第1 最初に確認すること
検察庁から呼出し・来庁依頼の連絡を受けたときは,まず,連絡元と担当者,自分の立場,指定日時・場所,持参物を確認する。呼ばれたことだけで,起訴・不起訴や逮捕の有無を判断することはできない。
本記事は,刑事事件の捜査のために検察庁への来庁を求められた場合の確認事項を説明する。裁判所の召喚,刑の執行に関する呼出し,少年事件の家庭裁判所手続などは,書面の種類と根拠が異なるため同じものとして扱わない。法令・公式案内は令和8年10月11日に確認した。
| 確認事項 | 担当者に確認する内容 |
|---|---|
| 連絡元 | 検察庁名,部署,担当者名,折り返しの連絡方法。 |
| 自分の立場 | 被疑者としての取調べか,被害者・目撃者等の事情聴取か。分からなければ尋ねる。 |
| 日時・場所 | 庁舎の住所,受付場所,集合時刻,所要時間の目安,付き添い等の相談先。 |
| 持参物 | 呼出状,本人確認書類,印鑑,事件の資料など,具体的に指定された物。 |
連絡内容,担当者,確認した日時をメモしておくと,日程調整や弁護士への相談で事情を説明しやすい。連絡元が不審な場合は,第2の方法で公式窓口を確認する。
第2 本物の連絡かを確かめる
検察庁は,検察官や検察事務官を装った詐欺について公式に注意喚起している。電話等で銀行口座への送金や預金口座の変更を求めたり,検察庁の庁舎外で現金・キャッシュカード等を受け取ったりすることはないと説明している。
捜査費,保釈金,身の潔白を証明するための資金などの名目で送金を求められた場合は,その要求に応じず,最寄りの検察庁又は警察署に連絡する。
相手が実在する職員の氏名を名乗ったことだけで,正規の連絡と判断しない。公式の各検察庁案内から連絡先を自分で確認し,担当部署等へ照会する。検索先が正しい公式ドメイン「kensatsu.go.jp」であることも確認する。検察庁は偽サイトへの入力にも注意を求めている。
第3 どの立場で呼ばれるのか
1 被疑者としての取調べ
刑事訴訟法198条1項は,検察官・検察事務官・司法警察職員が,捜査の必要に応じて被疑者の出頭を求め,取調べをすることができると定めている。
警察で既に話をしていても,検察官が自ら供述を確認し,証拠の不足や食い違いを調べるために呼ぶことがある。検察官は収集した証拠等を検討して処分を判断するため,呼出しを「起訴が決まった通知」と受け取るのは適切ではない。
逮捕又は勾留されていない被疑者は,出頭を拒み,出頭後も退去できると同項ただし書が定める。しかし,出頭拒否の自由があることと,個別事件で逮捕の理由・必要性が認められるかは別問題である。不出頭の回数だけで逮捕の有無が決まるわけではない。具体的な判断は,呼出しへの不出頭と逮捕の必要性を参照し,不安がある場合は弁護士に相談されたい。
2 被害者・目撃者等の事情聴取
刑事訴訟法223条1項は,被疑者以外の者についても,捜査の必要に応じて出頭を求めて取調べ等をすることを認めている。被害者,目撃者その他の事件関係者が,事実関係の確認のために呼ばれる場合がある。
同条2項は,198条1項ただし書の出頭拒否・退去に関する規定などを準用している。ただし,裁判官による証人尋問や裁判所の召喚は別の制度である。捜査機関への任意の来庁依頼と,裁判所が命じる手続を混同しない。
自分が何を確認するために呼ばれているのか不明な場合は,担当者に確認する。付き添い,通訳,体調や障害に応じた配慮が必要な場合も,来庁前に相談する。希望が全てそのまま認められると断定せず,実施方法を確認することが大切である。
第4 日程が合わないとき
指定日に行けない場合は,そのまま放置せず,理由と来庁できる候補日時を担当者に事前に伝える。横浜地検の来庁依頼案内は,日時を変更できる場合があるとして,事前連絡を求めている。
これは,どの種類の呼出しでも自由に日時を変更できるという意味ではない。書面の種類と事件の手続を確かめ,担当者から回答を得る必要がある。
道路交通法違反の三者即日処理については,公式FAQが,日時の変更は原則できず,どうしても都合がつかない場合は呼出状等の連絡先に相談すると説明している。一般の事情聴取の日程調整と,同じ扱いにしない。
日程が変更されたときは,新しい日時・場所・連絡した担当者を記録し,持参物も変わらないか確認する。
第5 持ち物・服装・所要時間
