旧司法試験の「丙案」制度


目次
第1 平成3年の司法試験法改正による「丙案」制度の導入

1 法曹基本問題懇談会(昭和62年4月から昭和63年3月まで)
2 法務大臣官房人事課長試案及びその後の経緯(昭和63年4月から同年12月まで)
3 司法試験制度改革に関する法曹三者協議会(昭和63年12月から平成2年10月まで)
4 法制審議会の答申(平成3年2月)
5 司法試験法の改正(平成3年4月)
6 参考資料
第2 平成8年度から平成13年度までの司法試験
1 法曹養成制度等改革協議会(平成3年6月から平成7年11月まで)
2 「丙案」制度の実施決定(平成7年12月11日)
3 司法試験制度と法曹養成制度の改革に関する法曹三者の協議会(平成8年7月から平成9年10月まで)
4 法曹三者の協議会
5 その後の日弁連決議
第3 平成14年度及び平成15年度の司法試験
1 司法制度改革審議会の意見書(平成13年6月)
2 司法試験管理委員会の決定(平成13年11月)
3 「丙案」制度の廃止
第4 旧司法試験の司法試験合格者数の推移,及び合格枠制における制限枠の推移
1 旧司法試験の合格者数の推移
2 合格枠制における制限枠の推移
第5 昭和39年8月28日付の臨時司法制度調査会意見書
1 昭和39年8月28日付の臨司意見書の記載
2 弁護士会の反対決議
3 臨司意見書が日の目を見たのはごく一部だったこと
第6 関連記事その他

第1 平成3年の司法試験法改正による「丙案」制度の導入
1 法曹基本問題懇談会(昭和62年4月から昭和63年3月まで)
・ 昭和62年4月27日に第1回会合が開催された法曹基本問題懇談会は,昭和63年3月公表の意見において,「当面緊急に必要な改革」として以下の記載をしています。
    司法試験の合格者を当面現行制度の下における修習が可能な範囲内で増加させ,それと併せて,全受験者がなるべく平等な条件の下で受験できるようにすることにより,大学における法学教育を受けた者が長期にわたって受験勉強に専念しなければ合格するのが困難となっている現状を改めるため,受験者が受験できる回数をある程度の範囲内に制限すべきである。

継続受験者の受験回数別・年齢別断念状況(平成元年11月20日配布の,「司法試験制度改革の基本構想」の添付資料)

2 法務大臣官房人事課長試案及びその後の経緯(昭和63年4月から同年12月まで)
(1) 法務省は,法曹基本問題懇談会の意見を受けて,具体的改革案として,昭和63年4月13日,大臣官房人事課長名で「司法試験改革試案」を作成して公表しました。
    その骨子は,①合格者700人程度への増加,②受験回数制限の導入(司法試験第二次試験は,連続した3年以内に3回以内の受験を認める。ただし,司法試験が行われる年の3月31日に満24歳に達していない者の受験のうち2回は,回数制限対象の受験とはみなさない。),③大学推薦制の導入及び④教養選択科目の廃止でした。
(2)ア 法務省の試案に対する大学の意見は,合格者の増加についてはすべての大学が賛成,受験回数制限と教養選択科目の削減については4分の3が賛成,大学推薦性については賛否相半ばするという状況でした。
イ 日弁連は,法務大臣官房人事課長試案について,昭和62年3月に設置された法曹養成問題委員会において検討をするとともに,全国単位弁護士会から意見を求めた結果,昭和63年11月18日の理事会において,日弁連の意見を以下のとおり集約することが承認されました(日弁連新聞1988年12月1日号)。
(法務省人事課長試案に対する意見集約について)
    試案に対する52単位会からの意見及び法曹養成問題委員会の答申を踏まえて集約した結果,当連合会の試案に対する基本的意見は次のとおりである。
一 回数制限は反対する。
二 大学推薦は反対する。
三 試験科目中の教養選択科目廃止は賛成する。
四 増員については,その前提となる諸条件の整備が必要である。
    なお,回数制限とのセットは反対する。
(3) 法務省は,こうした経緯を踏まえて,司法試験改革問題を最高裁,法務省及び日弁連による法曹三者協議会の議題として取り上げることを提案し,昭和63年12月19日の法曹三者協議会から,この問題が協議の議題とされることとなりました。
    また,協議の開始に当たり,法務大臣官房人事課長試案を議論の前提とはせず,改革の必要性から議論すること等が確認されました。
3 司法試験制度改革に関する法曹三者協議会(昭和63年12月から平成2年10月まで)
(1) 昭和63年12月19日に開始した法曹三者の協議は,概ね毎月1回程度開催され,法務省が作成した資料等に基づいて詳細な議論が重ねられ,平成元年6月27日の第7回の協議において最高裁が,同年9月28日の第9回の協議において日弁連が,それぞれ,改革の必要性等についての意見表明を行い,その内容について,同日の協議終了後,法曹三者共同の記者会見が行われました。
(2)ア 司法試験制度改革の基本構想(平成元年11月20日付の法務省の文書)において,少数回受験者の優先枠として以下の三つの案が示されました。
甲案:司法試験第二次試験は,初めて受験した年から5年以内に限って受験できることとする。
乙案:論文式試験及び口述試験の合格者を決定するに当たり,当該試験の合格者数の80%以上に相当する数を初回受験から5年以内の受験者から決定し,その余の合格者は初回受験から6年以上の受験者から決定することとする。
丙案:論文式試験及び口述試験の合格者を決定するに当たり,当該試験の全受験者からその者の受験回数にかかわらず全合格者の70%の合格者を決定し,その余の合格者を初回受験から3年以内の受験者から決定することとする。

