裁判官(判事・判事補)は日本国憲法80条により10年の任期制で,任期満了時に再任されなければ退官します。この「任期満了(任期終了)による退官」は,定年退官・依願退官・死亡退官・罷免等とは別の類型であり,本記事では平成20年度(2008年度)以降の該当者を新しい順に一覧化しています。
第1 平成20年度以降,任期終了により退官した裁判官の一覧
| 退官日 | 修習期 | 氏名 |
|---|---|---|
| 令和7年(2025年) | ||
| 4月12日 | 47期 | 府内覚追加 |
| 3月31日 | 46期 | 小林邦夫 |
| 令和6年(2024年) | ||
| 10月16日 | 57期 | 西田祥平 |
| 4月13日 | 46期 | 丸山徹 |
| 令和5年(2023年) | ||
| 4月9日 | 45期 | 中島栄 |
| 1月16日 | 65期 | 蕪城真由子 |
| 令和4年(2022年) | ||
| 10月16日 | 55期 | 斎藤岳彦 |
| 4月7日 | 44期 | 金光秀明 |
| 3月31日 | 53期 | 目黒大輔 |
| 1月16日 | 64期 | 池上絵美 |
| 令和3年(2021年) | ||
| 4月9日 | 43期 | 近田正晴 |
| 4月9日 | 43期 | 西崎健児 |
| 3月31日 | 36期 | 泉薫 |
| 令和2年(2020年) | ||
| 4月12日 | 50期 | 橋本耕太郎 |
| 4月10日 | 42期 | 大崎良信 |
| 4月10日 | 42期 | 忠鉢孝史 |
| 4月10日 | 42期 | 松田浩養 |
| 4月10日 | 42期 | 山本由利子 |
| 4月10日 | 52期 | 早田久子 |
| 4月10日 | 52期 | 藤本ちあき |
| 平成31年(2019年) | ||
| 4月11日 | 41期 | 佐藤美穂 |
| 4月11日 | 41期 | 飯畑正一郎 |
| 4月11日 | 41期 | 前田昌宏 |
| 平成30年(2018年) | ||
| 4月12日 | 40期 | 酒井康夫 |
| 4月12日 | 50期 | 宮本博文 |
| 4月7日 | 30期 | 駒谷孝雄 |
| 平成29年(2017年) | ||
| 4月10日 | 39期 | 植野聡 |
| 4月10日 | 49期 | 常盤紀之 |
| 4月10日 | 49期 | 佐藤建 |
| 4月10日 | 49期 | 新阜真由美 |
| 平成28年(2016年) | ||
| 4月11日 | 38期 | 小池一利 |
| 4月11日 | 48期 | 堀禎男 |
| 4月9日 | 28期 | 氣賀澤耕一 |
| 平成27年(2015年) | ||
| 4月11日 | 37期 | 高橋裕 |
| 4月11日 | 37期 | 源孝治 |
| 平成26年(2014年) | ||
| 10月16日 | 57期 | 岸田航 |
| 4月13日 | 46期 | 河村隆司 |
| 4月12日 | 26期 | 柴田秀樹 |
| 4月1日 | 33期 | 石田裕一 |
| 4月1日 | 35期 | 加藤美枝子 |
| 平成25年(2013年) | ||
| 10月1日 | 43期 | 大庭和久 |
| 4月10日 | 25期 | 紙浦健二 |
| 4月10日 | 25期 | 有吉一郎 |
| 4月9日 | 45期 | 山下美和子 |
| 4月9日 | 45期 | 山本善平 |
| 平成24年(2012年) | ||
| 10月16日 | 55期 | 内藤大作 |
| 4月13日 | 34期 | 村田鋭治 |
| 4月13日 | 34期 | 河野泰義 |
| 平成23年(2011年) | ||
| 10月17日 | 54期 | 中野智昭 |
| 10月17日 | 54期 | 井原千恵 |
| 4月9日 | 43期 | 西田時弘 |
| 4月9日 | 43期 | 左近司映子 |
| 4月9日 | 43期 | 亀井宏寿 |
| 4月9日 | 43期 | 早川真一 |
| 4月1日 | 28期 | 伊藤正高 |
| 平成22年(2010年) | ||
| 4月10日 | 42期 | 尾﨑智子 |
| 4月10日 | 42期 | 磯貝祐一 |
| 4月10日 | 52期 | 櫛橋明香 |
| 4月10日 | 52期 | 高松晃司 |
