一般の文書の場合,作成年月日を明らかにすることは明文上求められていません。
    そのため,第三者が作成したホームページを参考資料として提出する場合において作成日が分からない場合,ホームページの印刷日を記載しておけば問題ないと思います。


第3 証拠説明書の重要性等
1   証拠説明書の記載が十分でない場合,期日における書証の取り調べが煩雑になったり,書証の意味を正確に把握するうえで支障が生じたりすることがあります。
   また,控訴審の場合,記録が膨大で事案も複雑困難なものが多いため,とりわけ証拠説明書の果たす役割が大きくなります。
   そのため,裁判所としては,証拠説明書を丁寧に作成することを期待しています。
2 月刊大阪弁護士会2018年5月号23頁に,証拠説明書の記載内容に関する裁判官の意見として以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)。
① 書証の写しの提出時に証拠説明書がないと確認を後回しにすることがある。
   また,証拠説明書に証拠のコピーを添付し,読むべき順序を番号で示していた例があったが,分かりやすくするために様々な工夫があってよい。
② 特にLINEは発言者が分かりづらいが,LINEの画面を書証として提出するほか,代理人が発言者と発言内容を時系列に沿って一覧表で書き直したものを書証で提出し,かつ,その中で有用な発言にマーカーを引いていた例は,読みやすく,主にそちらを参照していた。
③ 証拠説明書を読むのは,提出時のほか,尋問前や判決起案をするときである。証拠説明書の標目とともに,立証趣旨を見て,最後の判断の段階で漏れがないことをチェックしている。
④ 証拠説明書を提出した後に書証の立証趣旨を追加する場合,主張書面に主張と立証趣旨を追加することになった書証が照合されていれば見落とすことは余りない。
   立証趣旨が大きく変わる場合,立証趣旨を補充した証拠説明書を提出しても問題はない。
⑤ カルテ等について,例えば症状固定のメルクマールになるような部分は,立証趣旨に書いた方がよい。
   経過が大事であれば主張書面に時系列表を付けて,カルテのどこに書いてあるかを入れ込んでもらうと,一覧性もあって分かりやすい。
    十何時間という録画を提出する場合,何時何分に何をしているのかを証拠説明書等の別紙で示されていると,録画映像が見やすくなる。
3 平成29年2月6日開催の民事裁判改善に関する懇談会では,「7 証拠説明書」に関して以下の発言がありました(「大阪弁護士会民事訴訟法の運用に関する協議会」発行の平成28年度懇談会報告集27頁及び28頁)。
裁:証拠説明書は,裁判官が感じているほど,代理人は重要視されていないのではないかと常々思っている。証拠説明書は書証の一覧表になるので,私の場合は,たくさんの書証が出てきた場合には,まず証拠説明書をコピーして手元に置いた上で,1枚1枚実際の証拠を見て,証拠説明書自体にこちらがポイントだと思うところを書き込むという形で活用している。そうすると,判決を書くときに,大部の書証全部に当たるのではなく,自分の証拠説明書のコピーを見て,この証拠とこの証拠は大切という再確認することができ,非常に重宝している。
   高裁では,どういう状況でこの証拠が提出されたのかが分からないので,書証が大量で複雑そうな事件の場合,まず証拠説明書をコピーするというのが主任裁判官として記録を読む前の最初の作業となる。そしてその証拠説明書を見ながら,主張書面を読んだり,証拠を見たりするようにしていた。そのような形で利用していると認識していただくことが,証拠説明書に何を書くのかというところともかかわってくると思う。立証趣旨が金銭消費貸借契約書のように明白なものは詳細に書く必要はないが,書証を見ただけでは立証趣旨がすぐに分からないようなものについては,適切に書いておかないと,特に引継ぎの事件で裁判官が記録を見るときなどには,重要性とか見てほしいところが伝わらない場合がある。
裁:判決を書く際,主張の整理をするときは準備書面を読んでいくが,理由を書くときには,基本的には準備書面に戻らない。証拠説明書と証拠本体を見る。そのため,証拠説明書にどういったことが書いてあるのか,立証趣旨にどういうことが書いてあるのかというのは,判決書の理由を書くにあたって重視している。それを踏まえると,立証趣旨が適切に記載されている証拠説明書は非常に役に立つし,それが書いていない証拠説明書については,これはどういう証拠なのかと思いながら,うまくその証拠が使えないので,提出した当事者に不利に判断してしまうことがあるのかもしれないと思う。そういった意味で,立証趣旨のしっかりした証拠説明書は私も書いてほしいと思っている。


