本記事は,裁判官の号別在職状況その他の公開資料から確認できる数字と,その数字だけでは確認できない評価を分けて整理する。従前の記事にあった実在組織を模したAIの発言は,取材又は内部資料に基づくものではなく,AIが作成した架空の会話であったため,全部撤去した。
第1 結論と記事の読み方
号別在職状況は,ある時点で各号に何人が在職しているかを示す資料である。各号の人数やその推移は,裁判官組織の構成を考える入口になる。
しかし,号別人数だけから,採用難,若手の流出,昇任の停滞,合議体の維持困難,個別庁の過重負担又は財務当局の人員削減要求を認定することはできない。これらを評価するには,採用・退官・昇任の時系列,裁判所別の配置定員と現在員,事件数,審理期間,合議事件数,欠員及び予算折衝資料などを追加確認する必要がある。
第2 号別在職状況から確認できること
公開された各時点の表を同じ区分で比較すれば,裁判官,判事補及び簡易裁判所判事の総数と号別人数の増減を確認できる。後掲の表は,元資料の数値を要約したものである。
もっとも,二時点の在職者数はストックの比較である。期間中の新規採用者,退官者,昇任者及び職種間の異動というフローを直接示すものではない。
第3 四つの数字を区別すること
1 法定定員
法律によって定められた全国の定員であり,個別の裁判所に実際に配置される人数と同じではない。
2 配置定員
最高裁判所事務総長通達等により各裁判所へ割り当てられる枠である。法定定員,現在員及び事件担当者数とは区別する必要がある。
3 現在員
特定時点で実際に在職する人数である。欠員,休職,兼務及び発令時期によって配置定員と一致しない場合がある。
4 号別在職者数
給与法上の号別の在職者数である。号は報酬上の区分であり,年齢,裁判長経験,事件の難易度,勤務庁又は管理職上の役割を一対一で示すものではない。
第4 号別人数から直ちに分からないこと
- 減少が採用数,退官数,昇任又は制度変更のどれによるか。
- 特定の号に滞留があるか,昇任が遅れているか。
- 個別庁又は個別部に実質的な欠員や過重負担があるか。
- 合議事件を担当できる裁判官が不足しているか。
- 当事者の裁判所へのアクセス又は審理の質が低下したか。
- 予算当局がどのような理由で増員又は減員を求めたか。
これらは仮説として検討できるが,号別表だけを根拠に事実として記載してはならない。
第5 採用・昇任・事件負担を検討する追加資料
採用問題には,新任判事補,弁護士任官,検事からの任官,退官及び欠員の年次資料が必要となる。昇任問題には,同一期の追跡,任官日,号の改定時期及び制度変更の確認が必要となる。事件負担には,新受・既済・未済事件数,平均審理期間,合議率,事件類型,書記官・調査官その他の職員配置及び裁判所別の実働人数が必要となる。
配置定員については,下級裁判所の裁判官の配置定員―平成28年度・令和7年度を読む架空座談会(AIリライト)も参照。
第6 人口減少・予算・デジタル化との関係
人口が減少しても,事件数,事件の複雑性,高齢者・外国人への対応,支部までの移動距離又はデジタル化に必要な移行作業が同じ割合で減るとは限らない。逆に,業務の標準化やデジタル化により必要時間が減る可能性もある。
したがって,人口,事件数,人員及び処理能力を別々に確認する必要がある。統計の読み分けについては,人口減少と就業者数―少子高齢化の統計を法律実務で読み違えないための整理(AI作成)参照。
予算当局の考え方を記載する場合も,公開された概算要求,査定結果,行政事業レビュー又は国会答弁を根拠にする必要があり,架空の「本音」で代用することはできない。
第7 出典と検証上の限界
後掲表の数値は,記事作成時に収集した裁判官の号別在職状況その他の公表資料に基づく。ただし,表にない採用・退官・昇任の原因,個別庁の事件負担又は予算折衝の経緯については,号別在職状況から確認できない。
本記事は公開数値の読み方を扱うものであり,特定の裁判官又は行政機関の内心を推認するものではない。
第8 裁判官の実数の推移(サマリー)
| 年月日 | 認証官 | 判事 | 判事補 | 簡易裁判所判事 | 合計 |
| H14.7.1 | 23 | 1,401 | 714 | 740 | 2,878 |
| H15.7.1 | 23 | 1,436 | 722 | 732 | 2,913 |
| H17.7.1 | 23 | 1,516 | 783 | 691 | 3,013 |
| H19.4 | 23 | 1,596 | 797 | 694 | 3,110 |
| H21.7.1 | 23 | 1,672 | 862 | 708 | 3,265 |
| H22.7.1 | 23 | 1,683 | 895 | 717 | 3,318 |
| H23.12.1 | 23 | 1,800 | 864 | 743 | 3,430 |
| H24.12.1 | 23 | 1,825 | 863 | 761 | 3,472 |
| H25.12.1 | 22 | 1,846 | 848 | 773 | 3,489 |
| H26.12.1 | 23 | 1,876 | 832 | 776 | 3,507 |
| H28.7.1 | 23 | 1,856 | 876 | 769 | 3,524 |
| H28.12.1 | 23 | 1,958 | 794 | 773 | 3,548 |
| H29.7.1 | 23 | 1,908 | 835 | 748 | 3,514 |
| H29.12.1 | 23 | 1,946 | 813 | 743 | 3,525 |
| H30.7.1 | 23 | 1,965 | 774 | 705 | 3,467 |
| H30.12.1 | 23 | 1,972 | 779 | 712 | 3,486 |
| R01.7.1 | 23 | 1,982 | 759 | 686 | 3,450 |
| R01.12.1 | 23 | 1,996 | 779 | 686 | 3,484 |
| R02.7.1 | 23 | 2,031 | 726 | 653 | 3,433 |
| R02.12.1 | 23 | 2,027 | 747 | 667 | 3,464 |
| R03.7.1 | 23 | 2,055 | 695 | 639 | 3,412 |
| R03.12.1 | 23 | 2,046 | 715 | 657 | 3,441 |
| R04.7.1 | 23 | 2,072 | 661 | 627 | 3,383 |
| R04.12.1 | 23 | 2,066 | 681 | 646 | 3,416 |
| R05.7.1 | 23 | 2,076 | 658 | 614 | 3,371 |
| R05.12.1 | 23 | 2,078 | 676 | 626 | 3,403 |
| R06.7.1 | 23 | 2,066 | 657 | 606 | 3,352 |
| R06.12.1 | 23 | 2,072 | 673 | 632 | 3,400 |
| R07.7.1 | 23 | 2,083 | 643 | 605 | 3,354 |