第1 記事の対象と結論
1 記事の対象
2 結論
第2 現行法における出頭拒否と通常逮捕
1 在宅被疑者の出頭拒否及び退去の自由
2 通常逮捕の理由及び必要性
3 軽微犯罪に関する追加要件
第3 最高裁判所事務総局資料の記載
1 資料の正式名称及び性格
2 4頁~5頁の内容
3 回数による機械的運用の否定
第4 不出頭と逮捕の必要性をめぐる三つの見解
1 三説の内容
2 三説に共通する判断の限界
第5 最高裁平成10年9月7日判決
第1 記事の対象と結論
1 記事の対象
2 結論
第2 現行法における出頭拒否と通常逮捕
1 在宅被疑者の出頭拒否及び退去の自由
2 通常逮捕の理由及び必要性
3 軽微犯罪に関する追加要件
第3 最高裁判所事務総局資料の記載
1 資料の正式名称及び性格
2 4頁~5頁の内容
3 回数による機械的運用の否定
第4 不出頭と逮捕の必要性をめぐる三つの見解
1 三説の内容
2 三説に共通する判断の限界
第5 最高裁平成10年9月7日判決
第1 異議の申立ての対象
1 対象となる上告棄却決定
2 判決訂正申立て及び特別抗告との違い
第2 3日間の申立期間
1 送達を受けた場合の数え方
2 被告人と弁護人の送達日が異なる場合
3 法廷で決定が宣告された場合
第3 申立書と申立理由
1 書面を最高裁判所へ提出すること
2 決定の内容の誤りを具体的に示すこと
3 短期間で確認すべき事項
第4 期間の伸長,申立権の回復及び執行停止
1 期間の伸長
2 申立権の回復
3 決定の確定と執行停止
第5 異議が認められた例と近年の棄却例
目次
第1 身上調査照会の概要第2 身上調査照会の法的根拠1 刑事訴訟法197条2項2 個人情報保護法との関係第3 身上調査照会と前科照会の違い第4 『犯歴事務解説』五訂版が説明する取扱い1 照会書の作成2 現本籍及び旧本籍の回答欄3 回答欄の記載及び添付書類第5 身上調査照会書及び回答書の書式第6 身上調査照会書が現れた裁判例1 最高裁昭和42年6月20日判決2 死刑執行関係文書の情報公開事件第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令及び訓令2 所管行政機関の解説及び運用資料3 文献4 裁判例
第1 身上調査照会の概要
身上調査照会は検察庁が市区町村に行う照会であり,事件関係者本人への来庁依頼とは異なる。本人が呼出しを受けた場合の準備は検察庁から呼び出されたら,機関の役割は検察庁とはを参照されたい。
本記事は,令和8年9月6日現在の法令及び公表資料に基づき,検察庁が市区町村長に対して行う身上調査照会を説明するものである。
身上調査照会は,検察官又は検察事務官が,被疑者等の本籍,氏名,生年月日,住所及び家族関係等の身分関係を確認するため,市区町村長に書面で照会する手続である。
現行の犯歴事務規程(昭和59年4月26日法務省刑総訓第329号)は,令和7年5月29日法務省刑総訓第10号による改正後のものであり,同年6月1日から施行されている。
同規程14条は,検察官又は検察事務官が市区町村長に対して書面で身分関係を照会する場合,身上調査照会書(様式第41号)によるものとしている。
第2 身上調査照会の法的根拠
1 刑事訴訟法197条2項
刑事訴訟法197条2項は,捜査について,公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができると定めている。
身上調査照会書の様式にも,同項に基づく照会であることが記載されている。
刑事訴訟法197条2項に基づく照会について,個人情報保護委員会のFAQは,照会先に回答すべき義務を課すものと解した上で,一般に回答すべきであるとしている。
また,警察庁の通達は,警察による同項の照会について,照会先は報告すべき義務を負うものと解されているが,その履行を強制する方法はないとしている。
2 個人情報保護法との関係
個人情報保護委員会のFAQは,警察や検察等の捜査機関による刑事訴訟法197条2項の照会に応じた個人情報の提供は,個人情報保護法27条1項1号の「法令に基づく場合」に当たり,本人の同意を必要としないと説明している。
このFAQは民間事業者による第三者提供を対象とするものであるが,行政機関等についても,個人情報保護法69条1項が法令に基づく場合を利用目的以外の提供の禁止から除いている。
刑事訴訟法197条2項が報告を求めることのできる事項は,捜査に必要な事項である。
警察による同項の照会について,警察庁は,必要性を十分に検討し,照会事項を必要最小限度にとどめるとともに,照会先が保有する事実の報告を求める範囲を超えて,新たな調査又は専門的判断を求めないよう通知している。
第3 身上調査照会と前科照会の違い
身上調査照会は市区町村長に身分関係を照会する手続であり,他の検察庁に前科の有無を照会する手続ではない。
現行の犯歴事務規程13条は,他の検察庁に前科の有無を照会し,前科調書を作成する「前科照会」を別に定めている。
手続照会先主な確認事項犯歴事務規程身上調査照会市区町村長本籍,氏名,生年月日,住所,家族関係等の身分関係14条・様式第41号前科照会他の検察庁の犯歴担当事務官特定の者が有罪の裁判を受け,これが確定した事実の有無13条・様式第35号
前科照会及び前科調書については,「前科調書」の記事を参照されたい。
第4 『犯歴事務解説』五訂版が説明する取扱い
法務総合研究所『犯歴事務解説』五訂版は,平成30年3月5日に発行された資料であり,102頁~103頁に「第3 身上照会(規程第14条)」の説明がある。
以下は同書が説明する平成30年当時の取扱いであり,現在の個別的な運用又は書式の各欄がすべて同一であることまでを示すものではない。
1 照会書の作成
同書によれば,身上調査照会書には「戸籍筆頭者氏名」の文字が印刷されており,戸籍筆頭者が判明しているときは,その氏名を記載する必要がある。
市区町村が戸籍筆頭者の氏名によって戸籍簿を調査するためであり,照会庁の所在地及び郵便番号も記載するものとされている。
2 現本籍及び旧本籍の回答欄
回答書の本籍欄は,「現」と「旧」の二欄に分かれている。
同書は,転籍の事実が犯歴を保管する検察庁に把握されていない場合,新本籍地を管轄する検察庁への前科照会だけでは,転籍前の前科が回答されないおそれがあるため,旧本籍を確認できるようにしていると説明している。
旧本籍地を管轄する地方検察庁から前科がある旨の回答を得た場合には,同地方検察庁に対し,犯歴事務規程11条1項に基づく戸籍事項訂正の通報を行うものと説明されている。
現行の犯歴事務規程11条1項にも,犯歴票等に記載された戸籍事項に訂正すべき事項があると認められる場合の通報に関する規定がある。
3 回答欄の記載及び添付書類
同書は,市区町村の事務負担を軽減するため,「破産の有無」欄以外の記入に代えて,「戸籍簿及び住民登録の通知に基づく家族」欄に別紙のとおりである旨を記載し,認証文を省略した戸籍謄本及び戸籍の附票の写しを添付する取扱いを紹介している。
また,家族関係を照会する必要がない場合には,身上調査照会書の「家族」欄を削除した上で照会するものとしている。
前者は昭和44年5月20日刑事(総)第405号刑事局総務課長通達,後者は昭和49年5月1日刑総第265号刑事局総務課長通達に基づく取扱いとして同書に掲載されている。
本記事の調査では各通達の原本及び令和8年9月6日現在の有効性を確認できなかったため,これらは同書に記載された平成30年当時の取扱いとして紹介するものである。
第5 身上調査照会書及び回答書の書式
次の画像は,身上調査照会書及び回答書の参考画像である。
画像自体の作成時点及び出典は確認できなかったため,現行の書式見本であるとは扱わない。
現行の犯歴事務規程14条が様式第41号を指定していることのみ確認できる。
身上調査照会書の参考画像(作成時点・出典未確認)
第1 この記事が扱う刑の消滅第2 刑法34条の2の要件1 10年,5年及び2年の区分2 旧懲役,旧禁錮及び旧拘留への適用第3 消滅期間の起算日1 拘禁刑及び労役場留置2 罰金の納付3 執行の免除と刑の免除の言渡し第4 期間中に別の刑が確定した場合1 後の刑が効力を有している場合2 後の刑の言渡し自体が効力を失った場合第5 執行猶予と刑の消滅1 刑の全部の執行猶予2 刑の一部の執行猶予第6 刑の言渡しが効力を失うことの意味1 法的効果と過去の事実の区別2 犯歴記録等との区別第7 旧研修教材の計算例1 教材の位置付け2 計算例が扱う場面第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政資料4 文献
第1 この記事が扱う刑の消滅
この記事は,刑法34条の2により,刑の言渡し又は刑の免除の言渡しが効力を失う時期を整理するものである。
令和8年9月6日現在の法令を基準とし,令和7年6月1日に拘禁刑が導入された後の条文に基づいて説明する。
刑法34条の2は,実刑の執行を終えた場合等について,その後の一定期間を問題とする規定である。
刑の全部の執行猶予を取り消されることなく猶予期間を経過した場合は,刑法27条によって刑の言渡しが効力を失うため,同条とは区別する必要がある。
「刑の消滅」は,有罪判決を受けたという過去の事実や,その事実に関する記録がすべて消去されることを意味しない。
刑の消滅後の前科情報,犯罪人名簿,犯罪経歴証明書,資格制限,就職及びインターネット上の記事の取扱いについては,前科抹消があった場合の取扱い(AIリライト)で説明している。
第2 刑法34条の2の要件
1 10年,5年及び2年の区分
刑法34条の2が定める期間は,対象となる刑によって次のように異なる。
いずれも,期間中に罰金以上の刑に処せられないことが必要である。
刑の言渡し等が効力を失うまでの期間
対象
起算の基礎
必要な期間
拘禁刑以上の刑
刑の執行を終わり,又は執行の免除を得た時
10年
罰金以下の刑
刑の執行を終わり,又は執行の免除を得た時
5年
刑の免除の言渡し
その裁判が確定した時
2年
第1 前科調書の意味1 前科照会書と前科調書の違い2 現行の前科調書は5様式であること3 平成30年版解説の位置付け第2 前科調書の作成及び記載に関する注意点1 本人の同一性及び記載内容の確認2 旧解説が挙げる主な記載事項3 署名押印,契印及び訂正4 前科不見当という回答の読み方第3 平成30年当時の参考様式画像第4 刑の一部の執行猶予と前科調書1 現行刑法27条の72 令和7年6月1日前後の言渡しを区別すること3 旧解説における前科調書の読み方第5 刑事裁判における証拠能力及び利用の限界1 前科調書の証拠能力2 前科を犯人性の立証に用いる場合の限界第6 前科情報の照会,証拠開示及び記録閲覧第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令・規程2 裁判例3 行政機関の運用資料及び文献
第1 前科調書の意味
1 前科照会書と前科調書の違い
前科調書は,特定の者が有罪の確定裁判を受けた事実について,検察庁の犯歴担当事務官が照会結果を報告するための書面である。
令和8年9月6日現在の取扱いは,犯歴事務規程(昭和59年4月26日法務省刑総訓第329号。最終改正は令和7年5月29日法務省刑総訓第10号であり,同年6月1日に施行された。)に定められている。
同規程13条1項は,検察官又は検察事務官が,他の検察庁の犯歴担当事務官に対して有罪の確定裁判の有無を照会するときは,電子計算機又は前科照会書(様式第35号)を利用することを原則としている。
これに対し,同条2項の前科調書は,照会を受けた犯歴担当事務官が調査結果を報告するための書面である。
したがって,前科照会書は照会に用いる書面であり,前科調書は照会に対する報告書である。
