証拠説明書


目次

第1 総論
第2の1 証拠説明書の「号証」欄及び「標目」欄
第2の2 証拠説明書に記載することが望ましい事項等
第3 証拠説明書の重要性等
第4 原本,(写し)及び写し
1 原本,(写し)及び写しの区別
2 民訴法上の,書証の申出の原則的な方法
3 実務上の,書証の申出の原則的な方法
第5 書証の提出方法に関する裁判官の意見
第6 動画を記録した媒体を書証として提出する場合の取扱い等
第7 交通事故で損傷を受けた携行品に関する写真
第8 陳述書に関する証拠説明書の記載方法
第9 電子メール等に関する証拠説明書についての大阪地裁の要望
第10 ウィキペディアを書証として提出する場合の作成者
第11 関連記事その他

第1 総論

1 書証を提出する場合,文書の標目,作成者及び立証趣旨(民事訴訟規則137条1項)並びに証拠方法及び作成年月日を記載した証拠説明書を一緒に提出することが望ましいです。
2 書証とは,証拠となるべき文書をいいます(民事訴訟規則55条2項)。

第2の1 証拠説明書の「号証」欄及び「標目」欄

・ 特許庁HPの「証拠説明書の提出について」に載ってある「証拠説明書の作成方法」には以下の記載があります。
(1)「号証」欄
証拠文書について、提出人が請求人、被請求人又は参加人のいずれであるかによって、甲、乙又は丙を頭に付けるとともに、提出順に第何号証と番号を付したものを記載してください。例えば、請求人が提出する最初の証拠文書は「甲1」となります。
番号は、1つの文書には1つの番号を付すことを原則としますが、契約書とそれに添付されている印鑑登録証明書のように、関連する文書の場合は枝番(契約書を甲〇号証の1とし、添付されている印鑑登録証明書を甲〇号証の2とする)としてください。
(中略)
(2)「 標目」欄
証拠文書の題名を記載してください。例えば、「実施許諾契約書」という題名の文書であれば、「実施許諾契約書」との記載としてください。
同じ題名の文書が複数ある場合は、「令和〇〇年〇〇月〇〇日付け実施許諾契約書」、「令和△△年△△月△△日付け実施許諾契約書」のように、作成年月日等で特定してください。
定まった題名がない文書の場合は、「『〇〇』と題する文書」、「『△△』から始まる文書」等、一応の題名や書き出し等によって特定してください。

第2の2 証拠説明書に記載することが望ましい事項等
1 以下の事項は証拠説明書に記載することが望ましいとされています。
① 偽造文書として提出する場合にはその旨
② 原本及び写しの別
③ 書証に書き込みがあり,書き込み部分も立証趣旨と関連する場合,書き込み部分とそれ以外の部分とのそれぞれの作成者
④ 写真提出の場合,撮影者,撮影対象,撮影日時及び撮影場所(民事訴訟規則148条参照)
⑤ 図面等につき,拡大・縮小コピーにより写しを作成した場合にはその旨
⑥ 文書の一部のみの提出である場合にはその旨
2 偽造文書として提出する場合としては,以下の二つの場合があります。
① 挙証者が,当該文書は偽造された文書であるとして,偽造行為を立証するために提出する場合
・ この場合,偽造された文書の存在を立証すれば足りるため,具体的な偽造者名というのは必ずしも主張する必要はありません。
   そのため,証拠説明書の作成者欄に偽造者名まで記載する必要はありません。
② 当該文書が偽造者の作成に係る文書であるということで偽造者自身の意思・思考内容を立証するために提出する場合
・ 例えば,民法117条に基づいて無権代理人の責任を追及する場合です。
・ この場合,偽造者の意思に基づいて申請に作成された文書となるため,証拠説明書の作成者欄に当該偽造者を具体的に特定して記載する必要があります。
3(1) 月刊大阪弁護士会2018年5月号21頁及び22頁に,証拠説明書の記載に関する裁判官の意見として以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)。
① 作成者が複数の文書,例えば引用多数の電子メール,LINE等は,該当部分ごとに作成者を明らかにする必要がある。
② 写真,録音テープ等は,撮影,録音,録画などの対象並びにその日時及び場所を明らかにするほか(民訴規則148条),必要に応じ撮影の場所,方向などを図示するなどの工夫をしてほしい。
③ 立証趣旨は,書証のどこをどのように読み取れば立証命題につながるのかを端的に説明し,当該書証から読み取れる事実とその事実から推認できる事実は区別して記載してほしい。
(2) 会話録音や動画が長い場合,立証趣旨に関係する部分を経過時間等により特定し,動画については,切り出した静止画像を別の書証として提出した方がいいです。
4 民事訴訟規則との関係でいえば,写真又は録音テープの場合,撮影の日時及び場所を明らかにする必要がある(民事訴訟規則148条)のに対し,一般の文書の場合,作成年月日を明らかにすることは明文上求められていません。
    そのため,第三者が作成したホームページを参考資料として提出する場合において作成日が分からない場合,ホームページの印刷日を記載しておけば問題ないと思います。