第4 原本,(写し)及び写し
1 原本,(写し)及び写しの区別
(1) 証拠方法の記載については理論上,以下の区別があります。
① 「原本」という記載
・ 証拠とする書類の原本が手元にあり,これを裁判所で調べてもらいたい(裁判官に確認してもらいたい)ときに記載します。
② 「(写し)」という記載
・ 原本は存在するけれど,写しを裁判所で調べてもらいたい(裁判官に確認してもらいたい)ときに記載します。
③ 「写し」という記載
・ 写しそのものが原本であるときに記載します。
(2) 広島地裁HPの「証拠説明書の作成要領等」に同趣旨の説明が載っています。
(3) 特許庁HPの「証拠説明書の提出について」に載ってある「(参考)文書の原本・写しについて」には以下の記載があります。
     原本を提出するときは、「原本・写しの別」欄には「原本」と記載してください。正本又は認証のある謄本は、上記のとおり厳密には原本ではありませんが、原本に準じるものとして取り扱われていますので、「原本・写しの別」欄には「原本」と記載していただいて結構です(あるいは、それぞれ「正本」、「認証謄本」などと記載していただいても、もちろん構いません。)。 写しを提出するときは、「原本・写しの別」欄には「写し」と記載してください。

2 民訴法上の,書証の申出の原則的な方法
(1)ア ①「書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。」と定める民事訴訟法219条,及び②「文書の提出又は送付は、原本、正本又は認証のある謄本でしなければならない。」と定める民事訴訟規則143条1項からすれば,証拠方法としては,「原本」という記載が原則となります。
イ 民事訴訟規則143条1項の「文書の提出」は①書証の申出としての提出及び②文書提出命令に基づく提出であり,同条項の「文書の送付」は③文書送付嘱託に基づく送付です(条解民事訴訟規則304頁)。
ウ 民事訴訟規則143条1項の「認証のある謄本」は,裁判所等官署側の認証のある書類のことです(条解民事訴訟規則87頁及び88頁)。
(2) 「(写し)」という記載は,当事者間において文書の謄本をもって原本に代えることに異議がなく,かつ,その原本の存在及び成立に争いがない場合に許される証拠方法です(最高裁昭和35年12月9日判決参照。なお,公文書の写しにつき大審院大正10年9月28日判決,私文書の写しにつき大審院昭和5年6月18日判決)。
(3)ア 「写し」という記載は,当該写し自体の成立につき,当事者間に争いがない場合又は証明がある場合に許される証拠方法です(東京地裁平成2年10月5日判決(判例秘書に掲載)参照)。
イ 弁護士江木大輔のブログ「「原本に代えて写しを提出する」「写しを原本として提出する」」には以下の記載があります。
似て非なるものに「写しを原本として」取り調べるという方法があります。
これは,「写し」そのものを原本として取り調べるというもので,取り調べの対象は,あくまでも「写し」そのものということになります。この場合,取り調べ対象はあくまでも「写し」そのものですので,元になった文書の原本の提出がなくても,取り調べ自体が却下されるということはありません。ただし,元になった書類の原本の存在や成立については別途争うことが可能ですので,当該写しが偽造であるといった主張がなされ,それが一定の説得力を持つ場合には,なぜ原本ではなく写しなのかということが問われることもあります。