同条の手続は検察庁の犯歴事務に関するものであり,前科調書は,本人又は民間事業者が一般的な証明書として請求する書面ではない。
2 現行の前科調書は5様式であること
犯歴事務規程13条2項が定める現行の前科調書は,次の5様式である。
① 前科調書(甲)(様式第37号)
② 前科調書(道交)(様式第37号の2)
③ 前科調書(乙)(様式第38号)
④ 前科調書(丙)(様式第39号)
⑤ 前科調書(丁)(様式第40号)
平成30年3月5日発行の『犯歴事務解説 五訂版』95頁~102頁は,当時の甲,乙,丙及び丁という4様式を前提として,甲を電算処理対象犯歴,乙を道交犯歴以外の非電算処理対象犯歴,丙を道交犯歴,丁を犯歴票の写しを添付する場合の様式と説明していた。
現行規程には前科調書(道交)が独立して追加されているため,この旧資料の4区分を現在の様式へそのまま当てはめることはできない。
3 平成30年版解説の位置付け
『犯歴事務解説 五訂版』を掲載した記事の95頁~102頁には,前科調書の作成方法,記載事項及び刑の一部の執行猶予がある場合の読み方がまとめられている。
同資料は,当時の検察実務を知るための資料であるが,現行制度を確認するときは,最新の犯歴事務規程及び現行法令を優先する必要がある。
第2 前科調書の作成及び記載に関する注意点
1 本人の同一性及び記載内容の確認
『犯歴事務解説 五訂版』は,前科調書を作成するときは,電子計算機の出力又は犯歴票等を機械的に転記するのではなく,内容の誤り及び記載事項間の矛盾を点検すべきものとしている。
特に,氏名,生年月日及び本籍地は本人を特定するための基本的な事項であり,照会対象者との同一性を確認する必要があると説明している。
同資料によれば,前科調書には,原則として照会対象者に係る有罪の確定裁判を記載する一方,執行猶予取消請求のための照会など,照会目的によって必要な確定裁判だけを記載する場合がある。
前科調書の記載範囲は,照会の目的及び当時の運用を確認して判断すべきものである。
2 旧解説が挙げる主な記載事項
『犯歴事務解説 五訂版』は,旧様式の作成上の注意として,次の事項を挙げている。
① 氏名,生年月日及び本籍又は国籍を正確に記載すること
目次
現行法の要点―百日裁判,当選無効及び連座制訴訟
第1 百日裁判事件(平成13年度執務資料)
第2 組織的選挙運動管理者1 連座制2 裁判例
第3 関連記事その他
現行法の要点―百日裁判,当選無効及び連座制訴訟
公職選挙法の「百日裁判」には,選挙犯罪の刑事事件についての253条の2と,選挙・当選の効力及び連座制に関する争訟についての213条があります。いずれも事件を受理した日から100日以内の判決を目指しますが,刑事事件と行政事件の手続を分けて確認する必要があります。100日以内という規定は判決の努力義務であり,100日を超えたことだけで判決が当然に無効となるものではありません。
当選人自身が所定の選挙犯罪で刑に処せられた場合の当選無効は251条によります。他人の犯罪による連座制とは区別され,公職選挙法違反の有罪判決がすべて例外なく当選無効をもたらすわけでもありません。
連座制の手続も一つではありません。210条1項の所定の場合は,候補者であった者が検察官を被告として確認訴訟を提起します。原則として254条の2第1項の通知を受けた日から30日以内ですが,後日の当選告示についての例外があります。211条の所定の場合は,検察官が候補者等を被告として提訴し,原則として対象の選挙犯罪の裁判確定の日から30日以内です。210条2項にも検察官が訴える場合があり,当選無効等の効果発生時点は251条の5で確認します。
免責の範囲にも違いがあります。251条の2第4項は,立候補禁止と比例代表の当選無効の波及効についての免責であり,当該選挙の当選無効まで一律に免れる制度ではありません。一方,組織的選挙運動管理者等に関する251条の3第2項では,おとり・寝返り,相当の注意を怠らなかった場合に,当選無効を含む同条1項の効果を生じさせないとされています。
以下の平成13年度執務資料と平成17年版犯罪白書は,当時の制度を説明する資料として掲載しています。引用中の「禁錮」等の旧刑名と,現行条文の「拘禁刑」を区別し,施行前の行為については改正法の経過措置も確認してください。現在の法令はe-Govの公職選挙法で確認できます。
票の効力や被選挙権を争う当選無効訴訟との違い,原告・被告,申立期限と出訴期間は,当選無効訴訟とは―選挙無効訴訟との違い,提訴できる人・期限・手続で説明しています。
候補者の演説会や投票所への無料送迎は,公職選挙法221条の買収罪が問題になる具体例です。
苅田町の選挙案内は,個人演説会へのチャーターバス送迎と,投票日に候補者陣営が投票所へバスで送迎する行為を買収の例に挙げています。
ただし,その刑事事件が百日裁判の対象になるかは,253条の2が定める当選人・連座対象者等の身分と対象犯罪を別に確認する必要があり,無料送迎に関する全ての事件に一律に適用されるわけではありません。
第1 百日裁判事件(公職選挙法違反)
・ 「百日裁判事件処理に関する執務資料(平成13年度版 含,百日裁判事件概説)」の「第1部 百日裁判事件概説」には以下の記載があります。
第1 百日裁判の対象
以下の記述は,公刊物等に登載された公職選挙法の解説のうち百日裁判に関する部分を当刑事局(山中注:最高裁判所事務総局刑事局)で取りまとめたものである。
1 百日裁判の意義
公職選挙法(以下,単に「法」という。)は,法253条の2第1項において, 当選人や選挙運動の総括主宰者ら(いわゆる連座対象者)による一定の選挙犯罪事件については,訴訟の判決は,事件を受理した日から百日以内にこれをするように努めなければならないと定めている。これに基づいて行われる裁判を一般に百日裁判と呼んでいる。
百日裁判の対象となる事件は,大きく分けると,
① 当選人の選挙犯罪
② 法251条の2第1項各号に掲げる総括主宰者,出納責任者,地域主宰者,公職の候補者等の親族,公職の候補者等の秘書の選挙犯罪
目次第1 略式手続における過失運転致傷罪の量刑分布1 平成23年から令和4年までの終局区分2 表の見方第2 出典及び集計方法1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である2 表中の記号と人員の数え方3 統計上の「過失運転致傷」の範囲第3 分布から読み取れること第4 量刑分布を読む前提となる法改正1 懲役及び禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された2 略式手続には罰金又は科料しか乗らない第5 関連記事出典
第1 略式手続における過失運転致傷罪の量刑分布
1 平成23年から令和4年までの終局区分
簡易裁判所の略式手続において過失運転致傷罪で終局した人員を,言い渡された罰金の金額区分別に示すと次のとおりである。交通事故の刑事処分としては最も件数が多い類型であり,年間3万人を超える。
年次終局人員罰金総数100万円50万円以上30万円以上20万円以上10万円以上5万円以上3万円以上1万円以上1万円未満略式不能又は不相当その他平成23年53,50153,485547,60718,46811,96415,3632423−16平成24年52,25752,248607,57518,35911,49414,7421422−9平成25年50,40350,392547,53117,71710,96914,10416−−111平成26年47,92447,913617,11916,95910,58413,17811−1−11平成27年46,23946,224567,05716,65810,12312,305241−−15平成28年45,03645,026437,03616,3669,64311,913232−−10平成29年43,49343,480547,14015,9589,32610,966351−−13平成30年41,21441,205416,97915,2458,65910,26416−1−9令和元年39,19139,186486,63714,7058,0319,75951−−5令和2年34,77934,776616,08212,9417,0398,639122−−3令和3年33,94633,931356,07712,6066,7568,441853−15令和4年32,85332,840366,00112,4016,4707,9131314113
2 表の見方
各欄は金額の下限を示しており,「30万円以上」は30万円以上50万円未満を意味する。「100万円」の欄が上限として独立しているのは,過失運転致傷罪の罰金刑の上限が100万円であり(自動車運転死傷処罰法5条),略式命令で科することができる罰金も100万円以下とされているためである(刑事訴訟法461条)。
「略式不能又は不相当その他」は,略式命令をすることができない場合又は相当でない場合として通常の手続に移行したものなどである。終局人員と罰金総数との差はこれによる。
第2 出典及び集計方法
1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である
本記事の数値は,毎年2月1日発行の法曹時報に登載される「○年における刑事事件の概況(上)」の図表から採録したものである。同概況は最高裁判所事務総局刑事局が作成しており,各図表は当該年を末尾とする最近5年間を掲げる形式である。したがって,1冊で5年分を確認することができ,年ごとに号を遡る必要はない。
注意を要するのは,同じ表であっても号ごとに図表番号が変わることである。本記事が採録した図表は次のとおりである。
法曹時報の号(対象年)図表番号頁平成27年分(69巻2号)図表145550頁平成28年分(70巻2号)図表145568頁平成30年分(72巻2号)図表140406頁令和4年分(76巻2号)図表138690頁
概況は概況年の約2年後に登載されるため,本記事が現に確認した最新の号は令和4年分(76巻2号)である。令和5年分及び令和6年分についても既に登載されている可能性が高いが,本記事の執筆時点で現物を確認していないため,数値は令和4年までとした。
なお,各年の数値は後の号で遡及的に訂正されることがある。本記事では,同一年について複数の号に数値がある場合,最も新しい号の数値を採用している。略式手続における過失運転致傷罪の平成28年については,平成28年分(70巻2号568頁)が罰金総数4万5,018人としているのに対し,平成30年分(72巻2号406頁)は4万5,026人としており,後の号で遡及訂正されている。本記事は後者を採った。
2 表中の記号と人員の数え方
略式手続の表には執行猶予率の欄がない。略式命令によっても刑の執行猶予をすることはできるが(刑事訴訟法461条後段),概況の略式手続の表は罰金の金額区分と略式不能等の別だけを掲げている。表中の「−」は,該当する人員がないことを示す。
また,略式手続の表の人員は延べ人員であり,通常第一審の表が実人員であるのと数え方が異なる。同一人が複数の事件で略式命令を受けた場合,略式手続の表では複数回計上される。通常第一審の人員と合算して割合を求めるときは,概算にとどまる。
3 統計上の「過失運転致傷」の範囲
概況の注記によれば,「過失運転致傷」には,平成25年法律第86号による改正前の刑法211条2項の罪(自動車運転過失傷害)が含まれる。自動車運転死傷処罰法は平成25年11月27日に公布され,平成26年5月20日から施行されたから,平成25年以前の数値は改正前の刑法上の罪に係るものである。
第3 分布から読み取れること
第一に,金額の中心は30万円以上50万円未満である。この区分の占める割合は,平成23年が34.5%,平成30年が37.0%,令和4年が37.8%であり,緩やかに上昇している。次いで10万円以上20万円未満が約25%,20万円以上30万円未満が約20%を占める。
