メインコンテンツへスキップ
       

77期二回試験の業務委託契約書の審査結果報告書(AI作成)

AI要約を見る

※以下はAIが生成した要約です。内容の正確性は保証されません。本文をあわせてご確認ください。

本記事は、最高裁判所が第77期司法修習生考試(いわゆる二回試験)の実施事務を株式会社全国試験運営センターに委託した契約書(令和6年10月28日付、契約金額42,680,000円)を読み、その内容と、受注者の立場から見た場合の論点を整理したものである。契約書は、かがみ、契約条項26条、別添仕様書、別紙第1及び別紙第2の5文書から成り、電子契約システムにより締結されている。

仕様書からは、考試が令和7年3月3日から同月7日までの5日間、司法研修所(埼玉県和光市)と大阪会場の2か所で実施され、受験者数が約1,840人であったことが分かる。試験監督者は、半数以上に国家資格試験又は大学入学試験の実績が10回以上ある者を配置する必要があり、大阪会場の答案は専用車両により翌日午前9時までに司法研修所へ運搬することとされている。試験監督者及び試験監督補助者の人数は、第75期から第77期まで一貫して黒塗りである。

契約条項については、検査を10日以内、支払を30日以内とする定めが政府契約の支払遅延防止等に関する法律5条1項及び6条1項の上限をそのまま採用したものであること、契約保証金の免除が会計法29条の9第1項ただし書によるものであることを確認した。受注者の立場から見た論点としては、責任の総額に上限を設ける条項がないこと、仕様書第10の1の考試再実施義務が過失で発動し試験室の無償提供も受けられないこと、第10条3項が不可抗力による中止の際に既に投じた費用を回収できない建付けであること、第15条の違約金が損害賠償の上限として働くかが条文から決まらないこと、監督職員の指示が個々の試験監督者へ直接及ぶ書き方になっていることなどを挙げた。

第67期、第75期及び第76期の契約書と比較すると、契約条項は年度をまたいで用いられている定型の書式である。もっとも、第67期では発注者と受注者のいずれもが相手方の同意を得て無償解除することができたのに対し、本件契約では発注者のみが催告を要せず解除できる建付けに変わっている。現に仕様書違背があった第67期の事例では、考試の再実施も違約金の請求も行われず、平成27年2月17日付の協議書により契約金額が27,827,618円から23,253,882円へ減額される方法で処理された。

第1 この記事が扱う契約書

1 契約書の概要

本記事は,最高裁判所が第77期司法修習生考試(いわゆる二回試験)の実施事務を民間企業に委託した契約書を読み,その内容と,受注者の立場から見た場合の論点を整理するものである。
対象とするのは,第77期司法修習生考試事務業務委託に関する契約書(令和6年10月28日付)であり,発注者は最高裁判所(支出負担行為担当官・最高裁判所事務総局経理局長染谷武宣),受注者は株式会社全国試験運営センター(東京都千代田区麹町五丁目7番2号,代表取締役都築成幸)である。
契約金額は42,680,000円(うち消費税及び地方消費税相当額3,880,000円),契約期間は令和6年10月28日から令和7年3月10日まで,納入期限は令和7年3月10日であり,契約保証金は免除とされている。

第4以下の検討は,発注者である国が用意した書式について,相手方となる事業者の側から見た論点を整理するものであって,特定の事業者の依頼を受けて作成した意見ではない。
条項の検討は,生成AIに契約書全文及び第67期,第75期,第76期の契約書を通読させた上で,引用する法令をe-Gov法令検索で,裁判例を裁判所ウェブサイトでそれぞれ確認して構成した。

過去の期の契約書は,65期二回試験以降の事務委託に関する契約書,及び67期二回試験の不祥事に掲載している。
大阪会場の会場借用については,本件契約とは別に,最高裁判所が賃借人となる契約が締結されており,これは司法修習生考試の会場借用等業務に関する賃貸借契約書(新梅田研修センター)に掲載している。

2 契約書の構成と条文の数

本件契約書は5つの文書から成る。
すなわち,①案件名称,契約金額,納入期限等を記載した契約書のかがみ(2頁),②別紙の契約条項(第1条から第26条まで),③別添の仕様書(第1から第10まで),④仕様書第3の業務範囲を定める別紙第1(記1から記14まで),⑤仕様書第4の提出書類を定める別紙第2(1から5まで)である。
かがみには「別紙契約条項及び別添仕様書により請負契約を締結し,信義に従い,誠実にこれを履行するものとする」と記載されており,契約の性質は請負とされている。
条番号,項番号及び記番号に欠落又は重複はない。

契約条項の見出しは,第1条(業務の名称,内容等),第2条(契約保証金),第3条(権利義務の譲渡等の制限),第4条(下請等の禁止),第5条(業務の監督),第6条(検査),第7条(代金の支払),第8条(履行遅延の賠償),第9条(検査の遅延),第10条(危険負担等),第11条(契約不適合責任),第12条(秘密の保持),第13条(発注者の契約解除権),第14条(受注者の契約解除権),第15条(違約金),第16条(談合等の不正行為にかかる違約金),第17条(談合等の不正行為にかかる発注者の契約解除及び違約金に関する遅延利息),第18条(属性要件に基づく契約解除),第19条(行為要件に基づく契約解除),第20条(表明確約),第21条(再請負契約等に関する契約解除),第22条(損害賠償),第23条(不当要求等に関する通報等),第24条(著作権等),第25条(紛争の解決)及び第26条(契約の疑義)である。

本件契約は,電子契約システムを用いて締結されている。
かがみの2頁目には「この契約の締結の証として,本文書に対し発注者及び受注者が署名を行ったものを本システムで保存し長期に渡って当該契約の成立及び内容を立証する」と記載されており,書面に記名押印する方式ではない。

3 開示文書で黒塗りとなっている部分

開示された文書のうち,別紙第1の記6(4)及び(5)は黒塗りとなっており,司法研修所及び大阪会場に配置すべき試験監督者及び試験監督補助者の人数を読み取ることができない。
読み取れるのは,各会場に看護師を常時1人配置することだけである。
この部分は,第75期及び第76期の契約書でも同様に黒塗りとされており,人数は一貫して開示されていない。

