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二回試験不合格時の一般的な取扱い――期別の沿革,罷免の根拠条文及び再受験(AIリライト)

第1 この記事が扱う対象

1 二回試験に不合格となった場合の効果

「二回試験」の正式名称は司法修習生考試であり,裁判所法67条1項は「司法修習生は、少なくとも一年間修習をした後試験に合格したときは、司法修習生の修習を終える。」と定めている。
そのため,二回試験に不合格となった者は,同項による司法修習生の修習を終えた者とならず,判事補,検察官又は弁護士となるための法定資格も取得しない。
不合格となった者がその後どのような身分に置かれ,経済的にどのような取扱いを受け,どのようにして再び考試を受験するかは,修習期によって大きく異なる。

本記事は,1期から78期までについて,①不合格又は合格留保となった場合の身分,②給与,貸与金又は修習給付金の取扱い,③罷免の根拠条文及び罷免の日並びに④再受験の方法を,期別に整理するものである。
二回試験の科目,日程,合否の仕組みその他の制度全般については「二回試験とは―科目,日程,合否の仕組み,不合格後の再受験及び関連記事」で扱っている。

2 合否を決定する主体

合否を決定するのは司法修習生考試委員会である。
司法修習生に関する規則16条は「委員会は、司法研修所長が報告した修習成績と考試の結果によつて、合格、不合格を定め、委員長は、これを最高裁判所に報告しなければならない。」と定めており,考試の結果だけでなく修習成績も合否の資料とされている。
もっとも,同規則の文言から直ちに,不可の科目があっても実務修習及び集合修習の成績によって合格となる運用があるとはいえない。

集合修習で指導される科目の内容及びクラス担任制による評価の仕組みは,集合修習とは-司法研修所における科目・クラス担任制,起案による指導及び後期修習からの変遷に整理している。

64期以降の二回試験に関する,合格者及び不合格者の決定に関する議事録」に掲載した各期の議事内容を見る限り,合格者の決定は「全科目可以上の成績を収めた」者を対象とし,不合格者の決定は「不可の科目があった」者を対象として提案され,可決されている。
不可の科目があったにもかかわらず修習成績を理由として合格とされた事例は,確認できる範囲では見当たらない。

3 取扱いが変わった時期の区切り

本記事では,取扱いの変化に応じて,①27期まで,②28期から52期まで,③53期から59期まで,④60期から70期まで及び⑤71期以降の5つに区分する。
②と③の区切りは,合格留保者に対する給与の支給を廃止した裁判所法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第50号)の附則が,施行前に採用された司法修習生について従前の例によると定めていることによる。
④と⑤の区切りは,裁判所法68条を第1項及び第2項に改めた裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)の附則が,改正後の同条を「この法律の施行後に採用された司法修習生」について適用すると定めていることによる。

各期の二回試験の実施日,不合格発表日及びその後の日程は「65期以降の二回試験の不合格発表及びその後の日程」及び「65期以降の二回試験の日程等」に掲載している。
不合格発表の方法及び過去の不合格者受験番号は「二回試験の不合格発表がされる裁判所HP及び過去の不合格者受験番号」で扱っている。

第2 27期までの取扱い

1 追試を受けられた者

27期までは,病気,出産その他の理由で二回試験を受けられなかった修習生だけが追試を受けることができた(「二回試験等の推移表(1期から70期まで)」*7)。
そのため,受験した上で一科目でも不合格となった場合は,追試を受けることができず,そのまま不合格となった。

この場合,司法修習生の身分を引き続き有し,かつ,給与の支給を受けた上で次の二回試験を受験していたとされる。
昭和50年4月16日の衆議院法務委員会において,青柳盛雄委員は,27期の2人が二回試験に合格しなかったことについて,「試験を受けなかった部分があるとか、成績が全般的にふるわなかったというようなことで、追試をやる、あるいは一年留年させるというような措置がとられた」と述べている。
受験しなかった者には追試が,成績不良の者には留年(次の期の二回試験の受験)が行われたという整理は,前記の推移表の注記と整合する。
もっとも,これは委員の質問の中の発言であって最高裁判所の答弁ではなく,給与の取扱いを直接示す最高裁判所又は法務省の文書は確認できていない。