持ち物は,受け取った書面と担当者の指定を優先して確認する。横浜地検の案内は,来庁依頼の書面と記載された物を持参し,通常は本人確認書類と印鑑を持参するよう説明している。同庁の印鑑の案内では,インク浸透印は不可とされる。
これを全国一律の持参要件とせず,呼出状の記載や担当者の指示で確認する。三者即日処理の赤切符・呼出状・本人確認書類・印鑑の案内も,その手続を受ける場合の説明である。
| 項目 | 来庁前に整理すること |
|---|---|
| 本人確認・呼出書面 | 書面の原本や指定された本人確認書類を用意する。 |
| 事件に関する資料 | 提出を求められた物を確認する。資料の一覧を作り,原本・写しのどちらが必要か尋ねる。 |
| 体調・配慮 | 服薬,休憩,通訳,付き添い等の相談が必要なら担当者へ伝える。 |
| 移動・時間 | 庁舎の場所と交通手段を確認し,遅れそうな場合の連絡先を控える。 |
服装を理由に処分が決まるという根拠はなく,清潔で移動・待機に支障のない服装を選ぶという実務上の準備と考えればよい。服装で有利な処分を得られると期待するのは適切ではない。
所要時間は事件の内容,確認事項,待ち時間等で変わるため,担当者に目安を尋ねる。三者即日処理の公式FAQにある2~4時間という目安を,一般の検察官の取調べ全ての所要時間として用いない。
第6 当日の事情聴取と供述調書
1 確認した事実と推測を分ける
指定された受付場所で来庁目的と担当者を伝え,案内に従う。事件については,自分が見聞きした事実,後から知った情報,自分の推測を区別して話す。記憶がないことや分からないことを,推測で埋めない。
時系列のメモや資料を用意する場合は,記憶を確認するために使う。話を合わせるために記録を作り直したり,証拠を削除したりしてはならない。
2 被疑者の供述拒否権と調書の確認
被疑者の取調べでは,自己の意思に反して供述する必要がない旨をあらかじめ告げることが必要である(刑事訴訟法198条2項)。質問に答えるか,どの範囲で答えるかは,具体的な事件について弁護士と相談することができる。
供述調書が作成された場合は,閲覧又は読み聞かせにより内容を確認する。供述の増減変更を申し立てた場合は,その供述を調書に記載しなければならないと同条4項が定める。誤りがあれば,記憶や説明と違う箇所を具体的に示す。
署名押印を求められても,拒絶できることが同条5項に明記されている。被疑者以外の者の調書にも,同条3項~5項が準用される(223条2項)。取調べの録音録画,黙秘権,検察官面前調書等の詳しい説明は,警察及び検察の取調べを参照されたい。
呼出しの前後を含む全体像は,刑事事件の流れと立場別の対応を参照されたい。身柄を拘束されずに捜査が続く場合の進行と,立場別の処分結果の確認は,在宅事件の流れと結果の確認で詳しく扱う。
第7 呼出し後の処分結果と記録
聴取が終わったことだけで,その日のうちに処分が決まった,又は今後の呼出しがないと判断することはできない。追加の資料提出や聴取が必要になる場合もある。連絡方法や,処分結果を確認する場合の窓口を担当者に尋ねておくとよい。
被疑者の不起訴処分の告知,告訴人・告発人等への処分通知,被害者等通知制度は対象と根拠が異なる。取調べ記事の不起訴告知と被害者の権利に分けて説明している。
供述調書等を入手したい場合は,結果の確認とは別に,刑事記録の入手方法で,事件の段階と申請者の立場を確認する。
第8 関連する手続と相談
交通事故事件の取調べ,実況見分・写真・診療資料などの客観証拠,補充捜査については,交通事故で検察庁から呼び出されたらを参照されたい。
検察庁の役割や警察・裁判所との違いは,検察庁とはにまとめている。
被疑者として呼ばれ,供述の内容,出頭への対応又は身体拘束に不安がある場合は,書面と連絡内容を整理して刑事弁護を扱う弁護士に相談する。被害者・参考人としての来庁でも,安全上の配慮,体調,又は回答する情報の範囲に不安があれば,担当者や弁護士に事情を伝える。一般的な案内だけで個別事件の方針を決めないことが大切である。
第9 出典・参考資料
刑事訴訟法198条,199条,223条,226条,259条~261条。
検察庁「警察との違い」,「検察庁職員を装った詐欺にご注意!」,「検察庁ホームページの偽サイトにご注意ください。」。
横浜地方検察庁「来庁依頼(呼出し)の連絡を受けた方へ」(令和8年2月13日更新)。
検察庁「三者即日処理手続に関するよくある質問と回答」(令和8年6月18日更新)。