受注者が作成する事務要領(別紙第2の2)についても,司法修習生考試応試心得(65期以降)に平成27年度(第69期)の司法研修所会場用及び大阪会場用のものを掲載しているが,同記事の説明によれば,厳秘文書であるため本文はほぼ黒塗りである。

第2 仕様書から分かる第77期二回試験の運営

1 実施日程及び試験会場

仕様書第2は,業務履行期間を契約締結の日から令和7年3月10日までとし,考試の実施期間を令和7年3月3日(月)から同月7日(金)までの5日間と定めている。
1日の試験時間は7時間30分であり,昼食時間1時間を含み,昼食時間中も答案起案が可能で,一定時刻経過後の途中退出が認められている。
1日に実施する試験科目数は1科目(筆記試験)であり,科目は民事裁判,刑事裁判,検察,民事弁護及び刑事弁護の5科目である(別紙第1の記4)。

試験会場は,司法研修所(埼玉県和光市)と大阪市内の試験実施可能な施設(大阪会場)の2か所である(別紙第1の記2)。
仕様書第10の3は「本業務を実施する試験室及び試験監督者等の待機場所は,発注者が受注者に対し,無償で提供する」と定めており,会場そのものは発注者が確保する。

別紙第1の記1は,考試を「司法修習生が裁判所法に定められた期間司法修習をした後に受験する試験であり,最高裁判所に置かれた司法修習生考試委員会が行う」ものとし,司法修習生は考試に合格すると司法修習を終えるとして,裁判所法67条1項及び司法修習生に関する規則12条1項を挙げている。
裁判所法67条1項は「司法修習生は,少なくとも一年間修習をした後試験に合格したときは,司法修習生の修習を終える」と定める。

2 受験者数及び試験室数

別紙第1の記3によれば,受験者は令和5年度司法修習生であり,受験者数は約1,840人(司法研修所における受験者数約1,470人,大阪会場における受験者数約370人)である。
試験室は,司法研修所が最大47室(試験室(大)22室・1試験室当たりの収容可能受験者数約50人,試験室(小)17室・同約30人,特例措置受験者等試験室が適宜・最大8室)及び考試事務室1室である。
大阪会場は最大12室(第1室から第3室までが各約90人,第4室から第6室までが各約40人,第7室が約16人,特例措置受験者等試験室が適宜・最大5室)及び考試事務室1室である(別紙第1の記5)。

別紙第1の記10は,受験者の申請により特例措置が認められた場合に,監督職員の指示に従って対応することを定める。
これまでの例として挙げられているのは,身体上の事情等による別室での受験,試験時間の延長及び座席配置上の考慮であり,交通機関の遅延等による特例措置もありうるとされている。

3 試験監督体制及び資格要件

別紙第1の記6は,考試を「法曹資格取得の要件である司法修習生の修習終了の可否を最終的に判定する極めて重要な試験」と位置付け,実施に当たっては厳格かつ公正,公平な運用が求められるとして,試験監督体制の要件を定めている。
試験監督者については,少なくとも半数に,国家資格試験又は大学入学試験の会場責任者,会場副責任者,監督,試験官等の実績(監督補助のみの実績を除く。)が10回以上ある者を配置し,その余の試験監督者には同実績が3回以上ある者を配置しなければならない。
試験監督補助者については,少なくとも半数に同種の実績(監督補助等を含む。)が3回以上ある者を,その余には1回以上ある者を配置しなければならない。
これらの要件は会場ごと,日ごとに満たす必要があり,過去の実績は「試験の実施1回」につき1回と数える。

交替については,試験室内の試験監督者又は試験監督補助者は試験開始後30分以内及び試験終了前30分以内は交替することができず,試験室外の試験監督補助者は受験者の昼食時間内は交替することができない。
考試当日に急病等による欠席者が発生した場合には,交替要員とは別に,資格要件を満たす人員を確保しなければならない。
受注者は,契約締結後3週間以内に,試験監督者等の確保のためのスケジュールを監督職員に提示することとされている。

指揮系統としては,各試験会場につき業務責任者各1人,司法研修所につき業務副責任者2人及び本部員5人以上,大阪会場につき業務副責任者1人及び本部員3人以上を定め,監督職員に報告する(仕様書第6の1)。
本部員は,考試当日の進行事務等を担当し,業務責任者及び業務副責任者を補助する者である。
業務責任者及び業務副責任者は,契約締結から終了までの間,監督職員と常時連絡が取れる態勢としなければならない。

事前教育としては,受注者が事務要領の原案を作成して監督職員の点検を受けた上,令和7年1月27日(月)頃までに事務要領を完成させて試験監督者等全員に配布し,リハーサル実施日の前日までに熟読させることとされている。
リハーサルは令和7年2月28日(金)に各試験会場で行われ,監督職員の立会いの下,試験監督者役,試験監督補助者役(試験室外配置者を含む。)及び受験者役を配役した上,受験者の誘導,問題等の運搬・配布,注意事項等の発言及び答案回収等の一連の考試実施業務について,2時間程度,実演・体験方式で実施される(仕様書第7,別紙第1の記7)。
リハーサルの結果,試験監督者等の業務に対する理解度が低いことが判明した場合には,受注者は,同日中のリハーサルのやり直しや試験監督者等の交替等をしなければならない(別紙第1の記7(2)ウ)。

4 発注者が用意する物品と受注者が用意する物品

仕様書第8の1により発注者が用意するのは,問題用紙,答案表紙,答案用紙,草稿用紙,六法,貸与記録及び貸与資料である。
受注者が用意するのは,付箋2色及び綴りひも(受験者に配布),ボールペン,鉛筆,ビニールひも,はさみ等の考試実施に必要な物品,司法研修所で受験者が使用する机10台及び考試事務室で使用する机20台(いずれも幅180cm,奥行き50cm,高さ70cm程度),看護師が傷病者等の看護や応急処置を行うために必要な器具一式,司法研修所で使用するプリンタ8台,並びに大阪会場で使用するノートパソコン及びプリンタ各4台である(仕様書第8の2)。
プリンタはモノクロレーザーでA4サイズの印刷が可能なものとされ,印刷に必要なトナー代は本契約に含まれる(1台当たりの印刷予定枚数は約250枚)。
大阪会場のノートパソコンは,OSがWindows 10以降,ディスプレイのサイズが15インチ以上で,Word 2016以降及びExcel 2016以降を備えるものとされ,プリンタ4台のうち1台はスキャナ機能を有することが求められている。

