類型ごとの戦後補償裁判に関する最高裁判例


目次

第1 類型ごとの戦後補償裁判に関する最高裁判例
第2 関連記事その他

第1 類型ごとの戦後補償裁判に関する最高裁判例
・ 最高裁判所判例解説 民事篇(平成19年度)(上)409頁ないし411頁によれば以下のとおりです。

1 請求権放棄に伴う補償請求型の事件に関する最高裁判例

・ サンフランシスコ平和条約等において,日本国政府が,国民の有していた在外資産を戦争賠償に充当する趣旨で処分したり,連合国又は連合国民に対する戦争被害に係る国民の請求権を放棄したのは,憲法29条3項に基づく損失補償の対象となるなどとして,在外資産を保有していた者又は連合国に対する損害賠償請求権を有していた旨を主張する者が原告となり,国に対し,補償又は賠償を求める類型の事件です。
・ ①カナダ在外資産補償請求訴訟に関する最高裁大法廷昭和43年11月27日判決,②サンフランシスコ平和条約19条(a)に関する最高裁昭和44年7月4日判決,及び③シベリア抑留者補償請求訴訟に関する最高裁平成9年3月13日判決があります。

2 援護立法の不備主張型の事件に関する最高裁判例

・ 戦傷病者戦没者遺族等援護法や恩給法による戦争被害の救済が狭きに失しているとして,その支給対象とならなかった者(一般民間人被災者,国籍条項に係る欠格者等)が原告となり,立法不作為を理由に国家賠償を請求し,あるいは欠格事由を定める国籍条項の違憲無効を理由に受給請求却下処分の取消しを請求するなどの類型の事件です。
・ ①一般民間人被災者に関する最高裁昭和62年6月26日判決,②台湾住民である軍人軍属に関する最高裁平成4年4月28日判決,③在日韓国人である軍人軍属に関する最高裁平成13年4月5日判決最高裁平成13年11月16日判決最高裁平成13年11月22日判決最高裁平成14年7月18日判決最高裁平成16年11月29日判決があります。

3 戦争遂行過程の違法行為追及型の事件に関する最高裁判例
・ 戦争遂行過程で日本軍兵士や日本企業が犯した犯罪行為につき,国又は当該企業を被告として損害賠償責任を追及するという類型です。
   この類型に属する事件には,婦女子に関する監禁暴行事件,強制連行・強制労働事件,捕虜虐待・非戦闘員虐殺事件等の多様なものが含まれています。
   提訴時期は,概ね,平成3年以降であり,国別では,当初は韓国関係が多かったが,平成7年ころから中国人を原告とする事件が多数提訴されるようになり, 最高裁平成19年4月27日判決当時の主流を占めるようになっていました。
・ 中国人の強制連行・強制労働に関する最高裁平成19年4月27日判決(第一小法廷)及び最高裁平成19年4月27日判決(第二小法廷)があります。

第2 関連記事その他
1 原爆被爆者対策基本問題懇談会意見報告-原爆被爆者対策の基本理念及びその基本的在り方について-(昭和55年12月11日付)は,最高裁昭和53年3月30日判決に言及していますところ,そこには例えば,以下の記載があります(リンク先のPDF10頁)。
    原爆被爆者に対する対策は、結局は、国民の租税負担によって賄われることになるのであるが、殆どすべての国民が何らかの戦争被害を受け、戦争の惨禍に苦しめられてきたという実情のもとにおいては、原爆被爆者の受けた放射線による健康障害が特異のものであり、「特別の犠牲」というべきものであるからといって、他の戦争被害者に対する対策に比し著しい不均衡が生ずるようであっては、その対策は、容易に国民的合意を得がたく、かつまた、それは社会的公正を確保するゆえんでもない。この意味において、原爆被爆者対策も、国民的合意を得ることのできる公正妥当な範囲に止まらなければならないであろう。
2 総務省HPの「旧独立行政法人平和祈念事業特別基金の公表文書」には,①恩給欠格者問題,②戦後強制抑留者問題及び③在外財産問題に関する資料が載ってあります。
3 以下の記事も参照してください。
・ 日本の戦後賠償の金額等
・ 在外財産補償問題
・ 平和条約における請求権放棄条項に関する3つの説及び最高裁判例
・ 最高裁平成19年4月27日判決が判示するところの,サンフランシスコ平和条約の枠組みにおける請求権放棄の趣旨等
・ 日韓請求権協定
・ 在日韓国・朝鮮人及び台湾住民の国籍及び在留資格
・ 日中共同声明,日中平和友好条約,光華寮訴訟,中国人の強制連行・強制労働の訴訟等


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