2 21期の落第者と白紙撤回闘争

21期の二回試験では,応試者522人のうち2人が落第し,落第率は0.38%であった(二回試験等の推移表)。
この2人の落第に対しては,落第の白紙撤回闘争が行われた。
当時の司法研修所及び裁判所をめぐる状況は「昭和44年開始の,裁判所におけるブルーパージ」で扱っている。

第3 28期から52期までの取扱い

1 合格留保者と追試

28期からは,いずれかの科目で不合格となった者が合格留保者とされ,追試を受けることができるようになった。
追試は,全科目を受け直す再試験とは異なり,不合格となった科目だけを受験すれば足りるものである(二回試験等の推移表*7)。

2 身分及び給与

合格留保者は司法修習生としての身分を失わないから,身分を引き続き有し,かつ,給与の支給を受けた上で追試を受けていた。
追試でも合格留保となった場合も,同様に司法修習生の身分を有し,給与の支給を受けた上で次の二回試験を受験していた。

給与が支給される根拠及びその考え方は,「司法修習生に対して給与が支給される根拠と裁判所法67条2項の改正の趣旨について(平成10年2月4日付の法務省の文書)」に示されている。
昭和62年の参議院法務委員会における質疑応答については「52期までの二回試験では,合格判定留保者にも給与が支給されていた──昭和62年参議院法務委員会の質疑応答」で扱っている。

3 合格留保となった数

28期から52期までに合格留保となった数は,次のとおりである(二回試験等の推移表の「合格留保者」欄による。)。
28期が5人,29期が7人,30期が5人
31期が6人,32期が11人,33期が9人,34期が9人,35期が7人
36期が1人,37期が3人,38期が4人,39期が6人
40期ないし43期が0人,44期が4人,45期が1人
46期が1人,47期及び48期が0人,49期が3人,50期が5人
51期が0人,52期が3人

この期間,統計上,二回試験の不合格者,すなわち罷免された者は0人である。
もっとも,合格留保者数と官報に掲載された追試合格者数を比べる限り,50期で1人,52期で1人,追試の不合格者が出ているとみられる(二回試験等の推移表*2)。
したがって,「不合格者が1人もいなかった」という説明は,罷免された者がいなかったという意味に限って正確である。

第4 53期から59期までの取扱い

1 平成10年の裁判所法改正による無給化

裁判所法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第50号)は,裁判所法67条1項の「少くとも二年間」を「少なくとも一年六月間」に改めるとともに,同条2項に「ただし、修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間を超える部分については、この限りでない。」というただし書を加えた。
このただし書により,修習のため通常必要な期間を超える部分について給与が支給されないこととなり,二回試験の合格留保者に対する給与の支給が廃止された。

同法附則1項は「この法律は、平成十一年四月一日から施行する。」と定め,同附則2項は「この法律の施行前に採用され、この法律の施行後も引き続き修習をする司法修習生の修習期間及び国庫から給与を受ける期間については、なお従前の例による。」と定めている。
そのため,この改正が適用されるのは平成11年4月以降に採用された53期以降である。
改正に至る経緯,国会審議の内容及び参議院法務委員会の附帯決議は「司法修習生の給費制に関する,平成10年の裁判所法改正」で扱っている。

したがって,53期から59期までは,一科目だけ不合格となった合格留保者は,司法修習生としての身分を失わないものの,無給の状態で追試を受けていた。

なお,このただし書は,給費制を廃止した裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)により同項本文とともに削られており,現在は存在しない。
現行の裁判所法67条2項は「司法修習生は、その修習期間中、最高裁判所の定めるところにより、その修習に専念しなければならない。」と定める修習専念義務の規定であるから,条番号だけを頼りに現行法を参照すると内容を取り違えることになる。

2 不合格者の取扱い

二科目以上不合格となって不合格者となった場合,又は追試でも合格できずに不合格者となった場合は,司法修習生を罷免された上で,次の期の二回試験において全科目を受け直していた。

3 合格留保となった数及び不合格となった数

53期から59期までに合格留保となった数は,53期が19人,54期が16人,55期が10人,56期が11人,57期が43人,58期が30人及び59期が97人である。
二科目以上不合格となって不合格者となった数は,55期が1人,57期が3人,58期が1人及び59期が10人である。
いずれも二回試験等の推移表の「合格留保者」欄及び「不合格者」欄による。