配布物は,受験者1人当たり試験日ごとに,六法,貸与記録(A4版100ページ程度の冊子1冊から2冊程度),貸与資料,問題用紙,答案表紙,答案用紙(A4版35枚綴り1冊から2冊程度),草稿用紙,綴りひも及び付箋を配布する(別紙第1の記9)。
受注者は,令和7年2月28日(金)までに,発注者が用意した配布物の数量を確認して監督職員に報告した上,各試験会場及び試験室ごとに必要な部数へ仕分け,大阪会場で使用する配布物を大阪会場へ搬入しなければならない。
回収後は,六法以外の配布物は即日,六法は考試最終日に書き込み等がないかを点検し,書き込み等の有無に応じて仕分けた上で梱包し,運搬して引き継ぐ。

設営は令和7年2月28日(金)に監督職員の立会いの下で行い,考試最終日の考試終了後速やかに原状回復する(別紙第1の記8)。
試験室には,配席図記載のとおりに座席等を配置し,入口に試験室表示標識(A4サイズ以上)及び試験室内配席図(A3サイズ以上)を貼付し,受験者席に受験番号,着席番号,氏名等を表示する。
司法研修所の廊下等には受験者誘導標識を50枚程度,大阪会場には20枚程度貼付する。

5 答案の整理,運搬及び引継ぎ

答案回収後の作業は,各受験者の答案表紙の一部を剥離した上,剥離部分及び答案をそれぞれ監督職員が指示する順に並べ,監督職員の定める通数ごとに区分して引き継ぐというものである(別紙第1の記11)。
司法研修所実施分は監督職員の指定する場所で引き継ぐ。
大阪会場実施分は,各科目の答案整理後直ちに搬出し,翌日の午前9時まで(時間厳守)に,監督職員が指定する司法研修所内の各場所に運搬して引き継ぐこととされており,翌日が裁判所の休日の場合も同様である。

運搬車両は,答案を運搬するためだけの専用車両とし,車外から運搬物が見えないようにし,ドア及び荷台ともに施錠可能なものでなければならない。
司法研修所及び大阪会場の業務責任者は,運搬する者と常時連絡可能となるよう携帯電話又は無線機を装備する必要がある。
安全措置としては,運搬中の事故等を原因とする火災,水濡れ等による運搬物の損傷を防止するため,耐火,防水及び形状の変わらない素材(ジュラルミン等)のボックス等を使用し,試験問題等の漏えい,運搬物の紛失,き損等を防止するため,施錠,封緘等により開封を防止することが可能な装備をすることが求められている(別紙第1の記12(2))。
運搬物の個数及び梱包状況等は,梱包及び発送時並びに受領時に,監督職員の立会いの下で点検し,その結果を監督職員に報告する。

6 監視対象となる禁止行為

別紙第1の記13は,受験者に禁止され,監視の対象となる行為として10項目を挙げる。
①カンニング行為,②試験室の内外を問わず試験時間中に受験者相互で談話をすること,③携帯電話等の通信機器を所持すること,④貸与されたもの以外の資料や書籍を閲読し,又はそれらを故意に他の受験者に閲読させること,⑤所定の試験時間終了後も答案を作成すること,⑥試験時間中に所定の筆記用具以外の私物を使用すること,⑦持込みが許可された物以外の物を持ち込むこと,⑧許可を受けずにエレベーターを使用すること,⑨立入禁止場所へ立ち入ること,⑩その他試験の公正性や安全かつ円滑な実施を害する行為である。
受注者は,これらの行為を確認したときは,ただちに監督職員に報告しなければならない。

受験者からの質問への対応は,あらかじめ監督職員との協議により定められた範囲内のものは受注者が行い,範囲外のものは監督職員に報告してその指示により対応する(別紙第1の記14(1))。
体調不良等を訴える受験者への対応も,監督職員に報告してその指示により対応する(同(2))。
受験者に対して示される禁止事項そのものは,司法修習生考試応試心得(65期以降)に掲載した応試心得に記載されている。

第3 契約条項が前提とする法令

1 政府契約の支払遅延防止等に関する法律による検査及び支払の期限

本件契約は,国を当事者の一方とする契約で,国以外の者のなす役務の給付に対し国が対価の支払をなすべきものであるから,政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和24年法律第256号)2条にいう「政府契約」に当たる。
同法5条1項は,給付の完了の確認又は検査の時期を,国が相手方から給付を終了した旨の通知を受けた日から工事については14日,その他の給付については10日以内の日としなければならないと定める。
同法6条1項は,支払の時期を,給付の完了の確認又は検査を終了した後相手方から適法な支払請求を受けた日から工事代金については40日,その他の給付に対する対価については30日以内の日としなければならないと定める。

本件契約条項第6条2項は,検査を「その受理した日から起算して10日以内に」完了させるものとし,第7条2項は,支払を「支払請求書を受理した日から起算して30日(以下「約定期間」という。)以内に」行うものとしている。
いずれも,同法が定める上限の期間をそのまま採用したものである。
さらに第9条は,発注者がその責めに帰すべき事由により検査を期間内に完了しなかった場合に,その遅延期間を約定期間から差し引き,遅延期間が約定期間の日数を超えるときは,超える日数に応じて遅延損害金を支払うものとしており,検査の遅延に対する手当ても置かれている。

遅延損害金の率は,第8条3項により,発注者の支払遅延については同法8条1項に基づき財務大臣が決定する率,受注者の履行遅延については民法404条の法定利率とされている。
財務大臣が決定する率は,令和8年3月6日財務省告示第54号による改正後の「政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率」(昭和24年12月12日大蔵省告示第991号)により,令和8年4月1日から年3.0パーセントである。
民法404条の法定利率も,令和8年4月1日から令和11年3月31日までの期について年3パーセントであり(第3期の基準割合を年0.4パーセントとする令和7年法務省告示第73号により,第1期の基準割合0.7パーセントからの変動が1パーセント未満であるため据え置かれた。),現時点では両者の率は一致している。