第二に,致死との違いが著しい。過失運転致死罪では50万円以上100万円未満が約56%を占め,上限の100万円も毎年数十人にのぼるが,致傷では100万円は年35人から61人にとどまり,罰金総数に占める割合は0.1%前後にすぎない。同じ罰金でも,死亡結果の有無によって金額帯が一段階以上異なる。
第三に,人員が大きく減少している。終局人員は平成23年の5万3,501人から令和4年の3万2,853人へと約39%減った。交通事故そのものの減少が背景にあると考えられる。もっとも,略式命令請求に至るのは被疑事件の一部にすぎない。令和4年分の概況683頁によれば,過失運転致死傷被疑事件の起訴率(起訴人員を起訴人員と不起訴人員の和で除したもの)は,令和3年が13.5%,令和4年が13.3%であり,被疑事件の大半は不起訴で終わっている。
第四に,1万円未満の罰金はほとんどない。平成25年と令和4年に各1人あるのみであり,5万円未満の区分全体でも年1人から8人にとどまる。人身事故として立件され略式命令に至った以上,罰金は10万円以上となるのが通例である。
第4 量刑分布を読む前提となる法改正
1 懲役及び禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された
刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号。公布は令和4年6月17日)は,令和7年6月1日から施行され,懲役及び禁錮を拘禁刑に一本化した。自動車運転死傷処罰法の各条も,現行法では法定刑がすべて拘禁刑で規定されている。
本記事の表が「懲役」「禁錮」の区分で数値を掲げているのは,いずれも施行日より前の年次の統計だからである。施行日以後に犯した罪については拘禁刑が言い渡されるため,将来の概況では刑種の区分自体が変わることになる。
2 略式手続には罰金又は科料しか乗らない
目次第1 略式手続における過失運転致死罪の量刑分布1 平成23年から令和4年までの終局区分2 表の見方第2 出典及び集計方法1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である2 表中の記号と人員の数え方3 統計上の「過失運転致死」の範囲第3 分布から読み取れること第4 量刑分布を読む前提となる法改正1 懲役及び禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された2 略式手続には罰金又は科料しか乗らない第5 関連記事出典
第1 略式手続における過失運転致死罪の量刑分布
1 平成23年から令和4年までの終局区分
簡易裁判所の略式手続において過失運転致死罪で終局した人員を,言い渡された罰金の金額区分別に示すと次のとおりである。
年次終局人員罰金総数100万円50万円以上30万円以上20万円以上10万円以上5万円以上3万円以上略式不能又は不相当その他平成23年1,3611,3579773832616729−−4平成24年1,1951,1927663230215131−−3平成25年1,2051,2049266825515435−−1平成26年1,0801,0787459923213538−−2平成27年1,0551,05052596229144281−5平成28年9239207151118312035−−3平成29年9349325855018510930−−2平成30年8478445947617111028−−3令和元年709709454191498016−−−令和2年675673423791369026−−2令和3年569567493201146617−12令和4年488488302741045723−−−
2 表の見方
各欄は金額の下限を示しており,「50万円以上」は50万円以上100万円未満を意味する。「100万円」の欄が上限として独立しているのは,過失運転致死罪の罰金刑の上限が100万円であり(自動車運転死傷処罰法5条),略式命令で科することができる罰金も100万円以下とされているためである(刑事訴訟法461条)。
「略式不能又は不相当その他」は,略式命令をすることができない場合又は相当でない場合として通常の手続に移行したものなどである。終局人員と罰金総数との差はこれによる。
第2 出典及び集計方法
1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である
本記事の数値は,毎年2月1日発行の法曹時報に登載される「○年における刑事事件の概況(上)」の図表から採録したものである。同概況は最高裁判所事務総局刑事局が作成しており,各図表は当該年を末尾とする最近5年間を掲げる形式である。したがって,1冊で5年分を確認することができ,年ごとに号を遡る必要はない。
注意を要するのは,同じ表であっても号ごとに図表番号が変わることである。本記事が採録した図表は次のとおりである。
法曹時報の号(対象年)図表番号頁平成27年分(69巻2号)図表145550頁平成28年分(70巻2号)図表145568頁平成30年分(72巻2号)図表140406頁令和4年分(76巻2号)図表138690頁
概況は概況年の約2年後に登載されるため,本記事が現に確認した最新の号は令和4年分(76巻2号)である。令和5年分及び令和6年分についても既に登載されている可能性が高いが,本記事の執筆時点で現物を確認していないため,数値は令和4年までとした。
なお,各年の数値は後の号で遡及的に訂正されることがある。本記事では,同一年について複数の号に数値がある場合,最も新しい号の数値を採用している。略式手続における過失運転致死罪については,本記事が確認した範囲で,号をまたぐ数値の食い違いはなかった。
2 表中の記号と人員の数え方
略式手続の表には執行猶予率の欄がない。略式命令によっても刑の執行猶予をすることはできるが(刑事訴訟法461条後段),概況の略式手続の表は罰金の金額区分と略式不能等の別だけを掲げている。表中の「−」は,該当する人員がないことを示す。
また,略式手続の表の人員は延べ人員であり,通常第一審の表が実人員であるのと数え方が異なる。同一人が複数の事件で略式命令を受けた場合,略式手続の表では複数回計上される。通常第一審の人員と合算して割合を求めるときは,概算にとどまる。
3 統計上の「過失運転致死」の範囲
概況の注記によれば,「過失運転致死」には,平成25年法律第86号による改正前の刑法211条2項の罪(自動車運転過失致死)が含まれる。自動車運転死傷処罰法は平成25年11月27日に公布され,平成26年5月20日から施行されたから,平成25年以前の数値は改正前の刑法上の罪に係るものである。
第3 分布から読み取れること
第一に,金額の中心は50万円以上100万円未満である。この区分の占める割合は,平成23年が54.4%,平成30年が56.4%,令和4年が56.1%であり,12年間ほぼ一定である。上限である100万円の言渡しも毎年30人から97人あり,令和4年でも罰金総数488人のうち30人(6.1%)を占める。
第二に,人員が3分の1近くまで減少している。終局人員は平成23年の1,361人から令和4年の488人となった。同じ期間の通常第一審の終局人員が1,752人から1,020人へと4割強の減少にとどまっているのと比べると,略式手続の減少幅の方がはるかに大きい。その結果,過失運転致死罪のうち略式手続で処理される割合は,平成30年の約38%から令和4年の約32%へ下がっている。
第三に,公判請求と略式命令請求とを分けるものは,示談の成否である。川上拓一編著『裁判例にみる交通事故の刑事処分・量刑判断』(学陽書房,2022年)49頁及び50頁は,「致死事件においては、示談成立・遺族の宥恕が公判請求・略式処理の分水嶺となる、かなり重要な考慮事情となっていると思われ、その意味で積極的に宥恕等を得るとの起訴前弁護活動が重要であることが指摘できよう。」と指摘している。略式手続で終局するか公判に付されるかは,量刑そのものと同じかそれ以上に,被疑者側にとって重い分岐である。
第4 量刑分布を読む前提となる法改正
1 懲役及び禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された
刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号。公布は令和4年6月17日)は,令和7年6月1日から施行され,懲役及び禁錮を拘禁刑に一本化した。自動車運転死傷処罰法の各条も,現行法では法定刑がすべて拘禁刑で規定されている。
本記事の表が「懲役」「禁錮」の区分で数値を掲げているのは,いずれも施行日より前の年次の統計だからである。施行日以後に犯した罪については拘禁刑が言い渡されるため,将来の概況では刑種の区分自体が変わることになる。
2 略式手続には罰金又は科料しか乗らない
略式命令で科することができるのは100万円以下の罰金又は科料に限られる(刑事訴訟法461条)。したがって,本記事の分布は,検察官が起訴の段階で罰金相当と判断し,被疑者がこれに異議のない旨を書面で明らかにした事案だけを集めたものである。拘禁刑(改正前の懲役又は禁錮)を科すべきと判断された事案は,はじめから略式手続に乗らない。
目次第1 通常第一審における過失運転致傷罪の量刑分布1 懲役・禁錮の刑期区分別内訳2 終局区分と全部執行猶予率3 表の見方第2 出典及び集計方法1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である2 全部執行猶予率の算出方法と「一部執行猶予」との区別3 統計上の「過失運転致傷」の範囲第3 分布から読み取れること第4 量刑分布を読む前提となる法改正1 懲役及び禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された2 自動車運転死傷処罰法の施行と統計の連続性第5 関連記事出典
第1 通常第一審における過失運転致傷罪の量刑分布
1 懲役・禁錮の刑期区分別内訳
地方裁判所及び簡易裁判所の通常第一審において過失運転致傷罪で有罪となり,懲役又は禁錮を言い渡された人員を,刑期区分別に示すと次のとおりである。
年次懲役・禁錮総数5年以下3年2年以上1年以上6月以上6月未満平成23年3,3391171821,9101,21118平成24年3,2642351921,7761,22534平成25年3,0301241761,7751,02925平成26年3,015−211831,7451,05115平成27年2,821−331651,63996915平成28年2,7172161501,61990624平成29年2,6822251661,59088613平成30年2,6231171491,57986017令和元年2,533−231601,5667759令和2年2,337−221501,3927676令和3年2,243−171441,4426382令和4年2,1352201211,3726137
過失運転致傷罪の法定刑は7年以下の拘禁刑(改正前は7年以下の懲役又は禁錮)又は100万円以下の罰金であり,傷害が軽いときは情状により刑を免除することができる(自動車運転死傷処罰法5条)。概況の表には「7年を超える」及び「7年以下」の欄があるが,本記事の12年間ではいずれも該当がないため省略した。
2 終局区分と全部執行猶予率
同じ人員を,終局区分別に整理すると次のとおりである。
