65期二回試験以降の事務委託に関する契約書,及び67期二回試験の不祥事


目次

1 二回試験の事務委託に関する契約書
2 二回試験前日のリハーサル
3 二回試験の実施に関する最高裁判所の説明
4 67期二回試験の不祥事
5 関連記事その他

1 二回試験の事務委託に関する契約書
(1) 二回試験の事務委託に関する契約書を以下のとおり掲載しています。
* 「第76期司法修習生考試事務業務委託に関する契約書(令和5年7月21日付)」といったファイル名です。
◯76期二回試験関係
・ 令和5年7月21日付の契約書
・ 受注者は株式会社JTBでした。
・ 契約金額は4378万円でした。
◯75期二回試験関係
・ 令和4年7月28日付の契約書
・ 受注者は株式会社全国試験運営センターでした。
・ 契約金額は4785万円でした。
◯74期二回試験関係
・ 令和3年10月27日付の契約書
・ 受注者は株式会社全国試験運営センターでした。
・ 変更後の契約金額は4791万2752円でした。
◯73期二回試験関係
・ 令和2年7月14日付の契約書
・ 受注者は株式会社全国試験運営センターでした。
・ 変更後の契約金額は4952万6351円でした。
◯72期二回試験関係
・ 令和元年7月 9日付の契約書
・ 受注者は株式会社全国試験運営センターでした。
・ 契約金額は4383万9353円でした。
◯71期二回試験関係
・ 平成30年7月 5日付の契約書
・ 受注者は株式会社全国試験運営センターでした。
・ 契約金額は3995万9519円でした。
◯70期二回試験関係
・ 平成29年7月11日付の契約書
・ 受注者は株式会社全国試験運営センターでした。
・ 契約金額は3866万4000円でした。
◯69期二回試験関係
・ 平成28年7月14日付の契約書
・ 受注者は株式会社全国試験運営センターでした。
・ 契約金額は3275万4578円でした。
◯68期二回試験関係
・ 平成27年7月15日付の契約書
・ 受注者は株式会社全国試験運営センターでした。
・ 契約金額は3831万463円でした。
◯67期二回試験関係
・ 平成26年7月2日付の契約書平成26年12月25日付の変更契約書及び平成27年2月17日付の協議書
・ 受注者は株式会社ヒューマントラストでした。
・ 契約金額は当初,2782万7618円であったものの,仕様書違反があったため,最終的に2325万3882円に減額されました。
◯66期二回試験関係
・ 平成25年6月14日付の契約書
・ 受注者は株式会社全国試験運営センターでした。
・ 契約金額は3192万861円でした。
◯65期二回試験関係
・ 平成24年4月9日付の契約書
・ 受注者は株式会社全国試験運営センターでした。
・ 契約金額は3759万円でした。
(2) 株式会社全国試験運営センター(NEXA)は,河合塾グループの企業です。
(3) 株式会社ヒューマントラストは,総合人材サービスの会社です。

2 二回試験前日のリハーサル

(1) 平成26年7月2日付の契約書添付の仕様書2頁には,「受注者は,考試初日の前日に各試験会場において試験監督者(必要に応じて試験監督補助者等)が参加する考試実施業務のリハーサルを実施しなければならない。」と書いてあります。
(2) 平成27年7月15日付の契約書添付の仕様書2頁には,「受注者は,考試初日の前日に各試験会場において,発注者の立会いの下,試験監督者等が参加する考試実施業務のリハーサルを実施しなければならない。このリハーサルは,考試と同様の試験室を設営し,試験監督者役,試験監督補助者役(試験室外配置者を含む。)及び応試者役を配役した上,応試者の誘導,問題等の運搬・配布,注意事項等の発言及び答案回収等の一連の考試実施業務について,実演・体験方式により行うものとする。」と書いてあります。

3 二回試験の実施に関する最高裁判所の説明
・ 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)221頁には,「(10) 司法修習生考試の実施に必要な経費」として以下の記載があります。
<要求要旨>
    司法修習生は,修習の後,試験(以下「司法修習生考試」という。)に合格して初めて,修習を終え,法曹資格を得ることができる。
    この司法修習生考試は,法曹資格取得の要件である司法修習生の修習終了の可否を最終的に判定する,極めて重要な試験であり,その実施に当たっては,厳格かつ公正,公平な運用が求められている。
(ア) 司法修習生考試の外注のための経費(司法研修所実施分,大阪会場実施分)
    司法修習生考試に係る事務のうち,問題の作成や採点等は,司法研修所教官が行っているが,考試会場の設営,問題の配布・回収,考試中の監督等の実施事務は,平成18年度から,試験事務についてノウハウを持った民間企業に一括して外注化しているところである。
    そこで,司法修習生考試(1回)の実施に必要な外注経費を要求する。
(イ) 司法修習生考試試験場借料
    大阪会場実施分
    従前,司法修習生考試の試験場は,司法研修所の施設のみを使用していたが,平成20年11月以降,受験者が増加
するとともに,修習のカリキュラム上,一部の受験者はその直前まで大阪で修習を行うこととなり,その者たちを司法研修所に来させて考試を行うことは,受験者にとっての負担が大きく,東京にいる他の受験者と不均衡が生じることから,この者たちの受験のため,大阪に試験場を設置する必要が生じている。
    そこで,大阪において司法修習生考試の試験場を借用するのに必要な経費を要求する。
(ウ) 司法修習生考試用六法購入費
    司法修習生考試を厳格かつ公正,公平に運用するためには,試験中に使用させる法文についても,実施機関において用意した同種類のものとする必要がある。また,試験の性格上,判例,解説のないものでなければならない。
    そこで,司法修習生考試用六法の購入に必要な経費を要求する。

