目次
1 陳述書の機能
2 裁判官の心証形成
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1 陳述書の機能
① 証拠開示機能
本人の供述内容なり,証人の証言内容なりを事前に開示する機能です。
これにより,反対尋問の準備が促進され,効果的な反対尋問が可能となり,集中証拠調べが充実・活性化されます。
② 主尋問代用補完機能
主尋問に代用し,これを補完する機能です。
詳細な数値など性質上口頭の陳述に適さない事項や,身上・経歴関係などわざわざ口頭で時間をかけて尋問するまでもない事項は陳述書に譲り,提出された書証等によって確定されず証拠調べの実施によって初めて確定できる争点に絞って主尋問を行うことが可能となります。
③ 情報収集機能
早い段階での事案の正確な把握のため,情報及び証拠収集作業を代理人が前倒しするようになる機能です。
④ 参加意識向上機能
陳述書の作成過程及び自己名義の陳述書が裁判所に提出されることを通じて,当事者の訴訟への参加意識を高める機能です。
⑤ 主張固定機能
事後に主張を変更したり,誤解があったなどと弁解したりすることを困難にし,事実についての当事者の主張を固定する機能です。
⑥ 調書作成補助機能
書記官が正確な要領調書を作成する助けとなる機能です。
2 裁判官の心証形成
(1) 周辺的な事情,例えば,①過失や因果関係が争点になっている事案における被害感情等が書かれている場合,②実質的に争いがない事実が書かれてある場合,③提出者にとって不利なことが書かれている場合,人証調べを行わないで陳述書により裁判所の心証が形成されることが多いです。
(2)ア 反対尋問を経ていない陳述書の証明力は極めて弱いと考えられています。
そのため,争いがある重要な事実については,原則として,人証調べを行った上で裁判所の心証が形成されますから,反対尋問を経ていない陳述書だけで重要な事実が認定されることは原則としてありません。
イ やむを得ない理由で反対尋問ができなかった本人尋問の結果は証拠資料となることがあります(最高裁昭和32年2月8日判決参照)。
また,民事訴訟においては,伝聞証言の証拠能力は当然に制限されるものではなく,その採否は,裁判官の自由な心証による判断に委ねられています(最高裁昭和32年3月26日判決。先例として,最高裁昭和27年12月5日判決参照)。
そのため,反対尋問を経ていないというだけの理由で陳述書の証拠能力が否定されるわけではありません。
ウ 外部ブログの「反対尋問を経ない陳述書の証明力について」によれば,簡易裁判所の場合,反対尋問を申請しなかった相手方当事者の陳述書が過大評価されることがあるみたいです。
(3) 裁判官の心証形成一般については,外部HPの「事実認定と裁判官の心証形成」が参考になります。
この前もらった地裁の判決、争いある事実について特段の理由も示さずいきなり相手方側の陳述書に沿った事実認定しててワロタ。陳述書記載=動かし難い事実なのかな。 https://t.co/5Tj5BHZegv
— 弁護士足立敬太 @アレクサ 六甲おろしかけて (@keita_adachi) September 9, 2020
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いま2020ですからね。映像音声の記録化の技術も、心理学の分野も発達して、宣誓と証言と自由心証みたいな前時代の仕組みのままで良いんですかね。偉そうなこと言いながら特に建設的な提案はないのですが。
— 心の貧困 (@mental_poverty) July 27, 2020