3 実務上の,書証の申出の原則的な方法
(1) 実務上,期日前における文書の写し及び証拠説明書の提出は,実質的には書証の申出に相当する機能を果たしています。
(2) 実務上は,裁判官に原本を確認して欲しいときは「原本」と記載し,裁判官に原本を確認してもらう予定がないときは「写し」と記載しておけば問題ありません。
(3) 写しそのものが原本である場合,当該写しの原本(当該写しのもととなった文書のことであって,いわば「真の原本」というべきもの)の存在又は成立につき当事者間に争いがあったとしても,あるいは,当該写しが原本を正確に写したものではないとしても,それは,書証の申出自体を不適法とする事情ないしその形式的証拠力に影響を及ぼすべき事情ではなく,その実質的証拠力に影響を与える可能性を有する事情にすぎないと解されています(東京地裁平成2年10月5日判決(判例秘書に掲載)参照)。
(4)ア 例えば,民事実務講義案Ⅰ(三訂版)141頁には以下の記載があります。
     現代のようにコピー機がなかった時代においては,文書の写しはすべて手書複写であった。当事者が提出する文書の写しはもちろん,裁判所書記官が作成する正本や謄本も手書複写であった。コピー機が高性能化し広く普及し,写しといえばコピー機により,原本をその形状を含め忠実に再現したものを得ることができるが,文書の成立の真正やその内容の真否を判断するに当たっては,やはり原本を確認する必要があるし,何よりも写しは原本が存在することの一つの徴表にすぎない面は否定できない。
イ ちなみに,公文書偽造罪(刑法155条)の客体となる文書は,これを原本たる公文書そのものに限る根拠はなく、たとえ原本の写であっても,原本と同一の意識内容を保有し,証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り,これに含まれます(最高裁昭和51年4月30日判決最高裁昭和54年5月30日決定及び最高裁昭和58年2月25日決定)。


第5 書証の提出方法に関する裁判官の意見
・ 月刊大弁2018年5月号22頁に,「裁判所からの基調報告」における「書証の提出方法」として以下の記載があります。
     書証を提出する意味合いを裁判官に適切に伝えるためには,その見せ方についても工夫をしていただきたい。
    電子メール,LINE等については,やり取りを分断しないで時系列の順にまとめて提出してほしいなどの意見があり,やり取りが多数の場合には,やり取りごとに枝番号をつける,重要な部分にマーカーを付するなど,大部の書証と同様の工夫も必要との指摘もあった。
    書証をマスキングする場合,その必要性を吟味し,真に必要な部分のみにマスキングをするべきであり,不用意なマスキングにより証拠価値を割り引いて考えざるを得なくなったり,原本の存否,開示の要否等をめぐる疑念や対立等が生じたりした事例もあった。
    大部の書証については,一つの文書として提出するのか,それとも複数の文書として提出するのかをきちんと検討してほしい。口頭議論や書面での引用の前提として,ページ数や枝番をつけることは不可欠であるといった指摘があった。

第6 動画を記録した媒体を書証として提出する場合の取扱い
1 大阪弁護士会作成の,「令和2年度司法事務協議会 協議結果要旨」84頁及び85頁には,動画を記録した媒体を書証として提出する場合の取扱いに関する大阪地裁の回答として以下の記載があります。
(1) 「書証として提出された動画(DVDやUSBメモリ等の媒体に記録されたもの)の内容を裁判所はどのようにして確認をしているか,教示されたい。」という質問に対する回答
     まず,書記官が裁判所から貸与されているパソコンでウイルスチェックを行った上,そのパソコンにより動画を再生できるかどうかを確認し,再生できない場合にはDVD再生プレーヤーその他の裁判所備付機器によって再生できるかどうかを試行している。それでも再生できない場合には,裁判官と相談の上,提出当事者に対し再生可能な形式への変更を打診している。
     このような作業を経た後,裁判官は他の証拠と同様に,期日に備えて証拠の検討のため,再生可能性を確認した機器により再生して動画の内容を確認している。
(2) 「媒体に記録された動画を書証として提出するにあたって,留意すべき事項はあるか,説明いただきたい。」という質問に対する回答
     まず,情報セキュリティの観点から,ウイルスチェックの励行をお願いしたい。データの容量が大きいものについてはウイルスチェックに時間を要することもあるので,その全てを提出する必要があるかどうかについて吟味の上で提出していただきたい。
     また,証拠保管の観点から,USBは長期間保存できないものがあるので,USBによる提出は避け,DVDで提出していただきたい。さらに,物理的な破損を防止するため,DVDはプラスチックケースに入れて提出していただきたい。加えて,証拠番号については,プラスチックケースに直接記入するか,神に記載した上でセロハンテープを用いてプラスチックケースに貼り付けていただきたい。付箋に記載してプラスチックケースに貼り付けると,剥がれて散逸するおそれがあるので,避けていただきたい。
     そして,証拠調べの観点から,ウインドウズの標準機能で再生できる形式で提出していただきたい。また,裁判所への提出分の正本と相手方当事者への提出分である副本の同一性を確認の上で提出していただきたい。
     さらに,動画が長時間に及ぶような場合は,裁判官が立証趣旨を的確に把握して適正に証拠を評価するため,民事訴訟規則149条1項の趣旨に照らして,重要な場面を印刷したスクリーンショットなどの画像やその説明を記載した証拠説明書を提出していただきたい。
2 二弁フロンティア2022年4月号「【前編】交通事故訴訟の最新の運用と留意点~東京地裁民事第27部(交通部)インタビュー~」には以下の記載があります。
多くの事案では、過失相殺の前提として事故態様が問題となるほか、原告主張の症状の外傷起因性や、治療の必要性・相当性に関係して、事故により身体に加わった外力の部位や程度が問題となります。裁判官にとっては、具体的な事故状況を図面や画像で確認することができた方が、文字での説明のみの場合よりもリアルに理解することができますので、事故現場や事故車両の写真、ドライブレコーダー等の客観的資料が存在するときは、できるだけ早期にご提出ください。