年次終局人員有罪総数懲役・禁錮うち全部執行猶予全部執行猶予率(%)罰金無罪その他平成23年3,6143,5173,3393,13894.0178493平成24年3,4873,4053,2643,07194.1141478平成25年3,2443,1643,0302,88395.2134971平成26年3,2323,1603,0152,88095.51451161平成27年3,0532,9912,8212,73597.0169656平成28年2,9082,8352,7172,65497.8117865平成29年2,8962,8362,6822,64698.7154357平成30年2,7992,7442,6232,58498.6121253令和元年2,7202,6662,5332,47897.8133747令和2年2,4982,4552,3372,30598.6118439令和3年2,4132,3612,2432,21498.7118250令和4年2,2792,2312,1352,09698.396−48
「その他」は,公訴棄却,正式裁判請求の取下げ,移送等である。有罪総数が懲役・禁錮と罰金との合計を1人上回る年(平成27年及び平成28年)があるのは,刑の免除が各1人あるためである。
3 表の見方
各欄は刑期の上限を示しており,「1年以上」は1年以上2年未満,「2年以上」は2年以上3年未満,「3年」はちょうど3年を意味する。実刑人員は表に直接掲げられていないが,本記事で懲役・禁錮の総数から全部執行猶予人員を差し引いて算出すると,令和4年は39人,令和3年は29人,令和2年は32人であり,平成23年の201人から大きく減っている。
第2 出典及び集計方法
1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である
本記事の数値は,毎年2月1日発行の法曹時報に登載される「○年における刑事事件の概況(上)」の図表から採録したものである。同概況は最高裁判所事務総局刑事局が作成しており,各図表は当該年を末尾とする最近5年間を掲げる形式である。したがって,1冊で5年分を確認することができ,年ごとに号を遡る必要はない。
注意を要するのは,同じ表であっても号ごとに図表番号が変わることである。本記事が採録した図表は次のとおりである。
法曹時報の号(対象年)図表番号頁平成27年分(69巻2号)図表144548頁~549頁平成28年分(70巻2号)図表144566頁~567頁平成30年分(72巻2号)図表139404頁~405頁令和4年分(76巻2号)図表137688頁~689頁
概況は概況年の約2年後に登載されるため,本記事が現に確認した最新の号は令和4年分(76巻2号)である。令和5年分及び令和6年分についても既に登載されている可能性が高いが,本記事の執筆時点で現物を確認していないため,数値は令和4年までとした。
なお,各年の数値は後の号で遡及的に訂正されることがある。本記事では,同一年について複数の号に数値がある場合,最も新しい号の数値を採用している。過失運転致傷罪については,本記事が確認した範囲で,号をまたぐ数値の食い違いはなかった。
2 全部執行猶予率の算出方法と「一部執行猶予」との区別
概況の注記によれば,全部執行猶予率は,全部執行猶予言渡人員を懲役,禁錮3年以下の有罪人員で除して100を乗じて算出されている。分母は有罪人員全体ではなく,猶予を付し得る範囲に限られている点に注意を要する。
刑の一部執行猶予制度の施行日は平成28年6月1日である(平成30年分・72巻2号404頁の注記)。これ以降の概況は「一部執行猶予率」と「全部執行猶予率」とを別欄に分けており,本記事が掲げるのはいずれも全部執行猶予率である。平成27年以前の号は単に「執行猶予率」と表示しているが,一部執行猶予制度が存在しない時期の数値であるから,実質は全部執行猶予率と同義である。
表中の「−」は,該当する人員がないことを示す。全部執行猶予率の欄の「−」は,全部執行猶予の言渡しがなかったこと,又は分母となる人員が存在しないことのいずれかを意味する。
3 統計上の「過失運転致傷」の範囲
概況の注記によれば,「過失運転致傷」には,平成25年法律第86号による改正前の刑法211条2項の罪(自動車運転過失傷害)が含まれる。自動車運転死傷処罰法は平成25年11月27日に公布され,平成26年5月20日から施行された。したがって,本記事の平成25年以前の数値は改正前の刑法上の罪に係るものである。
第3 分布から読み取れること
第一に,全部執行猶予がほぼ例外なく付されている。全部執行猶予率は平成23年の94.0%から平成29年の98.7%まで上昇し,以後は97.8%から98.7%の範囲で推移している(令和4年は98.3%)。過失運転致死罪(9割台前半から半ば)と比べても更に高い。
第二に,刑期の中心は1年以上2年未満であり,その割合は54.4%(平成24年)から64.3%(令和3年・令和4年)の範囲にある。次いで6月以上1年未満が3割前後を占める。3年の言渡しは年16人から35人にとどまり,5年以下(3年を超えるもの)は年0人から2人である。
第三に,人員が大きく減少している。終局人員は平成23年の3,614人から令和4年の2,279人へと約37%減った。同じ期間に略式手続の人員も5万3,501人から3万2,853人へ減っており,過失運転致傷事件全体が縮小している。
第四に,通常第一審で処理されるのはごく一部である。令和4年についてみると,通常第一審の終局人員2,279人に対し,略式手続における過失運転致傷罪の終局人員は3万2,853人であり,件数の桁が異なる。令和4年分の概況691頁の図表139によれば,第一審における過失運転致傷事件の刑種の割合は,令和4年が懲役1.5%,禁錮4.6%,罰金93.9%であり,略式手続を含めた全体では罰金が9割を超えている。
目次第1 通常第一審における過失運転致死罪の量刑分布1 懲役・禁錮の刑期区分別内訳2 終局区分と全部執行猶予率3 表の見方第2 出典及び集計方法1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である2 全部執行猶予率の算出方法と「一部執行猶予」との区別3 統計上の「過失運転致死」の範囲第3 分布から読み取れること第4 量刑分布を読む前提となる法改正1 懲役及び禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された2 自動車運転死傷処罰法の施行と統計の連続性第5 関連記事出典
第1 通常第一審における過失運転致死罪の量刑分布
1 懲役・禁錮の刑期区分別内訳
地方裁判所及び簡易裁判所の通常第一審において過失運転致死罪で有罪となり,懲役又は禁錮を言い渡された人員を,刑期区分別に示すと次のとおりである。
年次懲役・禁錮総数7年超7年以下5年以下3年2年以上1年以上6月以上6月未満平成23年1,715−3131524161,08843−平成24年1,658−3331254011,06036−平成25年1,6111−241434161,001242平成26年1,496121114037594522−平成27年1,439−−7117362937151平成28年1,468−11012336994520−平成29年1,339−−1111934285215−平成30年1,352−213125356840133令和元年1,252−24131344759111令和2年1,072−11210630563216−令和3年1,009−181152616195−令和4年1,002−12952716267−
過失運転致死罪の法定刑は7年以下の拘禁刑(改正前は7年以下の懲役又は禁錮)又は100万円以下の罰金である(自動車運転死傷処罰法5条)。「7年超」の欄に平成25年及び平成26年の各1人が計上されているのは,併合罪加重により上限が引き上げられた場合である。
2 終局区分と全部執行猶予率
同じ人員を,終局区分別に整理すると次のとおりである。有罪総数は懲役・禁錮,罰金及び刑の免除の合計であり,終局人員は有罪総数に無罪及びその他を加えたものである。
年次終局人員有罪総数懲役・禁錮うち全部執行猶予全部執行猶予率(%)罰金無罪その他平成23年1,7521,7261,7151,56892.311719平成24年1,6881,6721,6581,49692.214313平成25年1,6381,6221,6111,44791.211313平成26年1,5341,5161,4961,39594.120513平成27年1,4811,4651,4391,35194.326313平成28年1,4941,4821,4681,39095.41457平成29年1,3591,3501,3391,26195.01145平成30年1,3711,3601,3521,27795.5847令和元年1,2701,2611,2521,19495.8927令和2年1,1031,0821,0721,00294.610417令和3年1,0281,0231,00995095.01423令和4年1,0201,0101,00296396.4837
「その他」は,公訴棄却,正式裁判請求の取下げ,移送等である。有罪総数と懲役・禁錮及び罰金の合計とが一致するのは,本記事の12年間では刑の免除がなかったためである。
3 表の見方
各欄は刑期の上限を示しており,「1年以上」は1年以上2年未満,「2年以上」は2年以上3年未満,「3年」はちょうど3年を意味する。実刑人員は表に直接掲げられていないが,本記事で懲役・禁錮の総数から全部執行猶予人員を差し引いて算出すると,令和4年は39人,令和3年は59人,令和2年は70人となる。
第2 出典及び集計方法
1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である
本記事の数値は,毎年2月1日発行の法曹時報に登載される「○年における刑事事件の概況(上)」の図表から採録したものである。同概況は最高裁判所事務総局刑事局が作成しており,各図表は当該年を末尾とする最近5年間を掲げる形式である。したがって,1冊で5年分を確認することができ,年ごとに号を遡る必要はない。
注意を要するのは,同じ表であっても号ごとに図表番号が変わることである。本記事が採録した図表は次のとおりである。
法曹時報の号(対象年)図表番号頁平成27年分(69巻2号)図表144548頁~549頁平成28年分(70巻2号)図表144566頁~567頁平成30年分(72巻2号)図表139404頁~405頁令和4年分(76巻2号)図表137688頁~689頁
概況は概況年の約2年後に登載されるため,本記事が現に確認した最新の号は令和4年分(76巻2号)である。令和5年分及び令和6年分についても既に登載されている可能性が高いが,本記事の執筆時点で現物を確認していないため,数値は令和4年までとした。
なお,各年の数値は後の号で遡及的に訂正されることがある。本記事では,同一年について複数の号に数値がある場合,最も新しい号の数値を採用している。過失運転致死罪については,本記事が確認した範囲で,号をまたぐ数値の食い違いはなかった。
2 全部執行猶予率の算出方法と「一部執行猶予」との区別
概況の注記によれば,全部執行猶予率は,全部執行猶予言渡人員を懲役,禁錮3年以下の有罪人員で除して100を乗じて算出されている。分母は有罪人員全体ではなく,猶予を付し得る範囲に限られている点に注意を要する。
刑の一部執行猶予制度の施行日は平成28年6月1日である(平成30年分・72巻2号404頁の注記)。これ以降の概況は「一部執行猶予率」と「全部執行猶予率」とを別欄に分けており,本記事が掲げるのはいずれも全部執行猶予率である。平成27年以前の号は単に「執行猶予率」と表示しているが,一部執行猶予制度が存在しない時期の数値であるから,実質は全部執行猶予率と同義である。
