通常は信用性を有する私文書と陳述書との違い


目次
1 通常は信用性を有する私文書
2 陳述書それ自体の証明力が大きくない理由
3 メール及びLINEのやり取りが信用される理由
4 関連記事その他

1 通常は信用性を有する私文書
① 紛争が顕在化する前に作成された文書
→ 例えば,取引中にやり取りされた見積書及びメールがあります。
② 紛争当事者と利害関係のない者が作成した文書
→ 例えば,紛争とは無関係に作成された第三者の報告書があります。
③ 事実があった時点に近い時期に作成された文書
→ 例えば,紛争当時のメール及びLINE,作業日報があります。
④ 記載内容が習慣化されている文書
→ 例えば,商業帳簿及びカルテがあります。
⑤ 自己に不利益な内容を記載した文書
→ 例えば,領収書があります(最高裁昭和45年11月26日判決参照)。

2 陳述書それ自体の証明力が大きくない理由
・ 陳述書は,①紛争が顕在化した後に作成される文書ですし,②紛争当事者又はこれと利害関係のある人が作成することが通常ですし,③事実があった時点からかなり後に作成される文書ですし,④記載内容が習慣化されているわけではないです。
   そのため,陳述書は,通常は信用性を有する私文書と大きく異なりますから,自己に不利益な内容が記載されている部分を除き,陳述書それ自体の証明力は大きくありません。

3 メール及びLINEのやり取りが信用される理由
(1) 訴訟の心得13頁には以下の記載があります。
    経緯の中の細かな間接事実については,当事者間に争いがない事実も多い。今や企業間の交渉は,その多くが電子メールでなされているから,それは動かしがたい証拠・事実になっている。メールのやり取りなどは相互で行うものであるから,特に信用性は高い。「見てない」などの言い訳はできないし,どう理解したかも分かってしまう。そうすると,その経緯の中で争いのない事実を多数拾い出していくと,原被告の主張するストーリーのうち,どちらがより整合的であるかが判断できることになる。
(2) LINEについてもメールと同趣旨のことがいえると思います。

4 関連記事その他
(1) 「運送品を外観上良好な状態で船積した」旨の記載のある船荷証券の所持人において荷揚当時外部から運送品そのものにつき損傷等の異常を認めうる状態にあつたときは,特段の事情がないかぎり,運送品そのものの損傷等の異常は,運送人の運送品取扱中に生じたものと事実上推定されます(最高裁昭和48年4月19日判決)。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 証人尋問及び当事者尋問
・ 証拠説明書
・ 陳述書作成の注意点
 新様式判決
 処分証書と報告文書
・ 二段の推定
・ 文書鑑定
 裁判所が考えるところの,人証に基づく心証形成
・ 尋問の必要性等に関する東京高裁部総括の講演での発言
・ 陳述書の機能及び裁判官の心証形成


広告
スポンサーリンク