第7 交通事故で損傷を受けた携行品に関する写真
1 交通事故で損傷を受けた携行品に関する写真を書証として提出する場合,個人的には,以下の文面で1頁目をワードで作成し,2頁目以下は4枚の写真を印刷したペーパーを作成し,両者をまとめてPDF化すればいいと思います。

○○○○の携行品損害に関する写真撮影報告書

令和2年10月○日作成
弁護士 山中理司

1   令和2年○月○日発生の交通事故で損傷を受けた○○○○の携行品を,同人が自ら撮影した写真は,別紙のとおりである。

2 2頁以下につき,撮影対象及び撮影日は以下のとおりである。
2頁の写真
・ 撮影対象は◯◯,撮影日は◯◯
3頁の写真
・ 撮影対象は◯◯,撮影日は◯◯
4頁の写真
・ 撮影対象は◯◯,撮影日は◯◯
2(1) 写真撮影報告書という表題の1頁目において,2頁目以下の写真の撮影者,撮影対象,撮影日時及び撮影場所(民事訴訟規則148条)を説明しておけば,証拠説明書において個別の写真に関する細かい説明をする必要がなくなります。
(2) 携行品損害の写真の場合,撮影場所の記載はなくてもいいと思います。
3 iOS11搭載の10.5インチ/12.9インチ(第2世代)iPad Proのカメラで撮影する場合,データサイズが小さいものの,パソコンで再生できないHEIF(ヒーフ)ファイル形式の写真で保存されることがあります。
    そのため,パソコンで写真を印刷することを前提とした場合,「設定」→「カメラ」→「フォーマット」→「互換性優先」を選択することで,jpegファイル形式の写真で保存した方がいいです(iPad Wave「iPadのカメラで写真/動画のフォーマット(形式)を変更する」参照)。


第8 陳述書に関する証拠説明書の記載方法
1(1) 当事者の陳述書を書証として提出する場合,文書の標目は「陳述書」であり,作成年月日は現実に署名押印をもらった日であり,作成者は当事者であり(代理人弁護士がゴーストライターをした場合を含む。),立証趣旨は「原告主張の事実全般」又は「被告主張の事実全般」です。
(2) 証人予定者の陳述書を書証として提出する場合,文書の標目は「陳述書」であり,作成年月日は現実に署名押印をもらった日であり,作成者は証人であり(当事者の代理人弁護士がゴーストライターをした場合を含む。),立証趣旨は証言予定の事実関係です。
2 陳述書で問題となるのは通常,書証として提出する陳述書が原本であることだけです。