(3)ア 基本構想三案につき,受験者の多い大学の意見は,大部分が三案のいずれかの案を支持するものでしたが,特に合格者の多い5校程度の大学は一致して丙案支持であり,丙案以外は反対であると明言する大学もありました(法制審議会司法試験制度部会における法務省説明要旨(「司法試験制度はこう変わる 法曹養成制度改革」(法務大臣官房司法法制調査部編。ジュリスト増刊 基本資料集)(平成3年9月20日発行)38頁)参照)。
イ 日弁連は,平成2年7月25日の法曹三者協議会において,「司法試験制度改革に関する提案」を示し,その中で,合格者700人程度への増加及び教養選択科目の廃止といった司法試験改革を平成4年度司法試験から実施し,平成8年度司法試験の終了後に効果に関する検証を行った上で,多数回受験者の滞留現象や合格者の受験回数,年齢分布などにおいて「より多くの者がより早く合格する」方向での改善効果が見定められず,悪化の傾向が見られたときには,平成9年度司法試験から丙案又はその修正案を実施すべきと提案しました。
    その結果,見直しの余地を残しながらも,最終的には丙案又はその修正案により当面の司法試験制度の改革を図るという点において,法曹三者の意見が一致することとなりました。
(4)ア 司法試験制度改革に関する基本的合意(平成2年10月16日付)において以下のことを決定しました。
・ 法曹三者は,司法試験制度の抜本的改革を実現するために法曹養成制度等改革協議会(仮称)を設置することとする。
・ 合格者は平成3年から600人程度に増加させ,平成5年からは700人程度とする(合格者の増加数は,平成3年から平成7年までの間に合計900人以上となることを目途とする。)。
・ 平成7年の試験において,なお少数回受験者の合格者の大幅増(合格者中3年以内受験者30%以上又は5年以内受験者60%以上など)が実現しなければ,平成8年から合格枠制を実施する。

