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自動車放火と「公共の危険」―最高裁平成15年4月14日決定・最高裁昭和60年3月28日判決(AI作成)

第1 本記事の範囲

本記事は,自動車その他の建造物等以外の物に放火した場合に,刑法110条1項の「公共の危険」がいつ発生し,その認識が故意の内容として必要かを整理するものである。
令和8年司法試験の出題の趣旨及び採点実感は令和8年9月28日現在で公表されていないため,本記事は,同年度問題の解答を断定するものではなく,公表済みの法令及び裁判例から一般的な判断枠組みを示す。

第2 刑法110条1項の構造

1 客体と結果

刑法110条1項は,放火して刑法108条又は109条に規定する物以外の物を焼損し,よって公共の危険を生じさせた場合を処罰する。
したがって,自動車を燃やしただけで当然に既遂となるのではなく,自動車の焼損に加えて「公共の危険」が現実に発生したことを要する具体的危険犯である。

2 公共の危険の内容

最高裁平成15年4月14日決定は,刑法110条1項の「公共の危険」は,刑法108条及び109条1項所定の建造物等に延焼する危険に限られず,不特定又は多数の人の生命,身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含むとした。
このため,周囲の建造物に延焼する危険がなくても,近接する自動車,可燃物又はその場に出入りする人に危険が及んだときは,同項の公共の危険が問題となる。

第3 最高裁平成15年4月14日決定

1 事案の要点

同決定の事案では,被告人が公園内に駐車中の無人の自動車に放火し,その自動車を焼損させた。
火炎は車外に達し,近くに駐車された自動車及び大量の可燃性ごみに延焼する危険が生じていた一方,周囲の建造物に延焼する危険は認められなかった。

2 判断の射程

最高裁は,近接する自動車及び可燃性ごみに延焼する危険が生じたことから,刑法110条1項の公共の危険を肯定した。
重要なのは,建造物への延焼危険だけを探すのではなく,火勢,距離,可燃物の量,風向,消火可能性及び人の出入り等を基礎として,不特定又は多数の人の生命・身体及び広く財産への現実的な危険を検討することである。

第4 公共の危険の認識

1 最高裁昭和60年3月28日判決の多数意見

最高裁昭和60年3月28日判決の多数意見は,刑法110条1項の罪の成立について,行為者が公共の危険の発生を認識していることを要しないとした。
同項の故意としては,刑法108条又は109条に規定する物以外の物を焼損する認識が必要であり,公共の危険の発生は客観的結果として認定するという整理である。

2 反対意見との違い

同判決には,公共の危険の認識も必要であるとする反対意見がある。
答案又は実務上の意見書では,判例の多数意見を示した上で,学説上の対立があることを区別して記載する必要がある。

第5 共同正犯と認識の違い

複数人が放火に関与した場合,共謀の内容,実行行為への寄与及び各人の故意は,人ごとに検討する。
一人が近接物への延焼可能性を認識し,別の者が認識していなかったとしても,多数意見によれば,その違いだけで直ちに刑法110条1項の故意が否定されるわけではない。
もっとも,そもそも何を燃やす合意であったか,火力を増す行為を誰が行ったか,実行時に共謀が維持されていたかは,共同正犯の成立範囲を左右する。

第6 事実認定の確認事項

1 放火対象が建造物等か,それ以外の物か。
2 独立燃焼に達して「焼損」したか。
3 近接する車両,可燃物,建造物及び人との距離はどの程度か。
4 火炎の高さ・幅,風向,可燃物の量,消火設備及び消火活動はどうであったか。
5 不特定又は多数の人が現場に出入りする可能性があったか。
6 各関与者は,何を燃やすことを認識し,どの範囲で意思を通じていたか。

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第8 出典・確認範囲

1 e-Gov法令検索「刑法」108条ないし110条(令和8年9月28日確認)。
2 最高裁平成15年4月14日第一小法廷決定(平成14年(あ)第1283号,刑集57巻4号445頁)。
3 最高裁昭和60年3月28日第一小法廷判決(昭和59年(あ)第167号,刑集39巻2号75頁)。
4 法務省「令和8年司法試験の試験問題」(刑事系科目。令和8年9月28日確認)。
5 法律雑誌17誌の目次及び判例時報の目次を「公共の危険」等で検索したが,目次情報のみで本文を確認していない文献は,本記事の法的根拠には用いていない。