| 平成21年(2009年) | ||
| 4月11日 | 41期 | 一木泰造 |
| 4月11日 | 41期 | 村越啓悦 |
| 4月11日 | 41期 | 山田徹 |
| 4月11日 | 41期 | 伊沢文子 |
| 4月9日 | 31期 | 荒井九州雄 |
| 4月1日 | 25期 | 島田清次郎 |
| 4月1日 | 26期 | 田中信義 |
| 4月1日 | 26期 | 布村重成 |
| 平成20年(2008年) | ||
| 4月12日 | 50期 | 和田はる子 |
| 4月12日 | 50期 | 新阜創太郎 |
| 4月11日 | 27期 | 木村烈 |
| 4月7日 | 30期 | 小林秀和 |
| 4月7日 | 30期 | 畑中芳子 |
※ 同一日付内は修習期の新しい順に掲載しています。
第2 各種注記
2 20期代の任期終了退官が実質的に定年退官に近い理由(計算の詳細)
20期代の任期終了退官の場合,勤続40年となりますから,大学卒業直後に裁判官になっていたとしても,任期更新後,定年(判事・判事補は裁判所法50条により65歳)までの期間は1年もありません(例えば,10月生まれの場合,定年まで約半年です。)。そのため,この場合,実質的には定年退官とほぼ同じです。
41期の一木泰造福岡高裁宮崎支部判事につき,平成21年2月8日,福岡発宮崎行きの高速バスの車内で女子短大生に痴漢行為を働いたとして,同日,準強制わいせつ罪で逮捕され,同月27日に起訴されて,同年7月7日に懲役2年執行猶予5年の有罪判決を言い渡されました。しかし,任期満了が近かった関係で弾劾裁判が実施されることはありませんでした。
4 任期終了直前の依願退官に対する退職手当の優遇(根拠条文)
11年以上勤務した裁判官が,任期の終了に伴う裁判官の配置等の事務の都合により任期終了1年前に依願退官した場合,定年退官に準ずる支給率で退職手当を支給してもらえます(勤続期間25年未満の裁判官につき国家公務員退職手当法4条1項2号・同法施行令3条1号,勤続期間25年以上の裁判官につき国家公務員退職手当法5条1項5号・同法施行令4条・3条1号)。
第3 関連記事その他
1 現職裁判官の再任圧力に関する著作
(1) 38期の井上薫裁判官は,「諸君!」2006年1月号の80頁ないし88頁に,「あの「靖国傍論」判決批判の裁判官がクビ?我、「裁判干渉」を甘受せず」と題する記事を寄稿していますところ,82頁には以下の記載があります。
平成一六年一一月のある日、私は、横浜地裁の浅生重機所長から、「判決の理由が短いので改善せよ」と言われた。執務時間中所長室で二人きりの時のことである。
平成一七年七月一四日、所長面談の時、私は所長から「判決の理由を改善するように言ったのに改善しないので、来年の判事再任は無理である。第二の人生を考えておくように」と言われた。所長面談というのは、所長が裁判官の人事評価をするに先立ち、その裁判官としなければならないものとして制度化された面談であり、公式行事である。余人は立ち会わない。
(2) じつは裁判所ってこんな所なんです!PART2(中村圭一著)82頁及び83頁には以下の記載があります。
私も実際に再任されなかった裁判官を数名見てきましたが、やはり、誰の目から見ても「この裁判官は再任されないかもしれないな」と思われていた方で、実際に再任されなかったというケースがほとんどでした。(中略)「任期終了退官」という形で裁判官を辞めた場合は、問題があって裁判官を続けることができなかったというパターンがほとんどだとは思いますが、中には「10年や20年という節目で任期終了という形で辞めよう」と考えて、再任を希望しなかった裁判官も一部いますので、一概には言い切れない側面もあります。
著者の中村圭一は,平成13年に裁判所職員となり,最高裁,福岡高裁,福岡地裁,福岡家裁,佐賀地裁などで勤務し,令和3年3月に退職しました(司法書士・行政書士K1オフィスHPの経歴紹介参照)。
2 任用継続の期待と国家賠償