・ 平成12年の試験終了後に,それまでの検証結果に基づき,その間に行われた試験方法をその後も継続するべきか(丙案が実施されている場合にはこれの廃止も含む),他の方法を採るべきかを協議することとする。
イ 「法曹養成制度等改革協議会」の設置要綱は,平成3年3月4日開催の法曹三者協議会で決定されました。
4 法制審議会の答申(平成3年2月)
・ 法制審議会は,丙案の導入等を内容とする平成2年10月22日付の法務大臣の諮問に対し,平成3年2月4日,諮問に係る改正は相当であると答申しました(「法制審議会答申(平成3年2月4日付)及びその関係資料(旧司法試験の「丙案」制度の導入)」参照)。
5 司法試験法の改正(平成3年4月)
(1)ア 司法試験法の一部を改正する法律(平成3年4月23日法律第34号)による改正後の司法試験法6条2項及び3項は教養選択科目を削除したものとなり,8条2項は受験回数が3回以内の受験者について論文式試験で特別枠を設けて合格させるという「丙案」制度を定めました。
イ 司法試験第二次試験の論文式による試験の合格者の決定方法に関する規則(平成3年7月4日司法試験管理委員会規則第1号)によって,「丙案」制度の詳細が定められました。
ウ 平成4年度以降の司法試験の論文式試験及び口述試験は,教養選択科目(政治学,経済原論,財政学,会計学,心理学,経済政策又は社会政策のうちの1科目)を含まないものとなりました。
(2) 司法試験法の一部を改正する法律(平成3年4月23日法律第34号)の法律案審議資料1/2及び2/2を掲載しています。
(3) 9期の中坊公平日弁連会長は,参考人として出席した平成3年4月16日の参議院法務委員会において以下の発言をしています。
 まず、丙案というものは受験回数によって合否を差別する制度でありまして、司法試験法に定めております判断基準である学識、応用能力に関係ない要素によって合否が決定されることを意味いたしております。この意味におきまして、司法試験法の根本的な理念である平等の原則にもまた反することは明らかであります。
 現在の採点からいたしますと、四回以上の受験者は四回以上というだけで五百一番目の者が不合格となり、逆に三回以内の者は一千八百番目であっても合格するという異様な状態をつくり出すことになるわけであります。しかも、このような合格者に二つの群れをつくること、特にその一群れにげた履きの合格者が存することは、広い意味では法曹全体にとって一種の分裂を招くことになり、外部からも法曹全体に対する信用を損なうおそれがあり、統一修習、法曹一元の立場からも危惧される点が多いと考えております。このため、日弁連におきまして積極的に丙案に賛成する会員は極めて少ないのであります。しかしながら日弁連といたしましては、先ほどから申し上げておりますように、多数回受験者の滞留現象を緊急に改善することは極めて重要であるという視点から、やむを得ず丙案の導入も考えなければならないと考え、基本合意に踏み切ったものであります。
 日弁連といたしましては、増員と運用改善によって丙案を実現しないで済むことを希望いたしております。また、改革協においてより抜本的な改革案が提案、実行されることによって、もっとすっきりした形態のものができ、多数回受験の滞留現象の解消に役立つことを希望しておるものであります。
6 参考資料
・ 「司法試験制度はこう変わる 法曹養成制度改革」(法務大臣官房司法法制調査部編。ジュリスト増刊 基本資料集)(平成3年9月20日発行)が非常に参考になります。