表中の「−」は,該当する人員がないことを示す。全部執行猶予率の欄の「−」は,全部執行猶予の言渡しがなかったこと,又は分母となる人員が存在しないことのいずれかを意味する。
3 統計上の「過失運転致死」の範囲
概況の注記によれば,「過失運転致死」には,平成25年法律第86号による改正前の刑法211条2項の罪(自動車運転過失致死)が含まれる。自動車運転死傷処罰法は平成25年11月27日に公布され,平成26年5月20日から施行された。したがって,本記事の平成25年以前の数値は改正前の刑法上の罪に係るものである。
第3 分布から読み取れること
第一に,過失運転致死罪の第一審は禁錮が中心である。令和4年分の概況691頁の図表139によれば,第一審における過失運転致死事件の刑種の割合は,令和4年が懲役2.1%,禁錮64.8%,罰金33.1%であり,平成30年は懲役2.4%,禁錮59.0%,罰金38.7%であった。拘禁刑への一本化により,この区分自体が将来は失われる。
第二に,刑期の中心は1年以上2年未満の区間であり,その割合は令和4年で62.5%,平成23年で63.4%と,12年間ほぼ一定である。全部執行猶予率も91.2%(平成25年)から96.4%(令和4年)の範囲で推移しており,大きな変動はない。
第三に,人員が着実に減少している。終局人員は平成23年の1,752人から令和4年の1,020人へと4割以上減った。自動車運転死傷処罰法の施行によって一部が危険運転致死として起訴されるようになったことに加え,交通事故そのものの減少が背景にあると考えられる。
第四に,通常第一審で処理されるのは全体の一部である。令和4年分の概況683頁によれば,過失運転致死傷被疑事件の起訴率(起訴人員を起訴人員と不起訴人員の和で除したもの)は,令和3年が13.5%,令和4年が13.3%である。さらに,起訴された事件のうちかなりの割合が略式手続で処理される。令和4年についてみると,通常第一審の終局人員1,020人に対し,略式手続における過失運転致死罪の終局人員は488人であり,合計1,508人のうち約32%が略式手続によっている。平成30年は,通常第一審1,371人,略式手続847人の合計2,218人のうち約38%であった。もっとも,通常第一審の人員が実人員であるのに対し略式手続の人員は延べ人員であるから,この割合は概算である。
目次第1 通常第一審における危険運転致傷罪の量刑分布1 平成23年から令和4年までの終局区分2 表の見方第2 出典及び集計方法1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である2 全部執行猶予率の算出方法と「一部執行猶予」との区別3 統計上の「危険運転致傷」の範囲第3 分布から読み取れること第4 量刑分布を読む前提となる法改正1 懲役及び禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された2 危険運転致死傷罪は令和8年7月21日から改正されている第5 関連記事出典
第1 通常第一審における危険運転致傷罪の量刑分布
1 平成23年から令和4年までの終局区分
地方裁判所の通常第一審において危険運転致傷罪で終局した人員を,言い渡された懲役の刑期区分別に示すと次のとおりである。
年次終局人員懲役総数10年以下5年以下3年2年以上1年以上6月以上全部執行猶予率(%)平成23年17016827135492−82.4平成24年17016917165488373.9平成25年16516347195577179.6平成26年2352331621631301281.4平成27年3293272914931812886.7平成28年3393382416842062691.9平成29年3463412620612084492.5平成30年296292−521681603892.3令和元年2592552216461682190.0令和2年2552472210461582993.0令和3年2792781315571673592.7令和4年251250−811461533293.4
無罪は平成29年が2人,令和元年,令和2年及び令和3年が各1人であり,その他の年はない。「その他」(公訴棄却,移送等)は,平成23年が2人,平成24年が1人,平成25年から平成27年までが各2人,平成28年が1人,平成29年が3人,平成30年が4人,令和元年が3人,令和2年が7人,令和3年がなく,令和4年が1人である。
2 表の見方
各欄は刑期の上限を示しており,「1年以上」は1年以上2年未満,「2年以上」は2年以上3年未満,「3年」はちょうど3年を意味する。危険運転致傷罪の法定刑は15年以下の拘禁刑(改正前は15年以下の懲役)であり,本記事の12年間では10年を超える言渡しはない。30年以下及び20年以下の欄は概況の表に存在するが,全年で該当がないため本記事の表では省略した。
「終局人員」は,有罪,無罪及びその他を合計した,その年に第一審が終局した実人員である。
第2 出典及び集計方法
1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である
本記事の数値は,毎年2月1日発行の法曹時報に登載される「○年における刑事事件の概況(上)」の図表から採録したものである。同概況は最高裁判所事務総局刑事局が作成しており,各図表は当該年を末尾とする最近5年間を掲げる形式である。したがって,1冊で5年分を確認することができ,年ごとに号を遡る必要はない。
注意を要するのは,同じ表であっても号ごとに図表番号が変わることである。本記事が採録した図表は次のとおりである。
法曹時報の号(対象年)図表番号頁平成27年分(69巻2号)図表143547頁平成28年分(70巻2号)図表143565頁平成30年分(72巻2号)図表138403頁令和4年分(76巻2号)図表136687頁
概況は概況年の約2年後に登載されるため,本記事が現に確認した最新の号は令和4年分(76巻2号)である。令和5年分及び令和6年分についても既に登載されている可能性が高いが,本記事の執筆時点で現物を確認していないため,数値は令和4年までとした。
なお,各年の数値は後の号で遡及的に訂正されることがある。本記事では,同一年について複数の号に数値がある場合,最も新しい号の数値を採用している。危険運転致傷罪については,本記事が確認した範囲で,号をまたぐ数値の食い違いはなかった。
2 全部執行猶予率の算出方法と「一部執行猶予」との区別
概況の注記によれば,全部執行猶予率は,全部執行猶予言渡人員を懲役3年以下の有罪人員で除して100を乗じて算出されている。分母は有罪人員全体ではなく,猶予を付し得る範囲に限られている点に注意を要する。
刑の一部執行猶予制度の施行日は平成28年6月1日である(平成30年分・72巻2号404頁の注記)。これ以降の概況は「一部執行猶予率」と「全部執行猶予率」とを別欄に分けており,本記事が掲げるのはいずれも全部執行猶予率である。平成27年以前の号は単に「執行猶予率」と表示しているが,一部執行猶予制度が存在しない時期の数値であるから,実質は全部執行猶予率と同義である。
表中の「−」は,該当する人員がないことを示す。全部執行猶予率の欄の「−」は,全部執行猶予の言渡しがなかったこと,又は分母となる人員が存在しないことのいずれかを意味する。
3 統計上の「危険運転致傷」の範囲
概況の注記によれば,「危険運転致傷」には,平成25年法律第86号による改正前の刑法208条の2に係る罪が含まれる。また,起訴人員の表(令和4年分・683頁の図表133)の注記は,「危険運転致死傷」を自動車運転死傷処罰法2条及び3条の罪と定義している。量刑分布の表の注記には3条への言及がないため,3条(いわゆる準危険運転致死傷罪)の取扱いは注記からは明らかでない。
第3 分布から読み取れること
第一に,致傷は致死と全く異なり,執行猶予が原則である。全部執行猶予率は,平成24年の73.9%を底として上昇し,平成28年以降は90.0%から93.4%の範囲で推移している。同じ危険運転致死傷罪でも,致死と致傷とでは処理の実態が正反対である。
第二に,刑期の中心は1年以上2年未満の区間であり,その割合は平成25年の47.2%から令和元年の65.9%までの範囲にあって,平成28年以降は6割前後で推移している。6月以上1年未満の区分は,平成25年までは0人から3人にとどまっていたが,平成27年以降は21人から44人で推移しており,分布全体がやや軽い方向に移動している。
第三に,5年を超える言渡し(10年以下の欄)は年0人から4人にとどまる。危険運転致傷罪の法定刑上限は15年であるが,実際に長期の刑が言い渡される事案は例外的である。
第四に,平成26年から人員が大きく増えている。平成25年の終局人員165人に対し,平成26年は235人,平成27年は329人である。自動車運転死傷処罰法が平成26年5月20日に施行され,通行禁止道路の類型が加わり,同法3条が新設されたことにより,従来は自動車運転過失致傷罪として処理されていた事案の一部が危険運転致傷として起訴されるようになったことが背景にある。
なお,令和4年分の概況694頁の図表142によれば,令和4年の危険運転致死傷事件の控訴率は5.2%であり,通常第一審事件全体の11.4%の半分以下である。
第4 量刑分布を読む前提となる法改正
1 懲役及び禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された
目次第1 通常第一審における危険運転致死罪の量刑分布1 平成23年から令和4年までの終局区分2 表の見方第2 出典及び集計方法1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である2 全部執行猶予率の算出方法と「一部執行猶予」との区別3 統計上の「危険運転致死」の範囲第3 分布から読み取れること第4 量刑分布を読む前提となる法改正1 懲役及び禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された2 危険運転致死傷罪は令和8年7月21日から改正されている第5 関連記事出典
第1 通常第一審における危険運転致死罪の量刑分布
1 平成23年から令和4年までの終局区分
地方裁判所の通常第一審において危険運転致死罪で終局した人員を,言い渡された懲役の刑期区分別に示すと次のとおりである。危険運転致死罪は地方裁判所の管轄であるため,簡易裁判所の数値はない。
年次終局人員懲役総数30年以下20年以下10年以下5年以下3年2年以上全部執行猶予率(%)平成23年1717−28412−平成24年2323−4163−−−平成25年3232−31955−20.0平成26年1717−11141−−平成27年3332161582−50.0平成28年38372220112−50.0平成29年3231−41863−−平成30年1817−4841−−令和元年1212−−57−−−令和2年2221−5871−100.0令和3年3434−3161023−令和4年2121−4151−1−
無罪はいずれの年もない。「その他」(公訴棄却,移送等)は,平成27年,平成28年,平成29年,平成30年及び令和2年に各1人であり,その他の年はない。終局人員と懲役総数との差は,この「その他」による。
2 表の見方
「懲役総数」は有罪となって懲役を言い渡された人員であり,「30年以下」から「2年以上」までの各欄はその内訳である。各欄は上限を示しており,例えば「10年以下」は5年を超え10年以下の刑期を意味する。危険運転致死罪の法定刑は1年以上の有期拘禁刑(改正前は有期懲役)であって上限は20年であるが,併合罪加重をする場合には30年まで引き上げることができるため(刑法14条2項・47条),30年以下の欄が設けられている。