4 67期二回試験の不祥事
・ 黒猫のつぶやきブログ「問われる二回試験実務の「丸投げ」」には,ヒューマントラストが担当した67期二回試験に関して,以下の記載があります。
    二回試験の試験監督事務では,他の国家試験と同様にアルバイトを使用しており,試験の公正さを確保するため,事務従事者はしっかり事前の研修を受ける必要があります。平成25年の二回試験では,概ね時給1200円から1500円くらいの給料が出ていたそうなのですが,平成26年には試験監督事務が人材派遣会社ヒューマントラストに委託され,二回試験監督のため最高裁から派遣された職員はわずか2人,そしてヒューマントラストの若手社員5人ほどが,約300人の登録アルバイトを仕切るという体制になり,アルバイトの給料も時給1050円に削減されました。
(中略)
   このような背景の下で,二日目の「刑事弁護」科目のとき,問題の「事件」が発生しました。
   当日,第24番の試験室に試験監督として2名のアルバイトが配置されましたが,事前の研修を受けていたアルバイトは男性監督1人だけで,もう一人は試験当日の朝に急遽呼び出された中年女性でした。女性の方は当然ながら仕事の要領が分からないため,男性監督が実質1人で作業をする破目になりました。
   しかもその女性は,どうやら昼頃には仕事が終わるものと誤解していたらしく,昼過ぎになると
   「私,帰りたいんですけど!」
と金切り声を上げて叫び始めました。

   派遣会社の仕事というものは,具体的な仕事の内容や終業時間が前日に分かるならまだ良い方で,人手が足りないと当日飛び込みで仕事を依頼されることもありますから,こういう事態も時々起こり得るわけです。
   もっとも,二回試験は午後も続きますから,当然その中年女性も帰ることはできません。そのまま時間が過ぎ,ちょうど試験が終わって答案を回収する頃になると,その女性もついにキレてしまいました。
   「こんなに遅くまで仕事をするとは言ってない。私には予定があるんですっ」
   女性はそう大声でわめくと,ついに仕事を放り出して試験室から出て行ってしまいました。残された1人の男性監督も「ちょっとアンタ待ちなさいよ!」と女性を追いかけてしまったため,問題の第24番試験室は試験終了後約1時間にわたり,試験監督がいない状態になってしまいました。

   その後,連絡を受けたヒューマントラストの社員が駆けつけ,血相を変えて「封鎖,封鎖!」と叫ぶに至るまで,二回試験の答案は試験監督がいないまま,約1時間にわたり放置されることになりました。同試験室には修習生が何人か残っていたということであり,この混乱のおかげで「命拾い」をした修習生がいた可能性も否定できません。
   この事態を受け,最高裁とヒューマントラストの職員は対応を協議しましたが,出された結論はアルバイトの職員に箝口令を敷いて事件の隠ぺいを図るという驚くべきもので,20代と思われる若いヒューマントラストの社員は,事件を目撃したアルバイトを個別に呼び,「ネットなんかに書くなよ。もし表に出たら,必ず犯人を探し出して,仕事の紹介を打ち切るからな!」などと恫喝していたそうです。
   それでも週刊文春にこのような記事が載ったのは,そうしたアルバイトの中から内部告発者が出たからに他なりません。黒猫も,事案の性質上このような話をネット上のブログ記事に書いてよいか悩みましたが,この問題は法曹関係者のブログ等でも意外と話題にされておらず,まだ知らない人も多いと思われる一方,著作権法では時事問題に関する論説等の転載は認められており,また本件には法曹資格を判定する二回試験の公正さに疑義が挟まれるいう公益上重大な問題が含まれていることから,ブログでの言及をためらうべきではないとの結論に至りました。

5 関連記事その他
(1) ヒューマントラストは,最高裁に対し,平成27年2月13日付で報告書及び事実経緯報告書を提出していますが,中身は真っ黒です。
(2) 平成27年2月13日付の67期二回試験業務実施報告書(平成26年11月21日実施の刑事弁護関係のうち,第24試験室関係文書の抜粋)を掲載しています。
(3) 「司法修習生が取り扱う裁判修習関連の情報のセキュリティ対策について」(平成20年12月25日付の司法研修所長通知)別紙第1(「司法修習生に関連する法規及び通達」参照)には,「万一,USBメモリを紛失した場合,ウィルス感染した場合は,直ちに報告を(報告の遅れは命取り!)」と書いてあります。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 二回試験直前の自由研究日
・ 司法修習生考試の会場借用等業務に関する賃貸借契約書(新梅田研修センター)
・ 二回試験落ちにつながる答案
・ 二回試験の不合格答案の概要
・ 二回試験の不合格発表
・ 二回試験不合格時の一般的な取扱い


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