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公募型企画競争は公契約関係競売入札妨害罪の「入札」に当たるか―最高裁令和8年9月28日判決と発注者・応募者の実務(AI作成)

最高裁第二小法廷令和8年9月28日判決は,法令又は内規に基づく公募型企画競争であっても,契約相手方の選定方法として適法に決定され,競争入札の実質を有するなら,刑法96条の6第1項の「入札で契約を締結するためのもの」に当たると判断した。

ただし,すべての企画競争又はプロポーザル方式が当然に「入札」になるわけではない。実務では,手続の名称ではなく,応募者間の秘密性,競争項目の具体性,比較可能性と予測可能性,採点と決裁の仕組み,順位と契約相手方との連動を具体的に確認する必要がある。

◯本記事は,人工知能が作成したものである。最高裁,札幌高裁及び札幌地裁の裁判所公式判決PDFと現行法令を基にするが,個別事案では最新の法令,手続要領,差戻審の状況及び当該事案の証拠を改めて確認されたい。

第1 結論

公募型企画競争が刑法96条の6第1項の「入札」に当たるかは,会計法規上の形式的な契約方式や「企画競争」という名称ではなく,次の二段階で検討する。

第一に,法令又は内規に基づく当該選定方法が,契約権限を有する機関によって適法に実施決定されたかを確認する。第二に,その方法が,応募者間の秘密性,競争事項の具体性,評価の客観性・公平性と予測可能性,順位と契約締結との結び付きなどから,競争入札の実質を有するかを総合して判断する。

発注者側は,審査基準や配点だけでなく,それを誰が,いつ,どの権限で決めたかを記録し,応募者ごとの情報提供と例外取扱いを平等に管理すべきである。応募者側は,担当者から競合者の非公開情報や締切後の再提出を持ち掛けられても,担当者個人の説明のみで応じない。手続根拠と他の応募者の取扱いを文書で確認し,社内法務・コンプライアンス部門に上申することが重要である。

第2 事件の経過と最高裁の結論

1 事案の概要

本件では,国家公務員共済組合連合会の医療センターが,内規に基づく公募型企画競争により契約相手方を選定した。公募要領には月額賃借料を含む8項目が示され,複数の評価者が応募者の企画提案を採点し,その合計点に基づいて優先交渉権者が決定される仕組みであった。

一審が認定した問題行為は,特定事業者に競合他社のより高い賃借料の申出内容とその概算を教え,当該事業者にだけ,提出後の追加・変更を禁ずるルールにもかかわらず,締切後の再提出と再修正をさせたというものである。

2 一審・原審・最高裁

札幌地裁判決は,本件の公募型企画競争は刑法96条の6第1項の「入札」に当たるとし,被告人らに有罪判決を言い渡した。

札幌高裁判決は,会計法規上の競争入札に限らず,競争入札の実質を備える方法は刑法上の「入札」に当たり得るとしながら,本件では評価項目や採点に裁量的な要素が多いなどとして,競争入札の実質を否定した。

最高裁第二小法廷令和8年9月28日判決は,原判決を破棄した。被告人甲については控訴を棄却し,一審の有罪判断を維持した。被告人乙については,原審が判断していなかった事実誤認の控訴趣意を審理させるため,札幌高裁に差し戻した。そのため,被告人乙の故意又は共謀を最高裁が確定的に認定したと読んではならない。

第3 刑法96条の6第1項の「入札」に当たる基準

1 最高裁の判断枠組み

最高裁は,法令又は内規に基づく方法によって契約相手方を選定することが権限ある機関によって適法に決定され,当該方法が競争入札の実質を有するときは,刑法96条の6第1項の「入札で契約を締結するためのもの」に当たるとした。