任命権者が,日々雇用職員に対して,任用予定期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど,右期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものとみられる行為をしたというような特別の事情がある場合には,職員がそのような誤った期待を抱いたことによる損害につき,国家賠償法に基づく賠償を認める余地があり得ます(最高裁平成6年7月14日判決)。この判決自体は裁判官の事案ではなく大学図書館の日々雇用職員(非常勤国家公務員)に関するものですが,同様の法理は裁判官の再任にも当てはまり得ると考えられます。
3 資料・関連記事
以下の資料を掲載しています。
- 裁判官の人事評価に関する規則(平成16年1月7日最高裁判所規則第1号)
- 裁判官の人事評価に関する規則の運用について(平成16年3月26日付の最高裁判所事務総長の依命通達)
- 裁判官の人事評価の実施等について(平成16年3月26日付の最高裁判所人事局長通達)
- 裁判官に関する人事事務の資料の作成等について(平成16年5月31日付の最高裁判所人事局長の依命通達)
- 裁判官の再任等に関する事務について(平成16年6月17日付の最高裁判所人事局長通達)
以下の記事も参照してください。
- 宮本康昭裁判官(13期)の経歴-「任期終了退官」という分類の起点となった,昭和46年の再任拒否事件の当事者本人
- 昭和44年開始の,裁判所におけるブルーパージ-平賀書簡事件・青法協脱会勧告等,「司法の危機」の全体像
- 判事補任官拒否と最高裁判所の指名権の行使に関する裁判例
- 下級裁判所裁判官指名諮問委員会委員名簿
- 下級裁判所裁判官指名諮問委員会で再任不適当とされた裁判官の数の推移
- 任期終了直前の依願退官及び任期終了退官における退職手当の支給月数(推定)
- 裁判官の種類
- 裁判官の再任の予定年月日,及び一斉採用年月日
- 裁判官の退官情報
- 50歳以上の裁判官の依願退官の情報
- 判事補時代に退官した元裁判官の名簿(令和時代)
- 判事補時代に退官した元裁判官507人の名簿(昭和時代及び平成時代)
- 弁護士任官候補者に関する下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申状況
参考:関連ツイート(7件)
令和2年9月18日付で業務停止6月の懲戒処分を受けた弁護士法人清源(きよもと)法律事務所に平成30年5月1日に入所した,宮本博文裁判官(50期)の経歴https://t.co/ErJCpOyUek https://t.co/L85rPOngs9
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) September 19, 2020
下級裁判所裁判官指名諮問委員会について(令和2年度新任判事補研修の資料)を添付しています。 pic.twitter.com/O25nan3tID
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) April 4, 2021
退職手当通知・支給事務のフロー(地家裁所属の裁判官の退職)→「退職手当に関する「高裁視点の」留意点について」からの抜粋 を添付しています。 pic.twitter.com/V7gTED8F9m
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) May 4, 2022
弁論主義違反を超える処分権主義違反の釈明権ブン回し、みたいな豪快なスイングに両代理人呆然。これまでに、職務情報提供に別紙付けて提出したのは、その件しかない。
— 𝙃𝙍𝙆₅₄ (@hKodama) May 11, 2022
令和5年3月16日,56期の松本明子裁判官について,再任裁判官に関する評価情報を下級裁判所裁判官指名諮問委員会大阪地域委員会に提出しました。 pic.twitter.com/xHFNi1uUJX
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) March 16, 2023
本当だとしたら再任どうするんですかね。なお、Jおまはまだ帰宅できず‥。 https://t.co/hPcDzUY85m
— Jはお前なんだよ (@tako_kora_) September 5, 2023
なお、裁判所は裁判官もいざとなればわりとサクッと使い捨てます。 https://t.co/5Sll0iEj7G
— ありふれたろいやー (@OrdinaryLaywer) August 31, 2023