第2 平成8年度から平成13年度までの司法試験
1 法曹養成制度等改革協議会(平成3年6月から平成7年11月まで)
・ 平成3年6月25日に開始した法曹養成制度等改革協議会は,平成7年11月13日付の意見書において以下の意見を表明しています(司法制度改革審議会の配布資料一覧の「政府関係等」参照)。
① 司法の機能を充実し、国民の法的ニーズに応えるため、法曹人口を増加させる必要があり、そのために、司法試験合格者を増加させる措置を採るべきであるとする点で意見の一致を見た。
② 合格者の具体的な増員数及びこれに伴う司法修習制度の具体的な改革案に関しては、意見の一致を見ることができなかったが、合格者については、法曹人口を大幅に増加させるため、中期的には年間1,500人程度を目標としてその増加を図り、かつ、修習期間を大幅に短縮することを骨子とする改革を行い、これに伴って、民事訴訟法及び刑事訴訟法の両訴訟法を司法試験制度の改革を行い、また、法曹資格取得後の継続教育の充実を図るべきであるとする意見が多数を占めた。
    これに対し、司法試験合格者を1,000人程度に増加させるべきであるとする限度で多数意見と一致しつつ、法曹人口の増加は、裁判官・検察官の増員及び法律扶助制度等の「司法基盤」の整備と一体のものとして行うべきであるという観点から、それ以上の増員については、上記の点に関する具体的な計画を策定し、司法試験合格者の増員を検討していくべきである、また、修習期間の短縮には反対であるとする少数意見が述べられた。
③ 今後、法曹三者は、本意見書の趣旨を尊重して、真に国民的見地にたった司法試験制度及び法曹養成制度の抜本的改革を実現させるため、直ちに協議を行い、速やかに具体的な方策を採らなければならない。
2 「丙案」制度の実施決定(平成7年12月11日)
・ 司法試験管理委員会は,平成7年12月11日,最高裁及び法務省からの二委員の賛成,日弁連からの委員の反対の多数決により,平成8年度司法試験から,受験回数が3回以内の受験者について論文式試験で特別枠(約200人)を設けて合格させるという「丙案」制度の実施を決定しました(「司法試験「丙案」の廃止を求める決議」(平成12年10月18日付)参照)。
3 司法試験制度と法曹養成制度の改革に関する法曹三者の協議会(平成8年7月から平成9年10月まで)
(1) 平成8年7月にスタートした法曹三者の協議会は,平成9年10月28日付の司法試験制度と法曹養成制度の改革に関し,当面採るべき方策及び今後協議すべき事項等について法曹三者による合意において以下の合意に達しました。
(司法試験合格者の増加について)
・ 司法試験合格者を,平成10年度(山中注:平成11年4月開始の53期司法修習につながるもの)は800人程度に増加させ,平成11年度から年間1,000人程度に増加させる。
(司法修習制度について)
・ 修習期間を1年6か月とし,前期修習を3か月間,実務修習を12か月間,後期修習を3か月間行う。
・ 新たな司法修習制度は,平成11年度に始まる司法修習(山中注:平成11年4月開始の53期司法修習)から実施する。
(司法試験制度について)
・ 司法試験第二次試験のうち論文式試験の科目については,憲法,民法,商法及び刑法の4科目に加え,民事訴訟法及び刑事訴訟法を必須科目とするとともに,法律選択科目を廃止する。
    同口述試験の科目については,論文式試験の科目のうち商法を除く5科目とする。
・ 新たな司法試験制度は,平成12年度の司法試験第二次試験(山中注:平成13年4月開始の55期司法修習につながるもの)から実施する。