2 会計法による契約保証金の免除と違約金の割合

会計法(昭和22年法律第35号)29条の9第1項は,契約担当官等が国と契約を結ぶ者に契約金額の100分の10以上の契約保証金を納めさせなければならないとしつつ,ただし書で政令で定める場合にはその全部又は一部を納めさせないことができるとする。
予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)100条の3第3号は,一般競争等に付する場合において「その必要がないと認められるとき」を免除事由として挙げている。
本件契約条項第2条が契約保証金の納付を要しないとしているのは,この免除に当たる。

他方,第15条は,第13条又は第14条により契約が解除された場合の違約金を契約金額の10分の1と定めている。
この割合は,会計法29条の9第1項が本来求める契約保証金の額と同率である。
民法420条3項は「違約金は,賠償額の予定と推定する」と定めており,官公庁の請負契約における契約金額の一定割合の違約金についても,損害賠償額の予定であって,実損害が違約金の額より大きくても発注者は違約金を超える額を請求することはできないと説明されてきた(高柳岸夫・有川博『官公庁契約精義〔平成22年増補改訂版〕』)。
もっとも,本件契約について同じ理解がそのまま妥当するかには疑問が残る(後記第4の4)。

3 監督及び検査に関する規定

会計法29条の11第1項は,契約担当官等が請負契約を締結した場合に,契約の適正な履行を確保するため必要な監督をしなければならないと定め,同条2項は,その受ける給付の完了の確認をするため必要な検査をしなければならないと定める。
本件契約条項第5条(業務の監督)及び第6条(検査)は,これに対応する条項である。
第5条1項は,監督職員が行う事項として,受注者が提出する書類の調査並びに業務の管理,立会い,指示,承諾又は協議を挙げ,同条2項は,受注者が監督職員の職務に協力しなければならないとする。

4 個人情報の取扱いに関する法令の適用関係

仕様書第9の3は,受注者に対し,個人情報の適正な取扱い,第三者への漏えいの禁止,従事者への周知徹底,漏えい・滅失・き損の防止その他の適切な管理のために必要な措置,収集の際に事前に発注者へ報告して指示を受けること,目的外の利用及び提供の禁止,並びに本業務終了後に電磁的記録媒体上又は紙媒体上の一切の個人情報を消去又は廃棄することを求めている。
もっとも,個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)2条8項が定義する「行政機関」は,法律の規定に基づき内閣に置かれる機関及び内閣の所轄の下に置かれる機関,内閣府,宮内庁等,国家行政組織法3条2項に規定する機関,政令で定める機関並びに会計検査院であって,裁判所は含まれない。
同条11項の「行政機関等」も,行政機関,地方公共団体の機関,独立行政法人等及び地方独立行政法人であって,裁判所は含まれない。
他方,同法16条2項1号は「国の機関」を個人情報取扱事業者から除外している。
したがって,本件契約に関して同法上の義務を負うのは受注者のみであり,発注者である最高裁判所は同法の適用を受けない。

本業務で扱う受験者データには,氏名,性別,受験番号,司法研修所での所属組・番号のほか,特例措置が認められた場合はその内容が含まれる(別紙第2の3)。
特例措置には身体上の事情等による別室での受験が含まれるから(別紙第1の記10),同法2条3項にいう要配慮個人情報に当たる情報が含まれる場合がある。
また,仕様書第9の3(7)が求める業務終了後の消去又は廃棄については,別紙第2の1の従事者名簿が労働基準法(昭和22年法律第49号)109条にいう労働関係に関する重要な書類に当たる場合の保存義務(同条は5年間の保存を定めるが,同法附則143条1項により当分の間は3年間とされている。)との関係を整理しておく必要がある。

第4 受注者の立場から見た論点

1 責任の総額に上限がないこと

本件契約には,受注者が負う金銭債務及び現物給付義務の総額に上限を設ける条項がない。
契約金額42,680,000円の役務に対し,受注者側には,①民法415条による損害賠償(第11条3項が明文で留保している。),②仕様書第10の1による考試の再実施義務,③第15条の違約金(4,268,000円),④第16条の談合等の不正行為にかかる違約金(4,268,000円。加重の場合はさらに2,134,000円),⑤第10条1項による損害の負担が累積し得る構造になっている。
このうち④以外には金額の上限がない。

個別の条項を一つずつ手当てするよりも,責任の総額に上限を設ける条項を一つ置く方が,効果は大きい。
その場合に,受注者に故意又は重大な過失があるとき,第16条の違約金,及び試験問題又は答案の秘密が漏えいしたときを上限の適用外としておけば,発注者が保護しようとしている利益は損なわれないと考えられる。
もっとも,後記第5のとおり本件の契約条項は年度をまたいで用いられている定型の書式であるから,個別の交渉によって上限条項を新設することは容易ではないと見込まれる。

2 仕様書第10の1(考試の再実施義務)

仕様書第10の1は,「受注者の故意又は過失によって考試の公正性が害されるなどの事情(問題等の漏えい,答案回収・整理上の不備などの発生)により,司法修習生の修習終了判定ができないときには,受注者は,損害賠償義務を負うほか,受注者の負担により,発注者の指定する日時に考試を再実施しなければならない。その場合において,第10の3は保証されない。」と定める。
受験者約1,840人を対象とする5日間の考試を2会場で再実施することになり,しかも末尾の一文により仕様書第10の3が適用されないため,試験室及び試験監督者等の待機場所の無償提供を受けることができない。
大阪会場に相当する規模の施設を受注者が自ら確保することになるから,負担は契約金額と同等以上になることが見込まれる。

発動の要件は「故意又は過失」であって,重大な過失に限定されていない。
対象事由も,柱書が「考試の公正性が害されるなどの事情」とし,括弧内も「問題等の漏えい,答案回収・整理上の不備などの発生」としているから,いずれも例示であって限定列挙ではない。
さらに「損害賠償義務を負うほか」と定められているため,再実施義務は損害賠償とは別建ての義務である。

「司法修習生の修習終了判定ができない」かどうかを判断するのは,考試を行う司法修習生考試委員会である。
その判断の基準も,受注者が意見を述べる手続も,契約書には定められていない。