合格留保者と不合格者を合計した落第者の数は,53期が19人,54期が16人,55期が11人,56期が11人,57期が46人,58期が31人及び59期が107人である。
59期の落第率は,応試者1493人に対して7.17%であった。
また,59期の合格留保者97人は追試を受験したが,そのうち6人が追試でも不合格となったとみられる(二回試験等の推移表*2)。

科目別の内訳については「二回試験の科目別不合格者数」で扱っており,合格留保を含めた場合の記録は59期の刑事弁護46人である。

4 合格留保者の生活費に関する当時の記録

合格留保者が無給となったことは,追試までの生活費の問題を生じさせた。
弁護士落合洋司氏のブログ「日々是好日」の平成18年10月1日付の記事「留保者へのカンパ問題について−59期修習生諸君へ」には,次の記載がある。

 私が聞いた話では(あくまで噂ですが)、2回試験で合格留保になった司法修習生は、追試まで引き続き司法修習生の身分があり、本来は、給与も支給されるはずのところ、司法研修所側から、「合格留保になったような者が、これ以上、税金から給与を支給されるなど許されない」(?)と強烈に「指導」され、給与支給を辞退させられてしまう(一応、任意で)ため、追試までの生活費を皆でカンパしてあげる、ということでした。

もっとも,同記事は伝聞であることを明示しており,給与の辞退が行われていたことを示す公的な資料は確認できていない。
また,同記事が投稿された平成18年10月の時点で,59期の合格留保者は,前記の平成10年改正により給与の支給を受けられない立場にあった。

第5 60期から70期までの取扱い

1 追試の廃止

60期からは追試が廃止され,一科目でも不合格となった場合は,不合格者としていったん司法修習生を罷免された上で,次の期の二回試験において全科目を受け直さなければならなくなった。
追試の廃止に対する当時の批判として,ブログ「矢を損じて和を陳べる(旧:さんけんブログ)」の平成18年10月12日付の記事「司法修習二回試験の追試廃止は筋違いではないか」がある。

2 罷免の根拠条文

この時期の罷免は,平成29年法律第23号による改正前の裁判所法68条及び平成29年最高裁判所規則第4号による改正前の司法修習生に関する規則18条によるものである。
改正前の裁判所法68条は項に分かれておらず,「最高裁判所は、司法修習生の行状がその品位を辱めるものと認めるときその他司法修習生について最高裁判所の定める事由があると認めるときは、その司法修習生を罷免することができる。」と定めていた。
二回試験に不合格となったことを理由とする罷免は,改正前の同規則18条2号によるものである。

このことは,「70期二回試験不合格者に対する罷免の辞令書」(平成29年12月13日付)の発令内容欄が「平成29年法律第67号による改正前の裁判所法第68条及び平成29年最高裁判所規則第4号による改正前の司法修習生に関する規則第18条第2号により罷免する」と記載していることから確認できる。
もっとも,裁判所法68条を第1項及び第2項に改めたのは平成29年法律第23号であり,e-Gov法令検索で確認できる平成29年法律第67号による改正後(平成29年8月10日施行)の裁判所法68条は,改正前の文言のままである。

最高裁判所裁判官会議が二回試験の不合格者の罷免を議題として扱うようになったのは,69期からである。
平成27年12月16日の裁判官会議(第37回)の議事録には,第68期について考試の結果の報告と修習終了の決定はあるものの,罷免の議題がない。
これに対し,平成28年12月14日の裁判官会議(第40回)の議事録には第69期の司法修習生の罷免という議題があり,付議人事関係事項は,罷免の根拠として改正前の司法修習生に関する規則18条2号を挙げている。
平成29年12月13日の裁判官会議の付議人事関係事項も,罷免の根拠を平成29年最高裁判所規則第4号による改正前の同規則18条2号としており,71期からは同規則17条1項1号に変わる。
もっとも,議事録に記載されるのは議題だけであるから,68期以前の不合格者が罷免されなかったことを意味するものではない。

3 退職願を提出した場合

「私は,この度,一身上の都合(考試不合格)により,司法修習生を退職したいと思いますので,ご許可くださいますようお願いします。」という文言を含む退職願を提出した場合,改正前の司法修習生に関する規則18条3号により罷免となり,退職願を提出しなかった場合は,成績不良を理由として同条2号により罷免となった。

改正前の同規則18条3号による罷免の例としては,「69期司法修習生に対する罷免の辞令書5通」(平成28年12月12日付)があり,その発令内容欄は「裁判所法第68条及び司法修習生に関する規則第18条第3号により罷免する」と記載している。
同規則18条3号による罷免は,平成29年11月15日付の70期司法修習生に対する罷免の辞令書まで確認できる。

