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部総括判事とは―裁判長・「部長」との関係,指名の手続及び高裁部総括の位置付け(AI作成)

第1 部総括判事とは

1 部の事務を総括する裁判官

部総括判事は,高等裁判所,地方裁判所及び家庭裁判所に置かれる部の事務を総括する裁判官である。
「部総括判事」は法令上の官職の名称ではなく,裁判所法5条2項が定める下級裁判所の裁判官の官職は,高等裁判所長官,判事,判事補及び簡易裁判所判事である。

下級裁判所事務処理規則4条1項は,各高等裁判所及び各地方裁判所に部を置き,高等裁判所及び地方裁判所の支部並びに家庭裁判所及びその支部にも部を置くことができると定める。
同条3項は,部には合議体を構成するに足りる裁判官を置くと定め,同条4項は,部に属する裁判官のうち一人が部の事務を総括すると定める。

部の事務を総括する裁判官は,高等裁判所長官,地方裁判所長,家庭裁判所長,知的財産高等裁判所長又は支部長が属する部ではその者である(同条5項)。
それ以外の部では,毎年あらかじめ,最高裁判所が,高等裁判所長官又は地方裁判所長若しくは家庭裁判所長の意見を聞いて指名した者が部の事務を総括する(同項)。

2 合議体の裁判長となること

下級裁判所事務処理規則5条1項は,合議体を一の部又は支部の裁判官で構成すると定める。
同条2項は,合議体では支部長(同規則3条2項)又は部の事務を総括する裁判官(同規則4条4項)が裁判長となると定めており,部総括判事は自分の部の合議体の裁判長を務める。
これらの裁判官に差し支えがあるときは,裁判官会議の議により毎年あらかじめ定められた順序に従って,他の裁判官が裁判長となる(同規則5条3項,6条1項)。

裁判所法は,高等裁判所(18条2項),地方裁判所(26条3項)及び家庭裁判所(31条の4第3項)の合議体の裁判官の員数を3人とし,そのうち一人を裁判長とすると定めている。
高等裁判所では,内乱罪等の訴訟(同法16条4号)に限り5人の合議体とされている(同法18条2項ただし書)。
法廷での裁判長と陪席裁判官の役割,評議の進め方及び判事補の職権の制限は,裁判長と陪席裁判官の役割で説明している。

3 裁判所内で「部長」と呼ばれること

部総括判事は,裁判所内では「部長」と呼ばれることが多い。
河合健司氏の講演録は,京都地裁の民事部での経験を述べる中で,「部総括─通常,裁判所の中では部長と呼んでいますので,部長と呼ばせていただきますが─」と述べている(「河合健司元仙台高裁長官講演会講演録 裁判官の実像」早稲田大学法務研究論叢第3号238頁)。

萩屋昌志『日本の裁判所―司法行政の歴史的研究―』(晃洋書房,2004年)106頁は,裁判所構成法の時代の「部長」は現行の裁判所法の下では存在しないが,総括裁判官が人事に関する情報の連絡等を通じて部の裁判官や裁判所書記官を事実上監督する中間管理職的な立場にあり,裁判所内では総括裁判官を「部長」と呼ぶのが一般的であると説明している。
同頁は,1972年から導入された新任判事補研さん制度の下で,総括裁判官が新任判事補の指導役も担うことになったと説明している。

もっとも,「部長」は裁判所内の呼び方であり,法令上の官職の名称ではない。
合議体の評議では,裁判長も陪席裁判官も意見を述べなければならず,裁判は過半数の意見による(裁判所法76条,77条1項)。

第2 指名の手続,時期及び人数

1 毎年の指名と高裁長官による上申

部の事務を総括する裁判官は,毎年あらかじめ最高裁判所が指名する(下級裁判所事務処理規則4条5項)。
最高裁判所は,指名を受けた裁判官に病気その他の事由により引き続き差し支えがあるときは,高等裁判所長官又は地方裁判所長若しくは家庭裁判所長の意見を聞いて,指名を取り消すことができる(同条6項)。

下級裁判所事務処理規則の運用について(平成6年7月22日付の最高裁判所事務総長依命通達)記第1の2は,高等裁判所長官が,当該高等裁判所並びに管内の地方裁判所,家庭裁判所及びそれらの支部について,翌年度の部の事務を総括する裁判官を指名する必要がある場合には,毎年11月30日までに最高裁判所にその旨を上申すると定める。
管内の地方裁判所及び家庭裁判所等について上申する場合には,当該地方裁判所又は家庭裁判所の長の意見を添付する(同記第1の4)。

部の事務を総括する裁判官の指名上申について(平成6年12月9日付の最高裁判所事務総局人事局長の通達)は,この上申を別紙様式により行うと定める。
別紙様式の「部の事務を総括する裁判官の指名上申名簿」には,庁名,部の名称,官職,氏名及び期別の欄がある。

2 指名される時期と人数

最高裁判所の「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会」の報告書のうち「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」は,平成14年当時の説明として,「地方裁判所・家庭裁判所の部総括(司法行政上は部の事務の取りまとめに当たり,裁判においては合議体の裁判長となる。その数は300余り。)に指名されるのが,大体,判事任命後10年目前後くらいから」と述べている。
同じ箇所は,高等裁判所の部総括について,「高等裁判所部総括も経験年数はほぼ所長に準じるが,所長を経て任命される例が多い。」と述べている。
同報告書は,判事任命後しばらくは,地方裁判所・家庭裁判所の合議事件の陪席裁判官,高等裁判所の陪席裁判官,地方裁判所・家庭裁判所の中小規模支部の支部長等を務めるのが一般的であるとも説明している。