もっとも,仕様書違背があった第67期の事例では,この種の条項が置かれていたにもかかわらず再実施は行われず,代金の減額により処理されている(後記第5の5)。

3 契約条項第10条(危険負担等)

第10条1項は「成果物の納入前に生じた損害は,発注者の責めに帰すべき事由による場合を除き,受注者の負担とする」と定める。
文言上は,天災,感染症のまん延その他いずれの当事者にも帰責することができない事由による損害も,受注者の負担となる。
仕様書第10の8が「天災,感染症のまん延その他の不可抗力により,試験会場が変更される場合がある」と明記していることからすれば,この種の事態は契約自身が想定しているものである。

同条2項は,不可抗力により債務の履行が不可能となった場合に発注者が支払請求を拒むことができるとしており,これは民法536条1項と同じ帰結である。
問題は3項で,「既に要した費用については,発注者及び受注者の各自の負担とする」と定めている点にある。
令和7年2月28日の設営及びリハーサルを終えた後に不可抗力で考試が中止された場合,受注者は,事務要領の作成,試験監督者等の確保と教育,リハーサル,機材の調達,会場の設営及び配布物の仕分けを済ませていながら,代金を一切受け取れないことになる。
民法634条1号は,注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなった場合において,既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは,その部分を仕事の完成とみなし,請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができると定めているから,第10条3項はこれを受注者に不利に修正する特約である。

同項は,発注者には催告を要しない無償解除を認める一方,受注者の解除については「発注者の同意を得て」行うものとしており,片務的である。
後記第5の2のとおり,第67期の契約書では,発注者と受注者のいずれもが「相手方の同意を得て」無償解除することができるものとされていた。

不可抗力による損害の負担について,国が用意する他の書式は異なる配分を採っている。
公共工事標準請負契約約款29条2項及び4項によれば,不可抗力による損害の発生によって必要となった増加費用等の損失のうち請負者が負担するのは,①請負者が善良な管理者の注意義務を怠ったことに基づくもの,②火災保険等によっててん補されるもの,③その損害額のうち請負代金額の100分の1以下の額の3つに限られ,その他はすべて発注者が負担する(高柳岸夫・有川博『官公庁契約精義〔平成22年増補改訂版〕』)。
この配分は,予定価格の積算に不可抗力による損害という不確定要素が織り込まれていないことを理由とするものであり,その理由は,本件のような役務の委託にも当てはまると考えられる。

4 契約条項第15条及び第22条(違約金と損害賠償)

第15条は「前二条の規定によりこの契約が解除された場合には,受注者又は発注者は,違約金として契約金額の10分の1に相当する金額を発注者又は受注者の指定する期限内に支払わなければならない」と定める。
解除の原因を作った当事者が支払う趣旨と読むのが自然であるが,条文はそのようには書かれていない。
「前二条」には第14条(受注者の契約解除権)が含まれるから,文理上は,受注者が発注者の債務不履行を理由に解除した場合にも受注者が違約金を支払うと読む余地が残る。
また,第13条1項1号による解除には受注者の帰責事由が要件とされていないから,帰責事由がなくても違約金が発生し得る建付けになっている。

この違約金が損害賠償の上限として働くかどうかも,条文からは決まらない。
第16条4項は,談合等の場合について「発注者に生じた実際の損害の額が違約金の額を超過する場合において発注者がその超過分の損害につき賠償を請求することを妨げない」と明示的に留保しているのに対し,第15条にはその留保がない。
この書き分けと民法420条3項の推定からすれば,第15条の違約金は賠償額の予定であって上限として働くと読む余地がある。
他方で,仕様書第10の1が「損害賠償義務を負うほか」と別建ての義務を定めていること,及び第11条3項が民法415条による損害賠償の請求を明文で留保していることは,これと逆の方向に働く。

第22条2項は,第18条,第19条及び第21条2項による解除の場合について,受注者が「第15条に定める方法等に従いその損害を賠償する」と定める。
しかし,第15条は第13条及び第14条による解除の場合の違約金を定める条項であるから,第18条等による解除は第15条の適用対象ではない。
「第15条に定める方法等」が,契約金額の10分の1という金額を指すのか,支払方法だけを指して賠償額は実損害額となるのかは,条文からは判断することができない。

5 契約条項第11条(契約不適合責任の期間制限)

第11条4項は,種類又は品質に関する契約不適合についての権利は,検査完了後,発注者が契約不適合を知った時から1年以内にその旨を受注者に通知しないときは行使することができないと定める。
これは民法637条1項と同じ内容であるが,起算点が「知った時」であるため,検査完了からの客観的な期間制限が存在しない。
考試の実施という5日間の一回的な役務について,検査に合格した後も長期にわたって責任が残り得ることになる。

なお,第11条1項は「発注者は,業務終了後,……契約の内容に適合しないもの……がある場合は」として起算点を「業務終了後」とする一方,同条4項は「検査完了後」としている。
両者が同じ時点を指すのかは,条文からは明らかでない。

6 契約条項第5条及び仕様書第5(監督職員の指示と請負の区分)

かがみは本件契約を請負契約とする。
他方,第5条1項2号は,監督職員が「業務の管理,立会い,指示,承諾又は協議」を行うとするだけで,指示の相手方を限定していない。
仕様書第5の2は「受注者は,考試の実施方法等について,発注者の指示に従わなければならない」と定め,別紙第1の記10は特例措置につき「監督職員の指示に従い」,記13は禁止行為を確認したときは「ただちに監督職員に報告する」,記14(1)及び(2)は受験者の質問及び体調不良への対応につき「監督職員に報告し,その指示により対応する」としている。
これらは,試験室内で監督職員から個々の試験監督者へ直接指示が流れる運用を予定した書き方である。

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号。最終改正平成24年厚生労働省告示第518号)2条1号イ(1)は,請負により行われる事業と認められるための要件として,事業主が「労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと」を挙げる。
同号ロ(1)は労働者の始業及び終業の時刻,休憩時間,休日,休暇等に関する指示その他の管理を,同号ハ(2)は労働者の配置等の決定及び変更を,それぞれ事業主が自ら行うことを求めている。