なお,69期の依願罷免の辞令書5通は平成28年12月12日付であり,二回試験の不合格発表(同月13日)の前日である。
平成28年12月の最高裁判所裁判官会議の議事録に現れる罷免は,同月14日付の二回試験不合格者の罷免だけであって,この依願罷免は議事録に現れない。

4 貸与制への移行

この時期には,経済的な取扱いも変わった。
給費制は,裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)により廃止されることとなったが,裁判所法の一部を改正する法律(平成22年12月3日法律第64号)により実施が1年延期され,貸与制が適用されたのは平成23年11月採用の新65期からである。
そのため,新65期から70期までの司法修習生は,給与も修習給付金も受けられない立場にあり,後に「谷間世代」と呼ばれるようになった(「司法修習制度の改正経緯―統一修習,修習期間,給費制・貸与制・修習給付金」参照)。

貸与を受けていた者が二回試験に不合格となって罷免された場合は,修習資金貸与金の期限の利益が問題となる。
この点は「二回試験不合格と,修習資金貸与金の期限の利益との関係」で扱っている。

第6 71期以降の取扱い

1 平成29年の裁判所法改正と適用の始期

裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)は,裁判所法68条を第1項及び第2項に分け,第1項で「最高裁判所は、司法修習生に成績不良、心身の故障その他のその修習を継続することが困難である事由として最高裁判所の定める事由があると認めるときは、最高裁判所の定めるところにより、その司法修習生を罷免することができる。」と定めた。
同法附則1項は施行日を平成29年11月1日と定めている。

もっとも,同法附則4項は「新法第六十八条の規定は、この法律の施行後に採用された司法修習生について適用し、この法律の施行前に採用された司法修習生の罷免等については、なお従前の例による。」と定めている。
平成28年11月採用の70期は施行前に採用された司法修習生であるから,改正後の規定が適用されるのは平成29年11月採用の71期以降である。
前記の70期の罷免の辞令書が「改正前の」裁判所法68条及び「改正前の」司法修習生に関する規則18条2号を掲げているのは,この経過措置によるものである。

これに伴い,司法修習生に関する規則も平成29年8月4日最高裁判所規則第4号によって改められ,罷免の事由は同規則17条1項に置かれ,同項1号は「成績不良又は心身の故障により、修習を継続することが困難であるとき。」と定められた。
同規則18条は,71期以降の司法修習生について新設された修習の停止の期間等を定める規定に変わっている(「71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由」参照)。
そのため,「規則18条」という条番号だけを手掛かりに現行の規則を参照すると,罷免の規定には行き着かない。

2 罷免の根拠条文及び罷免の日

71期以降の二回試験不合格者に対する罷免の辞令書は,いずれも発令内容欄に,裁判所法68条1項及び司法修習生に関する規則17条1項1号により罷免する旨を記載している。
これは,71期(平成30年12月12日付),74期(令和4年4月20日付),75期(令和4年12月7日付)及び76期(令和5年12月13日付)の各辞令書で確認できる。

罷免の日は,いずれも二回試験の不合格発表の翌日である。
65期以降,二回試験の不合格発表は原則として火曜日の午後4時に行われ,その翌日の水曜日に最高裁判所裁判官会議が開かれる。
最高裁判所が司法行政事務を行うのは裁判官会議の議によるから(裁判所法12条1項),不合格者の罷免は,この日の裁判官会議において決定されている。

このことは,最高裁判所裁判官会議の議事録から確認できる。
令和7年3月26日の裁判官会議(第11回)の議事録は,人事局長の説明として,第77期の司法修習生考試の結果については「報告がされ」,同期の司法修習生の修習終了及び罷免については「いずれも原案どおり決定した」と記載している。
同日の裁判官会議付議人事関係事項は,罷免の根拠として司法修習生に関する規則17条1項1号を挙げ,その対象を司法修習生考試不合格者名簿に登載された者としている。
不合格者は,個別にではなく,名簿に登載された者として一括して罷免される。
同様の議題は,69期から77期までの各期の議事録で確認できる。

