第1 総論
1 最高裁判所から開示を受けた元データ
本記事は,最高裁判所に対する情報公開請求により開示を受けた,実務修習,集合修習及び二回試験の成績分布の元データを,期別に整理して掲載するものである。
現在確認できる開示データは,51期ないし60期,61期ないし68期,69期,70期,71期,72期,73期,74期,75期,76期及び77期の各分である。
74期以降のファイルは,「74期二回試験,実務修習及び集合修習の成績」といった名称のPDFとして最高裁判所から開示されている。
開示は二回試験の終了から一定期間を経て行われており,74期から77期までの開示時期は,順に2023年1月,2023年9月,2024年6月及び2025年9月であって,おおむね半年から1年程度の間隔で新しい期のデータが追加されている。
78期の二回試験は令和8年(2026年)3月に実施され,同月中に不合格者が発表されているが,本記事の基準日(2026年8月30日)の時点では,78期の実務修習,集合修習及び二回試験の成績分布データはまだ開示されていない。
開示を受け次第,本記事に追加する予定である。
2 開示に至る経緯
51期から60期までの①司法修習生考試結果集計表及び②司法修習生成績集計表は,平成27年12月1日付の「苦情の申出に係る対応について(通知)」により,最高裁判所に発見してもらったものである。
他方,50期以前の①及び②の各集計表は,既に廃棄されている(平成28年度(最情)第29号(平成28年10月11日答申))。
3 司法修習生考試個人別成績表
司法修習生考試委員会には,司法修習生全員について,実務修習,集合修習及び二回試験の成績を一覧表にまとめた「司法修習生考試個人別成績表」が,資料として配付されている。
4 成績分布を集計した文書を作成していない理由
平成29年8月28日付の最高裁判所事務総長の理由説明書には,次のとおり記載されている。
「司法研修所では,各期の司法修習生の成績分布を示した文書を作成する必要性がないことから,成績を集計,加工して成績分布が分かるような文書を作成することはしていない。」
本記事が掲載する成績分布の一覧は,この理由説明書がいう「成績分布が分かるような文書」を最高裁判所自身が作成していないからこそ,開示された個人別成績表等の元データを基に独自に整理したものである。
5 二回試験の合否決定に関する議事録
二回試験の合格者及び不合格者は,司法修習生考試委員会の議決により決定される。
その議事の内容は,「64期以降の二回試験に関する,合格者及び不合格者の決定に関する議事録」に整理しているので,あわせて参照されたい。
第2 実務修習及び集合修習の成績評価
1 成績分布の推移表
実務修習及び集合修習の成績分布の推移表(51期から70期まで)を掲載している。

2 評価段階
現在,全国の実務修習地における実務修習については,優,良,可,不可の4段階評価となっている。
これに対し,司法研修所における集合修習については,優,良上,良,可,可下,不可の6段階評価となっている。
3 各課程の内容を確認するための関連記事
実務修習のうち検察修習の詳細については,「検察修習」を参照されたい。
分野別実務修習の共通構造及び選択型実務修習との関係は「実務修習とは」に,集合修習の科目及びクラス担任制は「集合修習とは」に,導入修習の実施内容及び新設経緯は「導入修習とは」に,それぞれ整理している。
4 集合修習の成績を左右する要素
司法研修所における集合修習の成績は,専ら起案の成績で決まるものと思われる。
5 導入修習に成績分布が存在しない理由
導入修習に関する成績分布は存在しない。
導入修習は,司法研修所において第68期(平成26年=2014年採用)の司法修習から新たに実施されているものであり,本記事が対象とする51期から67期までについては,導入修習という課程自体が存在しない。
したがって,51期から67期までの部分は,成績分布のデータだけが欠けているのではなく,そもそも評価の対象となる課程がないことになる。
第3 二回試験の成績評価
1 成績分布の推移表
二回試験の成績分布の推移表(51期から70期まで)を掲載している。

2 59期までの二回試験の内容及び評価段階
59期までの二回試験の場合,筆記の教養試験及び口述試験(民事・刑事)があった。
また,59期までの二回試験については,優,良上,良,可,可下,不可の6段階評価であった。
3 21期当時のやり取りの記録
「造反-司法研修所改革の誘因-」(昭和45年6月10日発行)78頁によれば,21期司法修習生クラス委員会と司法研修所との懇談会(昭和44年1月20日開催)において,次のようなやり取りがあったとされている。
「2 採点基準はどういうものか。<教官>優・良上・良・可・可下・不可とつける。可下はクラス何名と決っているわけではなく絶対評価である。」
「3 どういう場合に落第を出すのか。<教官>何とも救いようのない場合である。」
この記録が正確であるとすれば,昭和44年当時(21期)から,既に優・良上・良・可・可下・不可の6段階評価が用いられていたことになる。
4 60期以降の評価段階
現行の60期以降の二回試験については,優,良,可,不可の4段階評価となっている。
第4 関連記事その他
1 大学の単位授与行為と司法審査
大学における授業科目の単位授与(認定)行為は,一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のない限り,司法審査の対象にならない(最高裁昭和52年3月15日判決)。
2 関連記事
① 司法修習生考試委員会委員名簿(65期二回試験以降)
② 司法修習生考試委員会席図(65期二回試験以降)
③ 司法修習生考試担当者名簿(65期二回試験以降)
④ 成績通知申出制度に基づく,司法修習生の成績開示
⑤ 旧司法試験の「丙案」制度
3 二回試験の成績通知の実例
参考として,実際に二回試験の成績通知を受けた修習生自身による,次のX(旧Twitter)投稿を紹介する。
科目ごとに評価が異なり得ること,及び集合修習の起案評価と二回試験の評価が必ずしも一致しないことがうかがえる一例である。
二回試験の成績通知書きたー。
民裁、民弁:良
刑裁、検察、刑弁:優なんだ、全優じゃないんだ!な成績ですが、
集合では、民裁以外は底辺(DやC)の成績をとり、民裁以外の教官全員に面談or相談したものとしては嬉しいです。教官に、感謝!
(司法試験も刑事系は出来が悪く苦手意識がありました)— はたけ (@farmer_lawyer) July 7, 2022
出典
1 裁判例
最高裁判所第三小法廷昭和52年3月15日判決(昭和46年(行ツ)第52号,民集31巻2号234頁,裁判所ウェブサイト)
2 公文書
① 最高裁判所「苦情の申出に係る対応について(通知)」(平成27年12月1日付)
② 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会「情報公開に関する答申(平成28年度)」第29号(平成28年10月11日答申)
③ 最高裁判所事務総長の理由説明書(平成29年8月28日付)
3 文献
「造反-司法研修所改革の誘因-」(昭和45年6月10日発行)78頁
4 山中弁護士ブログの関連記事
① 実務修習及び集合修習の成績分布の推移表(51期から70期まで)
② 二回試験の成績分布の推移表(51期から70期まで)
③ 64期以降の二回試験に関する,合格者及び不合格者の決定に関する議事録
④ 実務修習とは
⑤ 集合修習とは
⑥ 導入修習とは