第3 証拠説明書の重要性等

1   証拠説明書の記載が十分でない場合,期日における書証の取り調べが煩雑になったり,書証の意味を正確に把握するうえで支障が生じたりすることがあります。
   また,控訴審の場合,記録が膨大で事案も複雑困難なものが多いため,とりわけ証拠説明書の果たす役割が大きくなります。
   そのため,裁判所としては,証拠説明書を丁寧に作成することを期待しています。
2 月刊大阪弁護士会2018年5月号23頁に,証拠説明書の記載内容に関する裁判官の意見として以下の記載があります(ナンバリングを追加しました。)。
① 書証の写しの提出時に証拠説明書がないと確認を後回しにすることがある。
   また,証拠説明書に証拠のコピーを添付し,読むべき順序を番号で示していた例があったが,分かりやすくするために様々な工夫があってよい。
② 特にLINEは発言者が分かりづらいが,LINEの画面を書証として提出するほか,代理人が発言者と発言内容を時系列に沿って一覧表で書き直したものを書証で提出し,かつ,その中で有用な発言にマーカーを引いていた例は,読みやすく,主にそちらを参照していた。
③ 証拠説明書を読むのは,提出時のほか,尋問前や判決起案をするときである。証拠説明書の標目とともに,立証趣旨を見て,最後の判断の段階で漏れがないことをチェックしている。
④ 証拠説明書を提出した後に書証の立証趣旨を追加する場合,主張書面に主張と立証趣旨を追加することになった書証が照合されていれば見落とすことは余りない。
   立証趣旨が大きく変わる場合,立証趣旨を補充した証拠説明書を提出しても問題はない。
⑤ カルテ等について,例えば症状固定のメルクマールになるような部分は,立証趣旨に書いた方がよい。
   経過が大事であれば主張書面に時系列表を付けて,カルテのどこに書いてあるかを入れ込んでもらうと,一覧性もあって分かりやすい。
    十何時間という録画を提出する場合,何時何分に何をしているのかを証拠説明書等の別紙で示されていると,録画映像が見やすくなる。
3 平成29年2月6日開催の民事裁判改善に関する懇談会では,「7 証拠説明書」に関して以下の発言がありました(「大阪弁護士会民事訴訟法の運用に関する協議会」発行の平成28年度懇談会報告集27頁及び28頁)。
裁:証拠説明書は,裁判官が感じているほど,代理人は重要視されていないのではないかと常々思っている。証拠説明書は書証の一覧表になるので,私の場合は,たくさんの書証が出てきた場合には,まず証拠説明書をコピーして手元に置いた上で,1枚1枚実際の証拠を見て,証拠説明書自体にこちらがポイントだと思うところを書き込むという形で活用している。そうすると,判決を書くときに,大部の書証全部に当たるのではなく,自分の証拠説明書のコピーを見て,この証拠とこの証拠は大切という再確認することができ,非常に重宝している。
   高裁では,どういう状況でこの証拠が提出されたのかが分からないので,書証が大量で複雑そうな事件の場合,まず証拠説明書をコピーするというのが主任裁判官として記録を読む前の最初の作業となる。そしてその証拠説明書を見ながら,主張書面を読んだり,証拠を見たりするようにしていた。そのような形で利用していると認識していただくことが,証拠説明書に何を書くのかというところともかかわってくると思う。立証趣旨が金銭消費貸借契約書のように明白なものは詳細に書く必要はないが,書証を見ただけでは立証趣旨がすぐに分からないようなものについては,適切に書いておかないと,特に引継ぎの事件で裁判官が記録を見るときなどには,重要性とか見てほしいところが伝わらない場合がある。
裁:判決を書く際,主張の整理をするときは準備書面を読んでいくが,理由を書くときには,基本的には準備書面に戻らない。証拠説明書と証拠本体を見る。そのため,証拠説明書にどういったことが書いてあるのか,立証趣旨にどういうことが書いてあるのかというのは,判決書の理由を書くにあたって重視している。それを踏まえると,立証趣旨が適切に記載されている証拠説明書は非常に役に立つし,それが書いていない証拠説明書については,これはどういう証拠なのかと思いながら,うまくその証拠が使えないので,提出した当事者に不利に判断してしまうことがあるのかもしれないと思う。そういった意味で,立証趣旨のしっかりした証拠説明書は私も書いてほしいと思っている。