77期の二回試験の不合格発表は令和7年3月25日(火)に行われており,「第77期司法修習生考試の不合格者及び不合格者の罷免について」(令和7年3月31日付の司法研修所長の通知)は「なお、同不合格者は、3月26日付けで、裁判所法第68条第1項及び司法修習生に関する規則第17条第1項第1号により司法修習生を免ぜられました。」と記載している。

3 修習給付金

平成29年法律第23号は,裁判所法67条の2を「修習給付金の支給」の規定に改め,基本給付金,住居給付金及び移転給付金を設けた。
同法附則2項は「この法律による改正後の裁判所法(以下「新法」という。)第六十七条の二の規定は、この法律の施行前に採用され、この法律の施行後も引き続き修習をする司法修習生については、適用しない。」と定めているから,修習給付金が支給されるのは71期以降である。

裁判所法67条の2第1項は,修習給付金を「その修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間」支給するものと定めている。
そのため,二回試験に不合格となって罷免された後の期間について修習給付金が支給されることはない。

4 考試を欠席した者に対する再試験

71期以降も追試の制度は復活していないが,考試を欠席した者に対する「再試験」が実施されたことがある。
73期二回試験の再試験の日程」(令和2年12月18日付の司法修習生考試委員会委員長の文書)は,令和2年11月5日の司法修習生考試委員会が可決した「令和元年度(第73期)司法修習生考試における新型コロナウイルス感染症等の感染防止対策等について」の2に基づく再試験として,令和3年1月13日(民事弁護),同月14日(民事裁判),同月15日(刑事弁護),同月18日(刑事裁判)及び同月19日(検察)に,司法研修所で実施することを定めている。

再試験は,全科目を受け直すものではない。
75期に関する司法修習生考試委員会の議事内容には,応試者のうち4人について,本試験と同様の感染防止対策を講じた上で「欠席した各科目の再試験」を実施することを提案し,異議なく可決した旨の記載がある。
この点で,再試験は,27期までの追試(第2の1)と同じ仕組みである。

再試験の不合格者も罷免される。
73期二回試験の再試験不合格者に対する罷免の辞令書」(令和3年1月27日付)は,「別添の令和元年度(第73期)司法修習生考試(再試験)不合格者名簿記載の1人」について,裁判所法68条1項及び司法修習生に関する規則17条1項1号により罷免する旨を記載している。
再試験は,73期から75期までについて,応試心得,考試問題及び修習記録の表紙が確認できる(「65期以降の二回試験の日程等」参照)。

再試験も,本試験と同様に最高裁判所裁判官会議へ付議される。
73期については令和3年1月27日付けで再試験の合格者の修習終了と不合格者の罷免が決定され,74期については令和4年5月25日付けで,75期については令和5年1月11日付けで,いずれも再試験の合格者の修習終了が決定されている。
74期及び75期の裁判官会議付議人事関係事項には再試験の合格者名簿しか掲げられておらず,罷免の議題もないから,これらの期の再試験には不合格者がいなかったとみられる。

第7 罷免の辞令書及び司法研修所長の通知

1 罷免の辞令書

二回試験不合格者に対する罷免の辞令書を,次のとおり掲載している。
70期(平成29年12月13日付),
71期(平成30年12月12日付),
71期(画像)
72期(令和元年12月11日付),
73期(令和2年12月16日付),
73期(再試験)(令和3年1月27日付),
74期(令和4年4月20日付),
75期(令和4年12月7日付),
76期(令和5年12月13日付)

いずれも,最高裁判所を任命権者とし,発令内容欄に罷免の根拠条文を記載した1枚の書面である。
77期及び78期の辞令書は掲載していない。

2 司法研修所長の通知

「司法修習生考試の不合格者及び不合格者の罷免について」と題する司法研修所長の通知を,次のとおり掲載している。
71期(9通),
72期(令和元年12月11日付),
73期(令和2年12月16日付。8通10人分),
74期(令和4年4月22日付。4通),
75期(令和4年12月9日付。4通),
76期(令和5年12月14日付。5通),
77期(令和7年3月31日付。7通)

いずれも,不合格者の別添名簿を添えて,不合格者が罷免された日及びその根拠条文を通知するものである。
78期の通知は掲載していない。

第8 二回試験不合格後の再受験

1 再採用を経る必要があること

二回試験に不合格となって罷免された者は,司法修習生の身分を失っているから,そのまま次の期の二回試験を受験することはできない。
考試を再度受験するためには,改めて司法修習生採用選考の申込みをし,司法修習生に再採用される必要がある。