「終局人員」は,有罪,無罪及びその他を合計した,その年に第一審が終局した実人員である。
第2 出典及び集計方法
1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である
本記事の数値は,毎年2月1日発行の法曹時報に登載される「○年における刑事事件の概況(上)」の図表から採録したものである。同概況は最高裁判所事務総局刑事局が作成しており,各図表は当該年を末尾とする最近5年間を掲げる形式である。したがって,1冊で5年分を確認することができ,年ごとに号を遡る必要はない。
注意を要するのは,同じ表であっても号ごとに図表番号が変わることである。本記事が採録した図表は次のとおりである。
法曹時報の号(対象年)図表番号頁平成27年分(69巻2号)図表143547頁平成28年分(70巻2号)図表143565頁平成30年分(72巻2号)図表138403頁令和4年分(76巻2号)図表136687頁
概況は概況年の約2年後に登載されるため,本記事が現に確認した最新の号は令和4年分(76巻2号)である。令和5年分及び令和6年分についても既に登載されている可能性が高いが,本記事の執筆時点で現物を確認していないため,数値は令和4年までとした。
なお,各年の数値は後の号で遡及的に訂正されることがある。本記事では,同一年について複数の号に数値がある場合,最も新しい号の数値を採用している。危険運転致死罪については,本記事が確認した範囲で,号をまたぐ数値の食い違いはなかった。
2 全部執行猶予率の算出方法と「一部執行猶予」との区別
概況の注記によれば,全部執行猶予率は,全部執行猶予言渡人員を懲役3年以下の有罪人員で除して100を乗じて算出されている。分母は有罪人員全体ではなく,猶予を付し得る範囲に限られている点に注意を要する。
刑の一部執行猶予制度の施行日は平成28年6月1日である(平成30年分・72巻2号404頁の注記)。これ以降の概況は「一部執行猶予率」と「全部執行猶予率」とを別欄に分けており,本記事が掲げるのはいずれも全部執行猶予率である。平成27年以前の号は単に「執行猶予率」と表示しているが,一部執行猶予制度が存在しない時期の数値であるから,実質は全部執行猶予率と同義である。
表中の「−」は,該当する人員がないことを示す。全部執行猶予率の欄の「−」は,全部執行猶予の言渡しがなかったこと,又は分母となる人員が存在しないことのいずれかを意味する。
3 統計上の「危険運転致死」の範囲
概況の注記によれば,「危険運転致死」には,平成25年法律第86号による改正前の刑法208条の2に係る罪が含まれる。また,起訴人員の表(令和4年分・683頁の図表133)の注記は,「危険運転致死傷」を自動車運転死傷処罰法2条及び3条の罪と定義している。量刑分布の表の注記には3条への言及がないため,3条(いわゆる準危険運転致死傷罪)の取扱いは注記からは明らかでない。
第3 分布から読み取れること
第一に,実刑が原則である。12年間を通じて全部執行猶予が言い渡されたのは,平成25年,平成27年,平成28年及び令和2年の各1人,合計4人にとどまる。令和2年の全部執行猶予率が100.0%となっているのは,懲役3年以下の言渡しを受けた者が1人だけで,その1人に猶予が付いたためであり,刑が軽くなったことを示すものではない。
第二に,刑期の中心は5年を超え10年以下の区間である。この区間の占める割合は,令和3年が47.1%,令和4年が71.4%であり,12年間のほとんどの年で最も多い区分となっている。20年以下(10年を超えるもの)の区分も毎年一定数あり,令和4年は4人であった。
第三に,母数が小さいため割合の年次変動が大きい。終局人員は年12人から38人の範囲にとどまり,1人の増減が割合を数ポイント動かす。単年の割合だけを取り出して傾向を論じることは適切でなく,複数年をまとめて見る必要がある。
なお,令和4年分の概況683頁の図表133によれば,危険運転致死傷(致死と致傷の合計)の公判請求人員は,平成30年が323人,令和元年が296人,令和2年が322人,令和3年が320人,令和4年が304人である。また,令和4年分の694頁の図表142によれば,令和4年の危険運転致死傷事件の控訴率は5.2%であり,通常第一審事件全体の11.4%の半分以下である。
第4 量刑分布を読む前提となる法改正
1 懲役及び禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された
刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号。公布は令和4年6月17日)は,令和7年6月1日から施行され,懲役及び禁錮を拘禁刑に一本化した。自動車運転死傷処罰法の各条も,現行法では法定刑がすべて拘禁刑で規定されている。
目次
第1 最初に確認すること1 事件の段階と申請先2 申請者の立場3 対象文書と利用目的第2 捜査中・起訴前の記録1 一般的な閲覧制度はないこと2 被疑者・弁護人側3 被害者側第3 公判係属中の記録1 被告人・弁護人側2 被害者等3 同種余罪の被害者等第4 不起訴事件記録1 原則非公開と個別判断2 被害者参加対象事件の被害者等3 その他の被害者及び被害者以外の者4 申請の準備第5 判決確定後の刑事記録1 保管検察官と申請先2 閲覧の原則と制限3 閲覧と謄写の区別4 不服申立て5 閲覧制限に関する主な最高裁決定第6 交通事故で区別すべき行政記録1 刑事記録とは別の記録があること2 自動車事故報告書3 交通事故捜査の現行書式4 先に確認しやすい資料第7 申請前の実務チェック1 事件を特定する情報2 窓口・書式・費用の事前確認3 デジタル化に伴う変更4 記録を入手できない場合5 保存期限・現存と延長の確認第8 関連記事1 記録の段階別の記事2 謄写業者・保管・統計の記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政機関の資料
第1 最初に確認すること
処分結果だけを知りたい場合と,供述調書等の記録を閲覧・謄写したい場合は,手続が異なる。
被疑者の不起訴告知は取調べ記事の第10,告訴人等への処分通知や被害者等通知制度は被害者の権利を参照されたい。
本記事は,記録そのものを入手する場合の制度を扱う。
検察庁の役割と連絡先の確認方法は検察庁とはにまとめている。
従業員による窃盗・横領の被害を受けた会社が,捜査の経過や刑事裁判の情報を確認したい場合は,従業員の窃盗・横領被害を受けた会社が捜査・刑事裁判の情報を確認する方法(AI作成)を参照されたい。
通知・傍聴と記録取得を分け,各段階の窓口と準備事項を整理している。
通常の窃盗・横領は被害者参加の対象犯罪ではないが,そのことだけで会社による通知や記録閲覧の利用が一括して排除されるわけではない。
刑事事件の判決書を探している場合は,判決が確定しているかを先に確認する。
確定後の判決書の閲覧・裁判書の謄本等の交付は,判決確定後の刑事記録の入手方法で詳しく扱う。
本記事の段階別の説明は,捜査中・起訴前,公判係属中,不起訴事件,判決確定後から読める。
処分結果の通知と記録の入手は別の手続である。
刑事事件全体の分岐と,立場別の確認事項は,刑事事件とは―民事事件との違い,手続の流れと立場別の対応を参照されたい。
1 事件の段階と申請先
「刑事記録」は一つの制度の名称ではなく,捜査中の記録,公判係属中の訴訟記録,不起訴事件記録及び判決確定後の保管記録では,根拠,申請先及び開示範囲が異なる。
本記事は,令和8年9月6日を調査の基準日として,入手方法を選ぶための入口と関連記事を整理するものである。
事件の段階主な確認先主な制度又は取扱い捜査中・起訴前警察署又は検察庁一般的な閲覧制度はなく,当事者の立場と個別の手続を確認する。公判係属中裁判所又は検察庁弁護人は刑事訴訟法40条,被害者等は犯罪被害者保護法3条等を確認する。不起訴記録を保管する検察庁刑事訴訟法47条を前提に,法務省の不起訴記録開示方針による個別判断を受ける。判決確定後第一審裁判所に対応する検察庁刑事確定訴訟記録法による保管記録の閲覧と,別途の謄写の申出を区別する。
2 申請者の立場
同じ記録でも,被疑者・被告人側,被害者側,訴訟関係人及び第三者では利用できる制度が異なる。
被害者についても,被害者参加対象事件か,同種余罪の被害者か,損害賠償請求その他の権利行使を目的とするかによって要件が変わるため,単に「当事者である」というだけで閲覧・謄写が認められるとは限らない。
3 対象文書と利用目的
申請前に,欲しい文書が判決書,実況見分調書,写真撮影報告書,供述調書,鑑定書又は証拠物のいずれであるかを具体化する必要がある。
閲覧が認められても謄写が同じ範囲で認められるとは限らず,個人情報のマスキング,使用目的の制限その他の条件が付されることもある。
第2 捜査中・起訴前の記録
1 一般的な閲覧制度はないこと
刑事訴訟法47条は,訴訟に関する書類を公判の開廷前に公にしてはならないことを原則とし,公益上の必要その他の事由があって相当と認められる場合を例外としている。
捜査中であること,当事者であること又は被害者であることだけから,捜査機関が保有する記録全般の閲覧・謄写を請求できる一般的な権利が生じるわけではない。
2 被疑者・弁護人側
刑事訴訟法40条による弁護人の訴訟書類及び証拠物の閲覧・謄写は,公訴提起後の制度である。
起訴前は,令状・勾留関係の書類その他の個別制度と弁護活動を通じて必要な情報を確認することになり,捜査記録全体の開示を前提とすべきではない。
3 被害者側
被害者等通知制度その他の情報提供と,刑事記録そのものの閲覧・謄写は区別する必要がある。
捜査状況又は処分結果を知る制度があっても,それによって捜査記録全体が交付されるわけではなく,記録の入手は起訴後又は不起訴後の制度を別に検討することになる。
第3 公判係属中の記録
1 被告人・弁護人側
目次
第1 裁判員等に支払われる日当1 対象者と1日当たりの上限2 出席時間と支払時期第2 日当とは別に支給される旅費・宿泊料1 交通費の計算2 宿泊が必要な場合第3 税金と確定申告1 受領額と必要経費の分け方2 申告不要制度の条件第4 勤務先の休暇・給与との関係1 必要な休みと不利益取扱いの禁止2 特別有給休暇と日当の調整第5 過去の支給基準表を読む際の注意1 令和元年改正後の時間別基準2 その後の通達・制度資料第6 関連する手続・資料第7 出典・参考資料1 法令・最高裁判所規則2 裁判例3 所管機関の文書回答・Q&A4 通達・過去の公文書5 会員による解説
第1 裁判員等に支払われる日当
1 対象者と1日当たりの上限
裁判員や補充裁判員として職務を行う場合だけでなく,呼出しに応じて選任手続の期日に出頭した裁判員候補者や選任予定裁判員にも,日当・旅費・宿泊料が支給される。
候補者名簿に名前が載っただけで日当が発生する制度ではない(裁判員法11条,29条2項及び97条5項)。
令和8年10月18日を基準とする日当の上限は,次のとおりである。
これは受け取れる額の上限であり,出頭すれば常に満額が支払われるという意味ではない。
対象者1日当たりの日当の上限裁判員・補充裁判員1万900円裁判員候補者・選任予定裁判員8750円
根拠は,裁判員の参加する刑事裁判に関する規則7条2項である。
この上限は令和8年7月1日施行の改正によるもので,施行前に支給原因となる事実が生じた日当には従前の扱いが適用されるため,振込日だけで新旧を判断しない。
2 出席時間と支払時期
(1) 出席時間に応じた額
日当の具体的な額は,選任手続,審理及び評議等にかかった時間に応じて決められる。
裁判所の裁判員制度Q&A「日当・交通費等」(https://www.courts.go.jp/saibanin/introduction/qa/index.html#3531)は,候補者の選任手続が午前中だけで終わり,裁判員に選任されなかった場合には,一般的に最高額の半額程度が支払われると説明している。