第9 電子メール等に関する証拠説明書についての大阪地裁の要望
・ 大阪弁護士会作成の令和元年度司法事務協議会協議結果要旨42頁には,大阪地裁提出の要望として,以下の記載があります。
    電子メールやSNS(以下「電子メール等」という。)を証拠提出するに当たっては,証拠説明書を活用するなどして,以下の点について,御留意,御協力をお願いしたい。
(1) 複数の発信者がある場合には,発信者が誰であるかを特定する。
(2) 転送や返信が重ねられている場合には,マーカーを引くなどして,どの部分が立証趣旨に係る証拠部分であるかを明確にする。
(3) 送受信の順番について,送受信の経過を明確にする。
(4) 電子メール等に添付されたファイル等が存在する場合で,同ファイルが主張と関連性を有する際には,同ファイルを書証として提出するなどして具体的な内容を明確にする。
(5) SNSのやり取りの中に写真やスクリーンショットの送信がされている場合,立証趣旨との関係,誰がいつ撮影したものであるか明確にする。
(提出理由)
     近時,電子メール等が証拠提出されることが多くなっているところ,電子メール等については,①複数の発信者が登場する場合に,個々の発信者が誰であるのかが必ずしも明らかとは言えない(そもそも氏名の記載がない場合,ペンネームや愛称を使用している場合),②電子メール等の転送や返信が重ねられている場合,立証趣旨との関係で,どの部分が意味を持つのか明確とはいえない,③送受信等された年月日の記載がなかったり,送受信が繰り返されたりしている場合に,前後関係や対応関係,送受信の順番が明確とはいえない,④電子メールの送信にあたって,添付ファイルが存在するものの,同ファイルの具体的な内容が明確とはいえず,主張との関係の有無が不明である,⑤SNSのやり取りの中で写真やスクリーンショットの送信がされている場合に,立証趣旨との関係が不明確であったり,そもそも同写真等について,誰がいつ撮影したものであるか明確とはいえなかったりする,といったことがある。
   そこで,電子メール等を証拠提出する場合には,証拠説明書を活用するなどして,できるだけ,当該電子メール等と主張との関係,発信者等の特定や送受信の順番等上記の点を明確にしていただきたい。


第10 ウィキペディアを書証として提出する場合の作成者
・ 「文書の「原本」について」には以下の記載があります(判例タイムズ1467号(2020年2月号)16頁)。
    ウィキペディアを書証として提出することができるか。近藤ほか・前掲「文書の写しによる書証の申出について」でも述べたが,作成者としてどの程度の特定が必要かは立証の趣旨との関係で決まることであり,「ウィキペディア作成者」という程度でも,立証趣旨が紛争の概括的な理解に必要な知識という程度のものであれば許されるものと考えている。審理の上で当事者と共通の理解をするための資料とする限度で許容されるであろう。



第11 関連記事その他
1 日弁連HPの「役立つ書式など」に証拠説明書等の書式が載っています。
2 書証申出の目的で文書の原本を裁判所に郵送するだけでは,書証の提出とはいえません(最高裁昭和37年9月21日判決)。
3 知財高裁平成22年6月29日判決は,「インターネットのホームページを裁判の証拠として提出する場合には,欄外のURLがそのホームページの特定事項として重要な記載であることは訴訟実務関係者にとって常識的な事項である」と判示しています。
4 特許庁HPの「証拠説明書の提出について」には以下の記載があります。
・ 証拠ごとに号証番号(例:甲第1号証、乙第1号証)を記載してください。
・ 書証の内、立証に用いる箇所や強調したい箇所を下線や枠囲い等によって具体的に明示してください。
・ 文書の文字や図面は、鮮明で判読できるものを提出してください。
・ 外国語文献の場合は、取調べを求める部分について翻訳文を添付してください。
5(1) 外部HPの以下の記事が参考になります。
・  駒澤大学学術機関リポジトリ「証拠説明書の記載方法」
・ DIY裁判HP「証拠説明書」
→ 「本人訴訟を支援するため弁護士が作ったサイト」であるとのことです。
・ 松江地裁HPの,記載例(証拠説明書に関するもの)
→ 標目等の書き方の具体例が載っています。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 通常は信用性を有する私文書と陳述書との違い
・ 陳述書の機能及び裁判官の心証形成
・ 陳述書作成の注意点
・ 裁判所が考えるところの,人証に基づく心証形成