第4 原本,(写し)及び写し

1 原本,(写し)及び写しの区別
(1) 証拠方法の記載については理論上,以下の区別があります。
① 「原本」という記載
・ 証拠とする書類の原本が手元にあり,これを裁判所で調べてもらいたい(裁判官に確認してもらいたい)ときに記載します。
② 「(写し)」という記載
・ 原本は存在するけれど,写しを裁判所で調べてもらいたい(裁判官に確認してもらいたい)ときに記載します。
③ 「写し」という記載
・ 写しそのものが原本であるときに記載します。
(2) 広島地裁HPの「証拠説明書の作成要領等」に同趣旨の説明が載っています。
(3) 特許庁HPの「証拠説明書の提出について」に載ってある「(参考)文書の原本・写しについて」には以下の記載があります。
     原本を提出するときは、「原本・写しの別」欄には「原本」と記載してください。正本又は認証のある謄本は、上記のとおり厳密には原本ではありませんが、原本に準じるものとして取り扱われていますので、「原本・写しの別」欄には「原本」と記載していただいて結構です(あるいは、それぞれ「正本」、「認証謄本」などと記載していただいても、もちろん構いません。)。 写しを提出するときは、「原本・写しの別」欄には「写し」と記載してください。

2 民訴法上の,書証の申出の原則的な方法
(1)ア ①「書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。」と定める民事訴訟法219条,及び②「文書の提出又は送付は、原本、正本又は認証のある謄本でしなければならない。」と定める民事訴訟規則143条1項からすれば,証拠方法としては,「原本」という記載が原則となります。
イ 民事訴訟規則143条1項の「文書の提出」は①書証の申出としての提出及び②文書提出命令に基づく提出であり,同条項の「文書の送付」は③文書送付嘱託に基づく送付です(条解民事訴訟規則304頁)。
ウ 民事訴訟規則143条1項の「認証のある謄本」は,裁判所等官署側の認証のある書類のことです(条解民事訴訟規則87頁及び88頁)。
(2) 「(写し)」という記載は,当事者間において文書の謄本をもって原本に代えることに異議がなく,かつ,その原本の存在及び成立に争いがない場合に許される証拠方法です(最高裁昭和35年12月9日判決参照。なお,公文書の写しにつき大審院大正10年9月28日判決,私文書の写しにつき大審院昭和5年6月18日判決)。
(3)ア 「写し」という記載は,当該写し自体の成立につき,当事者間に争いがない場合又は証明がある場合に許される証拠方法です(東京地裁平成2年10月5日判決(判例秘書に掲載)参照)。
イ 弁護士江木大輔のブログ「「原本に代えて写しを提出する」「写しを原本として提出する」」には以下の記載があります。
似て非なるものに「写しを原本として」取り調べるという方法があります。
これは,「写し」そのものを原本として取り調べるというもので,取り調べの対象は,あくまでも「写し」そのものということになります。この場合,取り調べ対象はあくまでも「写し」そのものですので,元になった文書の原本の提出がなくても,取り調べ自体が却下されるということはありません。ただし,元になった書類の原本の存在や成立については別途争うことが可能ですので,当該写しが偽造であるといった主張がなされ,それが一定の説得力を持つ場合には,なぜ原本ではなく写しなのかということが問われることもあります。