最高裁判所第二小法廷平成21年12月18日判決(平成20年(受)第1240号,地位確認等請求事件,民集63巻10号2754頁)は,「請負契約においては,請負人は注文者に対して仕事完成義務を負うが,請負人に雇用されている労働者に対する具体的な作業の指揮命令は専ら請負人にゆだねられている」とした上で,「請負人による労働者に対する指揮命令がなく,注文者がその場屋内において労働者に直接具体的な指揮命令をして作業を行わせているような場合には,たとい請負人と注文者との間において請負契約という法形式が採られていたとしても,これを請負契約と評価することはできない」と判示している。
同判決は,その場合に注文者と労働者との間に雇用契約が締結されていないのであれば,3者間の関係は労働者派遣法2条1号にいう労働者派遣に該当すると解すべきであるとする。
もっとも同判決は,労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても,特段の事情のない限り,そのことだけによって派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効になることはないとし,注文者と労働者との間に黙示の雇用契約が成立したとの評価も否定している。

本件契約に基づく業務が現に労働者派遣に当たるかどうかは,考試当日の運用によって決まる事実の問題であるから,契約書の記載だけから結論を出すことはできない。
契約書の書き方としては,監督職員の指示及び連絡を受注者の業務責任者又は業務副責任者を経由して行う旨を定めておくことが考えられ,これは受注者だけでなく発注者にとっても意味のある整理である。
別紙第1の記7(2)ウが,リハーサルの結果「試験監督者等の業務に対する理解度が低いことが判明した場合」に受注者が試験監督者等の交替等をしなければならないとしている点についても,同基準2条1号ハ(2)との関係では,交替の判断を受注者が行う建付けであることを明確にしておく方が安全である。

7 契約条項第24条,仕様書第10の6及び第10の7(著作権と実績の公表)

第24条1項は,提出物の著作権を著作権法27条及び28条に規定する権利を含めて発注者に移転するとし,同条2項は,受注者が著作者人格権その他の権利を有する場合でもこれを行使しないものとする。
同条3項は,受注者が「業務の着手以前から有していた」提出物に係る著作権は受注者に留保されるとしつつ,発注者が提出物を使用するために必要な範囲で無償の利用を許諾するものとしている。
同条4項は,発注者がその業務の遂行に当たり受注者が創作した著作物を使用し,複製し,改良する権利を有するとする。

「提出物」の定義は置かれていない。
別紙第2の提出書類(従事者名簿,事務要領,受験者名簿,試験室配置図,試験室内配席図)を指すのか,リハーサル進行表(別紙第1の記7(2)イ)など他の提出物を含むのかは,条文からは決まらない。
また,3項が受注者に留保するのは着手以前から有していたものに限られるから,受注者が業務の遂行中に作成し,又は既存の様式を改変したものは,1項により発注者に移転することになる。
仕様書第10の7が同じ対象について「発注者に帰属する」と書いており,第24条1項の「移転する」と表現が異なる点も,権利の移転時期をめぐって解釈の余地を残す。

これと併せて注意を要するのが,仕様書第10の6が「受注者は,本業務を請け負ったことについて,業務実施中及び業務終了後を問わず積極的に宣伝してはならない」と定めていることである。
期間の定めはなく,「積極的に宣伝」の意味も示されていない。
他方で別紙第1の記6(1)は,試験監督者の半数以上に国家資格試験又は大学入学試験の実績が10回以上あることを求めており,発注者自身が過去の試験運営実績を資格要件としている。
入札参加資格の審査や競争参加資格の確認において本業務を実績として申告することが本項に触れないかどうかは,あらかじめ確認しておくべき事項である。

なお,本件契約には,特許権その他の産業財産権の帰属に関する条項も,受注者が発注者の知的財産権の有効性を争わない旨の条項も置かれていない。

8 契約条項第4条及び仕様書第10の5(再委託の禁止)

第4条は,業務を第三者に委託し,又は請け負わせることを禁止し,書面による発注者の承諾を得た場合を例外とする。
他方,仕様書第10の5は,①業務責任者,業務副責任者及び本部員の各業務(これらの人材確保を含む。)と②本業務に関する発注者(監督職員を含む。)との連絡及び調整の2つを,承諾の有無にかかわらず再委託の対象から除外している。
両者は内容が異なるが,契約条項と仕様書の優先関係を定める条項は置かれていない。

①の括弧書きにいう「人材確保」の意味も,条文からは決まらない。
人材確保業務それ自体を第三者に委託することを禁ずる趣旨と読むこともできるし,業務責任者等は受注者が雇用する者でなければならない趣旨と読むこともできる。
後者であれば,労働者派遣の受入れによって本部員を確保することも禁じられることになり,第13条1項1号の解除事由に触れることになる。
司法研修所につき業務副責任者2人及び本部員5人以上,大阪会場につき業務副責任者1人及び本部員3人以上を確保する必要があること(仕様書第6の1)を考えると,この点は契約締結の前に書面で確認しておく実益がある。

①及び②以外の業務については,発注者が書面により承諾すれば再委託することができる。
その場合,受注者は,あらかじめ再委託の相手方の商号又は名称及び住所,再委託を行う業務の範囲,再委託の必要性,契約金額等を記載した書面を発注者に提出しなければならない。
大阪会場から司法研修所への答案の運搬(別紙第1の記11(2)),会場の設営(別紙第1の記8)及び大阪会場での廃棄物等の処分(仕様書第10の4)は,いずれも①及び②に当たらないから,承諾を得れば再委託が可能である。

9 別紙第1の記11及び記12(大阪会場からの答案の運搬)

大阪会場実施分の答案は,各科目の答案整理後直ちに搬出し,翌日の午前9時まで(時間厳守)に司法研修所内の指定場所へ運搬して引き継ぐこととされている。
大阪から埼玉県和光市までの深夜の陸送になるが,交通事故,災害,異常気象等により遅延した場合の取扱いは定められていない。
第8条2項が受注者の遅延損害金について「その責めに帰すべき事由により」と帰責事由を要件としているから,不可抗力による遅延であれば遅延損害金は発生しないと解されるが,仕様書第10の1にいう「答案回収・整理上の不備」に当たるかどうかは別の問題である。

