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1 取調べのための呼び出しに応じないことと,逮捕の必要性に関する最高裁刑事局作成の資料の記載
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1 取調べのための呼び出しに応じないことと,逮捕の必要性に関する最高裁刑事局作成の資料の記載
・ 最高裁判所刑事局が平成7年3月に作成した,逮捕・勾留に関する解釈と運用4頁及び5頁には以下の記載があります。
まず,一般論として,次のとおり意見が一致した。
刑訴法199条1項ただし書の罪についてはもちろん,その他の罪についても,明らかに逃亡,罪証隠滅のおそれがなく,単に出頭要求に応じないという理由だけでは逮捕状を発付することはできない。しかし,任意出頭の要求に数回にわたって応じないということは,逃亡又は罪証隠滅のおそれを推認させる有力な事情とはなりうるであろう。呼出しの回数が重なるに連れ,呼出しを無視する被疑者の緊張感が高まり,例えば,もしかすると裁判で実刑になるのではないかとの不安を覚え,逆に逃走や罪証隠滅を図るといった心理過程を推認できることもあるからである。もちろん具体的な諸事情を総合判断しなければならないが,そのような推認ができる場合には,数回の不出頭の事実を逮捕の必要性の一つの判断資料として,逮捕状を発付するということも十分考えられる。なお,このような推認が働くのは,あくまで有効な呼出しを現に受けており,かつ正当な理由もないのに,出頭しない場合に限られることはいうまでもない。
この点について,何回以上不出頭であれば逮捕状を発付するという一応の基準的なものを設け,これに基づいて運用するというやり方についても議論が及んだ。しかし,これに対しては,単に機械的に回数のみを基準にして逮捕の必要性の有無を決するのは妥当でなく,あくまでも具体的事情を総合判断して,必要性の有無を判断すべきである,との結論となった。
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(1) 交通事故弁護士相談Cafeに「交通事故の現場検証!警察官対応で必ず知っておくべき全知識」が載っています。
(2) 名古屋高裁令和4年1月19日判決は以下の判示をしたみたいです(弁護士法人金岡法律事務所HPの「名古屋高裁、在宅被疑者に取調べ受忍義務を認める!!」参照)。
正当な理由のない不出頭は,一般的には逃亡ないし罪証隠滅のおそれの一つの徴表であると考えられ,数回不出頭が重なれば逮捕の必要が推定されることがあると解されている。そうすると,検察官の出頭要求に応じて被疑者が出頭したものの,弁護人を取り調べに立ち会わせることを求め,これを検察官が認めなかったことから,結果として被疑者の取調べを行うことができない事態が繰り返された場合に,検察官が,被疑者が正当な理由なく取調べを拒否しており,正当な理由のない不出頭を繰り返した場合に準じ,逃亡ないし罪証隠滅のおそれがあるとして逮捕の必要性があると評価することに合理的根拠がないとはいえ(ない)
(3)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 被疑者の取調べにおける弁護人立会い要求等に対する対応要領(令和4年8月の兵庫県警察本部刑事部刑事企画課の文書)
・ 監察調査の結果について(令和5年12月25日付の最高検察庁監察指導部の文書)
→ 令和元年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件に関するものです。
・ 取調状況DVD等に関する調査について(令和元年5月24日付の最高裁判所刑事局第三課長の事務連絡)
・ 証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の運用等について(平成30年3月19日付の次長検事の依命通達)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 警察及び検察の取調べ
・ 司法修習生による取調べ修習の合法性
・ 交通違反に対する不服申立方法
大阪弁護士会で出している在宅取調べ実践マニュアルに取調べ立会いを求めるやり方が書式など含めて詳しく書いてありますよね。
— 弁護士戸舘圭之オフィシャル/とってぃ/袴田事件弁護団 (@todateyoshiyuki) September 10, 2021
金岡先生の怒りがブログに表れていますね。この判決は本当に、刑事訴訟法への無理解が表れているように思われます。
名古屋高裁、在宅被疑者に取調べ受忍義務を認める!! https://t.co/Ms27wiDUTq
— 弁護士 津金貴康 (@tsuganetakayasu) February 4, 2022
逮捕して勾留請求したが却下されて釈放された後、録音録画するなら取調べに応じる、と申し出て捜査官が録音録画なしの取調べに応ずるよう説得するが応ぜず、ということが5回続いた場合に再逮捕できるか、という問題がそろそろ起きそう。弁護人立会いと違って、ちょっとは裁判官も悩むかな。
— venomy (@idleness_venomy) August 31, 2022