・ 法曹三者は,司法試験第二次試験のうちの論文式試験の合格者の決定方法について,日弁連が,平成8年度及び9年度の論文式試験の結果を見ると,短期間の受験での合格者が著しく増加するなど相当の改善効果が現れていることなどにかんがみ,遅くとも平成13年度の司法試験においては合格枠制を廃止すべきであると強く提言したことを受けて,今後の司法試験の結果及び司法試験をめぐる動向等を踏まえつつ,同提言も含め,法曹の選抜及び養成の在り方について,広く,かつ,真摯に検討するため,速やかに協議を開始する。
(2) 司法試験法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第48号)による改正後の司法試験法6条2項及び3項に基づき,平成12年度以降の司法試験では,法律選択科目(行政法,破産法,労働法,国際公法,国際私法及び刑事政策)が廃止され,民事訴訟法及び刑事訴訟法が必修化され,商法の口述試験が廃止されました。
4 法曹三者の協議会
(1) 法曹三者の協議会は,昭和45年5月13日の参議院法務委員会の付帯決議(今後,司法制度の改正にあたっては,法曹三者(裁判所,法務省,弁護士会)の意見を一致させて実施するように努めなければならない。)等に基づき,昭和50年から平成3年までの間に164回開催され,平成8年から平成9年までの間に20回行われました(司法政策決定過程における日弁連のスタンスとその特徴-1990年以降を中心に-2頁参照)。
(2) 平成8年に自民党に設置された司法制度特別調査会は,司法制度に関する事項が三者協議を中心 に決定されてきたあ り方に疑問を呈し,同年6月に「21世紀の司法の確かな指針」と題する報告により司法制度審議会(仮称)の設置を提言し,司法制度改革の抜本的な検討を政府に求めました。
(3) 司法制度改革審議会設置法(平成11年6月9日法律第68号)に基づき平成11年7月27日に司法制度改革審議会が内閣に設置されてからは政府主導で司法制度改革が進められるようになりましたから,従来のような法曹三者の協議会は開催されなくなりました。
5 その後の日弁連決議
(1) 日弁連HPの「司法試験「丙案」の廃止を求める決議」(平成12年10月18日付)には以下の記載があります。
    上記三者合意(山中注:平成9年10月28日付の法曹三者の合意のこと。)に基づき、1998年10月15日、法曹三者による「法曹の選抜及び養成の在り方に関する検討会」が設置され、遅くとも2000年末までに結論を得ることを目指し(設置要綱)、丙案の存廃問題に関する協議が続けられている。同検討会では、司法試験結果の分析、丙案導入の立法事実の解消の有無、丙案を廃止した場合の将来予測等につき協議を重ねてきているが、状況は予断を許さない。法務省は、1999年11月4日の検討会において、「現時点で平成13年度からの合格枠制廃止という結論には至らない」旨の意見を述べており、また、仮に丙案廃止について合意が成立したとしても実際の廃止のためには少なくとも1年以上の周知期間が必要という立場をとっていることなどからみて、同検討会において、「遅くとも平成12年度試験をもって丙案を廃止する」という当連合会の方針を実現することは極めて厳しい情勢にある。
(2) 日弁連HPの「法曹人口、法曹養成制度並びに審議会への要望に関する決議」(平成12年11月1日付)には以下の記載があります(臨時総会決議の日付は平成6年12月21日,平成7年11月2日及び平成9年10月15日です。)。
    新規法曹の数が法曹三者の合意となったのは、1990年(平成2年)の「司法試験制度改革に関する基本的合意」において、丙案実施のための5年の検証期間中に合格者数を年間700人程度まで漸増させるとされたときからである。以後、司法試験合格者数は法曹三者で決定していくことを前提として、日弁連では、1994年(平成6年)の臨時総会で「当面の司法試験合格者は今後5年間で800名程度とする」こと、1995年(平成7年)の臨時総会で「平成11年度から1000名程度に増加する」ことを決議した。さらに1997年(平成9年)の臨時総会では、その増員時期を「平成10年から」と1年早め、法曹養成制度等改革協議会が最終答申した多数説の1500人増員については「平成14年10月に3年にわたる1000名増員の影響を調査、検証して決する」ことを決議し、その旨を法曹三者で合意した。

第3 平成14年度及び平成15年度の司法試験
1 司法制度改革審議会の意見書(平成13年6月)
・ 司法制度改革審議会の意見(平成13年6月12日内閣提出,同月15日閣議決定)は,「平成14年の司法試験合格者数を1,200人程度とするなど,現行司法試験合格者数の増加に直ちに着手することとし,平成16年には合格者1,500人を達成することを目指すべきであり,法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら,平成22年ころには新司法試験の合格者数の年間3,000人とすることを目指すべき。」としました。
2 司法試験管理委員会の決定(平成13年11月)
・ 司法試験管理委員会は,平成13年11月9日,以下の趣旨の決定をしました。
① 平成14年度以降の司法試験について,司法制度改革審議会意見を最大限尊重する。
② 平成14年度から,司法試験合格者数が1,200人程度になることが見込まれることから,合格枠制における無制限枠と制限枠の比率を,「7対2」から「9対2」に変更する。
③ 平成16年度以降に行われる司法試験第二次試験の論文式による試験における合格者の決定方法は,司法試験法第8条第2項に規定する方法である,いわゆる合格枠制によらないものとする。
3 「丙案」制度の廃止
・ 「丙案」制度は,平成15年度司法試験を最後に廃止されました。

