処分証書と報告文書の違い,及び二段の推定

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1 処分証書
(1) 処分証書とは,意思表示その他の法律行為が文書によってされた場合における当該文書をいいます。
(2) 例としては,判決書のような公文書のほか,契約書,約束手形,解除通知書,遺言書があります。
(3)ア 処分証書が真正に成立している場合,特段の事情がない限り,原則としてその記載通りの事実が認定されることとなります(最高裁昭和32年10月31日判決最高裁昭和45年11月26日判決)。
イ 処分証書が真正に成立している場合,処分証書の記載以上に本人尋問の結果を信頼すべき特段の事情がない限り,処分証書の記載が尊重されることとなります(最高裁平成14年6月13日判決(判例時報1816号25頁)参照)。
(4) 判例タイムズ1410号(平成27年5月1日発行)26頁ないし34頁に「契約の実質的証拠力について-処分証書とは-」が載っています。

2 報告文書
(1) 報告文書とは,処分証書以外の文書で,事実に関する作成者の認識,判断,感想等が記載されたものをいいます。
(2)   例としては,領収証,商業帳簿,議事録,日記,手紙,陳述書があります。
(3)ア 報告文書が真正に成立している場合であっても,その文書が示す事実の基礎となる法律行為の存在や内容については,その文書から直接に認められるわけではないのであって,報告文書の性質等に左右されることとなります。
イ どのような報告文書が信用されるかについては,「通常は信用性を有する私文書と陳述書との違い」を参照してください。

3 二段の推定
(1) 総論
ア 二段の推定とは,私文書の作成名義人の印影が当該名義人の印章によって顕出されたものである場合,反証のない限り,当該印影は本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定されますから,民訴法228条4項により,当該文書が真正に成立したものと推定されることをいいます(最高裁昭和39年5月12日判決参照)。
イ 民訴法228条4項は,「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と定めています。
(2) 二段の推定における実印及び認印の違い
ア 当該名義人の印章とは,印鑑登録をされている実印のみをさすものではありませんが,当該名義人の印章であることを要し,名義人が他の者と共有,共用している印章はこれに含まれません(最高裁昭和50年6月12日判決(判例秘書に掲載)参照)。
イ 文書への押印を相手方から得る際,その印影に係る印鑑証明書を得ていれば,その印鑑証明書をもって,印影と作成名義人の印章の一致を証明することは容易であることとなります。
   また,押印されたものが実印であれば,押印時に印鑑証明書を得ていなくても,その他の手段(例えば,訴訟提起後に利用できる裁判所の文書送付嘱託)により事後的に印鑑証明書を入手すれば,その印鑑証明書をもって,印影と作成名義人の印章の一致を証明することができます。
ウ 総務省HPに「印鑑の登録及び証明に関する事務について」(昭和49年2月1日付の自治省行政局振興課長の通知)の抜粋が載っています。
(3) 二段の推定が特に重要となる場合
   二段の推定は,文書の真正な成立を推定するに過ぎないのであって,その文書が事実の証明にどこまで役立つのか(=作成名義人によってその文書に示された内容が信用できるものであるか)といった中身の問題は別の問題となります。
   そのため,二段の推定が特に重要となるのは,原則としてその記載通りの事実が認定される処分証書,及び高度の信用性を有する報告文書の場合となります。
(4) 二段の推定により証明の負担が軽減される程度
   二段の推定により証明の負担が軽減される程度は,以下のとおり限定的です。
① 推定である以上、印章の盗用や冒用などにより他人がその印章を利用した可能性があるなどの反証が相手方からなされた場合,その推定が破られることがあります。
② 印影と作成名義人の印章が一致することの立証は,実印である場合には印鑑証明書を得ることにより一定程度容易であるものの,いわゆる認印の場合には事実上困難となることがあります。

4 二段の推定以外に,文書の成立の真正を証明する手段の確保方法
   内閣府HPの「規制改革の公表資料」として掲載されている「押印についてのQ&A」には以下の記載があります。
・ 次のような様々な立証手段を確保しておき、それを利用することが考えられる。
① 継続的な取引関係がある場合
 取引先とのメールのメールアドレス・本文及び日時等、送受信記録の保存(請求書、納品書、検収書、領収書、確認書等は、このような方法の保存のみでも、文書の成立の真正が認められる重要な一事情になり得ると考えられる。)
② 新規に取引関係に入る場合
 契約締結前段階での本人確認情報(氏名・住所等及びその根拠資料としての運転免許証など)の記録・保存
 本人確認情報の入手過程(郵送受付やメールでの PDF 送付)の記録・保存
 文書や契約の成立過程(メールや SNS 上のやり取り)の保存
③ 電子署名や電子認証サービスの活用(利用時のログイン ID・日時や認証結果などを記録・保存できるサービスを含む。)
・  上記①、②については、文書の成立の真正が争われた場合であっても、例えば下記の方法により、その立証が更に容易になり得ると考えられる。また、こういった方法は技術進歩により更に多様化していくことが想定される。
(a) メールにより契約を締結することを事前に合意した場合の当該合意の保存
(b) PDF にパスワードを設定
(c) (b)の PDF をメールで送付する際、パスワードを携帯電話等の別経路で伝達
(d) 複数者宛のメール送信(担当者に加え、法務担当部長や取締役等の決裁権者を宛先に含める等)
(e) PDF を含む送信メール及びその送受信記録の長期保存

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