これは,契約方式の名称で刑法の保護範囲を決めるのではなく,その選定方法が契約相手方を選ぶ競争手続としてどのように設計され,運用されているかを見る考え方である。

2 本件で競争入札の実質を認めた事情

最高裁は,主として次の事情を総合した。

  • 内規に基づき,契約権限を有する病院長が公募型企画競争の実施を適法に決定したこと
  • 各応募者が,他の応募者の申出内容を知らずに自己の申出をする仕組みであったこと
  • 公募要領に8項目が具体的に示されていたこと
  • 自由提案以外の項目が,医療センターの経済的利益及び薬局運営への寄与という観点から,客観的・公平に比較可能な性質であったこと
  • 応募資格が実績等の豊富な法人に限定され,採点基準が公表されていなくても,評価の観点を容易に予測できたこと
  • 月額賃借料に一律の数値基準があり,経済的利益に関係する項目の配点合計が5割であったこと
  • 7名の評価者の得点合計,事後決裁,契約監視委員会への報告等により,客観性と公平性を担保する方策があったこと
  • 優先交渉権者の決定後に企画提案書の契約条件を大きく変更することは予定されず,評価順位に従って契約相手方を選定する仕組みであったこと

これらは,固定的な必要十分条件の一覧ではない。判決は「以上の事実関係の下では」として判断しており,個々の企画競争では制度と運用の両方を確認する必要がある。

3 「企画競争」という名称だけでは決まらない

判決が示したのは,形式的な呼称よりも競争手続の実質を重視する考え方である。したがって,「総合評価」「プロポーザル」「企画競争」「コンペ」といった名称だけから結論を導くことはできない。

反対に,価格以外の企画,実績,運営能力等が重視されることだけで,競争入札の実質が失われるわけでもない。評価対象の性質,応募資格を前提とする予測可能性,採点のチェック,決裁と契約監視の仕組みを一体として見るべきである。

第4 優先交渉権者の選定と「契約を締結するためのもの」

本件では,選定されるのは直ちに契約を取得する者ではなく,優先交渉権者であった。しかし最高裁は,「契約を締結するためのもの」という文言は,公契約に関する刑法96条の6第1項と,強制執行に関する同法96条の4を区別する趣旨にすぎず,それ以上に成立範囲を限定するものではないとした。

そのため,「契約の前の交渉候補者を選んだだけである」という形式は,当然の適用除外事由にならない。優先交渉権者の選定が,実際に契約相手方の決定とどの程度連動しているか,選定後に契約条件がどの程度変更され得るかを確認する必要がある。

第5 競合情報の漏えいと締切後の再提出

本件で重要なのは,競合他社の申出内容と概算が特定事業者に伝えられ,当該事業者だけに締切後の再提出・再修正が認められた点である。これらは,応募者が他者の申出内容を知らずに競うという手続の前提と,同一の期限・条件で競うという平等性を直接害する。

弁護人又は社内調査担当者は,「有利な修正が認められた」という結果だけでなく,誰が他社情報を知り,どの通信手段で伝え,再提出を誰が承認し,文書のどの版が審査対象になったかを時系列化する。手続が「入札」に当たるかと,行為が「公正を害すべき行為」に当たるかは,別の要件として分けて検討する。

第6 発注者側の実務

1 選定制度の設計と記録

実施要領,権限規程,審査項目,配点,数値基準,評価者の選任,集計方法,同点時の処理,異議又は照会の窓口,優先交渉権者との交渉が不成立となった場合の順位処理を,公募開始前に整備する。公表する情報と内部基準を分け,内部基準の改訂履歴と決裁を残す。

審査は,各評価者の採点と理由,集計結果,事後決裁,契約監視部門への報告,利益相反の申告を保存する。点数のばらつきがある場合は,一律に不正と扱うのではなく,評価の根拠と判断過程を追跡できる状態にする。

2 非公開情報と例外取扱いの管理

応募者名,提案価格,賃借料,技術提案,採点,評価コメント,競合者からの照会内容などについて,閲覧者,閲覧時期,外部提供の可否を定める。応募者からの質問への回答は,他の応募者にも共有すべきかを複数人で判断し,個別の電話だけで重要な条件変更を伝えない。

期限後の資料提出,誤記の訂正,追加説明,提案書の差替えは,適用条件,承認者,他の応募者への適用,審査への影響を記録する。例外を認める場合は,特定事業者のみを有利にしないことを確認する。

3 異常の発覚後に保全する資料

問題の疑いが生じたときは,聴取を先行させる前に,公募要領と各改訂版,実施決定,権限規程,応募書類の全版,ファイルの作成・更新情報,電子メール,チャット,電話後のメモ,会議資料,評価者ごとの採点と理由,集計ファイル,決裁,優先交渉権者決定後の条件変更及び契約書を保全する。