安全措置として求められているのは,耐火,防水及び形状の変わらない素材(ジュラルミン等)のボックス等の使用,施錠,封緘等による開封防止の装備,及び運搬物の盗難を防止するために必要な措置である(別紙第1の記12(2))。
ここでいう「ボックス等」は,受験者1人につき1個を要するものではなく,発注者の指定する部数ごとに梱包した答案等を収納するものである(別紙第1の記9(2))。
このほか,配布物及び答案のほかに監督職員が指定する物品(段ボール箱数箱)も運搬するが,これについては施錠,封緘等の安全措置は不要とされている(別紙第1の記12(3)イ)。

もっとも,運搬中の盗難を警戒し,防止する業務が警備業法(昭和47年法律第117号)2条1項3号にいう「運搬中の現金,貴金属,美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し,防止する業務」に当たるとすれば,同法4条により,都道府県公安委員会の認定を受けた者が行う必要がある。
考試の答案が「現金,貴金属,美術品等」に含まれるかどうかは条文からは一義的に決まらないから,受注者が自ら運搬するのか認定を受けた業者に委託するのかを決める前に,所轄の警察署に確認しておくことが考えられる。

10 契約条項第25条(紛争の解決)

第25条は,協議が整わない場合その他紛争が生じた場合には,発注者及び受注者が協議により選任した者のあっせん又は調停によりその解決を図ることとし,紛争の処理に要する費用は,協議して特別の定めをした場合を除き各自の負担とする。
しかし,あっせん人又は調停人の選任も「協議により」行うものとされているから,選任について協議が調わなければ手続に入ることができない。
あっせん又は調停が不調に終わった場合の終局的な解決方法は定められておらず,管轄裁判所に関する定めも,準拠法に関する定めもない。

政府契約の支払遅延防止等に関する法律4条4号は,政府契約の当事者が契約の締結に際して「契約に関する紛争の解決方法」を書面により明らかにしなければならないとしている。
第25条はこれに対応する条項であるが,終局的な解決方法まで示すものにはなっていない。

第5 過去の期の契約書との異同

1 第75期及び第76期の契約条項はほぼ同一であること

第75期(令和4年7月28日付。受注者は株式会社全国試験運営センター)及び第76期(令和5年7月21日付。受注者は株式会社JTB)の契約書は,いずれも第1条から第26条までの同じ条建てであり,条見出しも本件契約と一致する。
仕様書第10の1(考試の再実施義務)の文言は,第75期及び第76期の契約書と本件契約とで同一である。
検査を10日以内,支払を30日以内とする定め(第6条2項,第7条2項),試験室及び待機場所の無償提供(仕様書第10の3),再委託の禁止と例外(仕様書第10の5),宣伝の禁止(仕様書第10の6),著作権の帰属(仕様書第10の7)及び不可抗力による会場変更(仕様書第10の8)も,第75期の契約書から同じ内容で置かれている。
したがって,本件契約の条項は第77期限りのものではなく,年度をまたいで用いられている定型の書式である。

もっとも,細かな違いもある。
違約金及び談合等の不正行為にかかる違約金の算定基礎は,第75期が「予定総額の10分の1」であったのに対し,第76期及び本件契約は「契約金額の10分の1」である(第15条,第16条)。
権利義務の譲渡等の制限(第3条)については,第76期の契約書に,信用保証協会及び中小企業信用保険法施行令1条の3に規定する金融機関に対して売掛債権を譲渡する場合を除外する定めと,予算決算及び会計令42条の2に基づく支出の決定の通知の時点で弁済の効力が生ずる旨の定めが置かれていたが,第75期及び本件契約にはこれらがない。
答案の引継ぎについては,「翌日が休日の場合も同様とする」(第75期・第76期)が,本件契約では「翌日が裁判所の休日の場合も同様とする」に改められている。

2 第67期の契約書からの変化

第67期(平成26年7月2日付。受注者は株式会社ヒューマントラスト)の契約書は,条建てが異なる。
例えば,下請等の制限は第5条,業務完了の検査は第7条,代金の支払は第8条,危険負担等は第11条,瑕疵担保責任は第12条,違約金は第16条であった。
仕様書についても,再実施義務は第9の1に置かれ,末尾は「その場合において,第9の3は保証されない」となっていたが,文言は本件契約の仕様書第10の1と実質的に同一である。

危険負担については,第67期の第11条2項が「天災その他の不可抗力により,債務の履行が不能となった場合には,発注者又は受注者は,相手方の同意を得て,この契約を無償で解除することができるものとし,既に要した費用については,発注者及び受注者の各自の負担とする」としていた。
これに対し本件契約の第10条3項は,発注者については第13条1項4号に基づく催告を要しない無償解除を認める一方,受注者については「発注者の同意を得て」無償解除できるものとしており,解除の要件が一方的になっている。

第67期の契約書には,著作権に関する条項が置かれていなかった。
再委託についても,第67期の仕様書第9の5は「受注者は,業務を第三者に委託し,又は請け負わせてはならない。ただし,書面による発注者の承諾を受けた場合は,この限りではない。この場合,下請負人の名称その他の必要な事項を発注者に通知しなければならない。」とするのみで,業務責任者等の人材確保を承諾の対象から除外する定めはなかった。
他方,宣伝の禁止は第67期の仕様書第9の6に既に置かれており,本件契約の仕様書第10の6と同一の文言である。

3 契約書の様式及び締結方法の変更

第75期及び第76期の契約書は,かがみに「次の条項及び別添仕様書により請負契約を締結し」と記載し,契約条項を契約書本体に一体として記載していた。
これに対し本件契約は「別紙契約条項及び別添仕様書により請負契約を締結し」とし,契約条項を別紙に分離している。
また,第67期から第76期までの契約書は本書2通を作成して記名押印する方式であったが,本件契約は電子契約システムによる署名の方式に変わっている。

4 契約金額,受験者数及び実施時期

本件契約を含む直近3期の主な数値は,次のとおりである。

契約年月日受注者契約金額(税込み)受験者数考試の実施日
第75期令和4年7月28日株式会社全国試験運営センター47,850,000円約1,490人契約期間の終期は令和4年11月17日
第76期令和5年7月21日株式会社JTB43,780,000円約1,490人令和5年11月16日・17日及び20日から22日まで
第77期令和6年10月28日株式会社全国試験運営センター42,680,000円約1,840人令和7年3月3日から7日まで