平成29年度(最情)答申第38号(平成29年10月2日答申。諮問は平成29年度(最情)諮問第27号)は,「司法修習生考試に不合格となった者を再び採用する際の,最高裁判所及び司法研修所内部の事務手続が分かる文書(最新版)」の開示申出に対し,最高裁判所事務総長が「司法修習生採用選考審査基準(平成28年6月1日付け)」を対象文書として特定した判断を妥当とした。
同答申の第6の1には,次の記載がある。

 本件開示文書には,司法修習生の採用選考における審査基準が記載されているところ,その記載内容を踏まえて検討すれば,司法修習生であった者が考試を再度受験するために再採用される際には,本件開示文書に基づいて審査が行われるのであり,本件開示文書以外に司法行政文書を作成し,又は取得する必要はないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。そのほか,最高裁判所において本件開示文書以外に本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。

したがって,再受験のための再採用は,特別の内部手続によるものではなく,通常の司法修習生採用選考の枠組みで行われる。

2 司法修習生採用選考審査基準

平成28年6月1日付けの司法修習生採用選考審査基準の記2の⑵は,次のとおり定めていた。

(2) 司法修習生であった者が,次のいずれかに該当すること。
ア 修習態度の著しい不良その他の理由により修習をすることが不相当である者
イ 成績不良(裁判所法(昭和22年法律第59号)第67条第1項の試験の不合格を除く。)その他の理由により修習をすることが困難である者
ウ 裁判所法第67条第1項の試験に連続して3回合格しなかった者(再度司法試験法による司法試験に合格した者を除く。)。ただし,病気その他やむを得ないと認められる事情により,裁判所法第67条第1項の試験の全部又は一部を受験することができなかった場合には,当該試験については,受験回数として数えないものとすることができる。

もっとも,同審査基準はその後改定されており,現行のものは令和7年8月27日付けの司法修習生採用選考審査基準である。
現行の審査基準の記2の⑵は,次のとおりである。

⑵ 司法修習生であった者が、次のいずれかに該当すること。
ア 成績不良(裁判所法(昭和22年法律第59号)第67条第1項の試験の不合格を除く。)により修習をすることが困難である者
イ 修習の態度の著しい不良により、司法修習生たるに適しない者
ウ 裁判所法第67条第1項の試験に連続して3回合格しなかった者(再度司法試験法による司法試験に合格した者を除く。)。ただし、病気その他やむを得ないと認められる事情により、裁判所法第67条第1項の試験の全部又は一部を受験することができなかった場合には、当該試験については、受験回数として数えないものとすることができる。
エ ア又はイに準ずる事由がある者

平成28年版のアとイは,令和7年版ではイとアに入れ替わった上で「その他の理由により」という包括的な文言が削られ,その受け皿としてエが新設された。
これに対し,ウの内容は実質的に変わっていない。
なお,二回試験の不合格は,アの「成績不良」から明文で除かれているから,二回試験に不合格となったこと自体は,直ちに再採用を拒む事由とはならない。

3 再受験の申込手続

再受験のための採用選考の申込方法は,最高裁判所事務総局人事局の「司法修習生採用選考申込み(考試再受験希望者)について」(77期の二回試験不合格者向けの文書)に示されている。
同文書は,かつて司法修習生であった者が考試を再度受験するために再採用されることを希望する場合は,司法研修所を経由して最高裁判所に採用選考の申込みを行うこと,及び選考は司法修習生採用選考審査基準に基づいて行い,書面審査の結果,必要があると認めた場合は面接等を実施することがあることを記載している。

同文書によれば,採用発令日は「考試1日目」である。
提出書類(予定)は,①受験歴申告書,②採用選考申込書並びに③戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本),戸籍の個人事項証明書(戸籍抄本)又は住民票の写しであり,兼業許可申請を行う場合は申請書を同時に提出することとされている。
提出先は司法研修所事務局企画第二課調査係であり,申込受付期間及び申込方法等は最高裁判所ウェブサイトに掲載される。

採用発令日が考試の初日とされている点は,前記答申第38号の第3において苦情申出人が「司法修習生考試に不合格となった者が再び採用される場合,司法修習生考試の初日の日付で採用されるなど独特の手続が存在する。」と主張していた点に対応する。