日当は,出頭や職務に伴う諸雑費,収入の減少等の損失の一部を補うものである。
勤務先で失った給与や自営業の売上が,そのまま全額補償される制度ではない。
(2) 振込先と入金の目安
旅費・日当等は,原則として本人名義の預貯金口座へ振り込まれる。
本人名義の振込可能な口座がない場合には同居家族名義の口座を指定できるが,一部の金融機関には振り込めないため,呼出状に同封された届出書で確認する。
裁判所のQ&Aが示す入金の目安は,選任手続の日から約1週間~10日である。
裁判員に選任された場合は裁判の最終日からの目安であり,各回の出頭日に現金で支払われるわけではない。
第2 日当とは別に支給される旅費・宿泊料
1 交通費の計算
旅費は日当とは別に計算され,鉄道賃,船賃,路程賃及び航空賃に分かれる。
鉄道・船・飛行機以外の区間について,裁判所のQ&Aは,バス,自家用車及び徒歩等を例に,1キロメートル当たり37円の路程賃で計算すると説明している。
原則として最も経済的な通常の経路・方法を基準とするため,実際に支払った運賃等と支給額が一致しないことがある。
遠方からの移動や航空機の利用等を予定する場合は,予約前に,出発地・交通手段・日程を担当裁判所へ伝え,支給の扱いを確認するとよい。
2 宿泊が必要な場合
宿泊料は,裁判所が自宅から遠く,前泊しなければ集合時刻に間に合わない場合や,終了後に当日中の帰宅が困難な場合等に支払われる。
裁判所のQ&Aによれば,裁判所の地域に応じて1泊9000円~2万1000円の定額であり,ホテル代の実費精算ではない。
第1 保釈保証金の没取の意味と記事の対象
1 現行法の基準日と対象
2 「没取」と刑法上の「没収」の違い
第2 保釈取消事由と裁量的没取
1 刑事訴訟法96条1項の六つの取消事由
2 全部没取か一部没取か
3 取消しと没取を別の時期に決定できること
第3 令和5年改正後の不出頭・逃亡と必要的没取
1 改正の施行日
2 同条3項ないし7項の区分
(1) 必要的没取の意味
(2) 令和5年改正後の最高裁決定
目次
第1 「前科抹消」の意味
1 結論
2 主な制度の違い
第2 刑の言渡しの効力が失われる場合
1 刑の全部の執行猶予
2 刑の一部の執行猶予
3 刑法34条の2による刑の消滅
4 大赦・特赦・復権
5 少年時の罪に関する特則
第3 刑の効力喪失後も区別して考えるべき記録
1 有罪判決を受けたという過去の事実
2 犯罪経歴証明書
目次
第1 仮釈放の意味と対象
1 刑の執行形態を施設内処遇から社会内処遇へ移す制度
2 拘禁刑と旧懲役・旧禁錮
第2 仮釈放が法律上可能となる時期
1 成人の有期刑は刑期の3分の1,無期刑は10年
2 少年法58条の特則
第3 審理の開始から決定まで
1 法定期間経過の通告と審理開始
2 調査,面接及び生活環境の調整
3 受刑者本人の申請権及び不許可に対する審査請求
第4 仮釈放の許可基準
目次
第1 マル特無期事件の意味と通達の現状
1 最高検マル特無期通達の内容
2 主要な考え方は現在も維持されていること
3 通達と仮釈放のない終身刑は同一ではないこと
第2 指定対象及び指定数が公表されていないこと
1 非公表部分と政府の説明
2 死刑求刑事件と指定対象の関係
3 累積指定数から指定率を算出できないこと
第3 無期刑の仮釈放とマル特指定
1 10年経過後の仮釈放可能性
2 30年経過後の職権審理
3 「最低50年」とする根拠はないこと
4 70歳以上と刑の執行停止
第4 無期刑受刑者の最新統計
1 受刑者数,仮釈放者数及び死亡者数
2 令和6年末の在所期間
3 仮釈放審理412件の結果
4 懲罰件数と審理結果
第5 死刑及び無期懲役の確定人員
第1 この記事の対象と犯罪捜査規範の位置付け1 対象と基準時2 被害者に関する規定の全体像第2 被害届の受理1 犯罪捜査規範第61条2 迅速・確実な受理に関する警察庁通達3 被害届と告訴の違いを確認する4 出来事を整理し,証拠を保存する5 提出先と持参する物を確認する6 聴取された内容と書面を確認する7 提出後の連絡先と手続の状態を確認する8 受理されない場合は理由と不足事項を整理する9 安全確保とオンライン窓口の使い分け第3 被害者等への配慮,通知及び保護1 秘密の保持と関係者への配慮(第9条・第10条)2 被害者等の心情と人格への配慮(第10条の2)3 刑事手続と捜査経過の通知(第10条の3)4 後難の防止と保護措置(第11条)5 捜査の公平性を保つための回避(第14条)第4 令和6年改正と個人特定事項の保護1 改正の概要2 逮捕状に代わるもの(第122条の2・第126条第6項)3 鑑定嘱託書からの被害者情報の削除(第188条)第5 捜査の各段階における被害者関係の条文1 親告罪の要急捜査(第70条)2 現場の負傷者救護と被害者関係の捜査(第85条・第90条)3 現場資料の証拠力の保全(第92条)4 実況見分調書と指示説明(第105条)5 微罪処分と被害回復・謝罪(第200条)第6 犯罪捜査規範と関連制度の区別1 条文から分かる範囲第7 出典・参考資料1 法令・国家公安委員会規則2 所管行政機関の運用資料
第1 この記事の対象と犯罪捜査規範の位置付け
1 対象と基準時
本記事は,2026年9月6日現在の「犯罪捜査規範」のうち,被害者の届出,心情・人格への配慮,通知,安全の確保,個人特定事項の保護及び各捜査段階の対応に関係する主な条文を整理するものである。
犯罪捜査規範は,国家公安委員会が定めた規則であり,警察官の犯罪捜査の心構えと手続を定めている。
各条の全文及び最新の改正履歴は,e-Gov法令検索で確認できる。
第2の3以下の被害届提出時の注意点は,2026年10月21日に確認した法令及び警察の公表資料に基づく。
犯罪捜査規範第9条第1項は,「被害者」を「犯罪により害を被つた者」と定義する。
同規範第10条の2は,その節における「被害者等」を被害者又はその親族とする。
他方,「犯罪被害者等基本法」第2条第2項の「犯罪被害者等」は,犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいい,用語の範囲は各制度で必ずしも同一ではない。
2 被害者に関する規定の全体像
被害者に関する主な規定は,次のように分けられる。
①被害届の受理と口頭による届出の処理(第61条)
②秘密・名誉の保護,心情・人格への配慮,通知,後難防止及び捜査の公平性(第9条から第14条まで)
③令和6年改正による個人特定事項の保護(第9条,第11条,第122条の2,第126条第6項及び第188条)
④親告罪,現場捜査,資料の証拠力,実況見分調書及び微罪処分の場面における被害者関係の規定(第70条,第85条,第90条,第92条,第105条及び第200条)
第2 被害届の受理
1 犯罪捜査規範第61条
(被害届の受理)
第61条 警察官は,犯罪による被害の届出をする者があつたときは,その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず,これを受理しなければならない。
2 前項の届出が口頭によるものであるときは,被害届(別記様式第6号)に記入を求め又は警察官が代書するものとする。
この場合において,参考人供述調書を作成したときは,被害届の作成を省略することができる。
第61条第1項は,届出の対象事件がその警察署の管轄区域に属するかどうかを問わず,警察官が被害の届出を受理しなければならないことを定めている。
口頭の届出の場合は,届出人が被害届に記入するか,警察官が代書する。
参考人供述調書を作成したときは,別に被害届を作成しないことがある。
2 迅速・確実な受理に関する警察庁通達
警察庁刑事局長の令和6年3月22日付け通達「迅速・確実な被害の届出の受理等について」は,被害者等の立場に立って対応し,届出内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠く場合を除き,即時受理することとしている。
この判断は,届出内容から容易に判断し得る場合を指し,改めて捜査又は調査を行ってから受理を検討するという意味ではない。
また,警ら中又は現場臨場時の届出を,必ずその場で受理することまで求めるものではないとされている。
同通達は,①迅速・確実に受理できる警察官が対応すること,②担当警察官が急訴事件への対処等で直ちに受理できないときは他の警察官を対応させること,③管轄区域外の届出も即時受理し,適当な警察署等へ引き継ぐこと,④複数の都道府県警察又は警察署にまたがる被害で関連情報を共有することを求めている。
目次
第1 制度の対象と位置付け
1 警察法79条に基づく制度
2 対象となる苦情
3 対象外の申出及び警察相談との区別
4 国家公安委員会に申し出る例外
第2 苦情申出書の書き方と提出方法
1 記載事項
2 様式及び作成上の留意点
3 提出先及び提出手段
4 代書,補正及び共同申出
第3 苦情の処理及び結果通知
1 公安委員会と警察の役割
2 処理結果として通知される内容
3 処理結果を通知しない場合
4 処理期間
第4 制度の効果及び他の手続との関係
1 処理結果通知の法的性質
目次
第1 記事の対象と資料の読み方第2 事件別の検証資料1 氷見事件・志布志事件2 足利事件―DNA型鑑定の過大評価3 厚労省元局長無罪事件4 袴田事件5 大川原化工機事件6 福井女子中学生殺人事件第3 検証資料に共通する問題の構造1 早期に形成された事件像と消極証拠2 自白・供述・専門的証拠の相互検証3 証拠保全,捜査指揮及び公判中の訂正第4 関連記事第5 出典・参考資料1 裁判例2 検察庁・警察の検証資料
第1 記事の対象と資料の読み方
本記事の調査基準日は令和8年9月3日である。
本記事では,捜査機関又は検察庁が公表した検証資料のうち,捜査・公判活動の問題点を事件横断で比較できる氷見事件・志布志事件,足利事件,厚労省元局長無罪事件,袴田事件,大川原化工機事件及び福井女子中学生殺人事件の6資料群を取り上げる。
これは,日本の無罪事件又は再審事件に関する公式検証資料を網羅した一覧ではない。
各検証報告書は,警察又は検察による自己検証を含む資料であり,裁判所の事実認定,他の捜査機関の検証又は国家賠償請求訴訟の判断と評価が一致するとは限らない。
そこで,報告書の記載は,作成機関がそのように確認又は評価したという範囲で扱い,裁判所の認定と区別する。
事件主な作成主体公表時期本記事で扱う主な論点氷見事件・志布志事件最高検察庁平成19年8月アリバイ,客観的証拠,自白及び消極証拠の評価足利事件最高検察庁・警察庁平成22年4月DNA型鑑定の評価,虚偽自白及び検証資料の保管厚労省元局長無罪事件最高検察庁平成22年12月取調べ,決裁,公判対応及び組織内の情報伝達袴田事件静岡地方裁判所・最高検察庁・静岡県警察令和6年以降取調べ,証拠のねつ造認定,証拠開示及び記録保管大川原化工機事件最高検察庁・警視庁・警察庁令和7年8月消極証拠,法令解釈,捜査指揮及び保釈対応福井女子中学生殺人事件名古屋高等検察庁・最高検察庁令和8年7月従前の立証と矛盾する資料の取扱い及び公判・再審対応
第2 事件別の検証資料
1 氷見事件・志布志事件
最高検察庁は,平成19年8月,「いわゆる氷見事件及び志布志事件における捜査・公判活動の問題点等について」を公表した。
同報告書は,裁判所の判断等を前提として問題点を検討したものであり,独自に事実認定をやり直した資料ではない。
氷見事件では,第2事件の犯行時間帯に被告人方の固定電話から実兄方へ架電した履歴が記録されていたが,第1事件の積極証拠となるかという観点からだけ検討されたため,第2事件のアリバイをうかがわせる記録であることが見落とされた。