受験者数は,第75期及び第76期がいずれも約1,490人(司法研修所約1,200人,大阪会場約290人)であったのに対し,本件契約では約1,840人(司法研修所約1,470人,大阪会場約370人)に増えている。
これに伴い,司法研修所の試験室は最大43室から最大47室へ,大阪会場の試験室は最大10室から最大12室へ増えている。
また,考試の実施時期は,第76期が令和5年11月であったのに対し,本件契約では令和7年3月に移っている。
なお,第75期の契約書の該当部分は,掲載しているPDFの文字認識では考試の実施日を読み取ることができなかったため,上表には契約期間の終期を記載した。

各期の受注者及び契約金額の一覧は,65期二回試験以降の事務委託に関する契約書,及び67期二回試験の不祥事に掲載している。

5 第67期の仕様書違背が代金の減額で処理されたこと

第67期の契約は,平成26年7月2日付で発注者最高裁判所と受注者株式会社ヒューマントラストとの間に締結され,契約金額は27,827,618円(うち消費税及び地方消費税額2,061,305円を含む),期間は契約日から同年12月26日までであった。
その後,平成26年12月25日付の変更契約書により,期間が平成27年2月13日まで延長され,業務実施報告書の提出期限が「12月下旬頃」から「平成27年2月中旬頃」に変更された。

そして平成27年2月17日付の協議書により,受注者は「本件契約に係る業務の履行につき,仕様書違背があったことを認める」とされ(同協議書1条),発注者は「上記仕様書違背部分を除いた業務の履行がなされたことを認め,本件契約金額の内,上記仕様書違背部分を除いた金23,253,882円(うち消費税及び地方消費税額1,722,509円を含む)の支払義務があることを認める」とされた(同2条)。
当初の契約金額との差額は4,573,736円である。
同協議書5条は,発注者及び受注者が本件契約に関し同協議書の各条項に定めるもののほか何らの債権債務がないことを相互に確認する清算条項である。

すなわち,現に仕様書違背があった第67期の事例では,同期の仕様書第9の1に再実施義務の定めが置かれていたにもかかわらず,考試の再実施も違約金の請求も行われず,仕様書違背部分に相当する代金を支払わないという方法で処理されている。
これは,仕様書の再実施義務が発動する要件である「司法修習生の修習終了判定ができないとき」には至らなかったということである。
第67期の変更契約書及び協議書は,65期二回試験以降の事務委託に関する契約書,及び67期二回試験の不祥事に掲載している。

第6 第77期二回試験の実施結果に関する記録

本件契約に基づいて実施された第77期二回試験については,令和7年3月に不合格者の受験番号が公表された。
その経過に関する投稿は次のとおりである。
不合格発表の方法及び過去の不合格者受験番号は二回試験の不合格発表がされる裁判所HP及び過去の不合格者受験番号に,成績分布は実務修習,集合修習及び二回試験の成績分布(51期以降)にそれぞれ掲載している。

第7 関連記事

二回試験及び司法修習生考試に関する記事は,次のとおりである。

65期二回試験以降の事務委託に関する契約書,及び67期二回試験の不祥事
司法修習生考試の会場借用等業務に関する賃貸借契約書(新梅田研修センター)
司法修習生考試応試心得(65期以降)
司法修習生考試担当者名簿(65期二回試験以降)
二回試験とは―科目,日程,合否の仕組み,不合格後の再受験及び関連記事
二回試験の不合格者数の推移等
司法研修所とは―最高裁判所の附属機関としての役割,組織,司法修習及び裁判官研修
裁判所の情報公開――通達・司法行政文書の開示手続と判決情報の公開

出典・参考資料

1 法令・告示

裁判所法(昭和22年法律第59号)67条(e-Gov法令検索)
会計法(昭和22年法律第35号)29条の9・29条の11(e-Gov法令検索)
予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)42条の2・100条の3(e-Gov法令検索)
政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和24年法律第256号)2条・4条・5条・6条・8条(e-Gov法令検索)
民法(明治29年法律第89号)404条・415条・420条・536条・634条・637条(e-Gov法令検索)
個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)2条・16条(e-Gov法令検索)
著作権法(昭和45年法律第48号)27条・28条(e-Gov法令検索)
警備業法(昭和47年法律第117号)2条・4条(e-Gov法令検索)
労働基準法(昭和22年法律第49号)109条・附則143条(e-Gov法令検索)
中小企業信用保険法施行令(昭和25年政令第350号)1条の3(e-Gov法令検索)
労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号。最終改正平成24年厚生労働省告示第518号)(厚生労働省)
政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率(昭和24年12月12日大蔵省告示第991号。最終改正令和8年3月6日財務省告示第54号,令和8年4月1日適用)(財務省)
令和8年4月1日以降の法定利率について(法務省。第3期の基準割合を年0.4パーセントとする令和7年法務省告示第73号)

2 裁判例

最高裁判所第二小法廷平成21年12月18日判決(平成20年(受)第1240号,地位確認等請求事件,民集63巻10号2754頁,原審・大阪高等裁判所平成20年4月25日判決(平成19年(ネ)第1661号),裁判所ウェブサイト)

3 公文書

第77期司法修習生考試事務業務委託に関する契約書(令和6年10月28日付)(発注者最高裁判所,受注者株式会社全国試験運営センター。全29頁)
第76期司法修習生考試事務業務委託に関する契約書(令和5年7月21日付)(発注者最高裁判所,受注者株式会社JTB。全28頁)
第75期司法修習生考試事務業務委託に関する契約書(令和4年7月28日付)(発注者最高裁判所,受注者株式会社全国試験運営センター。全28頁)
平成26年度司法修習生考試事務委託業務に関する契約書(平成26年7月2日付)(発注者最高裁判所,受注者株式会社ヒューマントラスト。全22頁)
平成26年度司法修習生考試事務委託業務に関する変更契約書(平成26年12月25日付)
平成26年度司法修習生考試事務委託業務に関する協議書(平成27年2月17日付)

4 文献

①高柳岸夫・有川博『官公庁契約精義〔平成22年増補改訂版〕』(全国官報販売協同組合,2010年)(違約金と損害賠償額の予定の関係,及び公共工事標準請負契約約款29条による不可抗力損害の負担区分について参照した。)