これらは平成14年7月現在の定員等を前提とする説明であり,現在の部総括判事の人数や指名される時期を示す資料ではない。
各年度の部総括判事の氏名は,部の事務を総括する裁判官の名簿(昭和37年度以降)で確認できる。
地家裁の部総括判事が年度の途中で高裁の陪席裁判官になった例のその後は,地家裁の部総括が年度途中に高裁判事になった場合の,その後のキャリア分析で分析している。

第3 高裁部総括の位置付け

1 地家裁所長の経験率は高裁ごとに違う

高等裁判所の部総括判事には,地方裁判所長又は家庭裁判所長を経験してから就任する例が多いが,その割合は高裁ごとに大きく異なる。
本ブログの裁判官データベースで歴代の高裁部総括1,182人を集計した高裁部総括判事の人事をデータで読み解くによれば,高裁部総括に最初に就く前に地家裁所長を経験していた者は852人(72.1%)であり,高裁別の経験率は次のとおりである。
同記事は,知財高裁の部総括及び高裁支部の部総括を,親となる高裁に含めて数えている。

高裁就任前の地家裁所長経験率
東京94.0%
大阪95.5%
名古屋66.7%
広島38.0%
福岡55.1%
仙台61.3%
札幌20.0%
高松13.1%

これは本ブログのデータベースによる集計であり,法令上の任用要件ではない。
同じ観点からの先行研究として,西川伸一「高等裁判所部総括判事の人事をめぐる一考察」(法學研究93巻1号,2020年,65頁~93頁,慶應義塾大学学術情報リポジトリ)がある。

2 支部の部総括と知財高裁

高等裁判所の支部にも部を置くことができ,支部長が属する部では支部長が部の事務を総括する(下級裁判所事務処理規則4条1項,5項)。
支部長の職務,高裁支部の担当区域及び支部長の人事上の位置付けは,高等裁判所支部とはで説明している。

知的財産高等裁判所の長は,支部長ではなく知的財産高等裁判所長である。
知財高裁の裁判事務の分配,裁判官の配置及び代理順序は,知財高裁に勤務する裁判官の会議の議により定められるなど(同規則6条3項),通常の高裁支部とは司法行政の仕組みが異なる。
詳しくは知的財産高等裁判所とはを参照されたい。

3 長官の代理順序,代表常置委員及び上席裁判官

令和8年度の各高裁の定めでは,長官に差し支えがあるときに司法行政事務を代理する裁判官の順序が,部総括判事の氏名又は部の配置の順序で定められている(高等裁判所の事務分配の比較(令和8年度)第7の1)。
東京高裁の民事部・刑事部の代表常置委員及び大阪高裁の民事・刑事の上席裁判官は,一般に「長官代行」と呼ばれることがあるが,長官の司法行政事務の代理指名とこれらの職の指定は,別の根拠を確認する必要がある(同記事第7の2)。

東京高裁の常置委員会と大阪高裁の常任委員会の構成及び権限は,下級裁判所の裁判官会議からの権限委任と常置・常任委員会第2で説明している。
歴代の在任者は,東京高裁の歴代の代表常置委員及び大阪高裁の歴代の上席裁判官に掲載している。

4 叙勲

高裁部総括の経験者に対する叙勲について,「高裁本庁の部総括は瑞宝重光章,高裁支部の部総括は瑞宝中綬章」と二分する説明は正確ではない。
令和8年春の受章者名簿では,同じ東京高裁の部総括経験者について瑞宝重光章と瑞宝中綬章の双方の例がある(裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場第4の2)。

第4 関連記事

部総括判事の名簿は,次の記事及び資料に掲載している。
① 部の事務を総括する裁判官の名簿(昭和37年度以降)
② 平成14年度から平成28年度までの部総括裁判官の名簿
③ 昭和62年度から平成13年度までの部総括裁判官の名簿
④ 昭和48年度から昭和61年度までの部総括裁判官の名簿
⑤ 地裁及び家裁の部総括判事の名簿(平成28年5月10日時点)

そのほか,次の記事も参照されたい。
① 裁判長と陪席裁判官の役割
② 高等裁判所の集中部
③ 幹部裁判官の定年予定日
④ 新任判事補研修の資料
⑤ 控訴審の手続と主要論点
⑥ 東京地裁の歴代の第一所長代行
⑦ 大阪地裁の歴代の所長代行者,上席裁判官,大阪簡裁司掌裁判官等
⑧ 最高裁の破棄判決等一覧表(平成25年4月以降の分)
⑨ 最高裁判所に係属した許可抗告事件一覧表(平成25年分以降),及び許可抗告事件の実情
⑩ 新様式判決

第5 出典

1 法令・規則・通達

① 裁判所法(昭和22年法律第59号)5条,16条,18条,26条,31条の4,76条,77条――e-Gov法令検索(裁判所法)
② 下級裁判所事務処理規則(昭和23年最高裁判所規則第16号)3条~6条――裁判所ウェブサイト掲載のPDF1頁~2頁
③ 下級裁判所事務処理規則の運用について(平成6年7月22日付最高裁総一第182号事務総長依命通達。平成24年3月26日改正後のもの)記第1の2及び4
④ 部の事務を総括する裁判官の指名上申について(平成6年12月9日付最高裁人任E第1001号人事局長通達)及び別紙様式

2 報告書・文献

① 最高裁判所「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会」報告書「第2 裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況」(平成14年)
② 「河合健司元仙台高裁長官講演会講演録 裁判官の実像」早稲田大学法務研究論叢第3号237頁以下(引用は238頁)
③ 萩屋昌志『日本の裁判所―司法行政の歴史的研究―』(晃洋書房,2004年)106頁
④ 西川伸一「高等裁判所部総括判事の人事をめぐる一考察」法學研究93巻1号(2020年)65頁~93頁