第4 旧司法試験の合格者数の推移,及び合格枠制における制限枠の推移
1 旧司法試験の合格者数の推移

平成元年度:506人,平成2年度:499人
平成3年度:605人,平成4年度:630人
平成5年度:712人,平成6年度:740人,平成7年度:738人
(合格枠制(「丙案」制度)の開始)
平成8年度:734人,平成9年度:746人,平成10年度:812人
平成11年度:1000人,平成12年度:994人,平成13年度:990人
平成14年度:1183人,平成15年度:1170人
(合格枠制(「丙案」制度)の終了)
平成16年度:1483人,平成17年度:1464人
平成18年度:549人,平成19年度:248人,平成20年度:144人,平成21年度:92人,平成22年度:59人
2 合格枠制における制限枠の推移
・ 合格枠制における制限枠は,平成8年度ないし平成10年度(51期ないし53期)については2/7であり,平成11年度ないし平成13年度(54期ないし56期)については2/9であり,平成14年度及び平成15年度(57期及び58期)については2/11でした。


第5 昭和39年8月28日付の臨時司法制度調査会意見書
1 昭和39年8月28日付の臨司意見書の記載
(1) 昭和39年8月28日付の臨時司法制度調査会意見書(略称は「臨司意見書」です。)には以下の記載があります。
(102頁の記載)
    司法研修所の教官から、司法修習生の中でも、高年齢者ほど修習効果が上がらず、年少者はこれと逆に能力の伸長の度が大きいことが指摘されている。
(105頁の記載)
    現行司法試験制度の有するこれらの欠陥及びその原因にかんがみ、将来性に富む優秀な者を多数法曹に迎
え入れるためには、さかのぼつて、大学における法学教育について検討を加えるほか、司法試験の性格を改めるべきかどうか、試験方法等に改善を加えるべきかどうか、受験回数又は受験年齢の制限を行うべきかどうか、さらには司法試験の管理運営にいかなる改善を加えるべきか等の諸点について検討を加え、早急に適切な方策を樹立する必要がある。

(110頁ないし112頁の記載)
(受験回数又は年齢の制限)
    優秀な素質のある者を若年層から多数合格させるためには、試験方法の改善のほかに、司法試験を受験することができる回数を適当に制限し、あるいは受験することができる年齢を制限するという手段も、諸外国の例に見るように、また、人事院の実施する国家公務員採用上級試験においてその受験年齢の上限を三四歳程度に制限している例に見るように、当然考えられるところであり、当調査会は、この点についても検討を加えた。
審議の過程においては、(イ)司法試験の合絡者の半数以上は弁護士になるのであるから、必ずしも高年齢層を排斥する必要はなく、したがって、年齢又は回数について制限することは適当ではなく、また、必要もないとする意具(ロ)「何回も繰り返し、また、相当の年齢に達しても受験しようという人にとって希望をもたせる必要もあるので、制限を行なうことは反対である。もし、制限するとすれば、回数は一〇回程度、年齢ならば、三四、五歳程度にとどめるべきである。また、すでに述べたとおりの改善を試験方法等について行なえば、制限を必要としない事態になることが予想される。」との意見、(ハ)公務員となる者はともかく、弁護士となろうとする者に対してあまりきびしい制限をすることは、職業選択の自由にも関係する人権問題であるとの意見等の反対意見もあったが、これに対しては、(イ)無制限に放置すると、見込みのない者が何回も受験する事態を招きやすく、本人のためにもならないから、回数を五回位に制限すべきであるとの意見、(ロ)弁談士全体の質の向上という見地から見ても、できるだけ若い将来性のある者が弁護士となることが望ましいとする意見、(ハ)「法曹として必要な適正な価値判断を伴つた論理的思考力は、本質的には、その人の素質によるところが大きいから、何回も受験しなければ合格しない人ほ、素質的に法曹に適していないとみなしてもよいのでばないか。その意味で受験回数を制限することが必要であり、その限度は三回位が適当である。」との意見、(ニ)司法修習生は国費で養成しており、その意味でも、弁護士となろうとする者は、裁判官又は検察官となろうとする者と同様、公的な性勝をもつものであるから、年齢等についても前者と同様に制限されてしかるべきであるとの意見、(ホ)年齢は三四歳以下で受験回数は五回までとすべきであるとの意見、(ヘ)最初の受験の時から五年間に限り、かつ、その受験をも含めて三回に限って受験しうることとすべきであるとの意見等、何らかの回数又は年齢の制限を考慮すべきであるとする意見が強かった。
この問題は、反対意見にも見られるとおり、多年勉学して受験しようとする者を排除し、回数を重ねて実力を備えるに至つた者を不適格とすることの当否、弁護士となろうとする者についての職業選択の自由と弁護士の公的性格から来る制約との関連等の困難な問題点を含んでおり、また、回数制限については、実施に際して受験者の照合等に関する技術上の難点が予想される等の点があるので、今直ちに結論は下しがたく、前記の反対意見をも考慮に入れつつ、関係当局において早急に検討する必要があるということに意見の一致を見た。

