第1 社会復帰支援計画で明らかにすること1 弁護人の計画と行政機関の計画を区別する2 生活支援の目的と刑事手続での使途を分ける第2 本人との面談と情報の集め方1 本人が望む生活と望まない支援を確認する2 情報の出所と確認日を残す第3 支援先を調整するときの確認事項1 相談窓口と利用条件を分けて調べる2 受入先の名前だけで「調整済み」としない3 専門職への依頼費用と生活費を別に確認する第4 更生支援計画書の項目と書き方1 基本情報と実施内容を一続きにする2 抽象的な約束を確認可能な記載に変える3 計画本文と添付資料を対応させる第5 保釈・情状弁護で使うときの留意点1 保釈の判断事項へ具体的に結び付ける2 裁判例は計画の存在と実効性を分けて読む3 支援の評価と証拠としての説明を混同しない第6 釈放当日とその後の支援につなぐ1 釈放当日に実行することを具体化する2 継続期間と引継ぎ先を確認する3 計画が続かなかった場合の対応を決める第7 主な出典1 法令・裁判例2 行政資料・実施主体の案内3 実務解説
第1 社会復帰支援計画で明らかにすること
社会復帰支援計画は,本人が地域で暮らすために必要な支援を,誰が,いつから,どの条件で行うのかを具体化するための書面である。
刑事弁護で作成する際には,本人の希望と生活上の課題を出発点に,受入先の確認,費用,釈放当日の移動,支援が続かなかった場合の対応までを結び付けることが重要である。
計画書を作成したことだけで,保釈,執行猶予又は再犯防止が保証されるわけではない。
1 弁護人の計画と行政機関の計画を区別する
本記事では,弁護人が本人や福祉専門職と協力して組み立てる社会復帰のための個別計画を扱い,実務上の「更生支援計画」という呼び方も用いる。
以下の記載項目や確認方法は実務上の提案であり,裁判所への提出に一律に必要となる法定様式を示すものではない。
厚生労働省の地域生活定着支援センターの事業及び運営に関する指針には,福祉サービス等調整計画通知書の様式がある。
その別紙5は,地域生活定着支援センター長から保護観察所長へ通知する被疑者等用の書式であり,弁護人が作る計画書とは作成主体も用途も異なる。
調査項目の参考にはなるが,そのまま弁護人の統一書式として紹介するのは適切でない。
2 生活支援の目的と刑事手続での使途を分ける
生活支援の目的は,本人が必要な支援につながり,地域生活を続けられるようにすることである。
一方,保釈の資料,量刑に関する資料,支援機関への引継ぎ資料では,説明すべき事項や共有する情報の範囲が異なる。
一つの計画を基礎にしつつ,提出先ごとに必要な説明と添付資料を選ぶという組み立てが考えられる。
本記事は,令和8年9月9日を基準に,日本の成人刑事事件の弁護を想定している。
少年事件の手続,医学的診断,個別事件の量刑予測及び仮釈放手続の詳細は扱わない。
第2 本人との面談と情報の集め方
1 本人が望む生活と望まない支援を確認する
最初に確認したいのは,本人がどこで,誰と,どのように暮らしたいかという希望である。
家族が望む生活と本人の希望は分けて聞き取り,本人が困っていること,これまで続けられたこと,避けたい環境も記録する。
読み書きや説明の理解に配慮が必要な場合は,短い説明や図を用い,本人の言葉で理解を確かめながら進める方法が考えられる。
支援を受けることへの了承と,病歴や生活歴を関係機関へ伝えること,裁判資料として提出することは,目的が異なる。
本人に相手先,情報の範囲,利用目的を説明し,それぞれについて意向を確認して記録することを勧める。
厚生労働省の地域生活定着促進事業実施要領も,情報取得時の説明と了承等を定めているが,これは弁護人による無制限の情報共有を認めるものではない。
否認事件では,生活上の困難を整理することと,争っている犯罪事実を認めることを混同しない配慮が必要である。
本人が争っている犯罪事実を,本人が認めた事実として記載しないようにする。
外部資料と本人の説明が異なる場合には,双方の出所と相違点を明示し,未確認の事項とも区別する。
2 情報の出所と確認日を残す