罷免後に就労先を探す場合は,担当業務,勤務開始日,報酬及び再受験準備のための勤務調整を確認する。既に内定先がある場合も,二回試験合格又は弁護士登録を前提とした条件の有無を確認し,入所時期の延期や資格取得前の補助業務への変更について協議することが考えられる。不合格という事情だけから,内定の維持又は失効を一律に判断すべきではない。

就労を続けながら再受験する場合は,再採用前の就労と,再採用後の兼業許可を分けて確認する。裁判所法67条2項が定める修習専念義務は修習期間中のものであり,前記77期向け案内は,考試1日目の採用発令と,兼業許可申請書の同時提出を案内している。再採用後も勤務を継続する予定であれば,再採用前の勤務が当然にそのまま認められるとは扱わず,対象となる期の案内に従って手続を確認する必要がある。

生活面では,再採用までの収入と支出を月ごとに見積もるとともに,①健康保険の加入先及び扶養認定の可否,②国民年金の加入区分並びに免除・納付猶予の申請,③貸与を受けた資金の返還及び猶予の手続を確認する。既に国民健康保険又は国民年金に加入している場合も,罷免だけで一律に加入手続をやり直すと決めず,就職や扶養関係の変更の有無を加入先に伝えて確認するのが適切である。年金については国民年金の保険料免除・納付猶予・追納を,修習資金貸与金の期限の利益については本記事第9の関連記事を参照されたい。

4 連続して3回合格しなかった場合

審査基準の記2の⑵のウにより,裁判所法67条1項の試験に連続して3回合格しなかった者は,再度司法試験に合格しない限り,司法修習生として採用されない。
この定めは,令和7年8月27日付けの現行審査基準でも維持されている。
ただし,病気その他やむを得ないと認められる事情により試験の全部又は一部を受験することができなかった場合は,その試験を受験回数として数えないものとすることができる。

二回試験に3回落ちた者の人数及びその後の弁護士資格認定制度については「二回試験に3回落ちた人(三振した人)の数」で扱っている。
再受験者の不合格率の推移は「二回試験再受験者の不合格率の推移」で扱っている。

第9 関連記事その他

1 二回試験の不合格を経験した者による記録

新65期の二回試験不合格者が開設した「新65期 二回試験 不合格者備忘録ブログ」は,令和8年8月29日現在,ドメインが失効しており閲覧できない。
同ブログの「あとがき」(インターネットアーカイブの令和3年8月10日保存版)には,次の記載がある。

二回試験に合格する前は、「将来不利益を被るのではないか、弁護士としてやっていけるのだろうか」と不安に思っていたが、今、自信を持って言えることがある。

それは、一度実務に就いたら、二回試験に落ちた事実など本当にどうでもよくなるし、誰も気に留めなくなるということだ。

実務では、出身大学、在学中合格か否か、司法試験の受験回数や順位はまったく意味を有さず、そこには、実力と結果がすべてのシビアな世界が広がっている。

二回試験に落ちて、プライドを失い、お金を失い、仕事を失い、住む場所を失い、婚約者を失い、あらゆる物を失ってどん底から這い上がってきた不合格仲間は本当にタフで、ちょっとやそっとのことでは動じずに笑い飛ばしてしまう。

不幸にも二回試験に不合格となってしまった方にとって、本当につらい1年間だと思うが、自分に与えられた試練だと思って、何とか乗り切って欲しい。心から応援している。

同ブログの「あとがき」は,令和4年1月26日保存版では文体及び一部の文言が改められている。
上記の引用は,令和3年8月10日保存版の記載である。
その他の不合格体験に関するブログは「二回試験の不合格体験に関するブログ」で紹介している。

2 二回試験に関する記事

二回試験の制度及び統計については,次の記事も参照されたい。
二回試験とは―科目,日程,合否の仕組み,不合格後の再受験及び関連記事
二回試験の不合格発表
二回試験の不合格者数の推移等
60期以降の二回試験の不合格者数及び不合格率(再受験者を除く。)
二回試験の科目別不合格者数
二回試験の推定応試者数

3 司法修習生の罷免に関する記事

二回試験の不合格以外の事由による罷免及び罷免後の手続については,次の記事も参照されたい。
司法修習生の罷免
司法修習生の罷免事由別の人数
司法修習生の罷免等に対する不服申立方法
司法修習生の罷免理由等は不開示情報であること
「品位を辱める行状」があったことを理由とする司法修習生の罷免事例及び再採用
71期以降の司法修習生に対する戒告及び修習の停止