(2) 臨時司法制度調査会意見書105頁がいうところの「現行司法試験制度の有するこれらの欠陥及びその原因」は概要,①大学卒業見込者の合格率がそれ以外の者の合格率を相当程度下回っているという欠陥,並びに②その原因は主として,大学における法学教育が学制改革により根本的に変革されたのに対し,司法試験が旧来のままであることから,両者の間に間隙(かんげき)が生じていること,及び司法試験が知識の試験に傾き,能力,将来性,教養等の面の考査をおろそかにしがちであることです。
2 弁護士会の反対決議
・ 昭和42年5月27日の日弁連定期総会決議「司法制度の確立に関する宣言」には以下の記載があります。
    われわれは、昭和39年12月19日臨時総会において、簡易裁判所判事及び副検事に対する法曹資格及び弁護士資格を付与すること、簡易裁判所の事物管轄の拡張をすることに反対を決議いたしまして、さらにその後においても、高等裁判所支部の廃止や司法試験法の改正等に反対の決議を行うのみならず、これらの施策の実施を阻止するために一大運動を展開してきたことは皆様ご承知の通りであります。
3 臨司意見書が日の目を見たのはごく一部だったこと
・ 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)56頁には以下の記載があります。
    臨司では司法試験改革や裁判所の適正配置問題など、今日法曹界で論議されている司法制度の問題点があらかた取り上げられた。ただ、結果的に日の目を見たものはごく一部だったところから、「裁判所がいいところだけをつまみ食いした」などとの批判もあったが、毎回ほとんど全委員の出席を得て会議の議論は終始真剣そのものだったと思う。

第6 関連記事その他
1(1) 昭和62年4月から平成14年12月までの経緯の骨子については,法務省HPの「司法試験制度等改革の経緯 [公表済み]」が分かりやすいです。
(2) 明治9年開始の代言人試験から平成23年3月までの経緯の詳細については,法務省HPの「法曹の養成に関するフォーラム」に載ってある「新しい法曹養成制度の導入経緯と現状について(平成24年4月13日更新)」(339頁あります。)が参考になります。
2(1) 司法修習生の修習期でいえば,51期から58期までの間,「丙案」制度が実施されていました。
(2) 受験回数3回以内の合格者については,「丙案」制度があったから合格できた可能性があることにかんがみ,「丙案貴族」といわれることがありました。
3 法務省HPの「第二次試験試験問題・試験結果等」に,平成8年度ないし平成22年度の第二次試験短答式試験問題平成14年度ないし平成22年度の論文式試験問題・出題趣旨平成15年度ないし平成23年度の口述試験における問題のテーマが載っています。
4(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 司法試験の得点別人員調(昭和58年度から平成10年度まで)
・ 司法試験の得点別人員調(平成11年度から平成22年度まで)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 旧司法試験の成績分布及び成績開示
・ 旧司法試験の成績開示範囲の拡大
・ 司法修習生の給費制及び修習手当
・ 司法修習生の修習資金貸与制
・ 司法修習生の修習給付金及び修習専念資金
・ 給費制を廃止した平成16年の裁判所法改正の経緯
・ 平成31年3月提出の,法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律案の説明資料


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