また,現場の足跡に合う靴が発見されず,足跡の長さと被告人の足のサイズとの整合性も十分に意識して捜査されなかった。
志布志事件では,複数の自白に合理的な理由のない変遷や相互の影響があり,現金の原資及び使途に客観的な裏付けが乏しかった。
さらに,会合に出席したとされた者のアリバイが成立したにもかかわらず,消極証拠を虚心坦懐に評価する姿勢が十分ではなかったと報告書は評価している。
2 足利事件―DNA型鑑定の過大評価
最高検察庁の「いわゆる足利事件における捜査・公判活動の問題点等について(概要)」は,当時のDNA型鑑定についての理解・検討が不十分なまま鑑定結果を過大に評価し,自白の信用性の吟味が不十分となって,虚偽自白を見抜けなかったことを主な問題点とした。
鑑定で用いたネガフィルム及び画像解析データの大半が再審公判前に失われ,当時の型判定の正確性を後から十分に検証することが困難になった点も指摘されている。
警察庁の「足利事件における警察捜査の問題点等について(概要)」は,DNA型鑑定結果を過大評価して被疑者が犯人であるとの誤った先入観を持ち,一方的に謝罪を求める取調べによって虚偽自白に追い込んだと評価した。
迎合しやすい被疑者の特性,供述の変遷,不自然な内容,客観的事実との不一致及び秘密の暴露がないことについて,捜査指揮上の吟味が不徹底であったともしている。
両報告書を併せると,科学鑑定は自白の信用性を独立に保証するものではなく,鑑定の方法,基礎資料,統計的な限界及び再検証可能性を確認した上で,自白と客観的証拠との不一致を検討する必要があったことが分かる。
足利事件の報告書が検証したのは,当時行われたMCT118型検査法と,その結果を評価した捜査・公判活動である。
当時の出現頻度や資料の状態を,現在の別の検査方法・検体の評価にそのまま移すことはできない。
一方で,鑑定の基礎資料を保存し,方法と数値の意味を理解した上で他の証拠との関係を検討するという課題は,現在の鑑定結果を読む際にも重要である。
同報告書は,検察自身による検証・評価であり,現在のDNA型鑑定全般について裁判所が信用性を否定した判決として引用してはならない。
DNA型鑑定の基本的な仕組みと,採取・保管・結果解釈の確認事項は,DNA型鑑定とは―仕組み・費用・精度と裁判での扱いを参照されたい。
3 厚労省元局長無罪事件
最高検察庁は,平成22年12月,「いわゆる厚労省元局長無罪事件における捜査・公判活動の問題点等について(公表版)」を公表した。
同報告書は,逮捕及び起訴の判断,取調べ,決裁並びに公判遂行中の対応を具体的に記録している。
目次
第1 不起訴事件記録は原則として非公開であること
1 刑事訴訟法47条による公判前の非公開の原則
2 47条本文の趣旨と,ただし書による開示の判断枠組み
第2 法務省通達による開示範囲の段階的な拡大
1 平成12年通達――交通事故以外の事件・客観的証拠への拡大(刑総128号)
(1) 通達前の運用
(2) 新たな開示方針
(3) 閲覧・謄写の請求者等
2 平成16年通達――供述調書と目撃者情報(刑総627号)
3 平成20年通達――被害者参加対象事件の客観的証拠(刑総1595号)
第3 実況見分調書を文書送付嘱託で入手する場合の検察庁の対応
第4 送付嘱託・調査嘱託をめぐる実務上の留意点
1 調査嘱託の結果と,送付嘱託で得た文書の証拠化
2 文書提出の際に誓約書・同意書を求めることの当否
第5 被害者への情報提供が拡充された経緯
目次
第1 弁護人を通じた検察庁での記録の入手
1 第1回公判期日前の証拠開示
2 検察庁の窓口での閲覧・謄写の実務
3 公判前整理手続等における証拠開示
第2 開示証拠の目的外使用の禁止と罰則
1 目的外使用が禁止される範囲(刑訴法281条の4)
2 違反に対する罰則(刑訴法281条の5)
3 実際に立件された事例
4 刑事記録の民事転用と弁護士の懲戒
第3 弁護人が被告人に開示証拠を交付するときの注意点
1 説明義務と配慮義務(会規74号)
2 被害者等の個人情報のマスキング
第4 裁判所に提出された記録の閲覧・謄写
1 弁護人の固有権としての閲覧・謄写(刑訴法40条)
2 被告人及び検察官の権限
犯罪の被害者やその代理人弁護士が,加害者の刑事裁判が続いている間に,その事件の刑事記録を入手する方法を整理します。
使える制度は「第1回公判期日の前か後か」で分かれます。
第1回公判期日の前は,被害者参加対象事件の被害者等について,検察官請求証拠の閲覧等を認める通達上の運用があり,第1回公判期日の後は,被害者一般が犯罪被害者保護法3条によって裁判所で公判記録を閲覧・謄写できます。
申出先,誓約書,手数料,入手できる範囲の限界,判決確定前に完了しなければならないこと,略式命令事件の扱い,そして令和6年に始まった被害者の個人特定事項の秘匿制度までを,条文と原資料に沿って説明します。
目次
第1 この記事の対象と入手方法の全体像
1 対象となる記録・当事者・時期による区分
2 時期別の入手方法の早見表
第2 第1回公判期日前——被害者参加対象事件の被害者等による証拠の閲覧等
1 対象事件の被害者等と被害者参加人を区別する
2 原則は閲覧,謄写は必要性と弊害の個別判断
3 根拠となる最高検察庁の通達
第3 第1回公判期日後——犯罪被害者保護法3条による公判記録の閲覧・謄写
1 被害者参加の有無を問わず被害者等が申し出られる
2 申出先・誓約書・手数料
3 閲覧・謄写できる範囲とその限界
4 判決確定前に閲覧・謄写を完了する必要
5 略式命令事件は3条の対象外
6 平成19年改正による要件の緩和
目次
第1 掲載資料の範囲1 本記事の目的2 資料の対象時点第2 平成26年4月1日付け協定書の当事者及び対象場所1 協定の当事者2 出張謄写の対象場所第3 平成26年4月1日付け協定書が定める謄写業務1 紙媒体の謄写業務2 セルフ式業務の料金3 外部電磁的記録媒体の謄写第4 西村謄写館及びOPO謄写センターの掲載資料1 西村謄写館の資料2 OPO謄写センターの資料第5 大阪地検堺支部に関する西村謄写館の資料1 平成26年4月1日付け協定との違い2 掲載資料第6 事件記録の閲覧と謄写の関係1 刑事確定訴訟記録法及び記録事務規程2 謄写不許可に関する最高裁決定第7 現在の案内及びデジタル化との関係1 現在案内されている謄写業者2 成立済みで施行前の改正第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令・行政規程2 裁判例3 公文書・歴史資料4 行政・職能団体の案内
第1 掲載資料の範囲
1 本記事の目的
本記事は,大阪高等検察庁及び大阪地方検察庁と西村謄写館又はOPO謄写センターとの間で平成26年に作成された事件記録等謄写業務協定書等を掲載し,その内容を整理するものである。
掲載資料は,事件記録等謄写業務協定書,謄写対象物管理計画及び情報セキュリティ計画の合計9件である。
2 資料の対象時点
平成26年4月1日付けの協定書は同日から,西村謄写館の大阪地検堺支部に関する平成26年9月1日付けの協定書は同日から適用するものとされている。
各協定書には適用終了日の記載がないが,掲載資料が令和8年9月2日現在も同一内容で効力を有することまでは確認できないため,以下の業務区分,料金及び使用媒体は平成26年当時の協定内容として記載する。
第2 平成26年4月1日付け協定書の当事者及び対象場所
1 協定の当事者
平成26年4月1日付けの各協定書では,大阪高等検察庁検事長及び大阪地方検察庁検事正が甲となり,西村謄写館又はOPO謄写センターが乙となっている。
謄写業務のために使用を許可する場所は,大阪中之島合同庁舎内の指定場所とされている。
2 出張謄写の対象場所
同日付け協定書は,大阪地検岸和田支部,大阪区検察庁交通分室及び羽曳野区検察庁が管理する事件記録等について,謄写申請人の依頼を受けて業者が当該検察庁へ赴く出張謄写業務も定めている。
これは平成26年当時の対象場所であり,現在の出張範囲を示すものではない。
第3 平成26年4月1日付け協定書が定める謄写業務
1 紙媒体の謄写業務
紙媒体の謄写業務は,次の3種類に区分されている。
① 対面業務式は,使用許可を受けた場所に乾式複写機を設置し,謄写申請人の依頼を受けた業者が事件記録等を謄写する業務である。
② セルフ式業務は,指定された乾式複写機を謄写申請人が使用し,自ら事件記録等を謄写する業務である。
③ 出張謄写業務は,業者が前記3庁へ赴いて事件記録等を謄写する業務である。
2 セルフ式業務の料金
セルフ式業務では,白黒のJIS A4判1枚当たりの料金を,国及び地方の消費税を含めて20円を超えない額に設定するものとされている。
この金額は平成26年協定書の上限額であり,現在の料金を示すものではない。
3 外部電磁的記録媒体の謄写
平成26年4月1日付け協定書は,パソコン等を設置し,CD-R,DVD,BD-R,USBメモリ,フロッピーディスクその他の外部電磁的記録媒体に記録された情報を別の外部電磁的記録媒体へ謄写する業務を,対面式業務及び出張謄写業務に含めている。
もっとも,協定書は,紙媒体に関する定義では「対面業務式」,外部電磁的記録媒体に関する条項では「対面式業務」と記載しており,用語が一致していない。
第4 西村謄写館及びOPO謄写センターの掲載資料
1 西村謄写館の資料
大阪高検,大阪地検本庁,大阪地検岸和田支部,大阪区検察庁交通分室及び羽曳野区検察庁に関する西村謄写館の掲載資料は,次のとおりである。
第1 現在の取扱先及び連絡先
1 大阪地方検察庁本庁
2 堺支部及び岸和田支部
3 庁内の場所及び西天満事務所
第2 閲覧・謄写の申出と費用
1 申出書による業者の指定
2 確定記録の閲覧と謄写の区別
3 150円の閲覧手数料と業者料金
第3 紙,PDF,スキャン及びセルフ式の取扱い
1 OPO謄写センターの令和7年度実績
2 西村謄写館の令和7年度実績
3 依頼時に確認すべき事項
第4 年度別の謄写件数等報告書
第5 過去に公開された謄写料金資料
1 西村謄写館の令和元年10月資料
2 OPO謄写センターの令和2年4月資料
第1 記録の段階によって申請先が異なること
1 係属中記録,不起訴記録及び確定記録の区別
2 謄写業者へ依頼する前に確認する事項
第2 大阪・京都・兵庫・愛知の謄写業者及び申請窓口
1 大阪の裁判所及び大阪地検
2 京都の裁判所及び京都地検
3 兵庫県内の裁判所及び検察庁
4 愛知県の申請書式及び謄写窓口
第3 判決確定後の刑事記録の保管場所
1 第一審裁判所に対応する検察庁が原則であること
2 交通事件の本籍地特例は令和7年1月1日前の終結事件に限られること
3 法的な保管者,物理的な所在及び閲覧場所の違い
4 大阪府内の区検事件等の問い合わせ先
第4 確定記録の閲覧と謄写は別の手続であること
1 法律が定める閲覧請求
2 謄写は別途の申出として扱われること
3 閲覧手数料と謄写料金の違い
目次
第1 最高裁大法廷昭和25年6月24日決定
第2 昭和24年10月17日の最高裁判所裁判官会議議事録
第3 関連記事その他
第1 最高裁大法廷昭和25年6月24日決定
・ 昭和24年7月16日発生の最高裁判所誤判事件に関する最高裁大法廷昭和25年6月24日決定を,官報から抜粋して以下のとおり貼り付けています。
○最高裁判所
[●]過料 最高裁判所判事霜山精一外三名に対する最高裁判所昭和二十五年(分)第一号分限事件について次のとおり決定があつた。
昭和二五年(分)第一号
決 定
最高裁判所判事 霜山 精一
最高裁判所判事 栗山 茂
最高裁判所判事 小谷 勝重
最高裁判所判事 藤田 八郎
右各裁判官に対し、最高裁判所から懲戒の申立があつたので、当裁判所は次のように決定する。
主 文
被申立裁判官を各過料一万円に処する。