法的評価の前に,対象期間,関係者,情報管理システム,バックアップと自動削除の周期を把握し,上書き防止を行う。調査チームは,選定手続を設計・運用した部門から十分に独立させる。

第7 応募者側の実務

発注者側の担当者から,競合者の提案額,概算,採点,弱点,辞退予定などの非公開情報を示されたときは,情報の取得を中断し,応募担当者のみで処理しない。情報をどの時点で誰が何と言ったかを記録し,社内法務・コンプライアンス部門に報告する。

締切後の再提出又は再修正を求められたときは,①実施要領上の根拠,②他の応募者にも同じ機会が与えられるか,③訂正できる範囲,④正式な承認者,⑤提出する文書の版と日時を文書で確認する。確認できるまでは,変更・再提出を止めることが安全である。

応募者は,応募資料の作成者,レビュー者,提出者,提出日時,送信先,ハッシュ値又は文書管理番号を残し,入手した公募要領,質問回答,条件変更通知の全版を保存すべきである。

第8 弁護・内部調査の組み立て

事件を受任したときは,次の四つのレイヤーを混同しないようにする。

  1. 実施主体と権限:「公の」入札等を実施する主体といえるか,契約権限は誰にあるか,実施決定は適法かを確認する。
  2. 選定手続の性質:当該公募型企画競争が競争入札の実質を有するかを,制度と実際の運用に分けて検討する。
  3. 公正を害すべき行為:非公開情報の漏えい,特定者のみに対する再提出,採点への働き掛け等の行為と,手続の公正に与えた影響を検討する。
  4. 故意・共謀・関与範囲:関係者ごとに,いつ何を知り,何を了承し,どの行為を分担したかを個別に確認する。

「違法な便宜があったから競争入札の実質がない」と循環的に論じない。刑法が保護する選定手続の性質と,その手続を害した具体的行為は分けて認定する。

第9 判決の射程と未判断事項

本判決は,企画競争を一律に「入札」としたものではない。同一の抽象的な判断枠組みを用いても,評価項目の性質,応募者の予測可能性,内部統制,契約締結までの連動性の認定により,結論は異なり得る。

国家公務員共済組合連合会の病院が「公の」入札等の実施主体に当たるかについて,最高裁は独立の一般規範を示していない。一審は,事業の公務性,法人の法的性格,職員のみなし公務員性,国の監督の程度等を検討し,原審もこれを是認したが,この部分を直ちに他の法人や団体に一般化することはできない。

被告人乙の故意・共謀は差戻審で改めて審理される。第一審の認定を,被告人乙に関する最高裁の最終判断として引用してはならない。また,判断の根拠は判決PDFに求め,報道見出しの「初判断」といった評価を判決文の文言として扱わない。

第10 私的発注・官製談合防止法・独占禁止法との区別

私人又は私的団体が行う見積合わせが,複数事業者を競わせる外形を持つからといって,それだけで刑法96条の6第1項の「公の競売又は入札」になるわけではない。実施主体と手続の性質を別途検討する必要がある。

もっとも,私的発注であっても,競争事業者間の受注調整や,発注支援者を介した非公開情報の提供は,独占禁止法,契約責任,不法行為責任,利益相反管理等の問題になり得る。判断枠組みと証拠の重なる部分はあっても,各法律の適用要件は混同しない。

入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(官製談合防止法)は,法律が定める「各省各庁の長等」の職員による入札談合等関与行為を対象とする。刑法上の公契約関係競売等妨害罪の成否と,官製談合防止法の適用対象となる組織・職員であるかは,それぞれの条文に即して確認する。

関連記事として,私的発注における受注調整と証拠保全は「マンション大規模修繕工事の受注調整と管理組合の対応」,許認可・指定の競願と行政訴訟は「競願・候補者不選定を争う行政訴訟」を参照されたい。

第11 一次資料と確認状況

本記事の判断内容は,次の一次資料により確認した。

令和8年10月1日現在,裁判所の詳細ページでは裁判要旨・参照法条欄及び判例集巻号頁の記載を確認できないため,判決PDFを基準とした。判例秘書INTERNETは認証済みセッションがなく,収録情報,判例評釈及び差戻審の状況を確認していない。報道及び民間解説は論点の発見にのみ用い,判旨の根拠には用いていない。