3 実務上の,書証の申出の原則的な方法(1) 実務上,期日前における文書の写し及び証拠説明書の提出は,実質的には書証の申出に相当する機能を果たしています。

(2) 実務上は,裁判官に原本を確認して欲しいときは「原本」と記載し,裁判官に原本を確認してもらう予定がないときは「写し」と記載しておけば問題ありません。
(3) 写しそのものが原本である場合,当該写しの原本(当該写しのもととなった文書のことであって,いわば「真の原本」というべきもの)の存在又は成立につき当事者間に争いがあったとしても,あるいは,当該写しが原本を正確に写したものではないとしても,それは,書証の申出自体を不適法とする事情ないしその形式的証拠力に影響を及ぼすべき事情ではなく,その実質的証拠力に影響を与える可能性を有する事情にすぎないと解されています(東京地裁平成2年10月5日判決(判例秘書に掲載)参照)。
(4)ア 例えば,民事実務講義案Ⅰ(三訂版)141頁には以下の記載があります。
     現代のようにコピー機がなかった時代においては,文書の写しはすべて手書複写であった。当事者が提出する文書の写しはもちろん,裁判所書記官が作成する正本や謄本も手書複写であった。コピー機が高性能化し広く普及し,写しといえばコピー機により,原本をその形状を含め忠実に再現したものを得ることができるが,文書の成立の真正やその内容の真否を判断するに当たっては,やはり原本を確認する必要があるし,何よりも写しは原本が存在することの一つの徴表にすぎない面は否定できない。
イ ちなみに,公文書偽造罪(刑法155条)の客体となる文書は,これを原本たる公文書そのものに限る根拠はなく、たとえ原本の写であっても,原本と同一の意識内容を保有し,証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り,これに含まれます(最高裁昭和51年4月30日判決最高裁昭和54年5月30日決定及び最高裁昭和58年2月25日決定)。

第5 書証の提出方法に関する裁判官の意見

・ 月刊大弁2018年5月号22頁に,「裁判所からの基調報告」における「書証の提出方法」として以下の記載があります。
     書証を提出する意味合いを裁判官に適切に伝えるためには,その見せ方についても工夫をしていただきたい。
    電子メール,LINE等については,やり取りを分断しないで時系列の順にまとめて提出してほしいなどの意見があり,やり取りが多数の場合には,やり取りごとに枝番号をつける,重要な部分にマーカーを付するなど,大部の書証と同様の工夫も必要との指摘もあった。
    書証をマスキングする場合,その必要性を吟味し,真に必要な部分のみにマスキングをするべきであり,不用意なマスキングにより証拠価値を割り引いて考えざるを得なくなったり,原本の存否,開示の要否等をめぐる疑念や対立等が生じたりした事例もあった。
    大部の書証については,一つの文書として提出するのか,それとも複数の文書として提出するのかをきちんと検討してほしい。口頭議論や書面での引用の前提として,ページ数や枝番をつけることは不可欠であるといった指摘があった。