出典・参考資料

1 法令

裁判所法(昭和22年法律第59号)12条1項・66条・67条・67条の2・68条並びに附則(平成29年法律第23号による改正に係る経過措置)(e-Gov法令検索)
裁判所法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第50号)及び同法附則(衆議院制定法律)
裁判所法の一部を改正する法律(平成16年12月10日法律第163号)(衆議院制定法律)
裁判所法の一部を改正する法律(平成22年12月3日法律第64号)(衆議院制定法律)
⑤裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)(e-Gov法令検索の裁判所法附則により内容及び経過措置を確認)

2 最高裁判所規則

司法修習生に関する規則(昭和23年8月18日最高裁判所規則第15号)12条・16条・17条・18条
②同規則の被改正沿革(日本法令索引。最終改正は令和7年2月12日最高裁判所規則第3号)
司法修習生に関する規則の一部を改正する規則(令和元年7月9日最高裁判所規則第1号)(官報令和元年7月9日本紙第46号2頁。公布の日から施行)
刑事訴訟規則等の一部を改正する規則(令和7年2月12日最高裁判所規則第3号)13条(官報令和7年2月12日号外第28号7頁。令和7年6月1日施行)
* 同規則は,令和8年8月29日現在,e-Gov法令検索及び裁判所ウェブサイトの規則集のいずれにも収録されていない。本記事は,平成29年8月4日最高裁判所規則第4号による改正後の条文,上記③及び④の官報並びに後記3の罷免の辞令書及び司法研修所長の通知の記載により,罷免の根拠条文を確認している。

3 最高裁判所及び司法研修所の文書

司法修習生採用選考審査基準(令和7年8月27日 最高裁判所)
司法修習生採用選考審査基準(平成28年6月1日 最高裁判所)
平成29年度(最情)答申第38号(平成29年10月2日答申。情報公開・個人情報保護審査委員会)
司法修習生採用選考申込み(考試再受験希望者)について(最高裁判所事務総局人事局。77期の二回試験不合格者向けの文書)
⑤第70期から第76期までの二回試験不合格者に対する罷免の辞令書及び73期の再試験不合格者に対する罷免の辞令書(本文第7の1に掲載)
⑥第71期から第77期までの「司法修習生考試の不合格者及び不合格者の罷免について」と題する司法研修所長の通知(本文第7の2に掲載)
73期二回試験の再試験の日程(令和2年12月18日付の司法修習生考試委員会委員長の文書)
69期司法修習生に対する罷免の辞令書5通(平成28年12月12日付)
司法修習生に対して給与が支給される根拠と裁判所法67条2項の改正の趣旨について(平成10年2月4日付の法務省の文書)
最高裁判所裁判官会議の議事録(平成27年12月分,平成28年12月分,平成29年12月分,平成30年12月分,令和元年12月分,令和2年12月分,令和3年1月分,令和4年4月分,令和4年5月分,令和4年12月分,令和5年1月分,令和5年12月分及び令和7年3月分。議事録本文及び裁判官会議付議人事関係事項。別添文書は除く。)

4 統計及び一覧資料

二回試験等の推移表(1期から70期まで)(応試者数,合格留保者数,不合格者数,落第者数及び落第率並びに*1から*9までの注記)
司法修習生採用者数・考試(二回試験)不合格者数(法務省。最高裁判所公表資料による。同資料の考試不合格者数には,考試を再受験するために司法修習生に再採用された者を含む。)
64期以降の二回試験に関する,合格者及び不合格者の決定に関する議事録(司法修習生考試委員会の議事内容。75期の再試験実施の議決を含む。)

5 国会会議録その他の資料

第75回国会衆議院法務委員会議録第18号(昭和50年4月16日。国立国会図書館国会会議録検索システム)
②落合洋司「留保者へのカンパ問題について−59期修習生諸君へ」(平成18年10月1日。弁護士落合洋司(東京弁護士会)の日々是好日
③「司法修習二回試験の追試廃止は筋違いではないか」(平成18年10月12日。矢を損じて和を陳べる(旧:さんけんブログ)。執筆者名は同ブログ上で確認できない。)
④「新65期 二回試験 不合格者備忘録ブログ」の「あとがき」(インターネットアーカイブの令和3年8月10日保存版。原サイトはドメイン失効により閲覧不可)