本人が話した内容,家族や支援者が説明した内容,書類で確認した内容,専門職が評価した内容は,区別して記載するのが有用である。
例えば「家族が毎日対応できる」と書く前に,誰が,何曜日の何時に,どの支援を行えると回答したのかを確認する。
本人と家族の説明が食い違う場合は,どちらかを推測で事実にせず,相違点と追加確認先を残す。
確認する資料には,住居の使用関係,収入と支出,福祉サービスの利用状況,通院先,手帳や受給者証の有無などがある。
前記指針の別紙5にも,住民票,手帳,受給者証,要介護度,年金,生活保護,医療等の確認欄が設けられており,「要確認」の状態を残せる。
手帳や診断名の有無だけで,必要な支援,利用資格又は事件への影響まで決めないことが重要である。
医療に関する記載は,確認できた診療情報や専門家の評価に即した範囲にとどめる。
弁護人や家族の印象から診断を確定したり,治療を受ければ再犯しないと断定したりせず,未評価の事項は専門家に確認する課題として示す。
第3 支援先を調整するときの確認事項
1 相談窓口と利用条件を分けて調べる
本人の課題に応じ,社会福祉士等,自治体の福祉担当,地域の相談支援機関,地域生活定着支援センターなどへの相談を検討する。
ただし,どの機関でも同じ対象者を同じ手続で受け付けるわけではないため,身柄拘束の有無,年齢,障害に関する状況,居住地,刑事手続の段階を伝え,担当範囲を確認することが出発点となる。
例えば,よりそいネットおおさかの被疑者等支援業務の案内は,高齢又は障害等に関する条件に加え,身体拘束中であることなどを掲げ,在宅事件を対象外としている。
これは同案内の対象業務についての説明であり,在宅事件の本人は一切の福祉支援を利用できないという意味ではない。
厚生労働省の平成27年12月24日事務連絡も,違法行為をしたことだけを理由に必要な福祉支援を受けられなくしないよう求めている。
保護観察所が関わる支援でも,勾留中の被疑者に対する生活環境調整と,更生緊急保護は別の制度である。
更生保護法83条の2の調整は,検察官が罪を犯したと認めた勾留中の被疑者について,必要性の判断,本人の同意及び検察官の意見聴取等を伴う制度である。
検察官が捜査への支障を理由に相当でない旨の意見を述べた場合には,同条による調整はできないとされている。
更生緊急保護の開始には,同法86条の本人の申出と保護観察所長の必要性の認定を要する。
弁護人が計画書を作成したことや相談したことを,制度利用の決定と取り違えないようにする。
2 受入先の名前だけで「調整済み」としない
候補施設が見つかった段階では,利用できる支援内容,受入可能日,空き状況,費用,必要書類,夜間の対応などを確認する必要がある。
法務省の更生保護施設・自立準備ホームの案内は制度の理解に役立つが,特定の施設が特定の日に本人を受け入れることまで保証する資料ではない。
計画書では,「相談開始」「申請・審査中」「条件付きの内諾」「利用開始が確定」という状態を分ける方法が考えられる。
これは記録のための区分例であり,各制度が共通して採用する正式な分類ではない。
回答した担当者,確認日,条件,裏付け資料を併記し,満たしていない条件があれば未確定のまま示す。
3 専門職への依頼費用と生活費を別に確認する
社会福祉士等への依頼では,面談,計画作成,同行,継続支援のうち何を依頼するかを決め,費用と支払者を確認する。
所属弁護士会等の援助制度を検討する場合も,現在の対象,申請時期,対象経費,上限,決定までの負担を依頼前に確認するのが安全である。
通常の国選弁護報酬・費用と,福祉専門職に関する費用援助を同じものとして扱わず,国選事件であれば全額支給されると約束しないようにする。
計画作成費用とは別に,住居費,食費,交通費,通信費,通院費がいつから必要になるかを整理する。
給付や収入が始まるまでの資金が未確保であれば,その期間の支払方法と確認担当者を計画上の課題として残す。
本記事では,全国共通の現行援助額や特定の申請期限を示すものではない。
第4 更生支援計画書の項目と書き方
(続きを読む...)刑事弁護の社会復帰支援計画の作り方-更生支援計画書の項目・受入確認・引継ぎ(AI作成)