第6 動画を記録した媒体を書証として提出する場合の取扱い
1 大阪弁護士会作成の,「令和2年度司法事務協議会 協議結果要旨」84頁及び85頁には,動画を記録した媒体を書証として提出する場合の取扱いに関する大阪地裁の回答として以下の記載があります。
(1) 「書証として提出された動画(DVDやUSBメモリ等の媒体に記録されたもの)の内容を裁判所はどのようにして確認をしているか,教示されたい。」という質問に対する回答
     まず,書記官が裁判所から貸与されているパソコンでウイルスチェックを行った上,そのパソコンにより動画を再生できるかどうかを確認し,再生できない場合にはDVD再生プレーヤーその他の裁判所備付機器によって再生できるかどうかを試行している。それでも再生できない場合には,裁判官と相談の上,提出当事者に対し再生可能な形式への変更を打診している。
     このような作業を経た後,裁判官は他の証拠と同様に,期日に備えて証拠の検討のため,再生可能性を確認した機器により再生して動画の内容を確認している。
(2) 「媒体に記録された動画を書証として提出するにあたって,留意すべき事項はあるか,説明いただきたい。」という質問に対する回答
     まず,情報セキュリティの観点から,ウイルスチェックの励行をお願いしたい。データの容量が大きいものについてはウイルスチェックに時間を要することもあるので,その全てを提出する必要があるかどうかについて吟味の上で提出していただきたい。
     また,証拠保管の観点から,USBは長期間保存できないものがあるので,USBによる提出は避け,DVDで提出していただきたい。さらに,物理的な破損を防止するため,DVDはプラスチックケースに入れて提出していただきたい。加えて,証拠番号については,プラスチックケースに直接記入するか,神に記載した上でセロハンテープを用いてプラスチックケースに貼り付けていただきたい。付箋に記載してプラスチックケースに貼り付けると,剥がれて散逸するおそれがあるので,避けていただきたい。
     そして,証拠調べの観点から,ウインドウズの標準機能で再生できる形式で提出していただきたい。また,裁判所への提出分の正本と相手方当事者への提出分である副本の同一性を確認の上で提出していただきたい。
     さらに,動画が長時間に及ぶような場合は,裁判官が立証趣旨を的確に把握して適正に証拠を評価するため,民事訴訟規則149条1項の趣旨に照らして,重要な場面を印刷したスクリーンショットなどの画像やその説明を記載した証拠説明書を提出していただきたい。
2 二弁フロンティア2022年4月号「【前編】交通事故訴訟の最新の運用と留意点~東京地裁民事第27部(交通部)インタビュー~」には以下の記載があります。
多くの事案では、過失相殺の前提として事故態様が問題となるほか、原告主張の症状の外傷起因性や、治療の必要性・相当性に関係して、事故により身体に加わった外力の部位や程度が問題となります。裁判官にとっては、具体的な事故状況を図面や画像で確認することができた方が、文字での説明のみの場合よりもリアルに理解することができますので、事故現場や事故車両の写真、ドライブレコーダー等の客観的資料が存在するときは、できるだけ早期にご提出ください。


第7 交通事故で損傷を受けた携行品に関する写真

1 交通事故で損傷を受けた携行品に関する写真を書証として提出する場合,個人的には,以下の文面で1頁目をワードで作成し,2頁目以下は4枚の写真を印刷したペーパーを作成し,両者をまとめてPDF化すればいいと思います。

○○○○の携行品損害に関する写真撮影報告書

令和2年10月○日作成
弁護士 山中理司

1   令和2年○月○日発生の交通事故で損傷を受けた○○○○の携行品を,同人が自ら撮影した写真は,別紙のとおりである。2 2頁以下につき,撮影対象及び撮影日は以下のとおりである。2頁の写真・ 撮影対象は◯◯,撮影日は◯◯3頁の写真・ 撮影対象は◯◯,撮影日は◯◯4頁の写真・ 撮影対象は◯◯,撮影日は◯◯

2(1) 写真撮影報告書という表題の1頁目において,2頁目以下の写真の撮影者,撮影対象,撮影日時及び撮影場所(民事訴訟規則148条)を説明しておけば,証拠説明書において個別の写真に関する細かい説明をする必要がなくなります。
(2) 携行品損害の写真の場合,撮影場所の記載はなくてもいいと思います。
3 iOS11搭載の10.5インチ/12.9インチ(第2世代)iPad Proのカメラで撮影する場合,データサイズが小さいものの,パソコンで再生できないHEIF(ヒーフ)ファイル形式の写真で保存されることがあります。
    そのため,パソコンで写真を印刷することを前提とした場合,「設定」→「カメラ」→「フォーマット」→「互換性優先」を選択することで,jpegファイル形式の写真で保存した方がいいです(iPad Wave「iPadのカメラで写真/動画のフォーマット(形式)を変更する」参照)。

第8 陳述書に関する証拠説明書の記載方法

1(1) 当事者の陳述書を書証として提出する場合,文書の標目は「陳述書」であり,作成年月日は現実に署名押印をもらった日であり,作成者は当事者であり(代理人弁護士がゴーストライターをした場合を含む。),立証趣旨は「原告主張の事実全般」又は「被告主張の事実全般」です。
(2) 証人予定者の陳述書を書証として提出する場合,文書の標目は「陳述書」であり,作成年月日は現実に署名押印をもらった日であり,作成者は証人であり(当事者の代理人弁護士がゴーストライターをした場合を含む。),立証趣旨は証言予定の事実関係です。
2 陳述書で問題となるのは通常,書証として提出する陳述書が原本であることだけです。

