裁判官の種類


目次
1 裁判官の種類
2 判事新任のタイミング
3 特例判事補
4 関連記事その他
   
1 裁判官の種類
   裁判官の種類は以下のとおりです(裁判所法5条)。
①   最高裁判所長官(1人)
・   内閣の指名に基づき,天皇が任命します(憲法6条2項,裁判所法39条1項)。
②   最高裁判所判事(14人)
・   内閣が任命し,天皇が認証します(憲法79条1項,裁判所法39条2項及び3項)。
③   高等裁判所長官(8人)
・   最高裁判所の指名した者の名簿によって,内閣が任命し,天皇が認証します(憲法80条1項本文前段,裁判所法40条1項及び2項)。
④   判事
・   最高裁判所の指名した者の名簿によって,内閣が任命します(憲法80条1項本文前段,裁判所法40条1項)。
   通常は,判事補を10年経験した者の中から任命されます(裁判所法42条1項1号参照)。
⑤   判事補
・   最高裁判所の指名した者の名簿によって,内閣が任命しますところ(憲法80条1項本文前段,裁判所法40条1項),司法修習生の修習を終えた者の中から任命されます(裁判所法43条)。
・ 判事補新任日から5年が経過した時点で,判事補としての職権の制限を受けない特例判事補に指名されます判事補の職権の特例等に関する法律1条)。
・ 特例判事補は,当分の間,高等裁判所の裁判事務の取扱上特に必要があるときは,その高等裁判所の判事の職務を代行することがあります(判事補の職権の特例等に関する法律1条の2第1項)。
⑥   簡易裁判所判事
・   最高裁判所の指名した者の名簿によって,内閣が任命します(憲法80条1項本文前段,裁判所法40条1項)。
・ 通常は,(a)判事補を3年経験した者,及び(b)簡易裁判所判事選考委員会の選考を経た裁判所書記官(裁判所法45条,簡易裁判所判事選考規則(昭和22年9月19日最高裁判所規則第2号)参照)が任命されます(「簡易裁判所判事の採用選考に関する国会答弁」参照)。
   
2 判事新任のタイミング
(1) 行政機関等への出向経験者の場合
ア 任官時からずっと判事補のままだった裁判官の場合,判事補新任日から10年で任期が満了します。
   これに対して,行政機関等に出向したり(身分上は検事です。),弁護士職務経験をしたり(身分上は弁護士です。)した後に判事補に復帰した裁判官の場合,復帰したときから10年間が判事補の任期になりますから,判事補新任日から10年で任期が満了するわけではないです。
   しかし,判事補,検事及び弁護士の経験期間の合計が10年であっても判事就任資格があります(裁判所法42条2項)。
   そのため,判事になるタイミングは同じになります。
イ 衆議院法制局参事をしていた人の場合,同期と同じタイミングで判事になります(判事補の職権の特例等に関する法律3条の3・裁判所法42条2項)。
ウ 判事の任命資格について定める裁判所法42条2項は,「前項の規定の適用については、三年以上同項各号に掲げる職の一又は二以上に在つた者が裁判所事務官、法務事務官又は法務教官の職に在つたときは、その在職は、これを同項各号に掲げる職の在職とみなす。」と定めています。
(2) 在外公館又は預金保険機構への出向経験者の場合
ア 在外公館又は預金保険機構に出向している場合,検事の身分すらありません(在外公館への出向の場合,35期の今崎幸彦裁判官のように例外的に検事の身分を有することがあります。)から,出向期間の分だけ判事就任資格の獲得が遅れます。
イ 裁判官が外務省に出向する際,どのような場合に検事兼外務事務官の身分を取得した上での出向扱いとなり,どのような場合に裁判官を依願退官して外務事務官の身分を取得した上での出向扱いとなるかが分かる文書は,外務省には存在しません(平成27年度(行情)答申第62号(平成27年5月21日答申))。
(3) 明治憲法時代の取扱い
・ 明治憲法時代,10年以上裁判官の経験があれば大審院判事の任命資格を取得しましたし(裁判所構成法70条),5年以上裁判官の経験があれば控訴院判事の任命資格を取得しました(裁判所構成法69条)。
     
3 特例判事補
(1) 地家裁における特例判事補
・ 「判事補は、他の法律に特別の定のある場合を除いて、一人で裁判をすることができない。」と定める裁判所法27条1項の例外としての,判事補の職権の特例等に関する法律(昭和23年法律7月12日第146号)1条は以下のとおりです。
① 判事補で裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第四十二条第一項各号に掲げる職の一又は二以上にあつてその年数を通算して五年以上になる者のうち、最高裁判所の指名する者は、当分の間、判事補としての職権の制限を受けないものとし、同法第二十九条第三項(同法第三十一条の五で準用する場合を含む。)及び第三十六条の規定の適用については、その属する地方裁判所又は家庭裁判所の判事の権限を有するものとする。
② 裁判所法第四十二条第二項から第四項までの規定は、前項の年数の計算に、これを準用する。
(2) 高等裁判所判事職務代行としての特例判事補(判事補の職権の特例等に関する法律1条の2)
・ 「各高等裁判所は、高等裁判所長官及び相応な員数の判事でこれを構成する。」と定める裁判所法15条の例外としての,判事補の職権の特例等に関する法律(昭和23年法律7月12日第146号)1条の2(昭和32年5月1日法律第92号によって追加された条文です。)は以下のとおりです。
① 最高裁判所は、当分の間、高等裁判所の裁判事務の取扱上特に必要があるときは、その高等裁判所の管轄区域内の地方裁判所又は家庭裁判所の判事補で前条第一項の規定による指名を受けた者にその高等裁判所の判事の職務を行わせることができる。
② 前項の規定により判事補が高等裁判所の判事の職務を行う場合においては、判事補は、同時に二人以上合議体に加わり、又は裁判長となることができない。

4 関連記事その他
(1) 裁判官の具体的な配属先は,最高裁判所によって定められ(裁判所法47条参照),これを「補職」といいます。
(2) 日弁連HPの「自由権規約 条約機関の一般的意見」「一般的意見32 14条・裁判所の前の平等と公正な裁判を受ける権利」(2007年採択)が載っています。
(3) 預金保険機構に出向した場合,預金保険機構の職員をしていた期間も含めて退職手当が計算されます(国家公務員退職手当法7条の2・国家公務員退職手当法施行令9条の2・85号)。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 特例判事補
・ 職務代行裁判官
・ 裁判官の号別在職状況
・ 下級裁判所の裁判官の定員配置
・ 判事補の採用に関する国会答弁
・ 判事補の外部経験の概要
・ 判事補採用願等の書類,並びに採用面接及び採用内定通知の日程
・ 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等
・ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等


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