第9 電子メール等に関する証拠説明書についての大阪地裁の要望

・ 大阪弁護士会作成の令和元年度司法事務協議会協議結果要旨42頁には,大阪地裁提出の要望として,以下の記載があります。
    電子メールやSNS(以下「電子メール等」という。)を証拠提出するに当たっては,証拠説明書を活用するなどして,以下の点について,御留意,御協力をお願いしたい。
(1) 複数の発信者がある場合には,発信者が誰であるかを特定する。
(2) 転送や返信が重ねられている場合には,マーカーを引くなどして,どの部分が立証趣旨に係る証拠部分であるかを明確にする。
(3) 送受信の順番について,送受信の経過を明確にする。
(4) 電子メール等に添付されたファイル等が存在する場合で,同ファイルが主張と関連性を有する際には,同ファイルを書証として提出するなどして具体的な内容を明確にする。
(5) SNSのやり取りの中に写真やスクリーンショットの送信がされている場合,立証趣旨との関係,誰がいつ撮影したものであるか明確にする。
(提出理由)
     近時,電子メール等が証拠提出されることが多くなっているところ,電子メール等については,①複数の発信者が登場する場合に,個々の発信者が誰であるのかが必ずしも明らかとは言えない(そもそも氏名の記載がない場合,ペンネームや愛称を使用している場合),②電子メール等の転送や返信が重ねられている場合,立証趣旨との関係で,どの部分が意味を持つのか明確とはいえない,③送受信等された年月日の記載がなかったり,送受信が繰り返されたりしている場合に,前後関係や対応関係,送受信の順番が明確とはいえない,④電子メールの送信にあたって,添付ファイルが存在するものの,同ファイルの具体的な内容が明確とはいえず,主張との関係の有無が不明である,⑤SNSのやり取りの中で写真やスクリーンショットの送信がされている場合に,立証趣旨との関係が不明確であったり,そもそも同写真等について,誰がいつ撮影したものであるか明確とはいえなかったりする,といったことがある。
   そこで,電子メール等を証拠提出する場合には,証拠説明書を活用するなどして,できるだけ,当該電子メール等と主張との関係,発信者等の特定や送受信の順番等上記の点を明確にしていただきたい。

第10 ウィキペディアを書証として提出する場合の作成者

・ 「文書の「原本」について」には以下の記載があります(判例タイムズ1467号(2020年2月号)16頁)。
    ウィキペディアを書証として提出することができるか。近藤ほか・前掲「文書の写しによる書証の申出について」でも述べたが,作成者としてどの程度の特定が必要かは立証の趣旨との関係で決まることであり,「ウィキペディア作成者」という程度でも,立証趣旨が紛争の概括的な理解に必要な知識という程度のものであれば許されるものと考えている。審理の上で当事者と共通の理解をするための資料とする限度で許容されるであろう。


第11 関連記事その他

1 日弁連HPの「役立つ書式など」に証拠説明書等の書式が載っています。
2 書証申出の目的で文書の原本を裁判所に郵送するだけでは,書証の提出とはいえません(最高裁昭和37年9月21日判決)。
3 知財高裁平成22年6月29日判決は,「インターネットのホームページを裁判の証拠として提出する場合には,欄外のURLがそのホームページの特定事項として重要な記載であることは訴訟実務関係者にとって常識的な事項である」と判示しています。
4 特許庁HPの「証拠説明書の提出について」には以下の記載があります。
・ 証拠ごとに号証番号(例:甲第1号証、乙第1号証)を記載してください。
・ 書証の内、立証に用いる箇所や強調したい箇所を下線や枠囲い等によって具体的に明示してください。
・ 文書の文字や図面は、鮮明で判読できるものを提出してください。
・ 外国語文献の場合は、取調べを求める部分について翻訳文を添付してください。
5(1) 外部HPの以下の記事が参考になります。
・  駒澤大学学術機関リポジトリ「証拠説明書の記載方法」
・ DIY裁判HP「証拠説明書」
→ 「本人訴訟を支援するため弁護士が作ったサイト」であるとのことです。
・ 松江地裁HPの,記載例(証拠説明書に関するもの)
→ 標目等の書き方の具体例が載っています。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 通常は信用性を有する私文書と陳述書との違い
・ 陳述書の機能及び裁判官の心証形成
・ 陳述書作成の注意点
・ 裁判所が考えるところの,人証に基づく心証形成


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